【Who’s NXT】ノウルシ | ドリームポップ、シューゲイザーをはじめ多彩で高いクオリティのサウンド、リスナーを魅了するノウルシにしか描けない音世界
ノウルシ
2013年結成、ドリームポップやシューゲイザーを基調としつつ様々なサウンドを取り入れながら、繊細な心の機微を描くロックバンド。
Vo/Gt. タジリシュウヘイ
Gt. タカハシタクヤ(4/25活動休止予定)
Ba. コバヤシワタル
Dr. ヨシダリョウタ
Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
——ノウルシのみなさんが音楽に興味を持ったきっかけをまず教えてください。
タジリ : きっかけは中学時代にMr. Children、BUMP OF CHICKENに出会ったことですね。そこからまず何も演奏できないままに歌詞のようなものを書き始め、しばらく後に祖父のクラシックギターをもらい曲を書き始めました。なので楽器の練習からではなく、割といきなり作曲からのスタートでしたね。
コバヤシ : 中学時代、顔が良い友達がギターを始めて楽器を演奏できるようになればかっこよくなれると思ったことが楽器を始めたきっかけ。あとは父親の趣味で小学生時代からUKハードロックを聴く機会があったので、昔からなんとなくバンドサウンドが好きでした。
ヨシダ : 小学校5年生の時に車の中で母親が聴いてたMr.Childrenの「youthful days」を初めて聴いたのがきっかけでした。そこから徐々にバンドに興味を持ち独学でドラムを始めました。
——ノウルシが結成された経緯というのは?
タジリ : 2013年、大学の後輩として入ってきたギターのタクヤを、出会ったその場でバンドに誘ったのがきっかけです。既に作っていた数曲のデモを送り、その日のうちに返事をもらいました。
——最新作について教えてください。
タジリ : 3月に最新曲「空中楼閣」をリリースしました。この曲は、ローファイでノスタルジックなサウンドに物憂げな歌詞、メロディを乗せた楽曲になっています。海外のインディー・ドリームポップや、最近だとlo-fi hiphopなんかにも通ずる敢えて解像度を落としたサウンドが逆に今っぽいのかなと思ってます。一方でコード感やひんやりとした空気感は90年代の日本のシティポップっぽいというか。甘い浮遊感の中に、退廃的な空気と都会的な匂いを感じてもらえたらいいなと思っています。
——ノウルシはシングル、EP、ミニアルバム等コンスタントにリリースをかさねられていますが、最新曲の他にこれまででイチオシの作品を敢えてあげるならどれになりますか?
タジリ : 昨年リリースしたミニアルバム『結晶標本』はその名の通り、一瞬を閉じ込めた結晶のように儚い作品になりました。ドリームポップやシューゲイザーを下敷きとして、エレクトロだったりマスロック、エモリバイバル、様々なアプローチを試しているので是非じっくりと味わってもらいたいなと思っています。
——ノウルシでは楽曲の制作はどのようにされていますか?
タジリ : 最近の楽曲はまず僕がオケ、メロ、歌詞もすべて作り込んだ上でメンバーに投げています。その上で最終的な音作りを練り直したり、細かいフレーズをブラッシュアップしてもらう形で進めています。以前はもっとシンプルな形で投げることもあったのですが、イメージの共有で時間がかかったりブレたりしてしまうともったいないって。それに何より僕の曲を最初に聴く人たちなので驚かせてやりたいというか、最高の曲だという確信を持って取り組んでもらいたいなっていう気持ちもありますね。リファレンスにした曲も合わせて送ったり、なるべく全員が同じ景色を共有しながら進められるようにしています。
——これからノウルシのサウンドに触れるリスナーに、ノウルシの音楽的特徴を伝えるなら?
タジリ : ドリームポップやシューゲイザーが好きな方にはもちろん、かなり曲調の振り幅が大きいバンドなので色々な人に楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってます。心のモヤモヤや不器用さを言語化したような歌詞が多いので、自分と重ね合わせたりしながらじっくり味わって聴いてもらえたら嬉しいです。でもメロディはキャッチーなので難しいことは考えず、色々な聴き方をしてもらえたら嬉しいですね。
——みなさんはどんなアーティストに影響を受けましたか?
