「Swag」で海外も注目 ラッパー Miyauchi インタビュー 「嘘でしょ?みたいなことをやりたい」
MIDOとの出会い、1st & 2ndアルバム
——昨年4月にリリースした1stアルバム『Flowershop Freestyle』は、どんないきさつで作ることに?
Miyauchi:以前よりは精力的に制作するようになって、曲が溜まり始めたんで、じゃあ、出すかって。特にテーマとかあるわけじゃなく、とりあえず今、手元にあるものを出してみたらどうなるんだろうって感じで作りました。
——レコーディングの方法やリリースまでの運びは誰かに教わったんですか?
Miyauchi:MIDOさん(プロデューサー / サウンドエンジニア)に聞いた気がします。
——MIDOさんとの出会いは?
Miyauchi:『Flowershop Freestyle』を出す3年前くらいに人生初のライブをしたんです。そのときにライブをするにはデモ音源じゃなくて、しっかりスタジオで録ったものを用意しなきゃいけないんじゃないかと思って、「やばい、スタジオを探さなきゃ」って。MIDOさんはBAD HOPさんのMVに「MIDO LAB.」っていうクレジットを見つけて連絡したんですけど、3つのスタジオに連絡して返事が戻ってきたのがMIDOさんだけだったんです。そこから付き合いが始まったんです。
——実はそこが今に繋がる大きな一歩だったんですね。
Miyauchi:そうですね。周りからマジメって言われるんですけど、それが良い方向に作用したのかなって思います。やり方なんてわからないくせに、ライブするにはデモ音源じゃなくて、ちゃんと作品を録っておこうと思ったわけだから。
——『Flowershop Freestyle』にはどれくらいの期間で作った曲が入ってるんですか?
Miyauchi:半年くらいです。ほぼ毎日のように作ってたんで、ストックは一切使わず、半年くらいで作ったものの中から抜粋してまとめました。
——それから約半年後の2023年12月に2枚目のアルバム『”The Mixtape”』を出します。これはどんな流れで作ったんですか?
Miyauchi:1枚目を出したことで、自分が動いたらなにかしら反応が返ってくることがわかって。その頃、生活もめちゃくちゃキツかったんで、とりあえず次に向けて動こうと思ったんです。
——キツいというのは金銭的に?
Miyauchi:というより、ラッパーとフリーターの二足のわらじが厳しくて。1日の睡眠時間が3、4時間みたいなことがずっと続いてたんです。その生活から抜け出したい一心でひたすら作り続けました。リリースする時期を決めて、それまでにできた曲の中から良いものを詰め込んじゃおうという大枠だけ決めて『”The Mixtape”』は作ったんです。
——リリックの書き方や内容に変化はありましたか?
Miyauchi:1stの続編みたいな感覚で考えていて。違いでいえば、よりクリアな言葉遣いというか、自分に近いリリックになったと思います。あと、当時、Watsonくんをめっちゃ聴いていて、ラップにはダブルミーニングとかワードプレイの楽しみ方があることを知ったんです。だから、そういう要素も入っています。
——自分に近いリリックを書くうえで心掛けていることは?
Miyauchi:日常生活で使わない言葉を使わないようにしています。普段、自分はHomieって言わないんです。だからHomieじゃなくて友達と言う。Shortyと言わずに彼女と言う。
——Mother Fuckerと言わない代わりに……。
Miyauchi:死ね、みたいな感じです(笑)。
——そう考えるようになったのはどんな思いから?
Miyauchi: “聞かせる”というよりも“伝えたい”という気持ちが強いんです。ANARCHYさんやKOHHさん、ZORNさん……自分が感銘を受けたり、影響を受けたアーティストがそういう方々なので。彼らのリリックが胸に入ってくるのって、曲がその人自身に近いからだと思うんです。だから入ってきやすいし、こっちも“聴こう”と思える。だから、なるべく嘘をつかないように意識してますね。
——ラップする人間の“人となり”がわかった方が喰らうんじゃないかと。
Miyauchi:そうです。洋楽を聴いていてリズムやフロウで喰らうこともあるんですけど、やっぱり言葉を聞いてその人のヴァイブスが伝わってきた方が胸の奥の方が燃える気がするんです。そういう音楽が好きだったから、俺もそれをめざそうと。日常で起きたことや、目の前にあることを自分なりのユーモアを含めた捉え方で歌う。1stのときからずっとそれは頭にあったと思います。
——リリックはフリースタイルで書くんですか?
Miyauchi:その方が多いです。まずフリースタイルでやって、「今のいいね」と思ったらメモに残して、そのあと添削していく。自分で「いいな」って手応えがある曲は大体、一筆書きで書くことが多いですね。フリースタイルでヴァースを蹴ってるときに、もう次のヴァースの歌いだしが頭の中でできていて、すごく短時間でできる。「Swag」も1時間くらいでできた曲です。