Earthists.インタビュー 「数十年後にもこの作品が語られていてほしい」新たなメタルの夜明けを告げるEP『HYPERMETAL』が生まれるまで

インタビュー
2024.7.19
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Earthists.

4人組最新鋭メタルバンド・Earthists.(アーシスツ)が7月5日にEP『HYPERMETAL』をリリースした。

2015年の結成からまもなく海外名門レーベルとの契約を果たし、世界標準のDjent/プログレッシブ・メタルコアバンドとしてグローバルなファンを獲得したEarthists.。しかし近作では、ボーカロイド楽曲をはじめとするネット音楽やアニメソング、クラブミュージックからの影響をヘヴィなサウンドと融合させることで、その出発点からは想像もつかないネオ・ガラパゴスな進化を実現させた。

そんな彼らが自身のスタイルをオリジナルジャンルとして定義し、大胆不敵にも作品名に冠したのがEP『HYPERMETAL』だ。シングル「HYPERHELL」「ACIDGLINT」「GODBLAST」、そして「ULTRABLUE」に、新曲「METAHOPE」「SHAPEBREAKER」を加えた全6曲は、テクニカルかつキャッチーで、ブルータルながらハッピー。圧倒的なテンションとエモーションで駆け抜ける今作は、前代未聞の問題作であり、未開の地を切り拓く傑作だ。

ソングライターであるYUI(Vo)、YUTO(Gt,Vo)とともに、彼らがメタルの新たな地平に到達するまでの軌跡を辿った。

 
取材・文 : サイトウマサヒロ

 
自分たちの武器を全部出していこうと思った

——EP『HYPERMETAL』おめでとうございます! まずは、リリースを目前に控えた率直な心境を教えてください(※本インタビューは『HYPERMETAL』リリース前日の7月4日に実施)。

YUI:やっとリリースできるなっていう安堵感がありますね。今作の制作の90%は俺がリリックを書く時間で、なかなか進まなかったりしたので……やっと、シャワーを浴びてサッパリしたような気持ちになれたなっていう。前作の3rdアルバム『Have a Good Cult』で結構方向転換したんですけど、そこからまたもう一度ギアを変えた作品なので、リアクションも気になってます。

YUTO:去年の夏くらいには原型が出来ていた曲も含まれていて。それほど時間がかかったなりに自信もありますし、プロダクションも凝っているので、聴いてもらえるのが楽しみですね。

——今回は、Earthists.が“HYPERMETAL”という新たなスタイルにどのように辿り着いたのかを解き明かすようなインタビューにしたいと思っています。そのためにも過去の作品に遡ってお話を伺いたいのですが、個人的には2020年8月にリリースされた楽曲「SUNBLOOD」あたりからフックのあるメロディをフィーチャーした方向性に舵を切ったような印象を抱いていて。この時期にバンドとして意識の変化があったのでしょうか?

YUI:どっちかっていうと、2019年4月にリリースした「Purge Me」が転換点になった曲でした。そこから、自分たちが持っている武器を全部出していこうと思うようになって。メッセージとしても、それまでは森羅万象を俯瞰するような歌詞を書いてたんですけど、だんだん内向的になっていきました。そうした中で一番自分の過激な部分を露呈させたのが、心の中の思いや家庭環境を落とし込んだ「SUNBLOOD」だった。

その頃からバンドで使い始めた“Have A Good Cult”っていうフレーズは、僕が抱えているアンチカルトな考え方を皮肉にしてるんですよ。昔、親が新興宗教にハマってたりして、ずっとアンチカルトだったんですけど……赤坂BLITZでのCRYSTAL LAKEのワンマン(2019年1月『HELIX TOUR』)で、当時のボーカルだったRyoくんが「バンドは宗教だ」と語っていたのを聞いて、点と点だったものが線になった感覚があったんですよね。その時、Earthists.はまだ海外ライクなサウンドをベタに求めていた時期だったけど、今まで溜めていたものを放出するきっかけになって。「SUNBLOOD」はその象徴的な楽曲だったと思います。