コバヤシ :
THE NOVEMBERS
ノウルシに加入する前から加入後も、ずっと自分の中で理想のバンド像を確立しています。楽器の音作りだったりバンドアンサンブル、ルックス、どこに注目しても実験的でかっこいいですよね。同じステージで演奏できる、そんな日が来たら良いな。目標ですね。
Arctic Monkeys
積極的に海外のバンドを聴き漁っていた高校時代に出会い、ずっと大好きなバンドです。UKガレージの枠に収まりきらないサウンドがとてもかっこいいですよね。ボーカルのアレックスに注目しがちですが、ライブでのリズム隊のグルーヴ感が独特でかっこいいんです。ルーズなのにタイト、みたいな……伝わって欲しいです(笑)。あとはやっぱりステージでのルックスが良いですよね。
AURORA
ノウルシ加入後に知ったアーティストなんですが、とにかく楽曲の美しさ・儚さに惹かれてしまいます…… 北欧アンビエントを主軸としながら、楽曲によってはエレクトロだったり、カントリーなど色々なジャンルの要素を取り込んでいて面白いです。ノウルシのメンバー全員で来日公演を観に行ったこともあって、最近のノウルシの楽曲にはかなり影響が反映されていると思います。
ヨシダ :
People In The Box
高校1年生の頃に友人の勧めで聴き始め、”こんな不思議な音楽がこの世に存在するのか”と思うと同時に”この音楽を求めてた”と非常に感動しました。私がノウルシに加入する前、当時本メンバーとしてドラムが在籍しておらず偶然ドラムを募集していたノウルシ。初めてノウルシのライブを観た時にPeople In The Boxに強く影響受けてるように感じ”こんなバンドやりたい”と思わずメンバーに話しかけ意気投合し加入に至りました。大きな影響を与えてくれたバンドです。
タジリ : 他二人と被ってるバンドもあるのでそれ以外で。
Sigur Rós
どこまでも美しくスケールの大きなサウンドの虜になりました。ポストロックからアンビエント 、シューゲイザーへと跨がりクラシックへ肉薄していくような彼らの音楽は、ジャンル=Sigur Rósとでも言いましょうか。唯一無二の存在だと思います。
the cabs
変拍子と手数の多いフレーズ、その上を舞う綺麗なメロディ、そこで歌われる歌詞。すごく不器用で優しく歪な音楽だと思っています。自分の中のテーマや思想を曲に変換して落とし込む作業に煮詰まった時、パズルのようなthe cabsの音楽を聴きたくなります。
くるり
楽曲一つ一つというよりはスタンスに共感します。様々な手法を試し、ジャンルの垣根も軽々飛び越える彼らの実験精神と器用さ、その上に乗る歌心、のようなものに惹かれます。過去の名曲を大胆にオマージュするのも面白いですよね。音楽は自由であるべきだ、と思わされました。
——楽曲でいうとどのような曲に影響を受けましたか?
