360 Reality Audioで広がる音楽表現 アーティストに新たな可能性をもたらす次世代の音楽フォーマット

コラム・特集
2024.3.28
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360 Reality Audio

音楽をとりまく技術が急速にアップデートしている現在、音楽体験はより身近にそしてよりリッチになっています。その中で、昨今注目されている新たな音楽体験、音響技術がSONYが提供する360 Reality Audio(サンロクマル リアリティ オーディオ)。国内においてもその技術が持つポテンシャルは広まりはじめています。今回は、360 Reality Audioを実際に体験し、楽曲をミックスしたアーティスト、クリエイターに迫りながらその魅力をお届けします。

 
360 Reality Audioとは

音楽制作の現場に新たな可能性をもたらしている360 Reality Audio。アーティスト、クリエイターは、音に位置と動きの情報を持たせ360度全天球空間どこにでも音源を配置する「オブジェクトベース方式」により、これまでにない立体的な音響表現をすることができ、リスナーに対し圧倒的に没入感のある音楽体験の提供が可能となります(※)。リスナーは、音楽ストリーミングサービスで360 Reality Audioを楽しむことができ、国内では現在Amazon Music Unlimitedが対応しています。
※ドルビーアトモス、およびそれをベースとしたAppleの空間オーディオが前後左右上で音響空間を実現しているのに対し、360 Reality Audioは前後左右上に加えて、下の方向にも音を配置して音響表現が可能となっている。

 
https://youtu.be/nBh_FM7ztxA?si=R6fntouCtrkRJOW4

https://youtu.be/5pckaPB1B-Y?si=Fi_aAJ_w0pKl_3-5

 
海外ではヒット曲が360 Reality Audioミックスされることはすでにスタンダードになりつつあるといいます。国内のアーティストサイドにもよりカジュアルな利用が期待される昨今、新たに360 Reality Audioで実際に楽曲をミックスした(360 Reality Audioワークショップに参加した)アーティスト / クリエイターの声を360 Reality Audio Visualizerとともに紹介していきます。

 
 
360 Reality Audioを利用したアーティスト/クリエイターの声
 

KIRINJI

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
今回はステレオを想定して制作されたトラックを元に360 Reality Audioミックスを作りましたが、あらかじめ360 Reality Audioでミックスすることを想定して作業を始めればアレンジのアプローチもまた違ってくるでしょう。曲や歌詞の作り方にも影響を及ぼすかもしれません。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
360 Reality Audioによるミックスは、ステレオより音場が広がるのでマスキングが減り、ヴォーカル類や楽器の表情、空間系エフェクトの余韻が聞こえやすくなった印象です。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
ソフトの価格も思った以上に抑えられているし、ヘッドホンの環境で作業するのであればスピーカーをたくさん揃える必要もないので「ちょっと導入してみようかな、、」という気にさせてくれます。
 
期待することとしては、現状Amazon music上のみの聴取ですが、他のサブスクリプションサービスでも聴けるといいですよね。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
こちらはこのシステムに“特殊効果”を期待していまいましたが、ご一緒したエンジニアの當麻さんは、あくまで音楽的な表現として最適なところに着地させようと努めていらっしゃるのが印象的でした。

KIRINJI「Runner’s High」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CDFFG6L3?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
nowisee

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
新しい時代を感じることができ、とても有意義でした。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
音楽の新しい可能性を感じました。今回はステレオで聞く前提の曲をステムから360にしたのですが、360で楽曲を制作すれば確実に表現の幅や、一般の人でもわかるような感動が作り出せると思いました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
ここまでやるなら、真上や真下、背面のスピーカー配置も期待します。

 
Q4. 制作プロセスについて学んだこと
 
360のプラグインをPTで使うにあたってのコツや、配置の位相のシビアさなどとてもわかりやすく教えていただきました。

 
Q5. 制作中に取り組んだ挑戦
 
コーラスを360度回してみたのですが、リアルにスピーカーがないところを通るとあまり通過してる感じがなく、どこが効果的かを探るのが面白かったです。

nowisee「not the end」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B095SWKSNG?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
BANVOX

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
映像と合わせて聴いた時にその場にいる様な臨場感を味わえました。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
声ネタ等がPanでは出せない回る感じがかなり良いなと思いました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
もっと手軽にできる様になったらプリセット等を作って毎回この360Mixを使用したいです。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
臨場感を演出するのにオートメーションを書いているのを見て、ランダムに動かしたら面白そうだなと思いました。

