DinoJr. × Kingo × Black petrol『anthem』鼎談 オルタナティブな泥臭さで繋がる3組が作り上げる至高の一夜
泥臭い日陰者たちの大逆転劇へ
——イベントや楽曲制作を経た今、改めてこの3組の共通点、シンパシーを感じるポイントはどこだと思いますか?
DinoJr.:やっぱり全員に泥臭いところがありますよね。わかりやすい結果よりも過程に重きを置いたり、信念があるかどうかみたいなところを大切にしてたり。意地悪な言い方をすると、一イベントのためにここまで頑張るって、少し滑稽に映る場面もあると思うんですよ。後ろに大きな会社やレーベルが付いていたらスムーズに進むところを、僕たちは「もうちょっとお客さん呼ばないとヤバくね?」「じゃあ俺が告知の動画作るよ!」とか話し合いながら進めてる。そのスポ根さだったり、逆境を楽しめる3組が集まってるんです。そのガムシャラな頑張りがKingoのフジロック、Black petrolのサマソニっていう結果に繋がってると思うし。
Kingo:僕は、それぞれの自分の活動へのこだわりの強さが共通してるかなと。普通のラッパーはDJとともにクラブでライブすることが多いけど、僕はライブハウスや路上ライブでバンドセットをめちゃくちゃやってますし。Black petrolも同じくHIPHOPだけどバンドだし、Dinoさんも単なるシンガーソングライターとは違う、完全にDIYな活動をしていて。それぞれ一般的なアーティスト像とは別の形態だけど、だからこそ芯があるというか。本当にそのやり方が良いと思うから、その形を選んでるっていう。僕も自分の道が正しいか不安になったりするけど、「こいつらも頑張ってるから俺も頑張ろう」と思えるときがありますね。
SOMAOTA:3組の共通点は、ライブハウスとクラブの架け橋になれるところだと思います。僕らは京都METROをはじめクラブでもライブしますし、KingoもDJセット・バンドセット両方でパフォーマンスできる。Dinoくんはシンガーソングライターでありつつ、クラブに放り込まれてもやれると思うし、この間DinoくんとKingoがリリースした曲(Wネーム・シングル「Don’t Mean Much」)もクラブバンガーだし。そうやって、上手く枠にはめられない存在でありつつ、その状態を開き直って楽しめる。窓際の人でも構わないっていう考え方を持ってる3組ですね。
takaosoma:この面々はみんな、音楽に対して素直すぎると思ってるんですよ。3組とも直属の先輩みたいな人がいなくて、常に正直に良いと思う音楽を聴いてきてるから、すべてのシーンを平等に見れてる。やりたいことだけを追求してきたから、多くの人が気にしない細かい部分に必要以上にこだわってしまう。「売れるためにこうしよう」「再生数を増やすためにこうしよう」みたいな考えで妥協せずにまっすぐに進んできた結果、側からみたら「意味わかんない事してるな」ってなっているというか(笑)。そのミュージシャンシップみたいなもので僕たちは繋がってる。その線はいつ切れてもおかしくないんだけど、いま現在においてそれが確かに繋がってるという証が、『anthem』にはあると思います。誰かが「anthem」のサビを歌い出したら、いつでもその瞬間すぐに友達に戻れるはず。
——では最後に、今後『anthem』というイベントやこの3組での活動について、どのようなビジョンを描いているかを教えてください。
Kingo:『anthem』は今後も続いていくと思いますけど、直近の話をすると、大阪の次には東京、ないし関東でもう1回開催したいですね。第1回を下北沢SPREADでやって、その後色々な経験をした3組でもう一度関東に戻ってくるというのは価値があると思うので。…っていう気持ちが、ずっと続くのかもしれないですね。得たものを持ってまたこの場所に帰って来ようという気持ちが、今後も働き続けると思います。
SOMAOTA:音楽に直接関わってるプレイヤーだけじゃなくて、3組それぞれのマネージャーとか、作品に携わっている映像作家とかも巻き込んで、『anthem』をもっと大きなネットワークにしたいですね。あとは、『anthem』で出会って結婚しました!という人が現れたら嬉しいです。
takaosoma:僕は、できれば3組ともめちゃくちゃ売れるべきだと思ってます。良い音楽を作ったら、その後にそれを一生懸命売り出すってことを『anthem』で学んだんで、自分のバンドでもその方法を活かしたい。もちろん、『anthem』もどんどん会場を大きくしないといけないですね。そうやって、また3組で「anthem」という曲を歌いたい。
DinoJr.:音楽業界が学校のクラスだとしたら、僕らは隅っこのオタクグループだと思うんですけど、そんなやつらが輝ける場所があってもいいと思ってます。なんなら、その隅の方でエネルギーは日々磨かれてるし、メインを張ってる人に匹敵する、あるいは覆すだけのパワーがあるはずなので。僕はその大逆転劇が見たいし、そのカタルシスのために頑張ってます。いずれヤバいことが起きるから、今のうちに『anthem』に来ておいた方がいいんじゃない?と思います。