こっちのけんと × ゼロから打ち師始めます。対談 —— 独自のスタンスで活躍する令和のトップクリエイターの現在地

2024.9.10

国内はもちろん海外でもチャートを席巻するなどビッグヒットになっている楽曲「はいよろこんで」を生み出したアーティスト・こっちのけんと。そして、SNS総フォロワー数は1,000万人に迫る勢いでSNSを中心に若い世代から高い支持を得ているヲタ芸パフォーマンスグループ・ゼロから打ち師始めます。(ゼロ打ち)。人に寄り添い人を笑顔にし、感動を届け続けている令和のトップクリエイターたちは、そのコンテンツ作りにどんなこだわりを持ち、どんなスタンスを保ち続けているのか。TikTokやYouTubeを駆使し、新しい枠組み(TuneCore クリエイターズ)にも果敢に取り組む2組の対談を通して、その現在地に迫った。

 
Facilitator : Jiro Honda
 

「はいよろこんで」の背景、第一印象

——最初にお互いを知った、出会ったきっかけを教えてください。

けんと : 僕は単純にゼロ打ちが好きで、普通にファンとしてずっと見てました。いつからかは覚えてないんですけどTikTokで出てきて、ヲタ芸の中でもユーモアも含めた部分がずば抜けてるなと思って。僕も一人でアカペラを作る時とか、ちょっと自分なりの面白さを入れたりこだわりがあったんですけど、それがチームとしてできているのがすごいなと思って。

Clifford : 僕らもそれこそ「はいよろこんで」のダンス動画をTikTokやYouTubeショートで見てました。けんとさんとKOTARO IDEさんのダンスとか。

しじま : そしたら、なんとメンバーのさぷりめんとがずっと前からけんとさんのファンだということが発覚して(笑)。

さぷりめんと : 今日、実はけんとさんのお母さんの本(『3兄弟のあしあと』)を持ってきたんです。後でサインしてください!

けんと : マジですか!(笑)もちろん!

いかちゅん : なので、メンバー内でそういう嬉しい驚きもありつつ、ゼロ打ちとしてはやはり「はいよろこんで」がきっかけだったと思います。

こっちのけんと「はいよろこんで」

こっちのけんと「はいよろこんで」各サブスク

 
 
——「はいよろこんでは」は本当に社会現象というか、MVもYouTube約5,000万回再生(対談実施8月1日時点)と、巨大なヒットになっていますが、それについてけんとさんはどう感じていらっしゃいますか?

けんと : ほとんど理解できてないです(笑)。もう単純に運がいいなとしか思ってなくて。作っている時に意識してたことはもちろんあるんですけど、ここまで大きく広がるとはさすがに想像してなかった。それこそゼロ打ちさんみたいな方々が気に入ってくれる曲になってるということで、本当に時代に合ったのかなというか。ちょうどいまみんなが好むものを作れたっていう運の良さだと思ってます。まだ信じられないですね。映画『トゥルーマン・ショー』みたいな壮大なドッキリなんじゃないかって(笑)。

——今おっしゃった意識していたことというのは?

けんと : 色々あるんですけど、特にサビ前に特徴的な部分があるとダンスの振り付けとしても入りやすいかなとかは意識しました。アカペラアレンジでいうサビに入る前のボイスパーカッションのフィルインの部分をより個性的にすることによって、もっとみんなに好きになってもらえる曲になるんじゃないかと。

曲に込めたメッセージでいうと、やっぱり自分に躁鬱っていう病気があって、テンションが上がり下がりしてしまう。で、テンションが下がってる時に調子が悪いっていうのはすごいわかりやすいんですけど、テンションが高くて元気な時も病気なんだよって言われた時に意味がわからなくて。そうなると、人に優しくしてるのが、それも病気の症状なのかもしれないって思ったら、自分って何なんだみたいになってしまって。そういう風に実は本人も理解できていない場合もあったりするから、客観的に人から目を向けてもらうことってとても大事だと思ったんです。そのためにも常にSOSを出していこうよっていう意識のもとに作った曲です。

あと、タイトルが「はいよろこんで」なのは、それは僕のいいとこでもあり悪いとこでもある言葉だなと。色んなお願いに対して「うん、いいよ!」ってぜんぶに言っちゃってたんですけど、そしたら、“けんとは何でも快く引き受けてくれる人”っていうイメージができてしまって。すると、こっちのスケジュールに関係なくどんどん依頼が入ってくる。それがどんどん重なった結果倒れちゃうみたいな。それで、きっとそういうイメージ持たれちゃってる人って世の中にも相当多いんだろうなと思って、今回タイトルにしました。

こっちのけんと
こっちのけんと

 
——ゼロ打ちのみなさんは、いちリスナーとして「はいよろこんで」を最初に聴いた時はどう感じましたか?

