IRIS MONDOインタビュー 熱狂のアジアツアーも完遂、中国版インスタ“RED”など多彩なアプローチで国境を超えファンベース広げるオルタナ ✕ ポエトリー

インタビュー
2025.8.22
IRIS MONDOインタビュー 熱狂のアジアツアーも完遂、中国版インスタ“RED”など多彩なアプローチで国境を超えファンベース広げるオルタナ ✕ ポエトリーのサムネイル画像

IRIS MONDO(L to R : くるみスカイウォーカー、スーパーさったん)

 
国内インディペンデント2人組バンドが、アジア各国を揺らしている。くるみスカイウォーカー(Vo)とスーパーさったん(Gt)からなるIRIS MONDOは、オルタナティブロックなサウンドとポエトリーリーディングが特徴のバンドだ。2024年6月にリリースされた楽曲「MY SWEET KILLER」は、中国版InstagramことRED(小紅書)にて総再生回数20万回超を記録。さらに「Day.1」「比と並」といった彼女たちの代表曲も軒並み支持を集め、2024年10月には中国・浙江省湖州で開催された野外フェス『2024黃埔江源戶外潮流生活節』からオファーを受け初の海外公演を行った。今年6月には4都市7公演のアジアツアーを成功させるなど、その熱狂はプラットフォームをまたぎ、国境を超えて広がり続ける。

 
 
バンドの強みを再確認した最新作『IM』

――6月7日にリリースされたミニアルバム『IM』は、現体制で初のまとまった作品ですよね。

くるみスカイウォーカー(以下、KSW):それまでは「出来たらすぐに出したい!」っていう思いでずっと単発リリースが続いてたんですけど、元々ミニアルバムを作りたいとはずっと考えてたんです。そして今回、初めての経験としてやってみようっていうことで。

スーパーさったん(以下、さったん):3月19日に開催した渋谷WWWでのワンマンで大きい発表がしたかったのもあって、このタイミングになりました。

――作品全体を通してのテーマはありましたか?

KSW:楽曲や作品のテーマは歌詞を書いてる私が考えてるんですけど、今回フォーカスしたのは『IM』、つまり自分自身のことでした。WWWワンマンのタイトルは『I’m』だったんですけど、それは「I am」の略称でもあるし、IRIS MONDOの頭文字でもあるんです。くるみスカイウォーカーから見た「IM」、スーパーさったんから見た「IM」、お客さんから見た「IM」というものを題材にして制作しました。

――今作の特徴として、複数の共同プロデューサー/アレンジャーを楽曲ごとに迎えている点が挙げられます。

さったん:以前までは一人のプロデューサーさんと一緒に曲を作っていたんですけれど、「本音」(2024年1月リリースのシングル)からは私たち二人のセルフプロデュースでやっていて。そうなると、過去の楽曲と最近の楽曲で方向性に良くも悪くもバラつきがあるっていうことが気になってきたんです。なので、今回は色んな方との制作を通して改めてIRIS MONDOの持っている色を探ろうという狙いがありました。

――たしかに、プロデューサーによってそれぞれIRIS MONDOらしさの引き出し方が異なっていて興味深いです。。

さったん:そうですね。プロデュースとかアレンジっていうよりはコラボみたいな感覚です。これまではあんまり他人とコラボってやってこなかったんですけど、今作を通して楽しさがわかったので、今後はもっとコライトを取り入れていこうかなって考えてます。

KSW:二人だとどうしても見え方が凝り固まっちゃうから、それを崩してくれる外からの刺激は大事だなと思いました。みなさんが内側からは見えないIRIS MONDOの長所を見つけてくれたおかげで素晴らしい楽曲が出来たと思います。

――それでは、収録曲について順番に聞かせてください。まず一曲目の「LIFE」は磯谷直史さん(THE ANDS)がプロデューサーを務めた一曲です。

KSW:私が考えたサビのメロディーと伴奏を、磯谷さんに広げてもらいました。このミニアルバムを作るにあたって、自分の人生や伝えたいことについて改めて考えた時のことを歌詞にしてるんです。サビの「僕も君も泣いていたんだよ」っていうフレーズは、それぞれにとっての「IM」を想像しながら書きました。編曲のタイミングでメロディーや歌詞を若干書き換えたりはしてるんですけど、込めた思いは最初から変わってないですね。

さったん:BPMが早い曲でポエトリーリーディングをやっているのは新しい試みです。「本音」とか、これまでのポエトリーリーディングを入れた曲はBPM100前後くらいの曲が多かったんですけど、今回は168なんですよ。でも、これからのIRIS MONDOの楽曲は全曲どこかしらにポエトリーリーディングを入れたいよねっていう風に話していて。この曲でも挑戦できて良かったです。

――二曲目の「Our Beginnings」についてはいかがですか?

