TYOGhOST(yurei)インタビュー ラップもこなすマルチリンガル・アーティスト 、ユニークなバックグラウンドとTYOについて

2018.7.26


TYOGhOST(yurei) | ラップもこなすマルチリンガル・アーティスト 、ユニークなバックグラウンドとTYOについて
TYOGhOST(yurei)

先日リリースされたKID NATHAN(TYOSiN)とのEP『JIGEN』がそのクオリティの高さから各方面で評判を呼び、「ニートtokyo」への登場でも意外な素顔が話題になっているTYOGhOST(yurei)。プロデュースからラップまでこなす音楽的な幅の広さや、ジャンルレスなバックグラウンドはまさに鬼才と呼ぶにふさわしいポテンシャルを持ったアーティスト。今後グローバルな活躍も期待できるTYOGhOST(yurei)さんに、これまであまり語られていなかった彼が所属する「TYO」のエピソードも含め、話をききました。

 

ラップは7ヶ月前にはじめた

——先日新しいEP『JIGEN』をKID NATHAN(TYOSiN)とリリースされましたが、リリース後の反応はいかがでしたか?

良いリアクションがたくさんありましたね。今まで僕を知らなかった人も聴いてくれたし、新しいファンが増えたと思います。

——あの作品のプロデュースは全てyureiさんが手がけられたんですか?

ビートメイクも含めて全部自分がプロデュースしています。去年の年末ぐらいにKID NATHANとスタジオに入ってるときに、「一緒に何かやろうよ」みたいなノリになって、『JIGEN』自体は今年の2月ぐらいから作りはじめました。

——ミックスやマスタリングは?

ミックスは僕自身でやってて、客観的な視点もほしいのでマスタリングはアメリカにいる友人にやってもらっています。

——ご自身でラップもされていますよね。

それは前からやりたかったので、今さらとは思いつつチャレンジしました。

——リリックも書くんですよね?

うん、自分のヴァースは自分で書きます。

——ラップは昔からやってるんですか?

ラップは今年のはじめぐらいから本格的にやりはじめたんで、実はまだ7ヶ月ぐらいしかたってない(笑)。KID NATHANとTOKYOTRILLとの「Idols & Enemies」っていう曲がラップで参加した最初の作品になります。

 

トラップからDjentまで、幅広いバックグラウンド

——音楽活動自体はいつごろから?

小さいときから親に楽器を教えられてて、ギターとピアノ、サックスが演奏できます。11歳ぐらいからバンドをやってました。

——バンドで音楽キャリアをスタートさせたんですね。たしかに楽曲からは、HIPHOPだけじゃないニュアンスを感じました。

曲の展開だったりはロックとかの影響もあるかもしれないですね。あと、父親がHIPHOPとジャズがすごく好きで、「これを聴きな」って最初にもらったヴァイナルがWu Tang Clanの『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』とMiles Davis『Bitches Brew』で。だから、そういうところが僕のルーツになるかな。

——yureiさんの楽曲はダークというか叙情的ですよね。

最近のトラップやサウンドクラウド・ラップもずっと聴いてて、例えばXavier WulfやNight Lovell、$uicideboy$とか。TeamSeshのBONESとかは実際仲が良かったりするし、そういうところからも影響は受けてると思います。

トラップという1つのジャンルに限っているつもりはないんだけど、トラップが好きな理由としては、表現が自由だからですね。カッコよければ何でもありというか。だからエクスペリメンタルなサウンドも多く入れてるし、『JIGEN』にはサックスも入ってます。

——ほぼ全ての曲に入ってる「yurei♪」っていうインサートもすごく個性的ですよね。

あれ実は元カノの声なんですよ(笑)。変えようと思ったこともあるんだけど、結構イメージが定着してるから結局そのまま使ってます。

——バンドだと、どの辺のアーティストが好きなんですか?

ジュニアハイスクールぐらいまではLINKIN PARKとかSUM 41、BLINK 182、The All-American Rejectsとかかな。そこから、Escape the Fateとかエモいのも好きになって、ハイスクールの頃はプログレッシブ・メタルとかDjentを聴いてました。例えば、PeripheryやAnimals As Readersがめっちゃ好きで。

——Tosin Abasiですね。

彼はマジで天才だよね!だから、アリゾナの大学に行ってる時はそういうバンドもやりたかったけど、アリゾナにはあまりシーンがなくて。それから、そういう音楽にも触れながら、日本に来て色々な縁があって今のシーンにいるっていう感じです。

——シフトの仕方としてはSkrillex的な感じですかね。

彼はFrom First to Lastでボーカルをやってて、その後ダブステップとかEDMのプロデューサーへ転身したよね。僕とは少し音楽性が違うけど流れ的には似てるかもしれないね。

——リスペクトするアーティストはいますか?

たくさんいますよ!例えばサウンドクラウド・ラップを好きになるきっかけになったxavier wulfはラッパーとして尊敬してますし、トラックメーカーとしては、2011年とか早い段階にクラウド系のビートをやりはじめたところも含めてClams Casinoはやっぱりすごい。楽曲の雰囲気はMasego。ギタープレイヤーとしてはPeripheryのMark HolcombやAnimal as leadersのTosin Abasi、あとはやっぱりCharlie Parkerですね。

——ほんとに幅広いですね。音楽はどこかで学んだんですか?

親から教えてもらったぐらいで、あとは独学です。

——日本語がすごく上手ですけど、出身は海外なんですよね?

