SHuN-BOXインタビュー 楽曲「FAKERS」が話題、プロデュースから映像制作もこなす夢を追い続けるシンガー/ラッパー

インタビュー
2020.10.19
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【インタビュー】SHuN-BOX  | 楽曲「FAKERS」が話題、プロデュースから映像制作までをもこなす夢を追い続けるシンガー/ラッパー

最近ではTikTokから火がつきYouTubeや音楽ストリーミングサービスでのヒットにつながることはもはや珍しいことではなくなったが、国内でヒップホップ/ラップの楽曲でそうなったケースはまだ多くない。そういった中、SHuN-BOXの「FAKERS (feat. Ashley)」は、TikTokをきっかけにまたたく間にヒットとなり、LINE MUSICのBGMランキングで1位となった他、SpotifyやApple Musicのチャートでも多くランクインを果たすなど(Spotifyのバイラルチャートでは現在も上位をキープし続けている)話題を呼んでいる。シンガー/ラッパーとしての自身の活動だけでなく、若手アーティストのプロデュースから映像ディレクターまでをもこなすという多才な新世代アーティストSHuN-BOXに話を聞いた。

 
ヒップホップカルチャーに囲まれ父親の背中を見て育った幼少期

——SHuN-BOXさんは生まれながらの環境がヒップホップカルチャーだったとのことですが、具体的にはどういう環境で育ったんですか?

僕は出身が金沢なんですけど、父親がZOOが結成される前のHIROさんと一緒にダンスをやっていたり、けっこう有名なダンサーだったんです。金沢、北陸のその界隈だったらみんな知っているみたいな。なので、生まれた時から80年代、90年代のR&Bやソウルミュージック、ブラックミュージックがすでに身の回りで常にかかっていて幼心にリズムが気持ちいいなと感じていました。小さい頃の記憶として、家族旅行でハワイに行った時に、ラジカセで音楽流しながらストリートでパフォーマンスしている現地の人たちの中にいきなり父親が混ざっていって一緒に踊りだしたこととか、今でも鮮明に覚えています。そういう父親のかっこいい背中を見て刺激を受けていたから、10歳でビートボックスを始めた時も、自分の活動に活かせる色んなことがいつの間にか身についていたんだと思います。

——ヒューマンビートボックスはどういう経緯で始めたんですか?

子供の頃太鼓の達人にハマった時期があったんです。太鼓の達人が上手い人のことを「ドンだー」って言うんですけど、自分は金沢でスコアランキング1位になるぐらいのドンだーだったんです。で、ある日ドンだー仲間の友達とゲームセンターに行く途中、その友達がボイスパーカッションの真似事みたいなことをやり始めて。その時はまだボイスパーカッションやビートボックスを知らなかったから、何だろうと思って帰って調べたらDaichiさんやYouTuberになる前のHIKAKINさんの映像が出てきて。それでさらに興味を持って、ビートボックスとボイスパーカッションの違いを知ったり、色々見ているうちに自分でもできるかもと思ったんです。当時いじめられたりもしていたんで、これができたら見返せるんじゃないかっていうのもあって始めました。それが10歳の時ですね。父親も僕がビートボックスを始めたことを知って、改めてヒップホップのカルチャーを教えてくれたりして、ビートボックスにどんどんのめり込んでいきました。今考えると友達があの時ボイパを僕の隣でやらなかったら今の自分はいないかもしれないですね(笑)。

——当時はどういうところを目指してビートボックスをやっていましたか?

「Japan Beatbox Championship」っていうビートボックスの日本一を決める大会があるんですけど、そのBEST16に入ることが夢、目標だったんです。中学生向けの「JHS BEATBOX CONTEST」では2年連続で優勝することができたので、その後「Japan Beatbox Championship 2015」にチャレンジしたら、自分の目標だったベスト16に入ることができました。

 
ビートボクサーからシンガー/ラッパーへ

——そういった見事な結果を出したにも関わらず、その後シンガー/ラッパーに転向されますよね。それはどうしてだったんでしょうか?

