底なしのバケツのようにざらざら インタビュー「正直ジャンルに対してのこだわりはあまりない」唯一無二のサウンドで常に爪痕を残すマイペースなTOKYO4ピース
まさにジャンルレスという言葉がぴったりなバンド・底なしのバケツのようにざらざら。その名の通り尖ったサウンドを鳴らしながらも、俯瞰するとピンと筋の通った整合性をも感じさせるような彼らの楽曲は、一度聴けば強烈なインパクトを記憶に残す。観るものをぐいぐいと引き込むハイカロリーなライブパフォーマンスからは、リリースは少ないながら着実にキャリアを重ねてきた彼らの、まさに“底なし”のポテンシャルを感じることができる。フジロックやりんご音楽祭など節目節目のイベントで爪痕を残してきた底なしのバケツのようにざらざら、結成10年を越え未だ強烈な個性を放つバンドの今について、ギターボーカルの奥津諒一に話をきいた。
——底なしのバケツのようにざらざらのライブを何度か拝見したことがあるのですが、昨年のりんご音楽祭や今年の「RINGOOO A GO-GO」でも素晴らしいパフォーマンスが記憶に残っています。だいぶ前のことにはなりますが、当日の感想を教えてください。
両日共にすごく楽しかったです。普段のライブよりも色々なジャンル・音楽性の方が出演されているので、やってやるぞ!というか、見せつけてやろう!みたいな気持ちが強くなって、いつもより頑張れました。
——2018年にはフジロックのROOKIE A GO-GOにも出演されています。そういったフェスと普段のライブだとやはり少し勝手が違ったりしますか?
やっぱり野外なので、演奏中に見える景色がすごく気持ち良いです。あとは、大舞台だぞ、という気負いが良くも悪くもあるので、演奏はすごく気合が入ります。後から映像を見ると「かかってるな」という反省もあったりはしますが、どうしても普段のライブでは入り込めない感覚ではあるので、すごく貴重だし、フェスならではのライブにはなってるかなと思います。当たり前ですけど普段のライブよりも緊張するので、終わった後の開放感もいいですね。
——活動は10年を越えますが、もともとどういう経緯で結成されたんですか?
メンバーは、お互い大学のサークルで知り合いました。ギターの坂田くんが先輩で、あと3人(奥津諒一(ギターボーカル)、有馬純貴(ベース)、設楽知弘(ドラム))が同期で。オリジナル曲を作るサークルだったのですが、サークル内のイベントに出るために、僕(奥津)とドラムの設楽が最初に別のメンバーと「底なしのバケツのようにざらざら」を組みました。そこからメンバーチェンジを経て、今のメンバーになってます。サークル外での最初のライブからこのメンバーなので、初期の段階から今のメンバーで活動しています。
——一度聴いたら忘れられないバンド名だと思うのですが、バンド名の由来というのは?
由来というのはあまりなくて、そのイベント用に名前をつけなきゃいけなかったのでとり急ぎでつけてしまいました。その時持っていた本を何ページか開いて、適当に指さした単語を繋げたらこうなってしまいました。今更変えれないのでこのままでやっております。
——底なしのバケツのようにざらざらのサウンドは非常にユニークですが、最初からこういった音楽性を標榜していたのでしょうか?
最初はもっと色々なことをやろうとしてたんです。歌モノもあったし、今のスタイルに近いものもありました。やっていくうちに自然とジャンルが絞られていった感じです。今よりもっとどろどろしたアングラな感じで、そういう曲しか作れなかったというのもあるし、好み的にも少し洗練というか、すっきりしてきたのかなと思います。
——その好みでいうと、メンバーみなさんどういうアーティストに影響を受けましたか?
みんな共通なのは、東京BOREDOMとかTOKYO NEW WAVEとかのバンドが好きで、かなり影響は受けていると思います。具体的なバンド名で言うとtacobonds、bossston cruizing mania、nhhmbase、マヒルノ、SuiseiNoboAzあたりはダイレクトに影響を受けたと思います。ダイレクトすぎるのであまりいうと恥ずかしいんですが。加えてヒップホップが好きなので、今の音楽性になってるのかなと思います。
——底なしのバケツのようにざらざらのユニークな楽曲がどのように作られるのか、非常に気になります。
スタジオのホワイトボードに数字(拍数)を書いて、誰がどこを埋めるのかを決めながら作ってます。
——DTMでデモとかは?