YUTO:「Purge Me」を制作した時に、YUIから「YUTOもちょっと歌ってみなよ」って話を振られたんです。2ndアルバム『LIFEBINDER』でも少しボーカルを取ってはいたんですけど、ガッツリ本格的に歌い始めたのは「Purge Me」「SUNBLOOD」からで。元々僕たちは、いわゆるDjentや2015年あたりの手数が多いメタルコア、「ギター大好きです」みたいな感じの曲が多かったんですけど、それ以来歌というものを強く意識するようになりました。サウンドを削ぎ落して楽曲をスマートにしようと思うようになりましたね。

 
——同時に、コロナ禍で活動のスタイルが制限されるのを余儀なくされたタイミングでしたよね。モッシュができない、声出しができないという環境が音楽性に及ぼした影響はありましたか?

YUI:むしろそれまでは俺たちのライブってマジでモッシュが起こんなくて、全員が腕組んで観てる感じだったので……逆に「SUNBLOOD」以降だよね、モッシュが起きるようになったのは。その頃、YUTOは落とすブレイクダウンよりもドラムンベースっぽい走るブレイクダウンが得意なんだなということを確信して、楽曲にアイコニックなブレイクダウンを入れるようになったので。まあ、自分たちもモッシュを意識して曲を作ることはまったくないのでアレですけど。オタクなんで(笑)。

——「Purge Me」以降の音楽性の変化には、YUIさんがメロシャウトを駆使した歌唱法を確立したことも大きく貢献していると思います。ボーカルが楽器隊の影に隠れてしまうことも少なくないテクニカルなメタルバンドにおいて、その個性がEarthists.をより強固なバンドにしたのではないかと。

YUI:1stアルバム『DREAMSCAPE』の頃はメタルコアやハードコア譲りのバウンシーなシャウトに憧れていたんですけど、結局それって自分の好きなボーカルの解像度を落としたものでしかなくて、リリースした後に自分たちの音源を聴き返すほどの魅力を感じられなかった。そこで当時、自分の中でものすごく大きなキーパーソンだったArchitectsのSam Carter(Vo)に影響を受けて、「なんかこのシャウト出せるんじゃないかな?」と思ってやってみたら意外と出せて。じゃあ使っちゃおうってことで出来たのが2018年1月リリースの「memento mori」でした。リリース後の周りの反応もすごく良かったし、自分自身めっちゃハマる感覚がありましたね。それからはもう、絞り切るくらい使ってます。

メロシャウトの方が高いキーが歌いやすくて、制作時にカッコいいと思うメロディーを具現化できるんですよね。あとは、あくまでも住所をメタルからずらしたくないっていう気持ちがあるんですけど、全部クリーンボーカルにしちゃうと「それポスト・ハードコアじゃん」で片付けられちゃう。だけど、タフなメロシャウトで歌ってたら、どんだけキャッチーなことしてても骨格はメタルやハードコアだよなって思えるんで。

 
——その後、2022年6月の3rdアルバム『Have a Good Cult』で独自の音楽性を確立させます。同作をリリースして、それまでと異なった手応えやバンドを巡る環境の変化はありましたか?

YUI:まず、ファン層がめっちゃ変わりましたね。腕を組んで観ていた人たちから、年齢層もグッと若くなって、いわゆるキッズ層が増えた。俺たち自身、ライブは結構いなたい感じでやってたんですけど、それからはどんどんハッピーなムードになって。

——リスナー層の変化に合わせて、ライブのやり方も変えていったと。

YUI:それまではいわゆる世界観系でしたけど、もっとライブはライブで楽しくやりたいなって。かと言って、俺たちって「お前ら付いて来い!」「蹴散らせ!」みたいな感じのバンドではないんで(笑)。自然と今の「みんなで楽しくやろうね」っていう雰囲気になっていきました。

YUTO:曲を作る時の思いが変わったのがちょうど『Have a Good Cult』からで。お客さんにもっと純粋に楽しんでもらえるようなビート感、わかりやすいギターリフを狙って作るようになりましたね。ブレイクダウンも意識的に入れるようになって、『Have a Good Cult』の曲には漏れなく組み込まれてる。

