TOTALFAT インタビュー「俺らは自分たちが思ってたよりも強いバンドだった」 “独立&DIY”を選択した3人の新たな決意と覚悟

インタビュー
2023.9.16
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TOTALFAT (L to R / Bunta, Jose, Shun)
TOTALFAT (L to R / Bunta, Jose, Shun) 

2022年9月に所属事務所・レーベルからの独立を発表したTOTALFAT。以来、マネジメントやブッキング、グッズ制作から資金繰りに至るまでDIYな活動を展開し、今年活動24年目(バンドは2000年に結成)を迎えながらもなおフレッシュなチャレンジを続けている。9月16日にリリースされるEP『A YEAR OF STRENGTH』は、そのタイトルの通り、この一年のタフな活動で溜め込んだパワーを一気に放つような快作に。全3曲を聴き終える頃には、ライブハウスの汗ばんだ熱気が恋しくてたまらなくなるはずだ。今回THE MAGAZINEでは、EPリリースを目前に控えたメンバーにインタビューを敢行。メンバーの「三権分立」がカギだというバンド運営から、EPへの手応え、そしてワンマンツアーとその先に待つ未来のビジョンまで、思う存分語り尽くしてもらった。

取材・文 : サイトウマサヒロ
企画 : Jiro Honda
 
 

独立して気付いたTOTAFATの強さ

——改めて、所属事務所・レーベルからの独立を決めたきっかけについて教えてください。

Shun(Vo/Ba):自分たちだけでバンドをやっていくのが一番良いんじゃないかという思いは、頭の片隅にずっとあったんですよね。Kuboty(Gt/2019年10月に脱退)がいた頃から、そういう話をしたことはあったし。一方で、事務所とレーベルがあるおかげで、毎年アルバムやそれに近いボリュームの作品をリリースして、ツアーを回って、フェスに出て……っていう安定したサイクルの中で活動できてたから、大きな変化を求めるきっかけがなかった。その流れの中で、Kubotyの脱退が決まって。で、また改めて3人で攻撃再開だ! って時に、コロナが流行って、ツアーもほぼキャンセル、20周年記念で準備してたイベントも発表すらできずバラしになっちゃって。家にいるだけなのに事務所から給料が振り込まれる状況に、違和感を覚えるようになりました。

Jose(Vo/Gt):ありがたさと同時に、申し訳なさや、モヤモヤする気持ちが。それで生活させてもらえてるっていうのも事実だし、このなんて言ったらいいかわからない状態はなんなんだろうって、よく3人で話してたよね。

Shun:自分たちがバンドに向けてる熱量と、現実の状況が上手く結び付かなくなったというか。このまま給料泥棒みたいな感じでいいのかと思って。「コロナが明けたら独立します」じゃ都合が良すぎるし、この先もずっとTOTALFATを続けていく上で、いつかは自分たちだけになるというのは現実的に見えていたから、だったら今じゃないかということで、会社や社長に話をしました。

——マネジメントやブッキング、グッズ制作などをDIYでこなしていて、自分たちでも知らなかったTOTALFATの姿が見えることもあったのではないでしょうか。

Shun:自分が思ってた以上にバンドに力があったことに驚いたかな。実際、収支はもっと厳しいだろうと思ってなかった?

Jose:うん。だって俺、独立したタイミングでUber Eatsの配達員に登録したもん。自分の生活費ぐらいは少しでも稼がないとと思って。でも結局一度も配達せず、今はバッグが埃だらけになってる。

Shun:周りからも「覚悟しといた方がいいよ」「大変だよ」って言われて、ビビリながら動き始めたけど、カットできるところもたくさんあるのに気づいたし、数字とちゃんと向かい合って、改めて自分たちの強みがわかった。むしろ数字と向かい合うことでクリエイティブになれるっていう初めての感覚もあって。この一年で気付かされたのは、TOTALFATは自分たちが思ってたより強いバンドだったってことですね。

TOTALFAT

——数字と向かい合うことで発揮されたクリエイティブとは、具体的にどういったことでしょう?

Shun:一番はグッズですね。自分たちが作りたいものと、ファンが欲しいもの。その間のちょうど良いポイントを、データとにらめっこしながら考える。最初に作ったのが、「このTシャツを売って車を買おうぜ!」ってことで、中古のバンがデザインされたTシャツなんですけど、実際にその売り上げで車代はペイできました。そういう形で、ファンのみんなと一緒にバンドを動かしていくんだぜっていうストーリーを伝えていったりとか。今は軽いフットワークで動けるから、誰の許可も取らずにインスタライブして、それをファンに発信することができますからね。

——なるほど。音楽以外の仕事も楽しめているんですね。

Jose:事務作業とかも含めて、楽しくやれていますね。

Shun:3人の得意分野がハッキリしてて。俺はデザインの企画、業者とのやり取り、通販のシステムとか。Joseは資料作りとお金の管理。Buntaは現場に行って外交官みたいな。その三権分立が上手いバランスで成り立ってる。CATCH ALL RECORDS(TOTALFATがかつて所属していたインディーズレーベル)の立ち上げメンバーとして働いてた経験もあったので、スムーズに動き出せたし。サブスクってどうやるんだ!? とか、浦島太郎状態ではあったけど(笑)。

——インスタライブで意見を聞いたり、物販に立つことも増えたりと、ファンの方との距離感も独立を機に変わりましたよね。

Shun:インスタライブは、俺らにとっての株主総会なんです。

Jose:コメントの意見をそのまま採用したりするもんね。

Shun:バンドの決定権が合計4票あって、メンバー3人が1票ずつ。で、もう1票はファンのみんなが持ってるよっていう。今回のEPも、CDでリリースしてほしいかどうかを投げかけたら、「車で聴きたいのでCDで!」「やっぱり手元に置きたいです!」とかコメントが来たから、じゃあCD作ろう、みたいな感じで。そうやって、ファンの声が直接反映されていくバンドのままデカくなっていけたら、めっちゃ面白い。

 
——メンバー同士の関係は変化しましたか?

Shun:距離自体は変わらないけど、運命共同体感は増しましたね。3本の足がしっかり支えあってないとバランスよく立ってられない状態なんで、それぞれ責任感がちゃんとあるしリスペクトし合える。今のところ、まだ大きなトラブルは起きてないよね?

Jose:俺が車の窓を割ったくらいじゃない?

Shun:ああ(笑)。納車して最初のライブの日に、Joseが車をバックさせたらリアガラスが全部なくなりました。

Jose:その日のライブは目が死んでたと思います。

——「窓を直そう」のTシャツも売らないといけないですね(笑)。

Shun:いや、元々窓が割れてるボロボロのバンがプリントされたTシャツだったので。呪いだよこれ、つって(笑)。

TOTALFAT

 

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