自分でも意外なぐらいスムーズに目標、夢が叶ってしまったので、自分自身よく分からなくなったんです。どうしていいか分からなくて苦しくなってしまって。そこから何もする気が起きず、病んでた時期もありました。

そんな時、昔いじめられていた時とかどんなつらい時も音楽のメッセージが前向きな気持ちにしてくれたことに改めて気付いて。そして、自分もそういう風に音楽で誰かを救いたいと思ったんです。でも、ビートボックスは人を楽しませたり驚かせることはできるけれど、ダイレクトにメッセージを伝えることは難しいなと感じて。さらに、当時周りには地元のR&Bシンガーやラッパーがいて、そういう環境からも刺激を受けて、自分もシンガー/ラッパーとしてやっていこうと。

とはいえ、最初は音痴だったし音楽理論も全く分からなくて。何回も挫折しそうになったんですけど、「ここで諦めたら人生終わる、音楽で人を救いたいという新しい夢を諦めるのは絶対に嫌だ」と思って必死で勉強と練習をしました。そのために高校も2年生の時に退学して、働いてお金を貯めて機材も全部揃えました。僕はどうせやるなら人にお願いするよりも徹底的に自分でやりたいタイプなんで。人に頼むと最初はいいかもしれないけど、自分でやっておいた方が後々の伸び代が絶対違ってくるし、自分の満足のいく作品が作れると思って。そうやって自分のスキルが成長して環境も整った2016年のタイミングで、新たに”SHuN-BOX”というアーティストとしてスタートを切りました。

 
——かなり覚悟を決めた上での再スタートだったんですね。

そうですね。ジャンルも、ヒップホップはもちろん大好きだけど、ジャンルの別け隔てなく色んな音楽から影響を受けているんで、シンガー/ラッパーとして両方やっていこうと。あと、ビートボクサーの時は”SHuN”という名前で活動していたんですけど、それだとインパクトがないなってことで友達に相談したら、僕のインスタのアカウント”shun beatbox”からbeatをとって「SHuN-BOXはどう?」って言われて。最初は「何それ!?」ってピンとこなかったんですけど(笑)、よく考えたら覚えやすいし、「BOX」は僕のルーツであるビートボックスも意味しているから良いなと思って、それでSHuNからSHuN-BOXに名前を変えて活動しています。

——具体的にはどういったアーティストに影響を受けましたか?

ONE OK ROCKのTakaさんですね。Takaさんの歌詞や歌い方から、表現方法、考え方、ライブのMCまで、全て昔から自分に突き刺さりまくってます。自分を救ってくれた存在ですね。歌い方やファッションも含め、最も影響を受けています。なので、一番お会いしたいアーティストもTakaさんです。

 
話題の楽曲「FAKERS(feat. Ashley)」について

——そして、先日から「FAKERS(feat. Ashley)」が各所でヒットしていますが、あの曲はどういった経緯で作られたんでしょうか?

まずTikTokで誰もやっていないことをやろうと思ったんです。ああいう画角、撮り方で、ラップやR&Bなジャンルでっていうのがないなと思って、もしかしたら当たるんじゃないかなって。それで、とりあえずフックだけいくつか作ってアップして、その中からバズったやつでフルバージョンを作ろうと考えました。そのうちの一つが「FAKERS」だったんです。曲のテーマとしては、歌詞そのまんまなんですけど、その気にさせてきたくせに、「あの笑顔嘘だったの?」みたいな女の子がその時いて、それに基づいてます(苦笑)。実は5分ぐらいで作ったんですよね。それがめちゃくちゃバズったっていう。フルバージョンが聴きたいっていうリクエストもたくさん来て、それで、どうせ作るならAshleyをフィーチャリングしたらさらに間違いないなと思って作ったら今みたいになった感じです。しかも、みんなTikTokで音楽につける動画が普通とちょっと違ってて、自分の生活や日常をつなぎ合わせた動画に使ってくれるんですよね。そういったところも他にはない流れになっていると思います。

@shunbeatbox

これも配信したら聴いてくれる?😂 ##オリジナル曲 ##おすすめの曲 ##ノリノリ系 ##上部 ##ラッパー

♬ Fakers 仮 – SHuN-BOX

@shunbeatbox

🟩 LINE MUSIC ランキング『第1位』獲得しました😭これは僕の実力じゃなくて、みんなのおかげです。本当にありがとう😊 ##おすすめの曲 ##オリジナル曲 ##わんふぇいす ##僕らの青春 ##TikTok3周年

♬ FAKERS feat. Ashley(Teaser Ver.) – SHuN-BOX💛🌎

 
——今もヒットは続いていますが、この状況についてどう思われていますか?