YUI:やっぱり、ライブのことを考えるようになったよね。

Earthists.インタビュー
Earthists.「Have A Good Cult」

Earthists.『Have A Good Cult』

 
 
全曲アクセル全開の最新EP『HYPERMETAL』

——そして今回のEP『HYPERMETAL』に至るわけですが、そもそもこの“HYPERMETAL”というフレーズにはどのような経緯で行き着いたのでしょう。

YUI:きっかけになったのは、『Have a Good Cult』に収録されている「Lost Grace」で。スタジオで練習してる時に「ローリンガール」みたいな曲を作りたいっていう話になって出来た曲なんですよね。「チキチキチキチキ……」っていうドラムで、メロディも和な感じで……元々wowakaさんが大好きだし、いつかはやってやろうって虎視眈々と温めてたアイデアを、アルバムだから一曲ぐらい好きなことやってもいいだろ!みたいなテンション感で形にして。そしたら、あのアルバムの中で「Lost Grace」が明らかに再生されてるし、「この曲最高だね!」って言ってもらえることも多かった。なので、Earthists.のグループLINEで、当時ボカロ曲に詳しくなかったYUTOに向けてKUROKAWA(Ba)くんと一緒におすすめのボカロ曲を送りまくったりして(笑)。

それから、『Have a Good Cult』をリリースした後すぐにシングルを出そうと思って、アルバムの延長線上にある良い曲が出来たんだけど、「今じゃないな」と思って結局リリースしなかったんですよ。やっぱり、「Lost Grace」の系譜を継いだ曲をここで出したいなって。そうして出来たのが「HYPERHELL」。“ウルトラ”とか“ハイパー”とか、そういう大きくてパワーのあるワードを使いたいなってことで、深夜2時にみんなで考えたタイトルでした。

 
——ネット音楽やボーカロイド楽曲からの影響を注入したのは、YUIさんとKUROKAWAさんだったんですね。

YUI:そうですね。で、YUTOにはジャズのバックグラウンドがあるんですけど、リリースカットピアノって結構ジャズ的な要素も強かったりして。YUTOのルーツと俺のルーツ……ルーツっていうか、高校時代に拗らせた趣味が良い意味で交差したのが今の方向性の始まりでした。

YUTO:大学時代のサークルで、メタルからフュージョンまで色んなジャンルの曲を演奏してたので。ジェフ・ローバーっていうキーボーディストのコピバンをやったり、たまにジャズバーでセッションに参加したりしてて、そこからジャズ、フュージョンの影響を受けてます。

——いま挙がった名前のほかに、『HYPERMETAL』にインスピレーションを与えたアーティストはいますか?

YUI:リファレンスとして送りまくったのはツミキさん。「弾けるんかこれ?」みたいな、いい意味でめちゃくちゃやりきってるDTM感が好きで。あと、ボカロではないけどYOASOBIですね。デビュー当時からずっと好きで、前作の「Yours」はまさに、「YOASOBIみたいなメタルコアやろうぜ」みたいな話をしながら出来た曲でした。

 
YUTO:僕は昔からYMOが大好きで、今作にはそこからヒントを得たフレーズやアプローチが結構ありますね。

——ジャズやテクノのある種の情報量の多さが、YUIさんの思い描いていたボカロの要素と上手く嚙み合った?

YUTO:そうですね。マッチしたと思います。

——YUIさんは学生時代からニコニコ動画やボカロカルチャーに触れていたと思いますが、これまでのEarthists.の活動ではそれを前面には出していなかったということですよね。

YUI:そうですね。当初は海外のサウンドを直輸入した最先端メタルコアがやりたかった。でも途中で、俺らがやらなくても誰かが勝手にやるからいいかなって。

——よりシグネチャーなものを求めたんですね。アメリカのレーベルからデビューして国際的なファンを獲得したメタルバンドが、次第にドメスティックなカルチャーを飲み込むことで唯一無二の存在に進化するという過程自体が、Earthists.というバンドの面白さだと思います。それこそYOASOBIがグローバルヒットを果たしているという現状もありますが、ある意味でのインバウンドビジネス的視点、逆輸入ヒットのようなものに対する目配せもあるのでしょうか?