 
Q5. 制作プロセスについて学んだこと
 
プロジェクトを見せて頂いた時に、かなり勉強になり曲作りの時にPan振り等をもっと360度向けに意識したいと思いました。

 
Q6. 制作中に取り組んだ挑戦
 
操作性が慣れないと難しいので、もうちょっとDAWで触りやすくなれば勉強したいです。

BANVOX「Don’t Leave Me」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0BJP4G9P4?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
SO-SO

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
今までのミックス、マスタリングとは全く違うノウハウと、実際にスピーカーで聴く本物の360 Reality Audioを体験できてとても良い刺激になりました。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
もはや別の曲と言ってもいいほどです。360でしかできないパンニングの表現に自分の曲ながら凄くワクワクしました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
より多くの人にスピーカーで本物の360 Reality Audioを体験して欲しいです。小型のスピーカー等で、家にも置ける360のサウンドシステムがあればいいなと思いました。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
オブジェクトの配置が凄くて手慣れていて、配置やパンニングの知識が凄かったです。

 
Q5. 制作プロセスについて学んだこと
 
未経験者でしたが、オブジェクトの概念とプラグインの使い方を丁寧に教えていただき、独力で360のミキシングがある程度できるようになりました。

 
Q6. 制作中に取り組んだ挑戦
 
オブジェクトをグルグル回すオートメーションを書くのに苦戦しましたが、とても楽しかったです。

SO-SO「Running Man」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CTHBP7HF?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
SHIROSE (from WHITE JAM)

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
今後360で入稿したい、楽しみと思いました。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
特に一番下と一番上がクオリティがあがった、空間が広くなるのでボーカルがさらに聴きやすいので僕の音楽と親和性があると感じました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
・音が立体な分、目で見えるものも立体で触りながらミックスできたら楽やなと思いました。
 
・アップルビジョンと同期して、置いてある楽器のその位置での再生。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
お二人のスキルの高さ、速さ、若さ、この技術を若いエンジニアが楽しんでる事が普及する証拠だと思う。

 
Q5. 制作プロセスについて学んだこと
 
主にパンニング。

 
Q6. 制作中に取り組んだ挑戦
 
あのあと帰ってミックスやってみました。360ミックスでミックスしたものをステレオ環境で再生された時に潰れないコツがあるかなぁとは思いました。

SHIROSE (WHITE JAM)「Tattoo (feat. WHITE JAM)」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CYBB9T9C?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
t+pazolite

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
バイノーラルオーディオのように音像が動くだけでなく、空間に別々で音が存在する感覚があり、まさしく「音の中に自分が立っている」かのような印象を受けました。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
意外な音が鳴るなど、曲中にいい意味で違和感がある曲が好きで自分でもそういった要素をよく入れるのですが、360 Reality Audioで今までと違ったアプローチで実現できることに驚きました。
 
「もしまた360 Reality Audioで制作をするなら、次はこういったギミックを入れたい」など、楽曲のアイディアの幅も広がるという意味で貴重な経験だったと思います。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
エンコードの際、どうしても再現性の担保に限界があるので、制作時のクオリティを担保できるようなコーデックや、非圧縮でも問題ないようなインフラの実現がされればいいなと思っています。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
Stereo版と比べるとどうしても楽曲の印象が変わってしまいがちな差異を最低限に抑えていただけたことや、元々癖の強いミックスの方向性を変えることなく、360 Reality Audioに適したミックスに仕上げていただいたことには流石プロ、と非常に参考になりました。

t+pazolite「Rush Away」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CYYYKP5Z?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
reina

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
初めてみるようなスピーカーの数と配置、モニターに最初は緊張感を覚えましたが、驚きがとても多く、もっと沢山の曲で体験したかったです。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
他の音とのバランスはより考える必要があったもののボーカルだけで考えると、より表現の幅が広がる事から歌詞やメロディに対して更なる選択肢を感じました。360° Reality Audio前提で曲を作りたいと強く思いました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
配信される曲のみならず、展覧会などイマーシブな映像に加えてリアルな音響もしやすくなるとより楽しめるだろうと思いました。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
仕上げの過程ではないのですが、360° Reality Audio では普段のミックスマスタリングとは全く異なる知識を必要としながらもエンジニアさんがどちらに関する質問も分かりやすく答えており、専門性が高いにも関わらず明快な回答をされる姿がとても印象的で、自分もより腕に磨きをかけようという気持ちになりました。

reina「A Million More」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CYQ8P5B8?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
mekakushe

