チャートイン楽曲の長さのトレンド、2020年の場合
昨年、同じ時期にストリーミングでのヒット曲から見える楽曲の長さの傾向を紹介しました。昨年は、海外は3分前後の長さの曲がメインストリームになっているが、国内では4分を超える楽曲も依然人気があるという事実が分かりました。
今年は、ストリーミング解禁したアーティストもさらに増え、国内でも1億再生を超える楽曲がいくつも出てくるようになりました。それに伴いApple MusicやSpotifyなどの音楽ストリーミングサービスがより普及しました。そんな中、今年も国内における楽曲の長さのトレンドを、国外と比較しながらみてみようと思います。
(ちなみに、このコラムテーマが意図するところは昨年の記事の導入を御覧ください)
音楽ストリーミングサービスにおける2020年ヒット曲の長さの傾向
まず、音楽ストリーミングサービスでチャートインしている楽曲の長さをオーバービューします。Apple Musicのデイリートップ100(2020年11月4日15時時点 ※チャートは常に変動)にチャートインしている3分未満と4分以上の楽曲数を、USと日本、そしてグローバルで比較してみました。
Apple Music TOP100曲中、
■US
3分未満の楽曲数:41曲
4分以上の楽曲数:6曲
100曲の平均タイム – 3:05
■日本
3分未満の楽曲数:7曲
4分以上の楽曲数:52曲
100曲の平均タイム – 4:01
■グローバル
3分未満の楽曲数:36曲
4分以上の楽曲数:8曲
100曲の平均タイム – 3:12
となっており、昨年同様、日本のみ長短が入れ替わっているような状況でした。ただ、USにおいても昨年のLil Nas Xのような2分にも満たないような曲は上記の時点のチャートでは1曲も見当たらなかったので、極端な短尺傾向が進んでいる訳でもないようです。
ちなみに、上記日本チャートでの3分未満の7曲は、BLACKPINK & セレーナ・ゴメス「Ice Cream」、アリアナ・グランデ「positions」、「34+35」、ITZY「Not Shy」、NiziU「Baby I’m a star」、そしてラッパーの¥ellow Bucks「My Resort」、「Yessir (feat. Eric.B.Jr.)」でした。海外アーティスト、K-POP、K-POPプロデューサーが手がけている以外の国内アーティストでは、インディペンデントアーティストの¥ellow Bucksだけがオーガニックかつグローバルなトレンドマナーで2曲もチャートインしているというのは興味深いところです。
ストア毎の違いがあるかもしれませんので、SpotifyのTOP 50(2020年11月4日付)でも同様にUSと日本、そしてグローバルで比較してみました。
Spotify TOP50曲中、
■US
3分未満の楽曲数:23曲
4分以上の楽曲数:2曲
50曲の平均タイム – 3:03
■日本
3分未満の楽曲数:1曲
4分以上の楽曲数:31曲
50曲の平均タイム – 4:11
■グローバル
3分未満の楽曲数:17曲
4分以上の楽曲数:3曲
50曲の平均タイム – 3:13
となっており、やはり平均タイム含めApple Musicと似たような傾向の結果でした。なお、ここでの日本の3分未満の1曲はBLACKPINK & セレーナ・ゴメス「Ice Cream」でしたので、国内のアーティストで3分未満の楽曲でチャートインしている楽曲はSpotifyではありませんでした。
これらはあるタイミングを切り取った結果でしかありませんが、とはいえ昨年の傾向からも概ね世の中の動きに近似したデータであると言えるかと思います。
アルバムというフォーマットで見てみると…
また、参考までに昨年同様、国内外それぞれ今年ヒットしたアルバムでの収録曲における傾向も可視化してみます。
まずは海外から。収録の楽曲がチャートを賑わせている作品として、約2年ぶりにリリースされた6枚目となるアリアナ・グランデのアルバム『Positions』、2月に他界したPop Smokeの1stアルバム『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』、ヒット作を送り続けるビートメイカー/プロデューサー/アーティスト集団Internet Moneyの1stアルバム『B4 The Storm』をとりあげます。
これらアルバムのトータルタイムを曲数で割った平均タイムは、
アリアナ・グランデ『Positions』 ― 2:56
Pop Smoke『Shoot For The Stars, Aim For The Moon』 ― 2:58
Internet Money『B4 The Storm』 ― 2:49
となっており、いずれも3分未満となっていました。ちなみに、この3作のうち、4分以上ある楽曲は、Pop Smokeの「Snitching (feat. Future & Quavo)」だけでした。
アルバム、国内の場合
2020年の国内音楽ストリーミングマーケットでも話題となった、米津玄師『STRAY SHEEP』、LiSA『LEO-NiNE』、ヨルシカ『盗作』をとりあげてみましょう。
これらアルバムのトータルタイムを曲数で割った平均タイムは、
米津玄師『STRAY SHEEP』 – 3:57
LiSA『LEO-NiNE』 – 4:09
ヨルシカ『盗作』 – 3:18
となっており、『LEO-NiNE』、『盗作』 には5分超の楽曲も収録されていました。
上記の2つをマージすると次のようなグラフになりました。
ストリーミングヒットの曲の長さは地域差が存在する
上記はあくまでデータでしかなく、いずれの作品/楽曲もクオリティが素晴らしいからこそ、多く再生されているのは間違いないでしょう。ただ、様々な要素によって音楽ストリーミングサービスでのヒット曲の長さの傾向は地域によって異なるという事実があり、昨年に引き続き海外では3分前後の楽曲が多く、国内では4分台の楽曲も依然ヒットしているということは、音楽活動をする上で頭の片隅に入れておいてもいいかもしれませんね。