Lil Soft Tennis インタビュー 「シーンのキーマンになると思う」
「ついにこの感じきたな」という印象を強烈に与えてくれる Lil Soft Tennis。ジャンルレスという言葉が陳腐に感じるほど、トラップ、クラウド、オルタナ、Lo-Fi、エレクトロ等々、幅広い音楽のContextを内包しながら、フレッシュかつキャッチーな感性でグッド・ミュージックに昇華させたそのサウンドは、自ら「シーンのキーマンになる」と語る通り、聴くものに今後の可能性を大いに予感させる。
About : Lil Soft Tennis
20歳、大阪出身。
2018年にバンドとしてスタート、2019年にソロプロジェクトとして活動を開始する。
——音楽に興味を持ったきっかけというのは?
中学生のとき、ドラマの「glee」とかきっかけにUSのビルボードチャートを毎週チェックするようになって、そのとき丁度EDMが台頭してきてるときで、Aviciiの「Wake Me Up」がチャートの一位を独占してたんですけど、僕はそのときまだその音楽が売れてる理由がわからなくて、何がそんないいんやろって何度も聴いてるうちにループミュージックの気持ちよさに気付きました。そっからはSoundCloudとかも漁るリスナーになりました。
——自ら音楽をやることになった経緯は?
音楽めちゃめちゃ聴いてたけど、音楽好きな友達がまわりに全然いなかったので、その共有できひんフラストレーションを溜めてて、テスト期間に急に掃除したくなるとか、本読みたくなるのノリで、大学受験途中に「音楽してみてえ」って気持ちが湧き出しました。
そのときドリル的なトラップが流行ってて、「これやったら音楽やったことなくても出来るんじゃね?」みたいなノリから受験後に機材揃えて制作をスタートしました。
ラップ → ビートメイク → バンドを経て、今のソロプロジェクトの体制に至ります。
——現在どの辺りを中心に活動していますか?
大阪です。奈良のARSKNやAge Factory と仲良くさしてもらってるので奈良での制作やライブの機会も多いです。
シーンの中ではYENやR4CX、Waaterといったバンドとも関係があって動いていこうって感じです。
——最新作と、その収録曲について教えてください。
『Feelin’ Love』というEPをリリースしました。
ARSKNのリョーナ君とAge Factoryのエイスケ君がやってるHEAVENというクルーから、「HEAVENのディレクションでリリースせえへん?」という話を伺って、その中で僕のストックからみんなが気に入った曲を集めました。
『Feelin’ Love』 各配信ストア : https://linkco.re/fVatEtdP
「Feelin’ Love」は サウスロンドン的な洒落たコード感とメロを、一気にブレイクしてビートミュージックに展開する楽曲です。2019年的なコラージュ感のあるベースミュージックからの影響を上手くパッケージできたかなと思います。リリックも気に入っていて、「文字書く手は 腹に汗かき 皺を作った 触れる白い紙」てラインが気に入ってます。パッケージ化されて商品になってしまったチルみたいな姿勢、それがインディーみたいになってるムードをヘイトしてます。僕のギターは気合い入ってるからよれてるんでみたいな。1番気に入ってます。
「Lucky」はバンドしてた時から出来ていた曲で、みんな大好きなローファイガレージも余裕でめっちゃグッドメロディで出来ますみたいな曲です。今の感じで音楽できてラッキーやな、ありがとうみんな、みたいな曲です。
「Skrr Skrr to Babylone」は フックとタイトルから出来た曲で「マスへ広がっていく俺ら!」みたいなイメージから組み立てていきました。エレキがちゃんと鳴ってるから現行の日本のロックファンでもトラップミクスチャーのオルタナって感じで聴けるかなって感じで、逆にヒップホップのヘッズもエモラップぽい感じで聴けるかなって感じに仕上げました。フローとかリリックは国内のヒップホップ特有のノリにリスペクトを持って作りました。
「Dream House」は Lil Soft Tennisの最初のデモの時からあった曲で、ディープハウスってかっけーなーと思って、「Deep House コード」みたいなん適当に調べて出てきたやつ打ち込んだ感じです(笑)。ほぼ全ての音でソフトシンセのKORG M1を使っていて、ローファイ感とまとまりが面白いかなと思います。
——楽曲の制作の環境やプロセスはどのような感じですか?
