【プレイリストジャーニー Vol.4】Spotifyプレイリスト「New Music Wednesday」日本ならではのニューリリースプレイリスト
サブスク/ストリーミング時代の新しい音楽体験 “プレイリスト” を巡る「プレイリストジャーニー」へようこそ!
前回のVol.3では、SNSで話題の楽曲をランキングするSpotifyのプレイリスト「バイラルトップ50 – 日本」を紹介しました。毎日更新される「バイラルトップ50 – 日本」は、現在日本で流行っている曲を知ることができる、どこよりも早くトレンドの楽曲をキャッチできるプレイリストでしたね。
そして今回「プレイリストジャーニー」のVol.4は、新しくリリースされた注目の楽曲をいち早くチェックできるSpotifyプレイリスト「New Music Wednesday」を取り上げます。
それでは、「New Music Wednesday」について深堀りしていきましょう。
目次
「New Music Wednesday」概要
タイトル : New Music Wednesday
URL : https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DWYBDycFJuxRt
説明文 : 「(アーティスト名 × 3) 等 今週も話題の新曲を最速で。」
作成者 : Spotify
フォロワー数 : 100,958人 (2021年6月10日時点)
フォロワー数推移 : 3万 – 2018年8月、5万 – 2019年7月、10万 – 2021年5月
※なお、Chartmetricでは2019年7月に大幅なフォロワー増加が見られた。
曲数 : 60 – 80曲 のあいだで週により変動
カバーアート : 更新クリエイティブ / アーティストイメージ使用 / 通常のスクウェアイメージ
更新タイミング : 毎週水曜日
メインジャンル : J-POP、Japanese R&B、J-RAP、J-ROCK、J-DANCE
タイプ : ノンパーソナライズ
類似プレイリスト : 「New Music Friday Japan」
以上がSpotifyプレイリスト「New Music Wednesday」のプレイリストとしての基本仕様となっています。
実はこの「New Music Wednesday」、Spotifyが展開している各国において水曜日(Wednesday)の新譜リリースプレイリストというのは日本ならではのものとなっています(同じく新譜リリースプレイリストの「New Music Friday」では各国のものが展開。例: 「New Music Friday Japan」、「 New Music Friday Philippine」、「New Music Friday AU & NZ」等々)。
これには以前、音楽流通のメイン媒体がCD、フィジカルだった時代の日本の慣習が関係しているかと思われます。日本ではこれまで諸事情から新譜は水曜日発売と決まっていました(その他の国でも例えばイギリスとフランスは月曜日、アメリカとカナダは火曜日、ドイツとオーストラリアは金曜日など)。その後、CDからストリーミングへの移行に伴い、2015年7月から世界的に新譜発売日を金曜日とする「New Music Fridays」プロジェクトが実施され、国際レコード産業連盟加盟国や地域においては新譜のリリースは金曜日へシフトが進んでいます。
「New Music Wednesday」はデジタルの普及に伴いリリースマナーのシフトも含んだ産業移行過渡期の中、日本のこれまでの枠組みやシステムが考慮され展開されているプレイリストということになるでしょう。とはいえ最近では日本でも金曜リリースの新譜の割合も増えており、TuneCore Japanのように自分で好きなタイミングでリリースできるサービスもあるので毎日何かしらの新譜はリリースされていますが、その中でもリリースされる作品が多い曜日が水曜日あるいは金曜日という現状となっています。
また、インディペンデントアーティストの中には水曜日や金曜日だと多くの新譜リリースに自分の作品が埋もれてしまうという考えから、あえて水曜日や金曜日以外の曜日にリリースするケースもあるようです。なお、「New Music Wednesday」は水曜日にリリースされる新譜だけをピックアップしているわけではないようで、実際にTuneCore Japanを通じてリリースされた作品でも、その週の水曜日よりも前の土曜日〜火曜日にリリースされた新譜でもプレイリストにピックアップされていることを確認しています。
ちなみにリリースシェアを見てみると、2021年6月9日更新分「New Music Wednesday」においてはメジャー3社からのリリース占有率が3割、ドメスティックメジャーとインディペンデント作品が7割となっていることから、インディペンデントアーティストでも「New Music Wednesday」にピックアップされる可能性は十分にある現状となっています。
以前国内の著名アーティストもある音楽番組で、毎週火曜日から水曜日に変わるタイミングと木曜日から金曜日に変わるタイミングでそれぞれ「New Music Wednesday」と「New Music Friday Japan」を必ずチェックしていると語っていました。「New Music Wednesday」は、音楽リスナーとしての立場からも毎週注目のニューリリースをチェックするのに非常に便利なプレイリストのひとつとなっています。
「New Music Wednesday」データ
Spotifyが公開しているAPIを使用して「New Music Wednesday」のデータを見てみます。毎週更新されるプレイリストなので、あくまで今回の週のデータとなりますが、現時点の国内最新の音楽制作事情を反映したデータといえるかもしれません。(データ抽出日時 : 2021年6月10日)。
- acousticness
- danceability
- energy
- key
- loudness
- tempo
- valence
- length
※各数値に関してはSpotifyによる指標です。詳細はこちら
上記各項目におけるプレイリスト収録楽曲の数値をグラフ化したので、順番に見ていきます。
※X軸 : 各項目の値 / Y軸 : プレイリスト内の曲数
acousticness
acousticness : アコースティック感を示す。1.0に近いほどアコースティック感が高くなる。
danceability
danceability : ダンス感を示す。1.0に近いほどダンス度が高くなる。
energy
energy : 楽曲のエネルギッシュさを示す。速く、ラウドで、ノイジーな楽曲ほど1.0の値に近くなる。
key
key : 楽曲のkeyを示す。
※ 0 = C, 1 = C♯/D♭, 2 = D, 2.5 = Dhalf sharp (quarter tone sharp), 3 = D♯/E♭ [Pitch class]
loudness
loudness : 楽曲の全体的なラウドネス(デシベル[dB])
tempo
tempo : 楽曲の全体的なBPM
valence
valence : 楽曲のポジティブさを示す。1.0に近いほど幸福感があったり陽気なムードの楽曲、0.0に近いほどサッドな雰囲気
length
length : 楽曲の長さ
上記の数値データから2021年6月10日時点の「New Music Wednesday」では、ダンサブルでエネルギッシュ、BPM100以下、どちらかというとポジティブなテイスト、3分半から4分以内といった楽曲が多いデータとなりました。この手の定量データは定点的に観測した方がその時々のトレンドの比較ができるので、また時期を見て同プレイリストのAPIを叩いて各パラメーターの動向を分析できればと思います。
次回も、日本のSpotify人気プレイリストに迫っていきます。
※参考 : Chartmeric、Spotify Web API、日本レコード協会( 「New Music Fridays」とは?)
Main illustration by Hikaru Matsubara
API analysis by THE MAGAZINE