reina & Kota Matsukawaインタビュー 自分と人と間合いを見つめるR&B 1st EP『A Million More』も話題のw.a.u所属シンガー
東京のクリエイティブ・コレクティブ/レーベル・w.a.uに所属するR&Bシンガー・reina。w.a.uのバンドセットや同レーベル所属プロデューサー・Reo AnzaiのソロプロジェクトであるSakepnkでの客演歌唱からキャリアをスタートさせた彼女は、昨年2月に1stアルバム『You Were Wrong』を発表。バラエティ豊かな楽曲を器用に歌いこなしつつ、代替しがたい重みを持った歌声が確かな余韻を残す秀作で堂々デビューを果たした。
それから約1年を経て、今年2月21日には1st EP『A Million More』をリリース。ストリートな『You Were Wrong』から一転、優雅で洗練された印象を金髪にイメージチェンジしたビジュアルとともに打ち出し、一人のシンガーとして固有のキャラクターをその手に収めつつあるようだ。
一方、リスナーと一定の距離を保つような佇まいはミステリアスで、未だその実像を掴ませない。今回は、5月29日に東京・表参道WALL&WALLにて初のワンマンライブ開催を控えるreinaと、これまでの全楽曲でプロデューサーを務めてきたw.a.uのファウンダー・Kota Matsukawaにインタビュー。w.a.uとの関わりや『A Million More』制作の裏側などについて聞く中で、彼女の特異性が浮かび上がってくるような時間となった。
取材・文 : サイトウマサヒロ
「reina」というゲームをみんなでプレイしている感覚
——昨年2月にリリースした1stアルバム『You Were Wrong』は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが設立した音楽賞『APPLE VINEGAR – Music Award -』にもノミネートされるなど、R&Bシーンにとどまらない評価を受けています。アルバムデビューを機に、reinaというシンガーがより多くの人に知られるようになったという実感はありますか?
reina:反響や反応はたくさんいただいてますが、実感というよりはまだ驚きの方が大きいですね。数字を見れば徐々にリスナーが増えていることはわかるんですけど、まだその事実を消化しきれてないです。
——ミステリアスなイメージが強く積極的に情報を発信するタイプではないreinaさんですが、昨年末にはXのアカウントも立ち上げるなど、少しづつ外に気持ちが向かい始めているように感じています。
reina:これまで上手くSNSを活用できていなかったので、意識的に動かしていかないとなと思って。Xを始めるのはプロデューサーのKota Matsukawaからの提案でもあったんですけれど、インスタと合わせていろいろ更新していきたいなと思いつつ、方法はまだまだ模索中です。
——それは、シーン外の人にもreinaの存在を知ってほしいという思いがモチベーションになっている?
reina:どうだろう……いま聴いてくれているリスナーに、自分がどういう人間かをより細かく伝えられたらという気持ちはありますね。まずは身近にいる人から届けていきたいです。
——w.a.uを率いるMatsukawaさんからのアドバイスでXアカウントを開設したとのことですが、reinaさんとw.a.uの間には、ただ所属している/されている以上の意味を持った関係があるように感じます。reinaさんにとって、w.a.uはどういうコミュニティなのでしょう?
reina:同じテレビゲームを何人かで集まってプレイしてるみたいな感覚はありますね。自分がコントローラーをずっと握っているわけではないけど、誰かが遊んでるのを見たり、互いに口を挟んだりして、安心感もありつつ勉強にもなる、みたいな場所かな。
——その言葉に照らし合わせると、reinaさんの活動は「reina」というゲームをw.a.uのみんなでプレイしているとも言えるのではないかと思います。
reina:まさにそうですね。みんなでゲームを進めてます。私がコントローラーを持ったり、たまに誰かに持ってもらったり。
——w.a.uのメンバーとは、音楽性のみならず表現に対するアティチュードでも共感する点が多いんですか?
reina:いや、全然違うと思います。聴いてきた音楽は似てるけど、私はその歴史とかを理解できてるわけではなくて……w.a.uのプロデューサー陣は、ちゃんと文脈を理解して自分の作品に昇華する姿勢があるので、それは私には出来ないことだなと感じますね。
——Matsukawaさんに誘われる形でw.a.uに加わり、客演歌唱からキャリアをスタートさせたreinaさんですが、ソロ活動の構想は当初からあった?
Kota Matsukawa:いつかソロで活動する前提ではありました。会ったのは大学に入ってすぐでしたけど、それから数年はわざとリリースせず、タイミングを見極めてて。
reina:温めてたんだ。私にはあんまりその意識がなかった(笑)。「そのうちやるんだろうな」ぐらいのイメージで、「やるぞ!」って燃えてたわけではなかったですね。流れで歌うことになったというか。
——でも、Matsukawaさんとの出会いがなければ現在のシンガーとしてのreinaさんは存在しなかったわけですよね。
reina:本当にそうですね。ずっと音楽は好きだったけど、それを自分なりに表現するなんて想像してなかった。達成感も緊張感も全部ひっくるめて、すごい環境にいると思います。本当に出会えて良かったですね。