TikTokから出てくるラッパーはフェイクだって勝手に決め付ける人もいますけど、そういう人たちこそがまさに「FAKERS」だと思いますね。僕みたいにTikTokでこういうことをこのクオリティーでやっているシンガー/ラッパーって僕が知る限りいなくて、だからこそちゃんと結果になってると思ってて。だからバズったのも別にびっくりしていないですし、思った通りっていうか。しかも、嬉しいっていうより次の夢に向かいたいっていう気持ちの方が大きくて、まだ全然満足していないです。


SHuN-BOX「FAKERS(feat. Ashley)」

「FAKERS(feat. Ashley)」収録EP『FAKERS』各配信ストア : https://linkco.re/eMnF4ayN

 
プロデューサー&映像ディレクターとしても活躍

——今は他のアーティストのプロデュースもされているそうですね。

2016年に新たにSHuN-BOXとして活動を始めた時、自分のようにレコーディングからミックス、そして映像まで全部自分自身でできる若手が金沢にいなかったんです。なので、自分の作品を見たり聴いたりした若い子から曲を録ってもらいたい、映像を撮ってもらいたいっていう声がかかることが多くて。最初はボランティアみたいな感じで手伝っていたんですけど、僕が手がけた何人かがバズるようになって。それから本格的に仕事としてプロデューサーと映像ディレクターもやりはじめました。例えば、ラッパーのAMBRも後輩なんですけど、僕が映像を手がけた彼の「Fucked up」は今YouTubeで200万回以上されています。ちなみに、今年の2月に東京に拠点を移したんですけど、それもAMBRから技術をもっと活かすためにも東京に来た方がいいって言われたことがきっかけでした。

 
——他にはどういったアーティストをプロデュースされていますか?

昔KY-7で、今は7LACK(ジェイラック)として活動しているラッパーだったり、他には$HOR1がいます。特に$HOR1は、プロデュースしているっていうより、今後一緒に頑張っていく一生のパートナーだと思っています。考え方もすごく似ているんですよね、ネガティブなことを言わないところもそうだし。彼は男として本当にかっこいいと思っています。

——$HOR1さんとは昔からの付き合いなんですか?

昔ダンスコンテストでMCをやってたら機材トラブルがあって、それをアドリブのビートボックスで乗り切ったことがあったんですけど、その時$HOR1がそれに感動してわざわざ挨拶しにきてくれたのが一番最初の出会いでした。それから特にやりとりはなかったんですけど、6年ぐらい経ったある時、AMBRのMVのクレジットで僕の名前を見て連絡してきてくれて今に至ります。$HOR1は一緒に曲作りしていても自分をすごく必要としてくれているのが分かるし、僕は僕で彼の想いに応えなきゃっていう責任もすごく感じています。僕は基本ポジティブなんですけど、さっき言ったように葛藤することも多くて苦しくて病んじゃう方なんです。「FAKERS」がバズった時も、気が付いたら全く満足いかない自分が悔しくて、つらくて一人で泣くこともあったんですけど、そんな時も$HOR1は励ましてくれて、支えてくれたんです。彼は最高の音楽仲間であり親友的存在ですね。

 
本当の夢は人の命を救うこと

——SHuN-BOXさんは音楽活動をする上で何か特に心がけていることはありますか?

僕はこだわりが強いんで、全部自分でやりたいタイプなんです。ビジネス的なドライな関係というより、同じ気持ちを持った人とイチから一緒に作り上げていきたいといつも思っています。あと、今まで支えてくれた先輩や育ててくれた人たちに絶対に恩返しするっていうのは常に忘れないようにしています。

音楽とは少し離れますけど、自分の本当の夢は人の命を救うことなんです。そのツールが僕はたまたま音楽なだけで、人のことを勇気づけられたらなんでもいいっていうか。「FAKERS」はちょっと例外かもしれないけど、人に勇気や希望を与えたり、諦めなかったらなんでも夢は叶うっていうこと、人を大切にする、人に恩を返す、あの人のために頑張るっていう愛情や気持ちが、どれほど素晴らしいことかっていうことを常にコンセプトにして歌っているので、これは今後も一生ブレないようにしたいです。

——最後に今後の活動の展望についてお聞かせください。

海外への展開も時間はかかるかもしれないけど視野に入れていて、 $HOR1と2人で、ある程度日本でやってから世界にも出ていきたいっていう話はしていますね。

あと、ライブに関しては予定はあったんですけど、コロナで全部なくなったんですよね。でも、最近また状況も変わって来ていると思うし、「FAKERS」がバズったこともあって声をかけていただくことも増えているのでライブが出来るようになったらバンバンやっていきたいです。

 

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