DJ KANJI インタビュー | 妥協なき共鳴の結晶、2ndアルバム『THE SOUL』に刻まれたアーティストとの絆
DJ KANJI待望の2ndアルバム『THE SOUL』は、そのタイトルが示す通り、魂が共鳴した多数のアーティストたちと、感情や人間性のつながりを大切にしながら紡ぎ出されたとてもエモーショナルな作品だ。その制作の裏側には、精神的な苦境と再起、家族・仲間との絆、といったDJ KANJIのドラマが深く刻まれている。今回、これまで多くを語ってこなかった自身のキャリアの起点から、『THE SOUL』の制作背景、そしてZeppワンマンを控えるなどシーンを牽引するプロデューサーとしての覚悟まで、DJ KANJIの素顔に迫る。
取材・文:渡辺志保 / Shiho Watanabe
キャリアの起点と上京
——DJ KANJIさんのインタビュー記事って、あまりネット上には上がっていないんですね。なので、今日はDJを始めたきっかけやヒップホップの出会いなどから伺いたくて。
そうですね。もとは静岡県の浜松市出身です。26歳の時、2018年に上京してきました。当時、長年付き合っていた彼女とも別れて、地元でそんなにやりたいことも見つからなくて。そこで、DJ SHINTAROくんに電話して、一緒に住ませてほしいとお願いしたんです。彼はブチギレ氏原くんと住んでいたんですけど、ウジくんが出るから「この部屋、使っていいよ」となって上京を決めたんです。
——東京のDJたちともすでにコネクションがあったんですね。もともとDJを始めたきっかけは?
地元の先輩、DJ RYO-TAくんとの出会いですね。中学生の時にiPodのCMでエミネム「Lose Yourself」が流れていて、それで「これ何だろう」って。その直後にRYO-TAくんと会って、「お前、ヒップホップに興味あんの?」って。それで初めてRYO-TAくんがDJするのを見て「すげえカッケー!」ってDJを極めたくなったんです。その後、浜松の老舗クラブであるClub SECONDでレギュラーのパーティーをやらせてもらいながら、人脈を広げていって。平日は(同じ静岡県出身の) DJ CHARIくんがDJしている都内のイベント、”BLUE MAGIC”や”BLUE PHOENIX”にも浜松からワゴン車に乗って遊びに行って。
——上京してからライフスタイルに変化はありましたか?
ガラッと変わりましたね。まず、 DJ以外の仕事をしないことを目標にしていたんです。好きなことだけを仕事にする、って。だから自分から(渋谷のクラブ)HARLEMやABEMAに売り込みに行ったり、自分でメールを送ったりしてDJとしての活動を広げていきました。そばにDJ SHINTAROくんやMARZYがいたので、みんなの活動を真似していきながら、今みたいにご飯食べられるようになっていって。
クラブDJを軸にプロデューサーへ
——クラブDJのみならず、自分でも曲を制作してみようと思ったきっかけは?
2014年くらい、僕が23歳の時にニューヨークに行ったんですよ。その時、自分で作ったブートのMIX CDをプレスして持っていったんですけど、アメリカの人たちに「俺のCDだ」って言ってもすぐに聴けない。一方で、現地の人たちは自己アピールもしっかりできてて、ちゃんとした自分のプロフィールがある。それにくらっちゃって。自分もそういうものを持ちたい、と思ったんです。それで、帰国してすぐ、地元のOGであるSUGAR CRUのMUSH(マッシュ)さんに「僕の曲を作りたいんです」ってダブの制作をお願いしたんです。それがきっかけですね。それが大体、2015、2016年頃だと思います。
——先ほども名前が出たDJ CHARIや、同じイベントでDJをやっていたDJ TATSUKIたちも、2010年代半ばから楽曲制作に力を入れ始めていましたよね。彼らの活動はどんな刺激になっていましたか?
