シオノカイトによるバンドプロジェクトHANDSOME ACADEMYインタビュー | パワーポップを軸にグッドメロディを追求
2022年の始動以来、パワーポップを基調に琴線に触れるグッドメロディを追求し続けているシオノカイトによるHANDSOME ACADEMY。2025年秋には、「STRAY」「TONIGHT IS THE NIGHT」「LONE PLANET」と立て続けにリリースを行い、そのサウンドはより洗練された深みを帯びている。東京藝大声楽科出身という異色の経歴、BEAT CRUSADERSへの愛、そして「孤独」を踊らせるポップネス。注目集めるHANDSOME ACADEMYの核心に迫る。
パワーポップをベースにポップミュージックを
──まずは、HANDSOME ACADEMY結成の経緯から教えてください。2022年に始動されていますが、どのようなきっかけだったのでしょうか?
シオノ: 元々、Man’hattan Holidayという前身バンドをやっていたんですが、コロナ禍もあってメンバーが散り散りになってしまって。「もうバンドはいいかな」という空気感になって解散したんです。僕はそこで鍵盤ボーカルだったんですが、もっと鍵盤を増やしたいとか、ギターボーカルをやりたいという欲求が溜まっていて。「それならもう一回ゼロから立ち上げ直すか」となりました。ちょうどコロナ禍のステイホーム期間と重なったのが、僕には逆に好都合で。HANDSOME ACADEMYの準備に時間をあてられたので、曲をバーッと作って。で、前のバンドとは別で、バンド経験はあるけど「もういいかな」となっていた人たちを“退役軍人”みたいな感じで集めて(笑)。「暇してたらやってよ」と声をかけて集まってもらいました。
──集まった方々はどのような繋がりなんですか?
シオノ: 元々いたメンバーの友達だったり、前身バンドで弾いてくれていたベースが別でやっていたバンドのメンバーを引き入れたり。友達主体というわけではないんですが、「音楽はやりたいけど、もうガッツリしたバンド活動はどうかな」と思っている人たちを誘った感じです。「バンドに人生を捧げよう!」みたいな熱血な振りかぶり方はみんなしたくないだろうなとは分かっていて(笑)。なので「その代わり全部僕が曲も作るし責任持つから」と言って始めました。
──当初から明確なサウンドのビジョンはありましたか?
シオノ: やっぱり僕がずっと好きな音楽をやりたいというのがあって。バンド名自体、敬愛するBEAT CRUSADERSの作品名から拝借していて、完全にヒダカさんには事後承諾なんですけど(笑)。BEAT CRUSADERSをきっかけに洋楽への視野が広がり、その中で一番グッときたのが「パワーポップ」というジャンルでした。ただ、真っ直ぐにパワーポップだけをやっちゃうと、先人たちを差し置いてHANDSOME ACADEMYを聴く理由にはならないかなと。だから、パワーポップというベースは守りつつ、ポップミュージックに落とし込みたい。例えば、ダンスミュージックの要素を入れたり、より多くの人に届くような間口の広さを意識しています。「バンドサウンドでありたいけど、まずは大前提としてポップミュージックを作りたい」という心持ちですね。
東京藝大声楽科からバンドの道へ
──シオノさんの個人的な音楽的バックグラウンドについても教えてください。
シオノ: 家で親が80年代の洋楽、ポップミュージックを流している環境で育ったので、その辺の音楽が原体験と紐づいていて、もともと好きで。それからBEAT CRUSADERSがやっていたサンプリングやパロディの元ネタが「あ、家で流れてたあれだ」と繋がったり、もっと音楽を違う視点だったり、深く楽しめるようになったというか。経歴としては東京藝大出身で、しかも声楽科で、King Gnuの井口くんと同期だったりします(笑)。
──その経歴と今のスタイルとはかなりギャップがありますね。
シオノ: 全く活かされてない歌い方しちゃってますよね(笑)。結局、クラシックの勉強をしてもやっぱりやりたいのはバンドだなってなって。ただ、声楽で歌っていた歌曲ってセンチメンタルな恋愛ものがすごく多いんです。その歌詞のニュアンスみたいなものは、意外と自分の楽曲に活かされている部分はあるかもしれません。
──2022年の始動当初、いきなりシングルを連続リリースされていました。
シオノ: 海外アーティスト的なマナーでやってみようと、3曲ずつレコーディングして、できたらすぐ出すという形で、年をまたいで計9曲を一気に出しました。動き出しだったので、「新曲をけっこう出してるな」という印象付けをしたくて。
──初期のころから既に「RESOLUTION」などの直球なバンドサウンドから、「CINEMA FREAK」のような打ち込み要素のある曲まで、幅の広さを感じます。
シオノ: 最初は初期衝動で、前身バンドから温めていた曲をそのままやったりしていたのでバンドっぽかったんですが、途中から「もっとシンセを増やしたい、シーケンスを取り入れよう」となって。そこからHANDSOME ACADEMYのサウンド像がなんとなく見えてきました。Motion City Soundtrackからの影響もあったりしつつ。
──曲作りは完全にシオノさんがコントロールされているのでしょうか?
