SPRAYBOXインタビュー 日本と世界をつなぐベースミュージックのゲートウェイ 注目レーベルのこれまでとこれから
『planet rave』への回答としてのコンセプト作『THE RAVING SIMULATOR』
——いま話題にも上がった『THE RAVING SIMULATOR』について、詳しくお伺いさせてください。同作は「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」をテーマにした全曲書き下ろしボーカルトラックのコンセプトアルバムで、これまでのSPRAYBOXのリリースとは一線を画していますよね。このような作品を制作することになったきっかけは?
Genick : 企画したのは私なんですけど、出発点にはSpotifyの『planet rave』というプレイリストを意識した作品を作れたらという思いがありました。『planet rave』は、歌ものを中心に最先端のY2K的なポップ・ダンスミュージックを取り上げつつ、UKガラージやテクノなどのトラディショナルなサウンドもしっかり含まれてるので。我々の強みとするUKガラージやベースラインのみならず、ジャングルやトランスも盛り込んで、全曲ボーカルを起用するという形を実現させました。SPRAYBOXがダンスミュージックを発信していく上で、新しいトレンドを取り込んでいけるような一作になればいいなと。
——PinkPantheressら最新メインストリームへの目配せや、国内でのリスナー層を広げる効果も意識しつつ。
Genick : そうですね。プロモーションもだいぶ日本向けに展開して。今作は、国内のライトなリスナーを引き込むことも意図してリリースしています。
Oblongar : 加えて、今回ShardaなどUKのプロデューサーが参加し日本語楽曲のトラックを手がけることで、UK本国やヨーロッパ各国のリスナーやDJから面白がってもらえるんじゃないか、フックになるんじゃないかという期待もありました。
Genick : 来年1月にSPRAYBOXとしてUKでのDJ出演(1月26日の『Off Me Nut 14th Birthday』)もありますけど、そこで現地の曲だけを使うんじゃ我々の価値ってないよなと思って。日本でUKの曲をプレイするのは重要だけど、向こうでDJをする時に大切になってくるのは僕たちのトラック、日本人のトラックだなと思います。
——リリースから数週間ほど経ちましたが、手応えはいかがでしょう。
Genick : 現時点ではまだ『planet rave』に入ってないのでそこはこれからっていうところではありますけど、国内では多くのプレイリストに乗っかったので、狙い通りの反応を得られた印象です。特にストリーミングで伸ばすのは目標としていたので。
——コンセプトやビジュアルにもこだわりを感じますが、この辺りのディレクションもメンバーが?
Oblongar : ファウンダーの中では僕が現在アート担当なんですけど、カバー・アートワークにJACKSON kaki氏を起用したいという要望はGenickからでした。モチーフをDJ機材にしたら良いんじゃないかというのはJACKSON kaki氏からの提案で。こういうイメージで、ってお願いしたものを求めるままの形で作っていただいたって感じで、テンション上がるアートワークになりましたね。