Glansインタビュー 1stアルバム『slow tree』で注目の札幌発5人組が反復と解放の中で追い求めるエクスタシー
DJプレイ的発想で構築された『slow tree』
——ここからは5月8日にリリースされた初のアルバム『slow tree』について伺いたいと思います。まずは率直に、現時点での感触はいかがですか?
江河:聴いてくれてる人はすごい多くて。会う人も「めっちゃ良いね」って言ってくれるんで、すごい嬉しいです。
高田:でも、もっとできるなって思う。収録されてる曲をやりすぎて、俺らもワケわかんなくなってたところはあったね。これカッコいいのか?みたいな気持ちとの戦いになってた。
ヒデト:僕はこのアルバムの制作に加わってないので、次のアルバムを早く作りたいですね。
——5つのトラックに区切られてはいるものの、繋がっている1曲とも言える作品です。このような全体の構造は制作の早い段階から考えていたんですか?
江河:とりあえず全曲絶対に繋げたい。繋がってるものを作りたいっていうのが第一目標でした。曲自体は、アルバムを意識せずにその時カッコいいものを作って、それを全部繋げようっていう。
——持ち曲を一つに連ねてにプレイしていくという発想は、やはりDJアクト的ですよね。
江河:そうですね。ヌルっと始まりから終わりまで続いていくのがDJを聴いてて良いと思うところでもあるので。カッコいい曲が出来たら、その前後を作り足して、アルバムの尺に合わせていきました。
——制作にあたって、「全曲繋げる」以外のテーマやコンセプトはありましたか?
江河:“神聖感”、“神殿系”。「Deep A」って曲が出来て、それがめちゃめちゃ良かったからそのイメージから広がって。
ヒデト:嵐がビュンビュンで。
江河:どんどん上がっていく神殿。神殿系のストーリー性。
——それぞれの楽曲はどのような過程を経て制作されるのでしょうか?即興なのか、それともスタジオ外で組み立てているのか。
江河:今回のアルバムの曲は、原型はすべてセッションで作ってます。
木下怜(Ba):「hi de to」みたいな曲は、セッションじゃないとああはならないよね(笑)。
ヒデト:基本的には常にセッションしてるんで、抜き出せるところがあったらラッキーみたいな感じですね。降ってきたものがあればそれに合わせていくだけだし。DTMはアイデアを整理するのに使うってくらいです。
——今作やGlansのライブに対してのリスナーの反応を見てみると、「時間の使い方」や「時空が歪むような感覚」について言及している方が多い印象です。1曲目の「Oceans11」からいきなり7分半のドローン~アンビエントで幕を開け、約2分のハードコアアンセム「hi de to」で締めくくられることにも象徴的ですが、そういった尺の使い方はアルバム全体の構想を考える中でどのように意識していたのでしょうか。
江河:波をイメージしながら作っていて。最初はゆっくり、低いところから始まって、上り下りを繰り返して、一番のピークを「hi de to」に持っていく。
高田:音を止めずにライブで演奏する前提だったから、30分~40分の時間のどこにピークを持ってくるか、ピークで最高潮までアガらせるにはどうしたらいいかを考えてたよね。
——おっしゃる通り、約40分のランニングタイムも相まって、一組のライブアクトを見てるような感覚にさせられる作品でもあります。演奏にもスリリングな空気感が漂っていますが、レコーディングはどのように行いましたか?
江河:SOUND CRUE(札幌のライブハウス)で録りました。
高田:「hi de to」だけはバンド一発録りで、他の曲はパートごとに。
江河:ミドさんがサウンドサポートとして付き合ってくれて、音作りの相談、「こう聴かせたいんだけどどうすればいい?」っていう相談にめっちゃ乗ってくれて。それで音のクオリティもガラっと変わりました。
高田:あと、ミドさんがふざけてくれてなかったら絶対レコーディング終わってなかったと思う。俺らだけじゃ空気が凍っちゃうから(笑)。
ヒデト:バイブスの嵐だからね。
——江河さんのボーカルについては、その内容に意味やメッセージがあるのかどうかが気になります。
江河:特に何も考えてなくて、ボーカルを乗せた時にふらっと出てくるナチュラルな発音、音に合う言葉、口に出して時に気持ちいい音を歌ってる感じです。
——アートワークはKotetsuさんが手がけてらっしゃいますが、どんな方なんですか?
ヒデト:札幌にSalonタレ目っていうDJイベントができるバーがあって、その周年イベントのフライヤーを描いてたのがKotetsuでした。
江河:こいつ誰なんだ? 同い年でヤバいヤツいるぞって。
ヒデト:アガったよね。それからPROVOで出会って、色んなパーティーで顔を合わせるようになっていって。
江河:今回のジャケは、Pinterestで見つけたドッグランの画像がめっちゃカッコいいと思ったので、そのイメージをもとにKotetsuと話し合って膨らませていきました。