表現の原点にあるもの

——作曲を始めたきっかけは？

大学の夏休みに、暇で何かやることがないかなと思っていたら、大学の知り合いにLogicというソフトで趣味でDTMをやっている方がいて。それをたまたま触らせてもらってハマったのがきっかけです。最初はわからないことだらけなので、YouTubeで使い方を調べて。それでだんだん慣れてきた感じです。

——楽器の経験や音楽の素養はありました？

子供の時にピアノを習っていて、あとは親が使っていたアコースティック・ギターが実家にあったので、それを趣味で弾いていた。それだけですね。親がチェロを習っていて、私もバイオリンを習ってた時期があって、クラシックのコンサートに行ったりもしていました。それはあまり今に反映されているとは思わないんですけど。

——影響を受けたアーティストは？

小さい時からずっと聴いて影響を受けたアーティストは、椎名林檎さん、東京事変さんですね。あとはRADWIMPSさんとかバンド系が多かったと思います。あとは他の邦ロックとか洋楽とかもいろいろと広く浅く聴いてました。

——椎名林檎さんのどういうところに憧れました？

全部ですね。椎名林檎さんの存在感、映像の世界観、ご本人のビジュアル、音源。音だけじゃなく視覚も含めて世界観の全てで魅了している人で、そういう世界観にハマったんだと思います。

——RADWIMPSについてはどうでしょうか。

RADWIMPSさんも中学生くらいの時からずっと聴いてるんですけど、MVも個性的だし、 若干ひねくれてる感じの歌詞とか、人間の汚い部分が書かれているようなものとか、死生観とか、えぐるようなところがあって。椎名林檎さんもそうなんですけど、簡単に理解できないところが好きだったのかもしれないです。

——たとえば同世代で刺激になったアーティストもいましたか？

音源だけでなく、活動形態自体に憧れているというか、私が目指したいのがVaundyさんとWurtSさんです。トータルでセルフプロデュースされていて、映像もグッズも本人が関わっている。それが楽しそうだなと思って。音楽だけじゃなく世界観の全部を作り込むのが活動の醍醐味だと思うので。音源を配信で聴いてもらうのももちろんだけど、それは一部で、ライブに来てもっと深く味わってもらうみたいなところまで手を出したいです。

——なぜ映像やビジュアルなどトータルでセルフプロデュースしようと思うようになったんでしょうか。

実は順番が逆で、音楽を始めたのはわりと最近で、それより前は写真を撮ったり映像を作ったりするのが趣味だったんです。あと広告が好きで。たとえばルミネの広告のキャッチコピーを見ていたりしたんですね。映像とビジュアルと言葉が先にあった。それで音楽を始めてみたら「これ、音楽活動だったんだ」みたいになったという。

——言葉と写真である種の感情を想起させるような広告のクリエイティブに興味があった。

憧れがありました。ルミネさんもそうなんですけど、他にもいろ好きな広告があって。たとえば「JR SKI SKI」のキャッチコピーで「冬が胸にきた。」とか今年の「雪よ、推してくれ。」とか、キューピードレッシングの「野菜にドレスを着せましょう。」とか、そういう短いのにいろいろ連想させるキャッチコピーの言葉を作る人がすごいなって思って見てたんです。自分もそういう言葉を考えるのがもともと好きでした。

——なるほど。そもそも写真や映像と言葉を先に表現していたということなんですね。

そうですね。作りたい世界観が先にあって、音楽っていう手段が最近手に入ったという感じです。音楽を始めてからは、TikTokに映像を作って自分で上げるようになったんで、そのときに自分が何年か前にカメラで撮った素材が使えたりするようになったり、そういうのが活きるようになったという。

——TikTokというプラットフォームについてはどうでしょうか。TikTokという場があることで音楽を作る気持ちが触発されたような感じでした？

ビジュアルとか静止画だけじゃ伝えきれない部分を音楽が掘り下げてくれるみたいな感じでした。一般的には曲を先に作って後からMVとかアートワークをつける方が多いと思うんですけれど、私は音源を作りながらどんな映像やアートワークにするかを考えていて。この映像にしたいからこの歌詞を入れようっていう考え方をしたりするので、同時進行です。