【レポート】かめりあ、Mili、biz×ZERA、tayoriの4組が登場 ― 360 Reality Audio 体験視聴会&トークセッション

ソニーが提供する360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)を実際に体験するリスニングセッションイベントが、3月24日・25日に東京・渋谷のAmazon Music Studio Tokyoにて開催。24日にかめりあとMili、25日にbiz×ZERA、そしてtayoriが登場し、トークセッションと360 Reality Audioに最適なスピーカー環境での視聴体験会が行われた。本記事では、その模様をお届けする。



ボーカルやコーラス、楽器などひとつひとつの音源を球状の空間に配置し、生演奏に囲まれるような没入感を実現する360 Reality Audio。アーティストの楽曲制作の可能性を拡張させるだけではなく、ライブ作品にも導入され、新たな創造体験・視聴体験を生み出している。
今回のイベントは、『360 Reality Audio x TuneCore Japanアーティストプロジェクト』の一環として開催された。参加したデジタルネイティブアーティスト4組は、YouTubeでの360 Reality AudioのMV動画公開(YouTube上では2mixでの360 Reality Audio)と、360 Reality Audio形式にネイティブ対応のAmazon Music Unlimitedでの楽曲配信を実施。各アーティストのYouTubeチャンネル・SNSにて本イベントへの参加者を募集し、抽選により選ばれたリスナーが各回に集った。
かめりあ

「文字通り次元が一つ増えたような衝撃を受けた」(かめりあ)
3月24日の一組目に登場したのは、音楽ゲームプレイヤーからの圧倒的な人気を誇り、クラブミュージックを中心に幅広いジャンルの楽曲を手がける作編曲家・作詞家のかめりあ。以前360 Reality Audioワークショップに参加しており、初めてデモ音源を聴いた時の感想について「上下左右から音に包み込まれるような環境がある。ずっと二次元的な環境で制作をしてきたので、文字通り次元が一つ増えたような衝撃を受けました」と振り返る。

本プロジェクトのために制作された楽曲「Seagull」は、カモメの鳴き声や打ち寄せる波音などの環境音が取り入れられている。「カモメが横切る様子を、左右だけではなく前後や上下の移動も意識しながら表現した」という。懐からスマートフォンを取り出し、音の配置を視覚的に掴むため制作中に参照していたというVRヴィジュアライザーを公開する場面も見られた。

MVの制作については、「わかりやすく目に見えて移動するものをテーマにしたかったので、カモメをモチーフにしました。音と連動したカットの切り替えを見ていただけたら」と語る。また、参加者から制作中に悩んだことについて問われると、「ぶっちゃけずっと悩み続けてたんですけど」と前置きしつつ、「自分の曲はかなり音が多いので、360 Reality Audioの仕様に合わせてトラックをまとめる作業が大変でした」と回答した。
最後に、視聴会に向けて「360 Reality Audioをフルなポテンシャルで味わえる環境を楽しんでいただきたい。カモメの飛行や水面の情景を意識していただけたら面白いんじゃないかと。横一列に並んでいた楽器が徐々に上昇していくような仕掛けもあります」と楽曲の聴きどころを解説し、トークセッションは終了した。

ここから参加者はグループごとに移動し、360 Reality Audioを合計13台のスピーカー環境で体験。体験会が終了すると自然と拍手が起こり、「ヘッドホンでの視聴とは全然違う」「音楽自体が映像になっているような感覚」などの感想が交わされた。

Mili

「360 Reality Audioがなかったら『I Am a Fluff』は生まれなかった」(Cassie)
続いて二組目、ゲーム・アニメなど数々のタイアップ作品でも知られる音楽制作集団・Miliより、コンポーザーのYamato KasaiとボーカリストのCassie Weiのトークセッションは和やかな雰囲気でスタート。当初は既存曲を360 Reality Audio用にミックスすることを想定していたが、ソニーのスタジオで実際のサウンドを体感したことで考えが変わったそうだ。「LとRの2mixとは違って、音を配置し放題。今まで当たり前だった前提が通用しなかったので、完全にゼロから『I Am a Fluff』を書き下ろしました」(Kasai)、「これまでの曲では360 Reality Audioの面白さが存分に伝わらない。360 Reality Audioがなかったら『I Am a Fluff』は生まれなかったと思います」(Cassie)。

「動きや空間を感じさせるために、あえて音を配置しないという選択をした」(Kasai)
Miliにとっても新たな挑戦となった新曲「I Am a Fluff」制作のカギを握ったのは、音に「隙間」を作ることだった。Kasaiは「トラック数が増えると音が濁って、輪郭が捉えにくくなっていく。動きや空間を感じさせるために、あえて音を配置しないという選択をしました」と語る。
「I Am a Fluff」には、360 Reality Audioならではのこだわりが満載だ。「左奥にピアノの音を固定し続けることで、それを軸に他の音がどこにあるかを掴めるようにしました」「ギターは、弦を一本一本弾いて録音しています」。Kasaiの言葉に参加者は驚きと納得を込めて頷く。

またMVについて質問されると、Kasaiは「ある音に対してガイドのように光が点滅しているんです。そういった仕掛けによって音の動きをより明確にしている」と、映像へのこだわりも強調。Cassieは普段はなかなか明かさないという楽曲世界の裏設定を参加者だけに特別に伝える場面も。
トークセッションの締めくくりに、二人はそれぞれ「MVのストーリーに正解はないので、それぞれ自由に想像してみてください」(Cassie)、「プロのミュージシャンでもなかなか体験できない環境なので、音を浴びて楽しんでください」(Kasai)と注目のポイントを指南してくれた。

