DinoJr. × Kingo × Black petrol『anthem』鼎談 オルタナティブな泥臭さで繋がる3組が作り上げる至高の一夜

2023.11.21

クリエイティブとビジネスの両面で与え合った影響

——『anthem』でのライブやその準備を通して、他の2組から受けた刺激についてお伺いしたいです。

Kingo:イベントを育てていく過程で学べることはたくさんありましたね。アイデアの共有やミーティングをする中で自分に無かった発想に触れられたし、楽曲の制作過程もそれぞれ違うから勉強になりました。もちろん、イベント当日のライブからも多くの影響を受けてます。僕は、『To Pimp a Butterfly』の頃のKendrick Lamarが大好きなんですけど、Black petrolはそのエッセンスを上手に吸収して日本語のラップに展開してる。それを僕自身の曲でどう再現できるかっていうのを、より考えるきっかけになりましたね。

Dino.Jr:『anthem』の3組では僕だけがシンガーなんで、アプローチの方法が他の2組と違う。だから、『anthem』内の野党として自分の立ち位置みたいなものをすごく考えたし、他の2組がやっていないことを分析してみたりもしました。そうすることで、多くの音楽的な発見があった。なおかつ、僕以外の3人のMCの卓越したスキル、テクニックを自分のボーカルにエッセンスとして取り入れてみたりとかして、かなり成長させてもらえたと思ってます。

SOMAOTA:DinoJr.に関しては、やっぱりインディペンデントでの活動をずっとやってきた人なので、いま日本国内で僕が最も尊敬するアーティストなんですけど。

Dino.Jr:あざっす(笑)!

SOMAOTA:というのも、やっぱりインディペンデントってめっちゃ大変で。SNSでの告知一つとっても、誰かに頼んだり、事務所やレーベルに任せているアーティストも多い中で、こんなに自分だけで動けてる人はなかなかいないと思います。返信めっちゃ早いし、アイデアがポンポン出てくるし、意見がぶつかっても調停役として上手くまとめるし、気遣いも忘れないし。あんまり褒めすぎると調子乗っちゃうかもしれないですけど。

DinoJr.:どんどん言っていいよ(笑)。

SOMAOTA:で、Kingoに関しては、同世代でラップが本当に上手くて内容も良いなと思うラッパーに初めて出会ったなという印象です。初めて劣等感みたいなものを抱いた存在。それに、元々はクールなイメージがあったんですけど、ライブはめっちゃ情熱的で、ピュアな気持ちが表れていて。僕もそれを観て、モヤが晴れたように「もっと素直にやろう!」と思えるようになりました。Kingoは、初めての感覚をたくさんくれましたね。

Kingo:それを素直に話せるのがSOMAのすごいところだよね。

takaosoma:フロントマンたちだけでイチャイチャしすぎ(笑)。僕が感じていることとしては、第1回の『anthem』を終えてから、バンド内の空気がガラッと変わりつつあって。それはなぜかというと、音楽を作ることとそれを売るビジネスにはそれぞれ別の軸があって、それを混同させずに考える必要があるということが、『anthem』を通してようやくわかったからなんです。3組で楽曲を作るときに、Black petrolもDinoJr.もKingoもみんな友達みたいな空気になるんですよね。でも、出来上がった楽曲はちゃんとマーケティングしないと聴いてもらえないから、そこはマネージャーやスタッフの力も借りてやっていこうと。そうやって音楽とビジネスをちゃんと別々に考えて、全員で力を合わせて盛り上げようとしている状態がすごく良いと気付いて。楽しむ気持ちを持ちつつ、宣伝やビジネス面でも手を抜いてはいけないという意識をみんなが持ってる。普通のイベントではなかなかないことだと思うので、価値のある経験でした。

DinoJr.:他のアーティストのビジネス的な部分ってなかなか直接見る機会ないから、そういう意味でも貴重だよね。『anthem』を始めた時は3組の中で僕だけマネージャーがいなかったけど、「事務的な作業はマネージャーに任せて自分たちはクリエイティブに専念する」というやり方を間近で見られた影響は僕としても大きかったかもしれない。

——イベント後の率直な心境はどうでしたか?

takaosoma:打ち上げで、みんなでアコギを持って「anthem」を歌ったんですけど、それが最高に楽しかった。初めてライブハウスに出演した後とかと同じぐらい気持ち良かったですね。15分に1回くらい、みんなで熱唱。

Kingo:ラッパー同士でのフリースタイルもそこで始まって、Dinoさんもフリースタイルの歌みたいなことをやってました(笑)。

DinoJr.:ギターも弾きながらね(笑)。



 

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