Littyインタビュー 「Pull Up」のヒットで話題の注目ラッパー 「『私でもここまでいけたよ』って希望を届けたい」

インタビュー
2025.5.15

Lion Meloと探求する「Littyらしさ」

──Lion Meloさんは、Littyさんの成長についてどう感じていますか?

Lion Melo:最初はただただ楽しくやっていたことにだんだんプレッシャーを感じるようになって、壁が見え始めていると思うんです。だからこそ、今までと同じじゃダメだっていうことを分かり始めて、引き出しが増えている印象ですね。元々リスナーとして聴いていた音楽も、自分がプレイヤーになると違って聴こえてくるはずなので、そこから色々なことを吸収していて。リスナー側の意見を聞きながら、自分の好きなこともやるっていうバランスを取れているように感じます。

Litty:確かに、自己満だけの曲じゃダメだっていうことには気付きましたね。みんなを満足させなきゃいけない、だけど芸術性も保ちたい。そのバランスはいま気をつけているポイントです。他のアーティストさんも参考になる方ばっかりだけど、それを丸々もらってもしょうがなくて、自分のスタイルに落とし込まなきゃいけないし。そういう意味では毎日に壁にぶち当たってるんですけど、やるしかない。

今はリスナーの9割くらいが日本人なので、当然日本語でやらないと響かないけど、カッコよく日本語を使うのって難しいんですよね。元々現代文が大嫌いなんですけど(笑)、なるべくいろんな言葉を調べながら作詞しています。やっぱり、英語をそのまま日本語にしただけだとすごくダサく聴こえるから。

Lion Melo:それはしょうがないよね、

Litty:そう、しょうがない。だから、そのダサさをどこまで許容するかっていうのが難しいなって、よくLion Meloさんに相談してますよね。

Lion Melo:どんどんお互いのハードルが上がっていて、彼女から曲が返ってきても、ボツにすることが結構あるんです。僕も前より良いビートを出していかないといけないし、となるとお互いがぶつかることもある。まだまだ二人とも成長の途中段階ですね。

──Lion MeloさんがLittyさんのラップのクオリティをコントロールしている面もあるんですね。楽曲制作はどのような流れで進んでいくのでしょう?

Litty:私が「こんな感じのビートを作ってほしい」ってリクエストすることもあるし、私の得意なキーもわかってくれてる彼が何個かビートを送ってくれて、その中から乗れそうな物を選ぶこともあります。そのビートにまずはフローを乗せてみて、採用っていうことになったらやっとリリックを書き始める。出来たら送って、「ここは良いけどここはダメ」みたいな返事が来て、修正して、の繰り返しですね。

──Lion Meloさんはビートを手がけているだけではなく文字通りのプロデュースを行なっていると。

Litty:本当に。ここまでしてるプロデューサーっていないと思うんですよね。ここまでちゃんとアーティストの特徴を捉えて、リスナーが何を求めているかを客観的に考えられる人ってなかなか出会えないんじゃないかな。

──リリックの細かい部分までディレクションしているんですもんね。

Lion Melo:ビートに対する言葉の当たり方や耳触り、意味合いであったり。難しくなり過ぎてもダメで、ある程度はキャッチーじゃないといけないので……

Litty:厳しくないですか?(笑)もう何やってもダメなんじゃないかって、絶望的な気持ちになりますよ(笑)。

──具体的な答えを提示されるわけじゃないから、苦戦しそうですね。

Lion Melo:当然、本人が書いたリリックの方が良いじゃないですか。だから、僕の基準で納得できるまで、Littyさんの言葉で何回もやり直してもらう。一曲に一か月かけてもらうこともありますね。別に完璧なカッコよさは求めてないですけれど、Littyさんの良さが全面的に出た曲にしたいので。

──「Littyさんらしさ」が完成の基準になると。

Lion Melo:それと、気持ちを乗せるべき曲で乗ってないところがあったら録り直してもらったり。ラップのちょっとしたタイミングやリズムについても細かく口を挟んでいるので、本人は多分かなりムカついてると思います。

Litty:はい、超ムカついてます(笑)。

──もちろん、お互いを信頼しているからこそ言い合えるわけで。

Lion Melo:Littyさんもどんどん主張が強くなってきてる(笑)。

Litty:最初は何も言わなかったんですけど、最近は「このビートの部分、ちょっと変えてくんない?」みたいな。

Lion Melo:「ん? ムカつくな?」と思いますけど、でも的確なことを言ってくれるんで。「こういうボーカルが良い」っていう要望も伝えてくれるようになったんで、ミックスとかもやりやすくなりましたね。

──Lion Meloさんは和歌山が拠点なので、制作はリモートですよね?

Litty:はい。でも、彼も最近東京に移ったので。

Lion Melo:僕も東京で色々と挑戦したいなと思っているので。制作はよりスムーズになりました。

 

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この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。