虎韻インタビュー「自分の武器で戦う」—“おバズり申し上げます” バイラルヒット続く広島発Z世代ラッパー
「おバズり申し上げます」という冒頭のフックが印象的な、現在TikTokでバイラルヒット中の楽曲「2022」はご存じだろうか。この楽曲を手掛けたのは虎韻(コイン)というラッパーで、実は彼、2年前にも「南の島」という楽曲でバイラルヒットを成し遂げている。謎に包まれた彼のルーツや、ヒットを出した経緯、音楽観や今後の展望などをインタビューした。
取材・文:カービィ少佐
ラップバトルから始まった
——今おいくつですか?
虎韻 : 2000年生まれの22歳です。
——Z世代ど真ん中ですね。広島出身なんですか?
虎韻 : 広島出身で、今も住んでます。広島で曲作りも始めました。
——アーティスト名の由来を教えてください。
虎韻 : 本名が泰雅(たいが)なんですが、タイガーの虎で、虎が韻を踏むということで虎韻です。
——最初、音楽に興味を持ったきっかけは何でしょうか?
虎韻 : ラップバトルですね。あとは、BIGBANGとか2NE1とかのK-POPが好きでした。
——曲作りを始めたきっかけは?
虎韻 : 高校を卒業するあたりからラップバトルをみんなでやるようになって、そっからラップバトルじゃ収まらなくなって曲作りを始めたんです。
——ストリートでサイファーをしてたんですか?それともバトルの大会とかイベントに出てたんですか?
虎韻 : イベントには出てないんですけど、学校の大会みたいなのがあって。その頃フリースタイルダンジョンが流行ってて、みんなフリースタイルやってました。
——確かにその頃5年、6年前ぐらいですか。フリースタイルダンジョンが全盛期っていうか、盛り上がり始めたぐらいですよね。
虎韻 : そうっすね。あの番組の影響はすごかったですね。それでフリースタイルを始めて、曲も作り始めた感じです。
TikTokで2度のバイラルヒット
——虎韻さんを知ったきっかけが2年前の「南の島」という楽曲でして。あの楽曲がどういう経緯でバズったのか教えてほしいです。
虎韻 : 「南の島」のときは、出来た瞬間にとりあえず、「これはバズるな」っていう根拠のない自信があって、自分でダンスを振りつけて踊ってみて、TikTokに投稿したらそれが流行ったんですよ。
https://linkco.re/rhg24Q66
——振り付けも自作だったんですね。
虎韻 : その時まだ、日本のTikTok自体も音楽でダンスするっていうのは、今ほど主流じゃなかったと思うんですけど。それからどんどん増えましたね。
——作曲も振り付けも楽曲も全部自分でっていうのが衝撃です。
虎韻 : いやでもラップだけなんですよ。ビートは購入したものを使ってます。
——個人で活動されてる方は買う事が多いですよね。「南の島」はリリースしてすぐ流行ったんでしょうか?
虎韻 : いや、最初はTikTok内の動画が10件ぐらいで、あんまりかなと思ったらどんどん増えていった感じです。すぐには伸びなかったです。
——最初、楽曲を使ってくれてた人たちって友達とか関係者ではなく、TikTok上で見つけてくれたんですか?
虎韻 : そうです。
@naenano 1週間お疲れ様です🛸🤍
——その広がり方がTikTokならではですね。「2022」が現在ヒット中ですが、曲の冒頭で「おバズり申し上げます」と予言されてますよね。
虎韻 : 恥ずかしいですね(笑)。いやでも、遊びながら作った曲なんで、まさか本当にバズるとは思ってなかったです。今似たようなラッパーとか、ライトなノリのラッパーって結構いるじゃないすか。自分は皆と同じようにラップするよりかはちょっと外れた方がおもろいかなと思って、最近は取り組んでます。
——確かにラップが日本でも最近流行ってる分、アーティスト人口も増えてラップゲームが激化してる中で、差別化は難しいですよね。「2022」はパッと聞いて、なんだこれはと引き込まれます。
虎韻 : 気持ち悪いっすよね(笑)。
自分の武器で戦う
——いやいや、キャッチーですよ。念仏みたいなフローが特徴的じゃないですか。でも「南の島」とかはメロウな感じだったり、他の楽曲で置きにいってる感じのフローもあったり、フローのバリエーションが多いなと思ったのですが、何か意識してやってる事はありますか?
虎韻 : 実は「南の島」がバズってから、他の楽曲で伸び悩んでて。「2022」も最初普通の歌い方だったんですけど、僕のレコーディングしてくれる人が何かもうちょっと変な感じで歌ってみたらってなって、ちょっと大げさに歌ってみたら良かったんでああなりました。遊びながら考えてる感じです。
——その方は誰ですか?
虎韻 : McCookという方です。本当すごいっすよ、「南の島」も彼がレコーディングしてくれて、化けさしてくれたし、いつも相談役になってくれてます。家の1階をレコーディングスタジオにしてて、他のラッパーもそこでレコーディングしてます。以前MU-TONさんとかBESさんもそこでレコーディングした事あるみたいです。
——その方のアドバイス通りにやったら2回もバズったのはすごいですね。ラップで意識してることや大事にしてることはありますか?