生まれはオークランドで、育ちはサンフランシスコのバリバリのアメリカ人ですよ(笑)。

——日本に来られたのはいつ?

2年半前ぐらいです。留学がきっかけで。

——聞くところによるとその他の言語も話せるとか。

英語、日本語、イタリア語、あとはスペイン語が話せます。

 

「TYO」とは?

——「TYO」についてもお伺いしたいのですが、そもそもどういう集まりなんですか。

まず僕とKID NATHANの出会いから説明すると、彼はCurse Boyzっていうクルーに所属していて、僕は東京に住む前は福岡に住んでたんだけど、福岡にいるCurse Boyzのメンバーを友達に紹介してもらったんです。それでKID NATHANとも知り合いになって。その後、池袋BEDのイベントに一緒に行ったときに、楽屋でメンバーにビートを聴いてもらったら「いいじゃん!」って盛り上がってたんです。それから、スタジオに入ることになって、さっき言った「Idols & Enemies」を録りました。

今年の1月に転職もあって東京に引っ越してきたんだけど、KID NATHANとは家も近くて、JinmenusagiとかACE COOLも紹介してもらったり、そういう風にしてつながっていきました。その時期にラップをやりはじめたんだけど、個人的にyureiの名義でラップをするのはちょっと違うかなと思ってたら、KID NATHANがちょうどその時新しい事をやりたくて、それと共に名前をTYOSiNに変えて。それでJinmenusagiと僕もそれがすごくいいと思って、彼とともに名前を変えました。それが「TYO」のはじまりです。

一応わかりやすく例えると、ASAP Mobみたいなノリですかね。「TYO」のコンセプトには、“日本だけじゃなく、世界に向けて音楽を発信する”というのがあるんで、みんなその思いをしっかり持って「TYO」というクルーとして活動してます。

——よく集まる場所とかあるんですか?

僕の家にホームスタジオがあるんで、そこにみんな集まって曲を録ったりしてます。

——「TYO GANG」という表記も見かけたことがあるんですが。

最初はそうだったんだけど、やっぱり僕らギャングではないから(笑)、今は単に「TYO」ってことになってます。

——最近TYOS3Lでもある韓国のラッパー、EDPDのSKOLORが最後に少し登場する「Danny Phantom」のMVが公開されていましたけど、あれは韓国で撮影されたんですか?シーンなどからそういうロケーションなのかなと思ったのですが。

その通りです。普通に韓国に遊びに行ってるときに、向こうでMVを手がけている人を紹介してもらう機会があって、じゃあMV撮ろうかってことで。「Danny Phantom」と、あとFuturistic Swaverの「YABAI (ヤバイ)」(ft. TYOSiN, TYOS3L) もその時撮影しました。

 

人の気持ちに寄り添うような音楽表現を

——yureiとTYOGhOSTで、表現の違いはありますか?

さっきも少し触れたけど、yureiはインストゥルメンタル系の音楽を作っている時の名義で、ラップや歌はTYOGhOST名義で区別していて、それぞれ楽曲の雰囲気も変えるよう意識しています。例えば、yureiは音に対して繊細で、バラエティ豊かという感じ。一方、TYOGhOSTではラップにぶつからないように音数を少なくしたり、ノリにこだわっています。

——今後の活動の比重は?

肩書に縛られるのがあまり好きじゃないので、一人の音楽家/アーティストとして自分のクリエイティビティを幅広く発表していきたいですね。楽器のプレイヤー、ビートメイカー、プロデューサー、ラッパーそれぞれ全て含めて。

——まったく違うジャンルの曲を発表していく可能性もある?

ぜんぜんありますね!ひとつのジャンルにフォーカスするより、むしろ色んなジャンルを横断しながらアーティストとしての「雰囲気」や「カラー」を提示していきたい。

——yureiさんが音楽活動を通じて伝えたいことはどんなことですか?

リリックは身のまわりに起きたことからインスピレーションを受けて書いています。サウンドに関しては、とにかく今までなかったようなものを世の中に出していきたいです。あとは、曲を聞いてくれた人が、辛い時に癒やされたり、昂ぶる気持ちとシンクロしたり、ストレスが発散できたり、そういった気持ちに寄り添うような音楽表現ができればと思っています。

——日本の音楽シーンについてはどう思いますか?

日本のヒップホップに関してはまだディグれていないんで、ちょっと分からない部分もあるんですけど、日本のポスト・ロックはイケてるよね、MONOやtoeとか。あと、ジャズっぽいのだとmouse on the keysもだし、そういったバンドは海外のバンドにも影響を与えていて、すごくかっこいいと思うよ。

——今後も日本で活動していくんでしょうか?

できれば引き続き日本に住んで活動したいと思ってます。TYOGhOSTとしてソロアルバムを今年中にリリースする予定なんですけど、日本だけじゃなく海外のイケてるアーティストをフィーチャーしたものになると思うんで、日本に住みながら世界へ発信していければと。KID NATHANと海外でライブもする予定です。

——海外のリスナーに日本のアーティストを知ってもらうきっかけにもなりそうですね。また、『JIGEN』のリリースパーティーもあるとか。

今週末7月27日(金)に池袋BEDでやるんで、楽曲を聴いて気に入った人はぜひ遊びに来てほしいです。今回インタビュー読んでくれたみなさん、本当にありがとうございます!


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