それこそ、僕が上京するときにDJ CHARI & DJ TATSUKIの1stアルバム『THE FIRST』がリリースされたばかりだったんです。めちゃめちゃヤバいアルバムだな、って衝撃でした。「僕もこういう作品を作って、こういう動きがしたい」って目標にしていましたし、上京した後もCHARIくんのそばでその作業やどうやってビデオを撮るのかとか、工程をイチから見させてもらっていました。
「アーティストと共鳴し合って作られた曲しか入っていない」
——今作『THE SOUL』も、そしてこれまでも、KANJIさんの周りにはいつもアーティストが集っている印象があります。ラッパーの方達との輪を広げたり関係を構築していくということに関して、何か気をつけたり工夫したりしていることはありますか?
あまり考えすぎると、逆まわりしちゃうので(笑)。アーティストとの出会いは直感をすごく大切にしています。それこそ、MIKADOは、去年の5月頃かな、いきなり日曜日の夜10時くらいに友達から電話がかかってきたんです。「今、MIKADOくんと一緒にいて、KANJIのスタジオに行きたいんだけど」って。それまでは挨拶をする程度だったんですけど、スタジオで一緒に曲を作ったあとに、「一緒に風呂行きましょう」って、二人で風呂に入りながら過去の生い立ちなんかを話し合って。スタジオでの付き合いだけじゃなく、私生活を互いに見せ合うことで、濃い関係性が生まれて、それがリリックなんかにも反映されているんじゃないかと思います。
——今回もたくさんのアーティストが参加しています。
『THE VOICE』を出した後、1年間くらい自分と向き合ってビートを作っていたんです。でも、なんだかふわふわしている。そんな時にMIKADOと出会って「Celebrate」という曲ができた。そこにはTeteくんも参加してくれて。そこで、パシッと2ndアルバムの趣旨が見えたんです。 そこから、自分の師匠でもあるDJ RYO-TAくんや、地元にある自分のスタジオを任せているLEGOFACTORY、GREEN KIDSのビートメーカーのヘアンといった仲間からビートをお預かりして。そこから、アーティストたちとセッションして曲を作り上げていきました。
集まってくれたアーティストたちは、やっぱり出会いですね。ENEL、HARKA、7ちゃんたち和歌山の子は、MIKADOが繋げてくれました。和歌山で言うとTOFUは前から知っていたし、ljとも前から曲をやりたいね、と話していたので、今回やっと入ってもらいました。MIKADOと話した時に、「和歌山のシーンを上げていきたい」と言ってくれて。
——逆に、長い付き合いになるのはElle Teresaあたり?
このアルバムで言うと、そうですね。この「6 AM Remix」は、DJ NORIOとスタジオに入った時に、「僕が応援しているアーティストです」ってthepiniを紹介してくれたんです。早速、曲を聴かせてもらったらレゲトンで。その頃、エルがレゲトンにハマってるのを知っていたので、「これは絶対エルも好きなはず」と思ったんです。そうしたらNORIOがエルの「6 AM」が好きだと言うことで、これをリミックスさせてもらおうと。俺らで先にビートを作って、thepiniがその上で“男からの気持ち”を歌ってくれたんです。僕がエルと北海道のライブで一緒になった時があって、そこで「ちょっとサプライズがあるから聴いてほしい」と言って「6 AM Remix」の音源を聴かせたら「やばいじゃん!もうエル、ここに入るだけじゃん」ってなって。それでリミックス版が完成しました。
——そうやって、実際の人脈を駆使しながらアーティストに声を掛けていったんですね。アルバム全体のコンセプトは?
『THE VOICE』の後は『THE SOUL』にしようと、前から考えていたんです。というのも、『THE VOICE』をリリースする一年前に父親が他界して、その後、祖母も続いて。自分の身の回りから大切な人がいなくなって、もっと早く自分の感情を伝えておけばよかったなと感じたんです。今回、最後に収録されている「そのままで」と言う柊人の曲は、父親が他界する1日前に病室の枕元で作っていたビートなんです。もうどうすることもできなくて、自分の感情をアウトプットするために作ったビート。なので、思い出の曲でね。
——制作中の思い出は?
