【Who’s NXT】案山子 | 話題曲「真生活」が1週間にわたりバイラルトップに、注目のボカロP
案山子
ボーカロイド楽曲を制作、発信するアーティスト。これまで、1stアルバム『rouge』、1stミニアルバム『blue』、シングル「juicebox」、「vow」、「啼くowl」などの作品を配信リリース。中でも、アルバム『rouge』に収録の「真生活」は2021年夏頃にTikTokをはじめSNSで話題となり、9月21日にSpotifyバイラルチャートの13位に初ランクインすると、その後も順調にチャートを上昇し続け、10月11日にはついに1位を獲得。そこから約1週間に渡り1位にランクインし続けるなど、いま急速に注目を集めている。
Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
——音楽に興味を持ったきっかけ
きっかけはあまり覚えてないですね…… 小学校くらいの時にコナンのオープニング曲ベスト盤みたいなのをなぜか繰り返し聴いていたので、その時期かもしれないです。
——自ら音楽をやるようになった経緯
昔は趣味のバンドでベースを弾いていて、その時にボカロでの作曲は少しづつ始めていましたが、人に聴かせられるレベルじゃないと思いネットに曲を公開していませんでした。そんな中、同じく作曲活動をしていた人に自分の曲を聴いてもらう機会があり「いいじゃん!なんで出さないの?」と言われたのが僕が案山子として音楽活動を始めたきっかけです。
——主な活動シーン
ボーカロイド? J-POPシーンでしょうか?最近は垣根がないですよね。
——最新作について
「juice box」が最新のリリースになります。この曲は『rouge』というアルバムに収録するために書いた曲でもあるのですが、とても気に入っていたためリミックスして、個別でシングル化しました。『rouge』はアルバムのコンセプトとして「熱」をイメージしており、例えば表題曲の「rouge」は“雪も溶かすような情熱”を表した楽曲。「juice box」は“熱も冷めるような氷雨”をイメージしていて、アルバムの表題作と対になるような立ち位置の楽曲になります。サウンド面でいうとジャンルとしてはヒップホップなのですが、暖かいイメージを与えたかったので揺らぎの強いギターとピアノを使って生感を加えています。
——イチオシの楽曲
「真生活」という楽曲がおすすめです。『エレクトリック・ドリームズ』という海外ドラマの第一話で「真生活」という作品があり、歌詞の世界観の元ネタにさせていただいています。
——楽曲の制作について
iMacにLogic Pro10を入れてほとんどPC内の打ち込みで制作を完結しています。
——自身の特長を表すなら
自分で言うの中々難しいですね(笑)。先日他社様に取り上げていただいた記事曰く「案山子最大の武器は、メロディの軽快さとシンプルさにある。そこが言葉とマッチした時のキャッチーさは凄まじい。」とのことでしたのでそちらでよろしいかと……(笑) 言葉に元々宿っているリズムありきで楽曲を作ることが多いことは確かです。
——影響を受けたアーティスト
倉木麻衣
覚えてる限りでは一番最初に聴き込んだのは倉木麻衣さん。メロディの癖は完全に強く根付いています。自分が一番美しいと思うメロディを素直に歌うと、めちゃめちゃ倉木麻衣さんになります(笑)。
RADWIMPS
有心論を初めて聴いたときの衝撃を今でも覚えています。僕がギターを始めた理由はRADWIMPSさんの曲が弾きたかったからです。RADWIMPSさんのジャンルの垣根を超えた楽曲づくりは自分の編曲のマインドを形成したものだと思います。
ぼくのりりっくのぼうよみ
ササノマリイさんの尖ったトラックとぼくりりさんのキャッチーなリリックが大好きでした。僕の曲もラップパートを入れることが多いのはぼくりりさんリスペクトだったりもします。
——影響を受けた楽曲
RADWIMPS – トレモロ
最初のアルペジオはギターに触る機会の減った今でも弾けます…… とにかくバンドが組みたくなる曲です。音楽を始めた時の気持ちをこれからも忘れないように制作していきたいです。
ぼくのりりっくのぼうよみ – Newspeak
編曲が好きで、特にサビのコード進行が秀逸なんですけど、コードが一つづつ下降していく部分があるんですよね。それがメロディの隙をついたように入ってきてドラムのリズムも同調しててフレーズの一部を形成するんですけど、複雑でしかもキャッチーなことをさらっとやられていることに嫉妬します(笑)。
星野源 – 肌
ギターで東京事変の浮雲さんが参加されてるんですが、ワウの音が星野源さんの歌に絡みついて楽曲の魅力を際立てています。うまく言えないですが「肌」というテーマにぴったりなギターの音といいますか…… 聴いてもらえばなんとなく伝わる気がします(笑)。
神山羊 – おやすみ、かみさま
自分でも気づかないうちに大人になってしまった20代〜30代のど真ん中にささる曲です。編曲もピアノバラードから徐々にロックになっていく構成で人生を表現している?のかは分からないですが、とにかく懐かしさを感じます。
SMAP – オレンジ
歌詞がめちゃくちゃ良くて「遠回りをした自転車の帰り道、背中にあたたかな鼓動を感じてた」という部分があるんですけど、木村さんの歌う「感じてた」よりかっこいい歌い方ができる人を見たことがないです(笑)。
倉木麻衣 – Your Best Friend
コナンのエンディングだったと思います。叙情的でありながら爽やかで、聴いた後の「良かった、報われた」と言う感じが好きですね。
大江千里(秦 基博) – Rain
初めて聴いたのは秦 基博さんのカバーでしたが、オリジナルもすごく好きです。サビは特に歌詞とメロディ、コードが完璧にハマって圧倒的なキャッチーさと切なさ、文字通り雨の世界観を表していると思います。
——音楽活動にあたって意識していること
一つ一つの制作に熱を持って取り組むことを一番に考えています。これからも誰のための作品なのかを考え、自分が届けたい相手に作品の熱が伝わることを願いながら楽曲制作を続けていこうと思っています。
——現在の音楽シーンについて感じること
作品が埋もれるか日の目を浴びるかはクオリティは関係なく単純に運次第としか言えないんじゃないかな、と思います。「真生活」みたいな例もあるので本当によく分からないですね……(笑)良くも悪くも消費のサイクルが昔に比べ異常な速さなので、10年20年経ってもみんなが覚えている作品が1つでも多く生まれることを願いますし、自分もそんな作品を残していきたいですね。
——今後の活動の予定/展望
今まで主にボーカロイドを使った作品を発表してきましたが、これからはボーカロイドも続けつつ自分が魅力的だと思うボーカルと一緒に作品作りをしていくことにも挑戦していきたいです。
また、「真生活」のkotohaさん歌唱バージョンが10月13日にリリースされました。YouTubeやTikTokで好きになられた方はぜひサブスクでもよろしくお願いします。