【コラム】1stアルバム『bud』で示した恐るべき完成度 驚異のニューカマー5Leafの魅力とは

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2025.3.6
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LANA、Elle Teresa、7、CYBER RUIなど若手フィメールラッパーが続々と活躍を見せている中、2001年生まれ広島県出身の“5Leaf”が2月にリリースした1stアルバム『bud』がApple Music ヒップホップ/ラップ トップアルバムで最高12位となり、収録曲が次々とApple MusicやSpotifyの公式プレイリストインを果たし注目度の高さを証明した。本稿では、彼女の登場になぜヒップホップ・リスナーが期待を寄せているのか検証していく。

5Leafは、現在所属しているレーベル「88LABEL」が主催するラッパーコンテストで優勝したことを機にラッパーとしてのキャリアを本格的にスタートさせた。2023年9月に1stシングル「Way of Life」でデビューすると、Apple MusicやSpotifyでいきなりの好チャートアクションをみせた。まず何よりも、「決して幸せとは言えない過去」である自身の家庭環境を赤裸々に吐露する勇気に、彼女の強い覚悟を感じさせた。そして曲全体を貫くのはハングリー精神。登下校中に2Pacを聴いていた彼女が音楽で成り上がることを誓うバースは、まるでヒップホップで生きていく運命にあったような5Leafのストーリーの序章のようだ。

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その後はABEMA「ラップスタア2024」に挑戦すると、応募総数5,785人の中から選ばれた40人による「SELECTION CYPHER」へ進出。ここで敗退してしまったものの、この番組で多くのヒップホップ・ファンに彼女は発見された感がある。ドープな低域と心地よい中高音域を自在に行き来するフロウのセンスとスキルにくらった人は多いはず。「ヒップホップで生きていく運命」と筆者が前述したのは大袈裟なのではなく、こうしたミュージシャンとしてのポテンシャルの高さにも起因している。

5Leafが驚異のニューカマーである理由は既にどの曲もクオリティーが高いことにもあって、ビートメーカーR.I.K、プロデューサーZERO(YVES&ADAMS) の手腕が本当に光っている。溜まり場の公園に集まる仲間や心配をかけた祖母にまつわるほろ苦い記憶を追体験させる2ndシングル「bittersweet」は、複雑な心象を見事に楽曲に落とし込んだ。中毒性が高いフックやセンチメンタルなトラックが良い。MVで仲間に見せる5Leafのキュートな表情も魅力的だ。

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3rdシングル「3AM」では、「飯も風呂も後回し」でペンを走らせ自問自答する彼女のストイックな姿勢が垣間見えて単純にかっこいいし、いちラッパーとして信頼を覚える。

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精神的な「破壊と再生」を描いた4thシングル「Destruction」は、最早5Leafのシグネチャーと言える内省的なリリックが刺さる。

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こうした“男前”とでも言いたくなる硬派な音楽スタイルもフィメールラッパーとしては新鮮であり、シーンのリスナーにとっては待望とも言えるかもしれない。奇をてらわず真っ向勝負ができるのは実力があるからで、フロウとメロディのセンス、声質、華のある容姿といった才能を持ちながら、高みを目指して邁進する彼女は早くも無敵と評したくなるのは筆者だけではないだろう。

 
そして、1月にリリースした最新シングル「NO RULES」は、音楽そのものをテーマにしたキャッチーで開放感のあるアンセミックなナンバー。これまでの曲に関しても言えることだが、5Leafの作品の楽曲テーマというのは王道、言ってしまえば幾度となくこすられている題材にもかかわらず、彼女の手にかかるとオリジナルの輝きを放ち、加えてクラシックの貫禄さえ漂うほど完成度が高い。また、この曲のMVで彼女はダンスも披露。幼少期からダンスもやってきた彼女を、令和の安室奈美恵と表現する声(「和製リアーナ」と呼ぶ人も)も真実味を帯びている。

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そんな5leafの物語に向けた布石となる1stアルバムに客演が一切ないというのも潔くて彼女らしい。既発シングル以外の収録曲に関しては、“主役”になるため都会に出てきた強い意志を投影した上京ソング「Grab a dream」から幕を開け、“今はこれが遺書”というラインに震えるタフなナンバー「GO」、低音のがなりが一層際立つ、男性に向けた痛烈なディス曲「If I were a man」などを経て、“眠るベッドの中じゃ見えなかった dream”を抱く現在地を綴った「dreaming…」で幕を閉じる。全10曲でトータル30分にも満たないアルバムだが、重みがすごい。彼女が自分という人間ととことん向き合ったから見えたリアルな言葉たちは、リスナーが心のうちに秘めていた感情と深く共鳴している。その輪は着実に広がりを見せており、2025年はさらに知名度が上がるだろう

たとえ、普段はラップ・ミュージックに親しみがない人でもホンモノだとわかる、世代やジャンルを超越できる国民的アーティストになる予感がする5Leaf。3月7日からスタートする『bud』リリースツアーで、その可能性を今のうちに目撃してほしい。


5Leaf『bud』

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この記事の執筆者
堺 涼子
連絡は「sakairyoko8@gmail.com」まで