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
非常に丁寧に360 reality audioを体感できました。スピーカーだけでなくモニターがあることで、視覚的にも楽しむことができました。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
2mixステレオでは聴こえなかった音が鳴っていて、立体感を感じられました。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
一般の方が気軽に体験できるスポットやイベントがあるといいと思いました。ヘッドフォンでも十分ですが、やはりスピーカーの体験は忘れられないものでした。

mekakushe「かくれんぼ」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CTZTGBST?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
Albert Connor

Q1. 今回360 Reality Audioワークショップを体験した感想
 
360°音が自由に移動できる事によって、表現の幅が広がったり、音像やイメージの変化があって面白かったです。

 
Q2. 初めて自分の楽曲を360 Reality Audioで聴いた印象
 
楽曲内に登場する鷹が近くを飛んでいるように動いていたり、ボーカルやビートの配置の変化によってより楽曲に入り込める印象でした。

 
Q3. この技術が今後さらに普及するにあたって、期待すること
 
360の技術を取り入れたMVなどを作成してみたいです。映像と音楽がより深く面白みを増して楽しめる気がして。再生できるアプリだったり今ある動画アプリでも見れるようになったらいいなと思います。

 
Q4. プロのエンジニアが曲を仕上げる過程で、特に印象的だったこと
 
やはり音源のパーツを聴かせる位置の調整です。実際に画面を見せて頂いたので印象的でした。

 
Q5. 制作プロセスについて学んだこと
 
これからは音を左右に振るだけでなく、様々な位置から聞かせることができると知れたので、メインボーカルを支えるガヤの作り方だったり、ビートの聞こえ方までより拘りたいと感じました。

 
Q6. 制作中に取り組んだ挑戦
 
360°ある分、マスタリングする際の各トラックのボリューム感のバランス調整は自分の感覚を信じてエンジニアさんと挑戦しました。ぜひ、新しいハナミズキremixを楽しんでください。

Albert Connor「ハナミズキ (feat. 一青窈) [Cover] [remix]」の360 Reality Audio音源を聴く


https://music.amazon.co.jp/albums/B0CGX4J3T5?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
Noflik

Noflik「Local City」の360 Reality Audio音源を聴く

https://music.amazon.co.jp/albums/B0C3CYCDVN?do=play&trackAsin=B095SW9CX1&ref=dm_sh_lp5dmFE0pcRV1f5UojZE2l2oE
(Amazon Music Unlimitedが開きます)

 
 
360 Reality Audioミックスを手がけるエンジニアから
 
360 Reality Audioミックスが可能なスタジオの窓口はオープンになっており、もちろんインディペンデントアーティストもトライ、チャレンジは可能。アーティストやクリエイターに対しこの新しい技術を音楽制作にどう活用していってほしいか、360 Reality Audioに対応する山麓丸スタジオのエンジニア・當麻拓美氏にも話を聞きました。

當麻拓美
エンジニアの當麻拓美氏

Q1. 今回のワークショップを通じての所感や感想をお聞かせください。
 
今回のTuneCore WorkShopではまず初めに、360RealityAudio楽曲を体験していただいたのですが、各ジャンルのアーティストの方々に様々な感想やご自身の楽曲における制作イメージを提案、相談いただけたのは率直にうれしかったですし、楽しかったです。
 
実際にご自身でMIX作業をされる方もいらっしゃって、360RAに対する解釈や創作意図などは新鮮で気づきもあり僕自身の成長に繋がるとても有意義な時間でした。

 
 
Q2. 今回のワークショップで、印象的なエピソードやアーティストとのやりとりなどあれば教えてください。
 
参加されたアーティストの皆さん、360RAに対する理解の速さと実際に360RAMIXをする楽曲に対してどういったアプローチをしていくかをすぐにイメージされていたのは流石だなと思いました。中には360RAに合いそうな他の楽曲でも試してみたいと、早速他の楽曲でもイメージをされていたのも印象的でした。

 
 
Q3. 360 Reality Audioミックスに興味のあるアーティストへメッセージをお願いします。
 
より多くのアーティストの方がこのフォーマットに触れる事で既存の曲であれば新たな一面が見れたり、このフォーマットを活かした表現の仕方が生まれたりすることもあるかと思います。
 
アーティストの方々から生まれるアイデアと360RAのフォーマットにより、表現の可能性も広がっていくと思います。創作活動の中で新たなインスピレーションの一環として実際に一度体験していただけたら幸いです。

 
 
今回、360 Reality Audioミックスを体験したアーティスト / クリエイターも、その技術からそれぞれ新たなインスピレーションを得た模様。360 Reality Audioの持つ大きな可能性に、今後も要注目です!

 
 
360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)詳細
山麓丸スタジオ