虎韻 : インパクトを与えたいっすね。15秒とかじゃないですか大体。SEKAI NO OWARIさんが最近出した曲「Habit」もインパクトあるし。やっぱそういう曲がTikTokで入るんかなと思いますね。僕めちゃくちゃ有名になりたいんで、そういう曲を出して行こうと思ってます。
あとは、やっぱり中毒性があるかないかを意識してますね。他の人にも聴いてもらって確認もするけど、ほとんどは自分で聴いて、自分を信じてます。ラップ自体上手いラッパーってたくさんいるので、自分はその中に入れないと思うんすよ。だったら自分の武器で戦った方がいいかなと思ってます。
——その見極めが鋭いですね。今ようやく他のアーティストもTikTokに参入してきた中で、先駆けてTikTokの市場を獲得したのは大きいと思います。
虎韻 : そうですね、フォロワーが1,800人ぐらいでも、公式マークがついたんでびっくりしました。2回バズってるからかもしれないです。
——続けてバズるのは難しいのにすごいです。体感ですが、「南の島」より「2022」の方がバズってる感じがしてます。
虎韻 : 「南の島」の時は、今に比べてそこまでTikTokで踊るユーザーが少なかったんですよ。だからだと思います。
——「2022」の振り付けは有名TikTokerのローカルカンピオーネさんがやられてますが、元々彼らと繋がりあったんですか?
虎韻 : いや、ないですね。確か「南の島」の時も踊ってくれてたかもしれない。でも、やりとりとか連絡は一切してないけど使ってくれた感じですね。
@localcampione みんな、これ踊っておバズり申し上げようか。こちらからは以上です。あードンチャカドンチャカ♪ @k.o.i.n2020 #おバズりチャレンジ #虎韻 #2022 #ローカルカンピオーネ ♬ 2022 – KOIN
——TikTokerの影響もありますが、虎韻さんも自身のTikTokで色々ポストしてて、そのコメントに細かく返信してるのがすごい。結構な数ありますよね。
虎韻 : あれは、返したコメントで1,000いいねとか来るじゃないですか。てことは、1,000人見てるからみんなに返した方がいいかなと思って。そういう下心がちょっとあるんですけどね。
——確かに、TikTokでちょっと気になる投稿があったらコメントを絶対開きますもんね。プライベートでもTikTokは見たりするんですか?
虎韻 : もうTikTokはもう絶対毎日見てますね。
——どういう系見るんですか?
虎韻 : 面白い系ですね。あとはもう、お尻が大好きなんでトゥワークしてるやつとか。
——虎韻さんの「CAR」のMVでも、ギャルがトゥワークしてるシーンありますよね。あの方々は広島のギャルなんですか?
虎韻 : 広島のL2っていうクラブがあるんですけど、そのダンサーですね。
——L2は広島の中でも有名なクラブなんでしょうか?
虎韻 : L2はヒップホップメインのクラブです。自分も1回呼ばれて、2回目は今打ち合わせ中です。
——広島で仲良いアーティストはいますか?
虎韻 : いないんですよそれが。
——広島でかっこいいと思うアーティストは誰ですか?
虎韻 : 広島だとLinobuさんですかね。
面白い系で有名になりたい
——憧れのアーティストは誰ですか?
虎韻 : 全員憧れですけど、最近は韓国のPSYさんが大好きですね。そっち方向に行きたいんですよ。もう何でもしたいっす。
——ザ・エンターテイナーですね。「江南スタイル」からまたヒットしてて、マーケティングというかSNSの使い方めちゃくちゃ上手いですよね。
虎韻 : 本当にうまいっすよ。すごいっすねあれは。
——あと、リリックでJP THE WAVYさんが出てきますがファンなんですか?
虎韻 : 大好きですね。曲がバズったら、あっちからもなんか来ないかなと思って入れたんですよ(笑)。でも今は行きたい方向が変わったんで、ファンだけど目標ではないです。
——他に普段よく聴いてるアーティストはいますか?
虎韻 : LEXさんとか、LEXさんの妹のLANAさんとか。海外だとMacklemoreやLil Yachtyとか、明るい感じが好きですね。
——今後繋がりたい方はいますか?
虎韻 : 日本だともう、PSYさんの方向に行きたいんで、あんまりいないですね。まずは有名になりたいというか。ヒップホップを極めるというよりも、色んな人に愛されるアーティストを目指したいです。日本のラッパーってかっこいい系が多いじゃないですか。面白いジャンルも欲しいっすよね。MVとかも面白くしたくて。MVも全部自分で撮影・編集もしてるから、素人っぽくなってるんですけど…… 今は「2022」のMVをどうしようかめちゃくちゃ悩んでる最中です。
——面白い系になりたいというのは、芸人の漫才やコントが好きとかそういうのが好きだったりするんですか。
虎韻 : そうです。高校生の時漫才の動画をTwitterとかで出したりとかしてたんで、むしろそっちの方が先でしたね。
——お笑い芸人だと誰が好きですか?
虎韻 : 芸人だとチョコレートプラネットとかラバーガールとか。
——シュールな笑いが好きなんですね。それこそチョコプラさんはMr.Parka jrでラップ曲出してますよね。
虎韻 : ちょうどさっきその曲聴いてました(笑)。
——これから挑戦したいことはありますか?
虎韻 : ダンスですね。結構がっつり振り付けがあるのをやってみたいです。日本のヒップホップって、今めちゃくちゃ流行ってるけど、再生回数が億行くとかないじゃないですか。最初に行きたいっすよね。
——確かにPSYさんみたいなバズり方ってあのダンスがあってという感じですもんね。それも自身で考えられるんですか?
虎韻 : いや、今年からはダンサーを雇ってやろうかなって考えてます。
——今後のイベント出演やコラボの予定とかはありますか?
虎韻 : そうですね、地元で今週の28日もあるし、結構声かけてもらってます。フィーチャリングの誘いとかもありますけど、TikTokが多いですね。今までアプローチとかかけてこなかったんで、やり始めようと思ってます。
——最後に、読者に向けてコメントお願いします。
虎韻 : 5月28日に、面白い系じゃないんですけど、新曲が出るのでチェックしてください。あと、面白い系は僕が全部かっさらっていくのでよろしくお願いします。
——ありがとうございました!