YUI:それは、ないっちゃないというか。

YUTO:最初はちょっとあったよね。

YUI:うん。でも、日本語の歌詞をガッツリ入れ出したあたりからは、中途半端に何かに擦り寄ったりしてもしょうがないなと思って。もちろん色んな国の人が聴いてくれるに越したことはないんですけど、今やりたいのは、カッコよくなりたくて背伸びしてた昔とは違う等身大の自分たちの楽曲なんで。それが世間にどう捉えられるのかは、国内外関係なくワクワクしてることではありますね。

——『HYPERMETAL』の楽曲制作にあたっては、前作からプロセスの変化などはありましたか?

YUTO:基本的に曲の原型はYUIと僕のラリーで作っていくんですけど、その往復回数が今までで一番多い作品になりましたね。聴いたらわかる通り、もうかなり行き過ぎちゃってるサウンドじゃないですか。BPMも早いし、打ち込みもたくさん入ってるし、とにかく振り切りまくってて。ポイントを押さえてブラッシュアップするのはもちろんなんですけど、とにかくできることを全部出し切っちゃおうという思いが強かったです。『HYPERMETAL』って名前にふさわしいエキセントリックさを出したいなって。

YUI:今までは激しい曲→メロディアスな曲→激しい曲、みたいな感じで交互にリリースするのを繰り返してたんですけど、今回は、たとえ金太郎飴になったとしても同じバイブスの曲を作りてえと思って。全部狂った、高速道路でアクセルベタ踏み系の曲だけを。

——確かに、誤解を恐れず言えば全曲すごく暑苦しいですよね(笑)。ピアノを多用してジャズの要素も含めてしまうとオシャレな仕上がりになってしまってもおかしくないところを、アツさで振り切っています。

YUI:そういった爆発感みたいなものは、それこそメロシャウトだとより強く感じられますね。

——まさにそうですね。YUIさんのボーカルの圧倒的な熱量が、洒落臭さのようなものを吹き飛ばしている。そして、多様なジャンルを貪欲に取り入れながら、メタルとしても前作以上にエクストリームさが増した印象です。やはり、あくまでEarthists.はメタルバンドなんだという意識の表れでもありますよね。

YUI・YUTO:そうですね。

——サウンドエンジニアとして前作に引き続きJeff Dunne(We Came As Romans、Wage War etc)を起用したのも、その意志を象徴しているように感じます。

YUI:Jeffと一緒にやり始めてからもう5年弱くらいが経つんですけど、彼のある意味でカラっとしたサウンドがEarthists.にすごく合ってて。こういうジャンルって、ベースを生贄に捧げることでギターの鳴りを良くする、みたいなバランスで音を作ることも多かったりするけど、4人のメンバーそれぞれのパートがちゃんと聴こえるサウンドを作ってくれることにも大きな意味を感じますね。バンドの主張を汲み取ってくれるエンジニアだと思います。

——作詞面では、どのような変化がありましたか?

YUI:『Have a Good Cult』では内向的なことを書き続けていたけど、今回はもっとストレートに、婉曲した表現をせずに言葉を伝えることに重きを置いてます。技術的な面では、特にサビで、日本語でメロシャウトをしたときに、背中を掻かれてるような気持ちよさを感じられる言葉選びをしてますね。それもボカロチックかなと思ってて……テイクを細かく重ねて、あえてエディット感を出したりもしています。

YUTO:基本的に歌詞のテーマはほぼYUIにおまかせしてるので、YUIの言葉を読み取って、表現したいことを汲み取りながら、自分の思いと組み合わせてアウトプットしています。ただ、「SHAPEBREAKER」だけは僕が丸々書いて。物語性を持たせた歌詞にしました。