極上の設備で行われたMV視聴会には、参加者も興奮を隠し切れない様子。「従来の立体音響と全然違う」「楽曲がもっと好きになりました」といった言葉を聞くことができた。

biz×ZERA


「この技術を使って音を作れるのは楽しみ」(biz)
翌日3月25日の一組目には、Ado「夜のピエロ」などの楽曲も手がけるボカロP・作曲家のbizと、同じくボカロPとして活躍するZERAがリモート出演。二人は今回、2022年末に本格始動したユニット・biz×ZERAとして、代表曲「愛猫」を英語詞でセルフカバーした「Love cat」を360 Reality Audioで制作した。その技術をソニーのスタジオで体験したbizは「すごく新しい経験で、この技術を使って音を作れるのは楽しみだなと感じた」、ZERAは「顔の周りの横軸だけ360度ではなく、縦軸、つまり上下からも音が響いてきて驚いた」という。
bizは「僕たちの曲にあるASMR的な要素をより高い解像度で届けられる」と、360 Reality Audioとbiz×ZERAの楽曲に強い親和性を見出したそうだ。「そこでZERAちゃんが、『愛猫』を英語で歌うというアイデアを出してくれて。英語の子音の発音によってよりASMR感が強調されるんじゃないかということで制作が始まりました」と、知られざる裏側を明かしてくれた。
「普段より細かくクリアな楽曲を作れる」(ZERA)
様々な楽器の音色や効果音が織り交ぜられる彼らの楽曲は、2mixで細部まで表現しきれないというジレンマを抱えていた。ZERAは「360 Reality Audioは色んな場所に音を配置できるから、普段より細かくクリアな楽曲を作れるのかなと思った」と語る。
そうして完成した「Love cat」の聴きどころについて問われると、bizは「ドロップの部分は声の配置にこだわっています。BizとZERAのウィスパーボイスに囲まれるような感覚を楽しんでほしい」、ZERAは「英語の発音を一生懸命練習しました」と回答した。
トークセッション後、参加者は360 Reality Audioを合計13台のスピーカー環境で体験。さらに、biz・ZERA両名とオンラインでの個別トークタイムも設けられ、楽曲を体験した感想を伝えるなどプレミアムな時間となった。

tayori

「真っ先に浮かんだのは宇宙のイメージ」(raku)
本イベント最後のアーティストは、コンポーザーのraku・tazuneruとボーカルのisuiによる3人組音楽ユニット・tayori。視聴会の前に参加者に向けたビデオメッセージセッションで、楽曲の制作秘話やポイントを解説した。
本プロジェクトにて制作された新曲「月の唄」を作詞作曲したrakuは、「南半球が存在する」という360 Reality Audioとのファーストコンタクトについて、「たとえば映画館で上や後ろから音を感じたことはあったけれど、下から音が響いてくるのは新鮮で衝撃的でした」と語る。
その体験を通してrakuの脳内に浮かんだ、宇宙に広がる天体、自身を中心に公転している衛星のイメージが楽曲の原点になった。そのアイデアを具現化するために盛り込まれたSF的なシンセサウンド(ビデオ内では実際のサウンドを鳴らしてくれた)が楽曲の核となり、360 Reality Audioの空間内を縦横無尽に駆け回る。
エンジニア・宮沢俊介との共同作業は、かつてないほどの長期戦になったという。rakuは、「2mixのステレオ音源ほど前例が多くないし、正解がまだない。選択肢が多くて自由な代わりに迷いもあって、大変だけど楽しかったです」と率直な思いを明かす。

「全方位から音が降り注ぐ技術に、壮大な楽曲がマッチしている」(isui)
完成した「月の唄」を360 Reality Audioで体感したisuiは、「全方位から音が降り注ぐ技術に、壮大な楽曲がマッチしている」と感じたそう。「4人くらいの私がみなさんの周囲を回りながら歌っているので見つけてください」「AメロやBメロは音数が少なめなので、宇宙空間に私の歌声だけが贅沢に響くところに注目です」と聴きどころをレクチャーしてくれた。
「無重力の中に放り出されたような感覚」(tazuneru)
最期に、最も間近で完成までの道のりを見守ったtazuneruが「rakuの音楽的感性は流石だと思いました」「2番のBメロからCメロにかけては無重力の中に放り出されたような感覚があり、360 Reality Audioのポテンシャルを感じられるのでは」と感想を述べ、ビデオメッセージは終了。
MV視聴会では、参加者たちはメンバーがじっくりと交し合った言葉を思い出しながら、tayoriの世界観に没入している様子だった。

今回2日間にわたり実施された360 Reality Audioリスニングセッションイベント。4組のアーティストは、今回の取り組みを通じてクリエイティビティを最大限に発揮し新しい技術に果敢にチャレンジ、それぞれが新時代の可能性を感じさせる素晴らしい作品を発表した。そして、それらが実際に体験した参加者に多大な感動を与えたのは、彼らの反応からも明らかだった。リスナー、そしてアーティストに次の時代の体験をもたらす360 Reality Audioの計り知れないポテンシャルに今後も期待したい。


360 Reality Audio 再生は、Amazon Music Unlimited アプリとヘッドホン機器等でお楽しみください。
詳しくはこちら。
かめりあ「Seagull」
https://music.amazon.co.jp/albums/B0DYYQ5F3V
Mili「I Am a Fluff」
https://music.amazon.co.jp/albums/B0DYDZVRP5
biz×ZERA「Love Cat (Self-Cover – English Ver.)」
https://music.amazon.co.jp/albums/B0DZ69VWRJ
tayori「月の唄」
https://music.amazon.co.jp/albums/B0DYH4FVH8
360 Reality Audio オフィシャルサイト https://www.sony.net/360RA