シオノ: そうですね。ほぼ全部フレーズも決め打ちでデモを作ってメンバーに投げています。ドラムのフィルとか、シンセのニュアンスについては相談することもありますが、基本的には僕がアコギで鼻歌から作って、フックになるようなメロディができたらワンコーラス分作って、リード入れてシンセ入れて……というふうにメロディ先行で作っています。歌詞は最後ですね。
──レコーディングもデモを忠実に再現するスタイルですか?
シオノ: かなり作り込んだデモをエンジニアさんに送って、「このままの感じで録りたいです」と伝えています。いつも「HELLO DOLLY STUDIO」という、エモやパワーポップへの理解度がすごい高いスタジオで録っていますが、現場で即興的に決めることはあまりなく、作り込むタイプですね。
──HANDSOME ACADEMYの編成について再度確認させてください。実態はシオノさんのソロプロジェクトに近い?
シオノ: そうですね、ほぼソロプロジェクトみたいな感じになっています。鍵盤とベースは立ち上げから変わらずで制作チームはある程度固まっていますが、ライブメンバーは流動的で。ドラムは同い年の女性ドラマーや、現役音大生にお願いしたり、ギターは山梨から通いで弾いてもらったりしていて(笑)。なかなかバンドとしてメンバーが固まらないので、この形態になっています。一時期、正規メンバーのギターがいたこともあったんですが、どうしても音楽性や方向性の違いが出てきてしまって。それなら全部僕が責任を持ってフレーズも決めた方がいいなと。Owl Cityもアダム・ヤングのソロプロジェクトだし、そういう感じでいいのかなと。編成はバンドだけど、中身は僕のプロジェクトという認識ですね。
2025年の3部作「STRAY」「TONIGHT IS THE NIGHT」「LONE PLANET」
──2024年リリースの1st EP『YOU KNOW ALL MY SONGS』を経て、2025年10月から3作連続リリースがありました。EPから少し間が空きましたが。
シオノ: 曲はあったんですが、コスト面も含めて「これでいこう」と決めきるまで動きづらくて。意図して空けたわけではないんです。昨年の夏頃に「LONE PLANET」がパパッとスピード感を持ってできて、「これいいな」となったので、元々あった曲と合わせてすぐ録ろうとなりました。
──その3作でも、特に「STRAY」はUKロック直球なサウンドですね。
シオノ: Oasisの再結成が発表されて、「よっしゃUKやるぞ!」と思って作り始めたんですけど、出来上がったらThe Cureみたいになっちゃって(笑)。映画『シング・ストリート』が大好きで、劇中でイケてない男の子たちがニューウェーブバンドをやっているのがカッコいいなと思っていた憧れを、今ならどう作るか? と考えて形にしました。ただ、まんまUKすぎてもあれなので、その辺のバンドなら入れないようなシンセのアルペジオを入れたりしています。歌詞も、はっきりとは言わないけれど死別を匂わせるような、ほろ苦い感じにしつつ、語感が気持ちいいワードを選びました。
──続く「TONIGHT IS THE NIGHT」は?