YUI:優しい青年って感じのYUTOですけど、「SHAPEBREAKER」だけ、過激な歌詞だということで中国でライブ演奏できなくなりました(笑)。

YUTO:多分、リベラル過ぎたね。

——日本語詞の割合が増えましたよね。

YUI:サビの歌詞は基本的に日本語詞をメインにしたかったんですよね。たとえばメジャーレーベルに入ったからサビにメロディが入るとか、アニメタイアップだから日本語を入れるとか、そういう文脈ではなく自分たちのチョイスで純粋に日本語詞を使いたいから使うというのが自分として結構重要でした。それに、このHYPERMETAL、ボカロメタルっていう新しいジャンルを「日本人が作って歌ってるんじゃ!」という気持ちも込めて。

——「GODBLAST」の「光さえも超えてゆけ」というフレーズに代表されるように、日本語をサビにガツンと入れることでパンチラインが生まれていますよね。言葉とメロディが同時に一発で頭に入ってくるという意味では、日本のリスナーにとっての浸透具合が全然違うだろうなと。

YUI:国別の再生数は今もアメリカがダントツ一位で、都市別の再生数もロサンゼルスとシカゴが上位だったんですけど、ここ1年くらいで東京と大阪が1位、2位に上がってきてて。そういう変化も起きてますね。

 
——お二人が今作で特に気に入っている曲を教えてください。

YUI:「METAHOPE」ですね。今作を象徴するような、本当にウケるのかどうかわからないぐらい振り切りすぎた先の向こうに行ってる曲で。キラキラな歌詞をニコニコしながらめちゃくちゃながなり声で歌ってて、異常じゃないですか(笑)。我ながらこいつ怖いな、って思いながら作ったんですけど、自分のイメージしたものを全部アウトプットできた。あと、1サビの後のパンを振ったテクいギターのパートは、The AfterimageみたいなことをやりたいってことでYUTOにガン頼みして入れてもらったパートで。それも含めて、好きが詰まった曲です。

YUTO:一曲選ぶのは難しいけど、「SHAPEBREAKER」は自分がやりたいことを150%くらい出せた曲に仕上がりましたね。どの曲もそのくらいの気持ちで作ったんですけど、個人的には「SHAPEBREAKER」が一番グッとくる曲になりました。

——「METAHOPE」では、アニメーションのリリックビデオも公開されました。先行シングルではイラスト、EPではCGを駆使してアートワークのイメージも刷新されましたね。

YUI:アートワークは俺が頼みたい人を見つけてきて、メンバーにも相談しつつ進めてます。「HYPERHELL」を制作した時点でこれから振り切ったことをやっていこうっていう腹は決まってたから、やりたいことをダイレクトに伝えられるジャケにしたくて。「HYPERHELL」「GODBLAST」のジャケットを描いてくれたAOTQさんはボカロPとしても活動していて俺自身めっちゃ聴いてたので、いつかはやってもらいたいと思っていました。「ACIDGLINT」は、今のEarthists.のアー写も描いてくれてる海光エリサちゃんに頼んで。EPのジャケットは、CVLTEやWHISPER OUT LOUDの作品も手がけている、若くてセンス抜群のloiiiさんにお願いしました。

「METAHOPE」のリリックビデオを手がけてくれたONUさんは、インスタのリールかなんかで流れてきて知ったんですけど、キャラデザが超好きで、すぐに連絡して。アニメ系のリリックビデオを作るのは個人的な夢だったので嬉しいですね。自分たちの方向転換を象徴するような映像になりました。

 
 
「僕たちには今、仲間が必要だ」

——7月12日からは最新作を引っ提げた『HYPERFUTURE ASIA TOUR』が開幕します。布教用チケットであるHELL MISSIONARY TICKETの発売と、「僕たちには今、仲間が必要だ」というステートメントからも気合いを感じますが、どのような意気込みで臨みますか?

