USメディア、記事内でチャートトップの “例の曲” 制作スキームをトレース ― レッドオーシャン化したタイプビート(Type Beat)シーン

2019.5.16

現在、グローバルの音楽チャートを席巻しているLil Nas Xの「Old Town Road」。そのバズのプロセスやジャンルにまつわる論争など、様々な話題を提供してきた楽曲だが、その楽曲に関連し、USのライフスタイル&カルチャーメディア Quartzy ではある興味深い試みを行っている。

「WE FOLLOWED LIL NAS X’S STEPS TO MAKE THE NEXT “OLD TOWN ROAD”」と題された記事において、Lil Nas Xと同様の作曲プロセスを行い楽曲を発表。

どういうことかというと、「Old Town Road」では19歳のオランダのビートメーカー/プロデューサーYoung Kioのビートが採用されているのだが、Lil Nas Xがビートをビートマーケットプレイス BeatStars で購入し「Old Town Road」を制作したことにならい、Young Kioのビートを実際にBeatStarsで購入し、「I Want to Make a Song Like Old Town Road」という楽曲をSoundCloudで公開したのだ。(Quartzyの記事内では楽曲名が「I Wanna Make a Song Like Old Town Road」となっているが、そのへんはよく分からない)

記事内の手順を引用すると、

1. BeatStars内のYoung Kioのページにいき、ビートを購入しダウンロード。選んだのは、「Fashion」というYoung Kioが King LeeBoyというビートメーカーと共同プロデュースしたビート。サウンドが気に入ったのと、「Old Town Road」のテンポに似ていたからこの曲にした。

2. Garage Bandのような音楽アプリにダウンロードした楽曲を入れる。

3. ビートにのせてラップ。

4. SoundCloudにアップ。

やったのはこれだけ。

(引用終わり)

ラップをしたのは、この記事を書いたDan Kopfさん。ラッパー Pos Ex としてラップし、リリックは同じく記事を書いたCorinne Purtillさんがクレジットされている。(記事内にはそのリリックも記載されている)

実際に曲を聴いてみると…

 

 
「songs trash」という手厳しいコメントがついているので、そこは察しの通り。

とはいえ、ジョークは承知の通りなので楽曲のクオリティはさておき、この記事から考えさせられるのは、たった$29.99で購入した “タイプビート” の楽曲が何週間にも渡って世界の音楽チャートのトップになっている事実。そして、誰でもこんなに容易に音楽が作れて発表できる現在の音楽制作の状況。

誰にでもチャンスがある。反面、そのチャンスをハックすることもできる。

有名無名が混在するYouTuberのごとく、飽和化するタイプビートシーン。ビートメーカー / プロデューサーは、様々な方法を日々模索しており、その様子はYouTubeで 「Selling Beats」 と検索すれば、ビートメーカー / プロデューサーがいかにあの手この手でサバイブしようとしているかが分かる。

 
HOW I MADE A LIVING SELLING BEATS ONLINE IN 4 MONTHS

 
音楽プロモーションにおいても、「The Pump Plan」のような果てしないバズの仕掛けあいはこれからも当分続くだろう。

こういった状況の中で、大切になってくるものとは。Quartzyの風刺的な試みは、今の音楽シーンの光と影、答えの無い問いを、音楽に携わる人々に投げかけてくる。

引用元:WE FOLLOWED LIL NAS X’S STEPS TO MAKE THE NEXT “OLD TOWN ROAD” (QUARTZY)


 
(2019年5月17日追記)

今さらだが、タイプビート(Type Beat) とは、「type」は「型」「類」「種類」「様式」といった意味なので、分かりやすくいうなら「〜〜系のビート」といったところだろうか。Travis Scott的なビートなら「Travis Scott type beat」、Xの曲名で探すなら「Look At Me Type Beat」のように。YouTubeやSoundCloudで検索すれば、山ほどでてくる。ビートを作るビートメーカー/プロデューサーは、楽曲の使用制限に応じた価格をつけてリースや販売をしていて、そのビートで曲を作りたいアーティストは、BeatStarsやAirbit、ExpertBeats、TRAKTRAINといったビートのマーケットプレイスをはじめ、ビートメーカーのYouTubeやSNSに直接連絡したり、ビートメーカー自身のビート販売サイトで借りたり買ったりしている。

なお、タイプビート(Type Beat)についてもっと知りたい方は、国内でタイプビートの制作および販売とリースに特化したプロデューサー集団であるMCKNSY(マッキンゼー)内で非常に分かりやすく解説されているので、そちらもぜひご参考を。

Type Beat(タイプビート)とは? (MCKNSY)
https://mcknsy.wordpress.com/2019/01/29/type-beat-explained-in-japanese/

MCKNSY(マッキンゼー)

この記事の執筆者

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