IRIS MONDOインタビュー 熱狂のアジアツアーも完遂、中国版インスタ“RED”など多彩なアプローチで国境を超えファンベース広げるオルタナ ✕ ポエトリー

インタビュー
2025.8.22

届けたい層に届いている実感

――先ほどREDの話題もありましたけれど、IRIS MONDOはSNSの活用が非常に上手だという印象があります。いつ頃から力を入れ始めたのでしょう?

KSW:動画に字幕を入れるなりで工夫をしていこうってなったのは去年、一昨年くらいからかな。

さったん:「Day.1」がTikTokで伸び始めたのも、英語の字幕を入れた動画からだったんですよ。2年前くらいから海外を意識し始めて、スタッフが全曲翻訳してくれたんです。今ではもうみんな多言語の動画を出してるけど……

KSW:走りはウチらだよね。始祖、パイオニアだよ。

@iris.mondo I really didn't want to sing this kind of song. #fyp #CapCut #翻訳 #映画 #おすすめ #邦ロック ♬ Day.1 – IRIS MONDO

 
――海外を意識し始めたきっかけはあるんですか?

さったん:私たちの元マネージャーの本職が海外プロモーターで、ずっと世界と日本を音楽で繋げたいって言ってたんですよ。で、私たちのアジア展開を提案されてたんですけど。

KSW:最初は無視してた。まさか私達が海外で受けるとは思ってなくて(笑)。

さったん:現実味がなかったよね。そもそも日本でもそんなに売れてるわけじゃないのに、海外なんて行けるわけないと思ってたんです。ただ、その翻訳チームがいい感じに歌詞を訳してくれて、それなら動画を作ってみようってことになり。

KSW:私の歌詞って、翻訳するには細かなニュアンスとか表現が難しいところがあると思うんですけど、その辺りも考慮して上手くやってくれて。そのおかげでいま海外のリスナーに刺さってるんだろうなと思います。日本語も中国語も喋れる子に聞いてみると、やっぱり翻訳のレベルが高いから、私の言いたいことがちゃんと中国語でも解釈できるっていう風に言ってくれるので。

――そうした海外を意識したSNS戦略はすぐに結果が出たんですか?

KSW:いや、最初は全然です。

さったん:TikTokで伸びたのは、たしか50本目くらいでしたね。で、翻訳チームのスタッフに「今の若い子はみんなやってるよ」っていうことでREDを教えてもらって。当時日本語に対応してなかったんで、投稿の仕方すらわからない所からはじめました。

KSW:最初はフォロワーが100人もいない中で、まわりもREDのこと全然知らなくて「これ、誰が使ってるの?」と思いながらやってました。

さったん:REDで初めて伸びた曲は「MY SWEET KILLER」なんですけど、過激な歌詞について「すごい」「刺激的」みたいなコメントがたくさん付いて。中国の方々にとっても珍しさがあったのかなと。

KSW:中国でのお客さんは、すごく若い人が多くて。

さったん:14〜15歳の女の子が多いんですよ。

KSW:元々、辛い思いをしてる女の子が一人で泣く夜がなくなったらいいなっていう思いで曲を書いてるんですけど、日本では女の子のバンドに女の子のリスナーが付くっていうのがなかなか難しくて、実際、届けたいリスナーに届けるのにかなり苦労しています。でも、中国では届けたい層、つまり若い女の子たちにちゃんと届いている実感があってすごく嬉しいです。

――RED以外にも、最近ではLemon8のアカウントも作っていますよね。

さったん:まだ全然投稿してないですけど、次はLemon8がくる可能性もあるので、準備はしておこうかと。

――bilibiliのアカウントもありますし、本当に様々なSNSを網羅してますよね。運用するのは大変じゃないですか?

さったん:それこそ、海外チームのスタッフにも助けてもらいながらやってます。Weiboとbilibiliはまだわからないことが多くて難しい部分もあるんですけど、REDは仕様がインスタに近いので使いやすいですね。毎日いろんなSNSを更新すること自体は全然苦じゃないです。

KSW:私にとっては苦なんですよ(笑)。コメントも怖くて、気にして歌詞が書けなくなっちゃう。さったんが嬉しいコメントだけを切り取ってくれるので、それは見てます。

さったん:REDは基本的に嬉しい声ばかりですよ。TikTokは心無いコメントが付くこともありますけど、それでも自分のバンドやメンバーを知ってもらいたいという気持ちが強いので続けられてます。

――そういったSNS周りも、やはりセルフプロデュースの一環としてやってるっていう。

さったん:そこを他人に任せちゃダメだろ、って思ってます。

KSW:さすが(笑)。

――グッズのデザイン含め、バンド活動にまつわる様々なことを自分たちで手がけてらっしゃいますもんね。チケットのサイズを間違えて発注したり、といったアクシデントも過去にありつつ(笑)。

KSW:ありましたね、さったんがめっちゃ怒ったやつ(笑)。そんなこともありながら、それぞれの得意分野を活かしつつ、ストレスが溜まらないようにやってます。

さったん:ウチは二人だから、やっぱりすごい大変ですよ。「こっちは四人、五人っているわけじゃないんだよ」ってボヤいたりもしながら、二人でやる量じゃない作業を日々こなしてます。

KSW:やっぱり他人に任せてばっかりじゃ良いものができないよね。少なくとも、まだまだインディーズの私たちが人任せにしてたらよくない。できる限りのことは二人でやりたいと思ってます。

さったん:一方で、アジアツアーで今まで感じたことのないスケールを目の当たりにして、二人だけではどうにもできないことがこれから出てくるんだろうなっていうのも感じはじめているんで、状況に応じて考えていきたいです。でも、大事なことは二人が決めるっていうのは変わらず。

 

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