いかちゅん : 私はMVで映像も含めてはじめて聴いたんですけど、いわゆる昭和を感じさせる映像なのに、歌詞はいまの時代の共感というか、寄り添ったものになっていて、そこが他にはないなと。”私もこうです、分かります”っていうコメントもたくさんあって、これは現代の人の心にめちゃめちゃ刺さる曲だなと思いました。

いかちゅん

 
Clifford : SOSを含んだものって定期的に広まったりバズるなと思ってて。例えば、ハンドサインとか、SOSを忍ばせて考察みたいな。最初に「はいよろこんで」を聴いた時、「・・・ーーー・・・(トントントンツーツーツートントントン)」があって、“あ、これもSOSだ!”と思ったんです。そういうトレンドの要素を含みつつ、歌詞もすごく共感できるし、単純にサウンドも気持ちよくて踊っても最高だし、色んな面ですごい曲だなっていう感想を持ちました。

Clifford

 
しじま : 僕は正直、最近作られた曲だと思ってなくて。けっこう前からある曲なんだろうなって勝手に思ってたんです。メロディーも懐かしさを感じてて。それで調べたらめっちゃ最近やんっていう(笑)。曲の最初はゆっくりで、感情抑え気味な感じからどんどんボルテージが上がっていく感じは、ダンスをやってる側からするともう大好きなんですよ。サビ前のSOS信号で音ハメしてから弾けるのも、ダンサーさんはもちろん、クリエイターさんやタレントさんとか色んな人が踊りやすくてほんとめっちゃいい曲だなと。

しじま

 
シト : 僕も最初聴いた時はしじまに近い感想で、TikTokで昔の有名曲がいま改めてバズってるものかなと思ったら、この雰囲気、映像で最新曲なんだっていう驚きがありました。しかも振り付けも真似しやすくて、本人も踊っているぞと。だから、これは裏に相当デカい組織があって、めっちゃバズらせにきてるなーと思ったら、一人の天才クリエイターがやってたっていう(笑)。なので、こんなすごい曲を作ってしまうけんとさんの才能を改めて感じました。

シト

 
さぷりめんと : 僕はそれこそ「死ぬな!」も聴いてて、けんとさんを前から知っていたんですけど、「はいよろこんで」は曲の展開の気持ちよさで「死ぬな!」と似ている部分を感じたんですが、「はいよろこんで」の方がもっと爆発性がある気がして。どんどん感情も溢れていく感じが、『はい喜んで』『あなた方のため』っていう歌詞とか、ちょっと前の自分の状況にすごく重なる部分もあって、めっちゃ心に染みる曲だなと。

さぷりめんと

 
けんと : ゼロ打ちのみなさんの感想、単純にめちゃくちゃ嬉しいです。恥ずかしさも感じますけど、ある意味、自分の曲じゃないっていうか、客観的に僕も曲に共感しながら聴いてますね。

——けんとさんは、先ほど天才というお言葉もありましたが、そういう評価に対してはどう感じていますか?

けんと : けっこうコメントとか見てるとそう言ってくださる方もいるんですけど、この前親しい友人とバーベキューした時に、その友人が酒飲みながら「お前天才だもんな」とかいじってきて、「でも、天才だったらあんな歌詞書けないよな、普通だからあれ書けてるんだよな」って言ってて。それ聞いて「お前いまめちゃくちゃいいこと言ったぞ!」って(笑)。改めて自分の歌詞を見ても、地に足がついているというか、みんなが普段思っていることを歌詞にできてる気がするんで、やっぱり自分は普通なんだろうなと感じますね。


https://youtu.be/jzi6RNVEOtA

 

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