“天使のようでいて、リアル” 令和の若者が共感し陶酔するnyamura、新たなポップカルチャーとしての魅力

コラム・特集
2023.8.14

天使のようでいて、リアル

天使ながらも、ある種の実体が込められている点も重要であろう。例えば、SoundCloudで公開している「7月、天使との邂逅とその記録」という曲に込めた想いについて、nyamuraは自身のnoteにて「悪夢から解放され、生命の繋がるいわば桃源郷に近い場所で天使との邂逅を果たした」という旨をコメントしている。その詳細をここで記すことは控えるが、彼女の作品はまるで夢想のような歌詞世界でありながらも、実体験によるリアリティに支えられている点が楽曲の強度を高めている。天使のようでいて、リアル。多くのシンパシーを誘う理由は、そういったところにもあるのだろう。

nyamura · 7月、天使との邂逅とその記録

 
今回のヒットを受けて、TikTokでは「この曲の雰囲気に似た曲を知りたい」「他にも消えそうで儚い曲を教えて」といった声が多くあがっている。そこには中村さんそや4s4ki、Lilniina、uyuni、e5、cyber milkちゃんといったシンガーの名前が躍る。「you are my curse」は、一つのコミュニティの壁を超えた。大きなウェーブは、国内ポップカルチャー/ポップミュージックにおける新たな潮目を作りだすことを予感させる。

 

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この記事の執筆者
つやちゃん
文筆家。音楽誌や文芸誌、ファッション誌などに寄稿。著書に、女性ラッパーの功績に光をあてた書籍『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(DU BOOKS)等。