KSW:元々、二人だけで作った曲があって、それをまるっと編曲してもらいました。原型が分からないくらい変わったよね。

さったん:完全に二人の、声とエレキギターだけで曲を作ってみようってトライしたことがあったんですよ。そこに環境音とかを加えたリリースされてないデモがあったんですけど、「これ、ライブでできないよね」ってなって(笑)。それで、ISAFATさんにアレンジをお願いして。

――三曲目の「KICK ASS」も、ISAFATさんが手がけられていますね。良い意味でダーティーかつラフな仕上がりが印象的です。

KSW:まさにそういう意識で作りました。「LIFE」「Our Beginnings」で自分の内面について歌った後に、外に向けて発散するような曲を置きたいっていう意味で、「KICK ASS」はこのポジションにしてます。「別にこんな風に生きたっていいじゃないか」みたいな。

 
――エスケさんがアレンジを担当した四曲目の「エベレスト」からはガラッとムードが変わりますが、これはラブソングと捉えて良いのでしょうか?

KSW:そうですね。私、ラブソングっていうものがあまり書けないタイプなんですけど、今作にも再録バージョンで収録されてる失恋ソング「Day.1」でIRIS MONDOを知ってくださった方がけっこういらっしゃって、再生回数も伸びているので、「Day.1」よりもさらに進化した失恋ソングを作ろうと思って。「Day.1」は「なんで?なんで?」っていう感じの曲ですけど、「エベレスト」は「そうだよね。二人で頑張ってきたけど、どうしても合わなかったからしょうがないよね」っていう。人間的に成長した一曲になってます。

さったん:「Day.1」はくるみちゃんが考えたピアノフレーズから構築した曲なんですけど、次はピアニストにフレーズを作ってもらってそこから曲を組み立ててみたいよねっていう話になって。共通の知り合いでキーボーディストのChiinoさんにループできるフレーズを制作してもらいました。あくまでメインはピアノで、ギターはそこに上付けしながら、ソロだけは前に出るようなイメージになっています。

KSW:最初は「比と並」みたいなイメージで社会に対して抗う自分を描こうと思ってたんですけど、いただいたピアノのフレーズがあまりにも切ないので、「これは失恋ソングにしたら泣けるぞ!」ということでこういう曲になりました。

――続く「ドランクマジシャンボーイ」でまたしても雰囲気が一転しますが、こちらもエスケさんとの楽曲なんですね。

さったん:同じアレンジャーさんだとは思えないですよね(笑)。

KSW:私たちの楽曲って、早口だったりポエトリーだったりで、わかりやすく楽しめて盛り上がれる曲が少ないんですよ。だからみんなで一緒に歌える曲を作ろうっていうことで、まずは二人で作り始めました。歌詞にも敢えて自分が酔っ払ってる時に言ってる言葉とかを入れたり。私、酔っ払うとけっこう深いことを言い始めるんですよ(笑)。Aメロ2回し目の「明日には世界が終わっちゃうとしたら / 今日まで悔いなく人生生きてこれました」って、酔っ払ってない時には言えないんです。でも、酔っ払うとなりたい自分になれる。それを曲にしたいなと思って。お酒って大事な時もありますよね。

――くるみさんって、禁酒してませんでした?

KSW:去年8月から始めて、今年3月のワンマンの最中、それこそ「ドランクマジシャンボーイ」の演奏前にビールを開けてステージ上で解禁しました。もう、最高に美味しかったですよ。

――溜めに溜めて(笑)。ということは、この曲はIRIS MONDO流のパーティーソングみたいな。

KSW:そうです。でも、ただのパーティーソングにはしたくなかったので、歌詞にはちゃんと意味を込めました。

さったん: あと、実はネットでバズった「ひゃくえーん」って鳴く猫の声がさりげなく入ってて……

――猫の声?

さったん:くるみちゃんに教えてもらった動画なんですけど、二人でめちゃくちゃハマってて(笑)。なので、「100円ちょっとの魔法」という歌詞のところに合わせてサンプリングを入れてみました。

――気づかなかった、改めて聞いてみます(笑)。そして「Day.1 (Re_2025 ver.)」「比と並 (Re_2025 ver.)」の2曲は、代表曲を生バンドで再録しています。

KSW:IRIS MONDOが少しずつ世の中に知られはじめるきっかけになった2曲ですね。「Day.1」は失恋ソングとしてTikTokで共感を得て、「比と並」は路上ライブの映像がInstagramで伸びました。IRIS MONDOの二面性が表れてる曲でもあって、「Day.1」のように人の気持ちに寄り添うところと、「比と並」で歌ってる生きることに対する貪欲さが私たちの柱になってるんです。どちらもライブでやり慣れてる曲だし、過去の音源とは歌もギターも変化してるので、改めて自分達のものになった「Day.1」と「比と並」を聴いてほしいという思いで再録しました。

――ライブを重ねて曲が成熟したんですね。

KSW:元の音源は、完成した二日後くらいに録りましたからね。

さったん:それと、いつものライブではドラムのサポートを加えた3人編成で演奏するんですけど、3月のワンマンではベースも入れた4人編成でやったんですよ。その経験もあって、フルバンドで録ってみたくなって。初めて生ドラムのレコーディングをやりました。

KSW:良い経験になったよね。

さったん:トリプルタイムスタジオのエンジニアさんも楽しくやってくださって。

KSW:録り音もすごく良いし、楽しかったです。


IRIS MONDO『IM』

IRIS MONDO『IM』各サブスク

 

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