YUI:今までのツアーでは、より大きい会場を目指して、有名なアーティストを呼んだりして自分たちを大きく見せることを考えながらやっていたんですけど、実際のところ俺たちのバンドとしての影響力っていうのはどのくらいあるのか、俺たちにどれだけの人が付いてきてくれるのかということを自問自答をする時期があって。今は、『HYPERMETAL』で等身大の音楽を作ったということも含めて、すべてにおいて気取ることをやめようと思ってるんです。もちろん、カッコよくあるべきだとは思うけど、さっきも話した通り俺たちは「付いて来い!」っていうタイプのバンドじゃないし。みんなと一緒に肩を組んで、30人31脚みたいにやっていこうぜっていう感覚があります。

だから、今回はその共謀者が増えることが一番の願いで。会場も、今までみたいな頑張りの限界値の規模感っていうよりも、ちゃんとお客さんと一緒にライブを楽しめる空間を選んでるし。ゲストのバンドも、ライブがめちゃくちゃカッコいいバンド、これからカッコよくなるポテンシャルがあるバンドをチョイスして。自分たちも今ライブにフォーカスを当てて活動しているので、何か新たな刺激を与え合えればいいなと。

「僕たちには今、仲間が必要だ」っていうのは、もちろんお客さんのことでもあるし、バンド仲間のことでもある。でもそれは、背伸びをして頑張って話を合わせる仲間じゃない。本当の意味での自分たちのカルチャーを作っていくのが、今回のツアーの個人的な目的です。

YUTO:僕としては、一言で表すと「布教活動」ですね。底力を持って、どれだけお客さんにアプローチできるか。ある意味、鍛錬みたいなイメージでもある。『HYPERMETAL』のリリースと今回のツアーで思いっきり自分たちの力を出して、まだリーチしてないリスナーに音楽を届けたいし。それが来年以降の自分たちにどう影響していくかを想像しながら、全力で挑みたいです。

——今作『HYPERMETAL』は、同世代のバンドにも大きな影響を与えたり、あるいは今後Earthists.のフォロワーとなるバンドを生み出したりするようなインパクトのある作品だと思います。お二人がこれからの国内メタルシーンに対して期待することはありますか?

YUI:俺たちの世代って、めちゃくちゃ売れてる先輩バンドと自分たちの間にあるギャップがあって、背中を追う期間が長い狭間の世代だと思ってて。でも、最近はそういった先輩のバンドが後輩のバンドを強くフックアップするようになってきてて、自分たちもその恩恵を受ける機会が増えてきてる。そうして受け取ったバトンを自分たちだけのものにせず、後輩にも惜しげもなく渡していきたいですね。着実に若い、新しい世代は誕生しているし、今回ツアーの大阪公演に呼んだLauncher No.8、SUBLIMINALSはそれを象徴するバンドだと思います。

競争が大事だってことは重々承知してるけど、音楽やバンドをやるモチベーションの根源って「楽しい」ってことだと思うので。誰がイケてる、誰が売れてる、誰が先に有名になったとか、そんなことは関係なくみんなでこのシーンを盛り上げていけば、たとえ時間がかかっても最終的には自分たちに返ってくるだろうし、コロナ禍以降リセットされたこのジャンルをもう一度大きいものにしていけたらなと思ってます。

YUTO:同年代で活動が止まっちゃったり解散したりするバンドの話を耳にしていて、やっぱり自分が身を置いているこのシーンを絶やしたくないという気持ちが一番大きくて。純粋に音楽として楽しいことをやっているシーンなので、その楽しさをどんどん広めて、この場所が継続していけばいいなと思っています。

——では最後に、『HYPERMETAL』完成を経た現在の目標、目指すバンド像を教えてください。

YUI:いろんな〇〇メタルっていうジャンルがありますけど、“HYPERMETAL”が新しい枠組みとして当たり前に語られるようにしたい。VENOMのアルバム『Black Metal』がブラックメタルの起源だって言われているように、何十年後かに今回のEPが“HYPERMETAL”の起源だ!って語られていてほしいですね。

YUTO:誰も鳴らしたことのないような、唯一無二のサウンドを死ぬまで作り続けていきたいです。

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Earthists.『HYPERMETAL』

Earthists.『HYPERMETAL』

 


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