学生なんで普通に実家で作ってるんですけど、家の中に僕の部屋がないのでリビングで誰かがテレビ見たり料理してる中で制作しています。音楽作ってるとめっちゃ集中するんでそこまで気にならないですけど、普段はマジ無理なんで、今後は出来たら居住と制作のスペースを持ちたいです。
プロセスとしては思いついたメロにコード当てていくときもあるし、逆でギターでコード作ってメロ考えていくときもあります。他にもサンプリングや弾き直しから考えていったり、そん時の気分によってラフに作っていってビート組んでワンループ出来たらとりあえずフリースタイルでフローあててみて展開していく感じです。
——まだLil Soft Tennisを知らない人にその特徴を伝えるなら?
ジャンルレスで早い。シンプルにいいビートメーカーでメロディメーカー。
——影響を受けたアーティストを教えてください。
Dominic Fike
僕は新しいロックの救世主として彼のことを特別視してます。彼や、彼と同じくBROCKHAMPTON周辺のRoy Blairとかは、ハイクオリティでラフな感じの新しいロックの形を提示していると思ってて、ここら辺の影響を持ってロックを作ることは、とても価値あることだと思っています。そして国内では僕が1番その水準に早く到達できると思っています。
Hinds
ラップしてもビートを作っても納得いく曲が作れなかった時に、Hindsの「Chili Town」を聴いて、これやろ!と思いました。楽曲作成のスキルが低くてもこのやり方やったら思った通りにコードもメロディーを作れる!と思ってインディーロックを作りはじめました。そっから、ネットに楽曲をアップロードをしたらなんらかのリアクションをもらえるようになっていった感じです。もちろん楽曲そのものにも感動したし、ガレージとかパンク的な雰囲気を初めて理解できた瞬間でもありました。
XXXTENTACION
彼の「I Don’t Wanna Do This Anymore」という曲を聴いてとても感動してファンになりました。『17』のリリースの興奮は今も覚えています。彼がヒップホップをアップデートしたことは間違いないと思います。そしてローファイさの意味やソングライティングそのものを更新した恩恵を僕らはしっかりと受け取って次に進めていかないといけないと思います。
——上記の3組以外にも、Lil Soft Tennisのサウンドのジャンルレス感において、さらにどのようなアーティスト、楽曲から影響を受けたか大変興味があるのですが、よければ他にも教えていただけますか?
Kanye West – All Falls Down ft. Syleena Johnson
カニエがいなかったら僕の音楽は有り得ないし、僕が好きな現行のアーティストは存在できないと思います。例えばChance the Rapperもいなかったし、Vince Staplesも存在してないと思います。2019年において彼の影響を受けずに音楽を作ることは逆に難しいと思います。
Cosmo Pyke – Chronic Sunshine
彼のコード感、メロディー、楽曲の質感は全て参考になります。基本僕はめっちゃダサいナードなんで、こんぐらいクールなんを目指してちょうどいいぐらいなってる気がします(笑)。EP1つで世界中回る感じがマジでイケてると思います。
Fla$hBackS – Fla$hBackS (jjj,Febb As Young Mason&KID FRESINO)
彼らからはクールネス全てを学びました。アルバムは何回聴いても飽きないし、ビートメイクの面でもラップの譜割りの部分でもメンバー全員のどの作品にも新しい発見がある最高のグループだと思います。
The 1975 – I Like America & America Likes Me
今1番気合いはいってて、1番聴いとかないとダメなバンド。基本友達はヒップホップしか聴かんすけど、これは聴いてて「ウオッ!」てなりました。「Skrr Skrr to Babylone」のリリックにも入れたNew Orderとかもそうですけど、ポップかつシリアスな実験って感じは結構好みです。