流動的と言っていいのか分からないですけど、流れに任せながら、という感じですかね。アーティストと共鳴し合って作られた曲しか入っていないです。
——冒頭の「LoveMyself」はどのようにして完成した楽曲ですか?
これは一番最後にできた曲ですね。Kaneeeには3年くらい前から「一緒に曲をやろう」ってオファーしていたんです。そこから年明けにやっとタイミングが合って、Kaneeeと彼のバックDJであるレイレイ(Ray Inoue)に連絡したんです。Masato Hayaashiくんも、「俺もアルバムに入りたい」と言ってくれていたんですけど「HIROYUKI」のヒットなんかで結構ダークなイメージが付いちゃったと思うんですよね。
——ギャングスタ的な。
はい。でも、彼の美しい一面を出せる曲にできたらと思っていて。Kaneeeに「Masatoと一緒にやるのはどう?」と確認したら「めちゃめちゃ好きだし、ぜひやりたい。(Masato Hayashiがファイナリストになった)“RAPSTAR2025”も見ていて、すごく応援していました」と返してくれて。それをMasatoに伝えたらぶち上がってました。Kaneeeに20曲分くらいのビートを送ったんですけど、最終的に選んでくれたのがLEFOGACTORYのビートでした。
——たくさんのアーティストが参加していると、レコーディングやデータのやり取りも大変そうですよね。
基本的に、できればみんな対面して、そこでアーティスト同士がリンクアップすることができるって言うのも、僕の役目かなと思っていて。今回のレコーディング現場は、全部印象的でしたね。
——クレジットを見ていて、個人的には「Bad Trip」に参加しているDexus Ogawaという名前が気になりました。誰かの変名ですか?
GOODMOODGOKUですね。彼が改名してDexus Ogawaに。一緒に曲に入っているMyskinteriyakiはもともとTyson名義でラップしていた彼です。この曲、実は『THE VOICE』に収録する予定だったんです。でも、当時僕がメンタルをやられている時期です。鬱っぽくなってしまって、「Bad Trip」という曲の内容に飲まれ過ぎてしまった。それで、「これはリリースできないかも」っていうことを当時二人に説明させてもらってんです。でも、今回『THE SOUL』を作っている中で、やっぱりこの曲のメロディアスな部分とか重低音の効かせ方がいいなと思って。構成も面白い曲なので、今回改めて収録しようということになったんです。
「自分を愛する」というメンタルで
——過去、精神的に苦しい時期をどうやって乗り越えていったのでしょうか。
結構大変でしたね……本当に、一度人間をやめようかなくらい思い詰めてしまって。ずっと暗い自分の部屋にこもって、それこそ1年間くらい、光も当たらないようなところにいました。その間、アニメの『ONE PIECE』を1話から100話まで全部見切って。そこで「うわ、これだよな」みたいな。やっぱり側にいてくれた地元の仲間とか都内の仲間もそうなんですけど、そういう友達が僕のことを誘い出してくれたんです。
最初はLINEで連絡が来た音が鳴るだけですごく苦しかったんですよ。心臓に針が刺さるような感覚で。でも、周りで支えてくれた人たちのおかげで人間不信みたいな感情も無くなっていって、自己肯定感も少しずつ出てきた。「俺、今までこんなことをやってきたんだな」って思えるようになったんです。「姪っ子にもかっこいい背中を見せたいな」とか、「まだまだやるしかない」って思って、そこで完全に立ち上がりました。無茶せず、自分に負担を掛けすぎず、まずは自分を愛するところから、と。その半年後くらいに、最初に話したMIKADOとの制作があって。
——どんどん若手のアーティストも出てくるし、KANJIさんも中堅みたいな立ち位置じゃないですか。自分の役割みたいなものはどのように考えていますか?