DTMでやれば楽だろうなという作り方なんですが…… みんなで作っているので、アナログにスタジオで作ってる感じです。演奏が全部完成してから最後に歌をつけてます。全然曲ができないです。
——でも、だからこそあのサウンドが構築されるんですね。曲を作る時、特に意識していることなどはありますか?
かっこいい曲は作りたいんですが、かっこよすぎるフレーズにはならないようにしたいなとは思っています。可愛さというか、ちょっと間抜けっぽい感じがポップさに繋がるのではないかなと思っていて、その辺が消えないように意識してます。
——なるほど、そこもメンバー全員でつくっているからこそのバランス感ですよね。歌詞では主にどういったことからインスピレーションを受けていますか?
曲によって全然違うのですが、自分の生活が反映されているものもあれば、恣意的にテーマを決めてそのテーマについて特に自分の意見や考えがなくても言葉をならべていくというものもあります。どっちのパターンであっても「これについて書くぞ」と決めて書くので、インスピレーションを受けてというよりかは無理やりそのテーマに自分が寄っていくようなイメージかもしれないです。最終的にそのテーマがわかりやすすぎないように、抽象化されるようには気をつけています。
——その抽象さ加減とサウンドが非常にマッチしているなと。いわゆるオルタナティブというだけには当てはまらないというか。
自分らのサウンドに関して、色々自己紹介しなきゃいけない場面があって、「オルタナティブポップかつヒップホップ」というキャッチフレーズを作ったのですが、正直ジャンルに対してのこだわりはあまりないです。1曲ごとが面白かったらいいかなと思うので、オルタナかどうかとかヒップホップかどうかとかは全然考えてないです。ジャンルに縛られてないとも言えるんですが、ジャンルに対して無責任なのかなと思ったりもします。あと矛盾するようですが、ポップではありたいとは思ってます。と言っても、とっつきやすい雰囲気は残したいというレベルの話なんですが。
——2014年の1stアルバム『praythem』、2018年の2ndアルバム『actslum』とリリースペースとしては寡作ですが、直近の『actslum』でリスナーに聴いてほしい曲をあえてあげるなら?
「Kにて」です。単純に好きな曲なので、というのが理由になっちゃうんですが。歌詞の世界観が自分でも好きなのと、ライブでやってて楽しい曲です。でも僕らの曲を初めて聞くのであれば「TOKYO BOYS BRAVO」が多分一番聴きやすいですよね。
——2010年の結成から10年以上、長く続けられている要因はどこにあると思いますか?
肩の力を抜いて活動してるのが大きいと思います。もっと力を入れて活動してたら状況が違ってるのかなとかも思いますが、とにかくやりたいように曲をつくって、やりたいようにライブをやってるだけ、というのが自分たちにあっているペースなのかなと思います。このペースでやってることで、やる気がないように見えちゃうかなとも思うんですが、そんなことは決してないので色々お誘いなどしてもらえると嬉しいです。
——そういったマイペースな活動の中で、それでも結成当初と現在で一番の変化とかはあったりしますか?
音楽性はかなり変わってるというか幅が狭くなってるんですが、あとは何も変わってないかもしれないです。学生から社会人になって〜とか生活の変化がありながら、バンドは何も変わらずにできてるというのがいいなと思います。多分マジで全然変わってないです。もっと売れてたら良かったんですけどね。
——そろそろ新しいリリースも気になりますが、そういったご予定は?
レコーディングが途中で止まっちゃってる曲が2つほどあって、あとまだライブでもできていない新曲もあります。どんどん曲が難しくなってきていて、レコーディングしたりライブで披露するのが伸ばし伸ばしになっちゃってるんですが、頑張って練習して、音源やライブで発表したいです。
——今回はお忙しい中ご対応ありがとうございました。では最後に、今後の活動の展望を教えてください。
あまり東京以外でのライブが多くないので、いろんな場所でライブをしたいです。誘ってください!マジで予定さえ合えばどこでも行きます。海外にも行きたいです!旅行の話みたいになっちゃいましたけど。フェスをはじめ、普通にライブハウスでするライブ以外にも色々なスタイルのイベントに出てみたいので、ご連絡お待ちしてます。でも普通のライブが基本なので、ライブハウスでのライブはどんどんしたいです。受け身ですいませんなんですが、連絡お待ちしてます。あとは音源出せるように、曲作って練習します。とにかく面白くて良い曲をたくさん作りたいです。ありがとうございました!