Emitt Rhodes – With My Face On The Floor
彼の曲はまじで全部いい曲で、カニエとかチャンスザラッパーとかもそうすけど、賛美歌的なハッピーなサウンドは不思議と自分に馴染みがいい感じです。
The Libertines – Up The Bracket
他にも好きなロックンロールリバイバルのバンドはいますけど、自分の中では結構彼らが1番ラフで自分の感覚とも合う感じでいい感じです。
Trust Fund – Cut Me Out
マジ音楽しかできひんねやろなみたいな人らに常に感動して生きてるんで、それの1番僕が一番好きな感じがこれです。ハイトーンでエッジー、ふつーにNirvanaやけど最高みたいな感じです。
Lil Yachty – 1 Night
バンドでカバーもしてます。彼がDigital NasとやってるEPとかに顕著すけど、ポップさとトラップが共存してるムードが好きです。
Playboi Carti – Kelly K
カルティもクール極めてて好きです。Chief Keefの「Ballin’」とかの流れを単純に汲んでるだけかもしれないすけど、これもポップとトラップのいい融合かなと思ってます。カルティのスピットも大好きですが、Pi’erre Bourneの作るトラックの特有の浮遊感は結構いろんなジャンルに応用出来るんじゃないかとタイプビートを作りながら模索しています。
Never Young Beach – あまり行かない喫茶店で
このデモは音像の面でも日本語の使い方の面でもめっちゃ影響受けました。彼らの影響でMac DeMarco、Devendra Banhartなどを知って世界が広がりました。
——音楽活動にあたって意識していることはありますか?
フレッシュなこととラフなことです。僕の一つ前のEPの「Just Fresh Is Not Good」って曲で「フレッシュなだけではダメ、グッドじゃないと」て歌ってるんですけど、この曲を書いてる時点でもうフレッシュさは僕の中で大前提になっていることは伝わるかなと思います。
ラフなとこっていうのは、上であげたようなアーティストはあまり考えずにアウトプットしてるところに対して僕らは結構意識的になってしまってるとこがあると思うから、いらないフィルターを極力減らして自分の体から曲出すみたいなことすね。あと真剣なこと。気合い入れた方がいいっす、今は絶対。
——そういった意識の中で、共感するアーティストはいますか?
ARSKNとAge Factoryです。バンドマンでは珍しくリョーナ君もエイスケ君もめちゃめちゃちゃんと音楽聴いてるし、その影響をラフに体からアウトプットしてるのが最高です。
——現状の国内音楽シーンについてはどのように感じていますか?
USならDominic FikeやRoy Blair、UKならCorbinやCosmo Pykeのようなアーティストが国内には圧倒的に不足してるように感じます。日本で評価されているSSWといえば星野源さんや小袋成彬さんや君島大空さんなどが挙げられると思います。僕も好きで彼らの実験やムードはとても価値あるものだと思います。けどそうじゃない、ストリートなラフさとロック的なピュアさのあるアーティストが不足してるように感じています。それは僕にとって大きなチャンスだと思ってます。
そのシーンの変な隙間に、しょーもないラップっぽいの譜割り入れるバンドとか、人工甘味料的なポップ要素のあるDIYアーティストとか存在してることに、みんな違和感を普通に感じてると思うんで、一気に空気変えたいです。
——今後の活動の展望や予定は?
今年は出せるだけリリースしていって、今回のEPからもう一つビデオも出すし、いいライブも決まってきてます。ラッパーのrirugiliyangugiliとのEPも今年出します。インディーでタイトなトラックを仕上げたんで期待しててください。
次のまとまった作品でもう一つ上のステージに行けたらなと考えています。影響を受けたアーティストのサポートできるぐらいまでは早くスケールしていきたいです。チェックお願いします。
——Message
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