30代に入った今、20代で培ってきたものを下の世代に還元していくフェーズにいるのかなと思っています。上の世代から教わってきたことを、自分なりに取捨選択しながらアウトプットして、それを若い世代に見せていく。ただ、無理はしないように。
——確かに、経験してきたもの全てを下の世代に残したいってわけでもないですよね。
俺が100%正しいわけじゃないし、後輩には「”これはいらないな”と思ったら、それは吸収するな」って言ってます。
シーンを牽引するプロデューサーとして
——KANJIさんの周りだと、ここ数年でYo-Seaさんとか3Houseさんとか、とにかくすごい勢いでブレイクしているじゃないですか。そういう姿を間近で見ていて、どんな風に感じていますか?
アーティストたちがそういう風にデカく売れていくために、僕たちプロデュース・アーティストみたいな存在がいると思っていて。「いいな」と思った若い子達をそういうステージまで持っていくのが僕たちの仕事だと思っています。「今は全然輝いていないけど、石を磨いてみたらダイヤだった」みたいなイケてる若い子たちはいっぱいいると思うんで、そういう存在を常に意識しながらプロデュースしていきたいな、と。
——そういう、「実は光っている」と感じるような若手のアーティストを見つけるために気を付けていることはありますか?
やっぱり直接会って目を見て話すことを大事にしています。そうすることで、その人の奥にあるものというか、言葉だけじゃない部分も見えてくる気がしていて。だから気になった人とは、なるべくそういうコミュニケーションを取るようにしていますね。雰囲気のある子って、何も発していなくても「なんだろう、この子」って気になっちゃうんですよ。結局、自分らしくいられている人に惹かれることが多いです。
——2024年にはSpotify O-EASTでのワンマンライブがありましたが、今回はZepp Hanedaでのワンマンライブが控えています。
ありがとうございます。皆さんのおかげです。前回のワンマンライブは、それこそ病み上がりというか、半分くらいまだ病んでるけど、表にはそれを持って行かないように、と気をつけている部分があったんです。自分のことを100%出しきれていなかったし、ちょっとカッコつけてる部分もあったなと思います。ライブを後から見返して、客観的に「ここは良くなかったな」と気づく部分もあって。今回のZeppでのライブは、そういった気持ちをなくしたいと思っています。みんなの前でも、もっと自分らしくいたいな、と。前に、Yo-Seaから「カンちゃんは、ありのままでいることがあなたらしいってことなんだから」と言われたことがあって。それで「あ、そうだよな」って。そういった気持ちがあるからこそ、自分も自分のことが好きでいられるというか。
——開催目前ですが、不安な気持ちなどもありますか?
なんか分かんないんですけど、どこかに根拠のない自信みたいなものがあって。みんなをそれに付き合わせてしまって、巻き込んじゃってるんですけど(笑)。大丈夫、イケるかなって思っています。


DJ KANJI『THE SOUL』
配信開始日:2026年4月3日(金)
配信リンク:https://linkco.re/s02Znns2

DJ KANJI ONEMAN LIVE “THE SOUL”
会場 : Zepp Haneda (羽田)
日程 : 2026年4月11日(土)
時間 : 開場 17:00 / 開演 18:00
チケット : https://eplus.jp/djkanji/
■出演者
3House / 7 / BANNY BUGS / dubby bunny / Elle Teresa / ENEL / eyden / G.O.D. / Gottz / GREEN KIDS / HARKA / Hideyoshi / HIYADAM / IO / Jin Dogg / Kaneee / lj / LUNV LOYAL / MALIYA / Masato Hayashi / MIKADO / M.O.J.I. / MUD / Only U / PETZ / Starceed / SWEE / Tete / THE UNCLE / thepini / TOFU / TOME / who28 / Woody / Yo-Sea