シオノ: Owl Cityが作るポップパンク、みたいなイメージで作りました。トラップみたいなビートもあって、今までダンスミュージックでやっていたことを、僕らの得意なポップパンクに落とし込んでみようと。コード進行やメロディはシンプルなんですが、盛り付けを派手にして、外連味があるというか良い意味でハッタリが効いている感じを目指しました。
──そして「LONE PLANET」。これはキラキラしたダンスポップ感が印象的です。
シオノ: ドラムンベースが再び流行っていますが、それをそのままやるのは嫌だなと思って。試しにトラックのテンポを落としてみたら、「これ2000年代のJ-POP感あるよね」ってなって(笑)。懐かしさと新しさが混ざったような曲になりました。
──この曲の歌詞のテーマはやっぱり孤独?
シオノ: 「LONE PLANET」は珍しく自分を振り返って歌詞を書きました。なかなか自分をさらけ出すのは難しいし、うっすら嘘をついて生きている気もする。自分が浮いている気もするけど、別にどうなるわけでもないし、好きに生きていこうよ、というのを「Dancing All Alone」に置き換えました。僕自身、実はとっても暗い人間なので(笑)、そういうパーソナルな部分が反映されています。
──昨年末リリースの最新EP『FUTURESCOPE』にはそれら3曲のほか、前作EPにも収録の「DOUBLE FEATURE」も入っていますね。
シオノ: これからHANDSOME ACADEMYを知ってくれる人のために分かりやすくまとめておきたかったのと、今回の3曲の流れで聴くのがいいなと思って。制作メンバーからも「分かりやすいパワーポップも入れておいた方が親切だよね」という声があったので収録しました。これがあることで、コンセプトEP感が強まったと思います。
──最新のHANDSOME ACADEMYのモードを知るにはこのEPを聴けば大丈夫だと。ちなみに、シオノさんが思うHANDSOME ACADEMYらしい曲と、個人的に思い入れがある曲を挙げるなら?
シオノ: HANDSOME ACADEMYらしいとなると、やっぱりライブでお客さん受けがすごくいい「BIG WAVE」と「CINEMA FREAK」ですね。個人的に好きな曲だと「OKAY?」。やってて楽しいというか、なんかすごい好きなんですよね。もっとみんなに刺さって欲しい(笑)。
「本場のパワーポップシーンで評価されたい」
──ライブ活動についてもお聞かせください。ホームと呼べる場所はありますか?
シオノ: それがないんですよ。僕は浦和出身なんですが、地元のライブハウス(北浦和KYARA)が閉店してしまったり、懇意にしていた東京の箱の人が転勤してしまったりして。一番懇意にしているのが、レコーディングでもお世話になっている宇都宮HELLO DOLLYという(笑)。でもその分、フットワークは軽いので、誘われればどこへでも行きます。
──シーンでの立ち位置についてはどう感じていますか?
シオノ: インディーズだと、もっとバンドバンドしている方が好まれる傾向があって、僕らみたいに間口を広げた分、「どこでやらせたらいいんだ」とイベンターさんを困らせてしまうこともあります(笑)。コテコテのバンド箱に出ると「今日絶対滑るだろうな」と思うんですけど、意外と受けが良かったり、逆にいけると思った時はいけなかったり。ただ、楽曲のクオリティや演奏に関しては自信があるので、もっと色んなところで積極的にライブをやっていきたいです。
──今後の展望や目標は?
シオノ: やっぱりもっと色んな人に届けたいし、海外にも行きたいです。せっかく英語でやっているし、本場のパワーポップ市場で評価されてみたい。WeezerやMotion City Soundtrackが来日したら一緒にやらせてもらえるくらいに、もっと上がっていきたいです。
今年はMVとか映像作品にも改めて注力して、“こういう人間がやってるんだ”というところももっと伝えて、国内でも、ちょっとニッチなサウンド感は維持しつつ、「いそうでいない」ポジションで存在感を出していけたらなと。軸がぶれないようにやっていきたいです。

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