コバヤシ :
THE NOVEMBERS – Misstopia
イントロから鳴るブザーのようなギターの音。ギターでこういう音が出せるんだ。と音作りにのめり込むきっかけとなった曲です。
Arctic Monkeys – Crying Lightning
Arctic Monkeysにのめり込むきっかけになった曲。高校生の僕はサイドギターがコード弾きしないことに衝撃受けましたね。歌詞もかなり独特な暗さがあって面白いです。英語の授業中この歌詞を和訳してました。受験勉強には全然活かされませんでしたね。
AURORA – Churchyard
歌詞がわからなくても伝わってくる悲哀感があります。彼女は楽曲の中でのコーラスがとても気持ち良いですよね。この曲は特に。
D.A.N. – Ghana
ベースがかっこよすぎますよね。
the HIATUS – Roller Coaster Ride Memories
ピアノがとにかくかっこいいです。間奏のところ、いったいどうなってるんですか。
Dot Hacker – Order/Disorder
ジョシュの歌声はとにかく美しいですよね。イントロのギターのバッキング一発で心を撃ち抜かれてしまいました。
吉澤嘉代子 – ミューズ
吉澤嘉代子さんの曲はどれも大好きですが強いていうならこの曲かな。歌詞における言葉選びが美しいです。
Rage Against the Machine – Take the Power Back
暴力的なかっこよさがありますよね……
タジリ :
BUMP OF CHICKEN – ロストマン
能動的に音楽を聴き始めた初期も初期、音楽からこれほどの奥行きやスケールを感じられるんだ、と衝撃を受けました。
Syrup16g – 汚れたいだけ
どうしようもない気持ちを綺麗なメロディに乗せて歌い上げるスタイルが10代後半の自分の心にフィットしました。今改めて聴くと、結構シューゲイザーに近いアプローチの楽曲ですよね。
People In The Box- ヨーロッパ
不穏で冷たいアルペジオ、反復するフレーズと意外な展開、静と動のギャップ。堪らないです。
THE NOVEMBERS – 再生の朝
光に包まれるような轟音。深く歪んだサウンドがどうしてこんなに優しんだろう、と思ったのを覚えています。
きのこ帝国 – 退屈しのぎ
じわじわと焦らされた末の轟音パートが堪らないですね。ノイズの気持ち良さを知った曲でもあります。
matryoshka – Noctambulist
静謐さ、後半のエモーショナルな展開。好きですね。眠れない夜に何度聴いたか分かりません。余計眠れなくなるんですけど。
Daughter – Youth
タイトなリズム、空間的な広がり、憂いを帯びたヴォーカル。一つの理想像ですね。
Hammock – Tape Recorder
滲んだギターによってもたらされる奥行き。ここではないどこかへ連れて行ってくれるような音楽が好きだなと改めて思います。
Men I Trust – Tailwhip
大人の色気というか、踊れるんだけど少し憂いを纏っているようなこのバランスがとてもしっくり来ます。ずっと聴いていられる。
Tycho – Awake
Tychoと出会ってから音作りをレイヤーとして捉えるようになった気がしますね。足し引きの計算が絶妙です。
——音楽活動をするにあたって、なにか特に心がけていることはありますか?
タジリ : 自ら可能性を狭めないこと。ジャンル然り、曲のテーマ然り、選択するサウンド然りですが、自分たちで勝手に「こうあるべき」みたいな制約を課すことはしないように気をつけてます。やりたいことは全部やりたいし、やりたくないことはやりたくないので。
コバヤシ : 俯瞰で物事を捉える。
——また、現在の音楽シーンについてなにか感じることはあったりしますか?
コバヤシ : サブスクが主流になってから、良い音楽に手軽に出会えるようになりましたよね。
タジリ : TikTokでバズったり、SNSを上手く使ってライブしないままデビューするミュージシャンなんかも出てきてますよね。世界中の音楽をボーダーレスに聴くのが当たり前になることで、国外で先に評価される”逆輸入”のミュージシャンもますます増えるだろうなと。主要なメディアやレーベルに頼る以外の手法が増えたことには可能性を感じますね。インディペンデントなミュージシャンはどんどん増えていくんじゃないかな。あとは流行の変化はますます速くなるでしょうね。5年後の流行りが全く読めないという意味では、コンポーザーとしては難しくもあり、リスナーとしてはわくわくもしています。
——そういった中で、ノウルシのさらなる活躍を期待しています。ノウルシの今後の展望はどうなっていますか?
コバヤシ : 良いと思ってもらえる曲、たくさんリリースできるように頑張ります。色々準備していますので楽しみに待っていてください。
タジリ : 一曲単位で聴かれる時代なので、敢えて思いっきりコンセプチュアルなアルバムとか作ってみたいですね。
——では最後にメッセージをお願いします。
コバヤシ : 音源を聴いて良いなと思ったら是非ライブ会場に遊びに来て欲しいですね。音源とはまた違うノウルシの一面をお見せできると思います!待ってます!