【コラム】いま東南アジアで最もSpotifyバイラルチャートインしてる日本発の楽曲「summertime」(cinnamons × evening cinema)知っていますか?
今回、日本のアーティストのある楽曲がアジアのいくつかの国々で爆発的にバイラルしているという興味深い現象が起きているので、ご紹介しようと思います。
目次
cinnamons × evening cinema「summertime」
「この曲がアジアでバイラルチャートに入りまくってるの、知ってる?」 先週仕事をしていると突如ボスに言われました。
cinnamons × evening cinema「summertime」
“ポストJ-POPバンド” cinnamonsと、AORなサウンドを鳴らすevening cinemaがコラボレーションし、2018年12月12日にリリースされた、両A面シングル「冬のトキメキ/summertime」に収録されている楽曲「summertime」。単曲としてはさらに前の2017年08月に配信リリースされています。「君の虜になってしまえばきっと」からはじまるエモーショナルな歌詞にのったポップなメロディー、切れの良いカッティング、男女ボーカルのハーモニー、他たくさんの魅力が詰まった印象的な楽曲です。
evening cinemaの原田夏樹さんには、2016年4月に取材を敢行したこともあり、その独特な音楽性のルーツを語っていただいたこともあります。
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東南アジアのSpotify バイラルトップ50 に軒並みチャートイン
「こんなヤバいことが起きているんだ!」 キャッチアップできていないことに焦りながらも早速調べてみると、日本はもとより、アジア、特に東南アジアのいくつかの国のSpotify「バイラルトップ50」にcinnamons × evening cinema「summertime」は頻繁にチャートインしていることが分かりました。
Spotifyのバイラルチャート「バイラルトップ50」はSNSでシェアされた再生数をもとにしたチャートプレイリストで、各国ごとにSpotifyオフィシャルプレイリストとして展開されており、まさに今話題の楽曲が分かるSpotifyの人気プレイリストのひとつです。
同曲は特にベトナムでチャートピーク1位まで上昇していました。そのほか、フィリピン、シンガポール、タイ、マレーシアにもチャートイン。ちなみに、日本バイラルでは最高9位まで上昇が確認できました。
改めて俯瞰するため、チャートアクションをデイリーで追いかけグラフを作ってみました(2020年1月27日時点)。
ベトナム
フィリピン
シンガポール
タイ
マレーシア
そして日本
早いところでは日本が2019年10月の半ばから、ベトナムで同年10月後半からチャートに現れ始めています。一方で、2019年12月から熱量が高まり始めた国では、現在も依然としてチャートインが続いていますね。中でもフィリピンはほぼ高い順位(10位以内)のまま推移しており、その話題性の高さが伺いしれます。
この動きに早くから注目していたのがAno(t)raks。国内インディポップを中心にリリースしYouTubeでも音楽チャンネルを展開するネットレーベルです。Ano(t)raksによるとベトナムのサッカープレイヤーĐỗ Kim Phúc 氏のTikTokへの投稿も今回のチャートインのきっかけになっているよう。
cinnamons × evening cinema "summertime"
Spotify ベトナムバイラルトップ50において1位健在です!https://t.co/QDZnRd37Sw
ベトナムのサッカー選手である彼のTikTok投稿が起爆剤になったようです。
Thank you Do Kim Phuc !https://t.co/agERJkL9AK— Ano(t)raks (@anotraks) December 6, 2019
ベトナムでのGoogleトレンドでも明らかな動きが見てとれました。
「著名人のTikTok動画の投稿が引き金」
そこで、今回の動きについてAno(t)raksの代表の小笠原氏に話を聞いてみました。
「昨年11月に evening cinema 原田くんに久しぶりに会ったのですが、彼らの近況を聞いている中で、TikTokで “summertime” が大ヒットしている事を知りました。その事がきっかけとなり、もしかしたら各国のバイラルトップ50にチャートインする可能性もあるなと思い、頻繁にチェックするようになりました」
とevening cinema原田さんから直接情報を得たとのこと。バイラルのきっかけを改めて伺ってみると、
「結論から言うと、”summertime” を使用した著名人のTikTok動画の投稿が引き金になっていると思います。昨年10月にはきゃりーぱみゅぱみゅさんが楽曲使用動画を投稿しており、このタイミングで日本のバイラルトップ50で9位まで上昇しています。昨年11月のベトナムでは、サッカー選手Do Kim Phucさんの投稿後、1位を獲っています。最近ではフィリピンで最高3位の他、タイ、マレーシア、シンガポール辺りでもチャートインしています。これらチャートインのきっかけはまだ掴んでいませんが、恐らく日本・ベトナム同様、著名人の投稿による影響ではないかと推測しています。また、チャートインしてはいませんが、ここのところのストリーミング数なのですが日本よりアメリカの方が圧倒的に多く、その理由が非常に気になっています」
Do Kim Phuc氏の要因もありつつ、他にも同様なTikTokでのファクターが重なって現在の動きにつながっていると分析。
「世界的なシティポップブームが下地になって、日本の音楽に対する抵抗感というものが薄くなって来ているのかなと思うところもありますが、曲の頭からすぐにポップな気分になれる楽曲であったという部分で、TikTokというフォーマットにズバッとハマった事が、まずTikTok上で広まった一番の大きな要因ではないかと考えています。」
楽曲のサウンド面からは小笠原氏はこう分析しています。
「ポップな気分にさせる成分というのは、言語に左右されず、全世界共通のマジックのような“なにか”なのでしょう。そこから音楽リスナー層がSpotifyなどに流れていったのではないでしょうか」
過去のリリースが、TikTokというプラットフォームから火がつき海外でいくつかの特定の地域で再生が伸び、日本でも改めて注目が集まっているというのは、まさにストリーミング時代ならではの動きですね。
「TikTokの特性は、全てではないにしろ音楽を使う事が前提のコンテンツなので、文章をメインとするSNSよりも音楽の分散力が高いのかも知れません。また、TikTok内の音楽ヘビーユーザー人口は低いと思われ、そのため音楽トレンドとは別の音楽需要があるように思われます。
直感で聴いて良ければリリースの年代関係なく使用し、拡散されていく。”summertime” のリリースは2017年ですが、いまだに聴かれているどころか更にストリーミング数が増えているのは、そういったTikTokの特性がきっかけとなり、そこからSpotifyなどに流れていっているからなのではないでしょうか。以上の事を踏まえると、まだまだ “summertime” は世界中に拡散していくように思われます。今はアジア圏が中心ですが、アメリカの動向を見ていると、今後英語圏への飛び火の可能性も充分あり得るのではないかと考えています」
小笠原氏はこのムーブメントはまだはじまったばかり、むしろこれからさらに地域を拡大しながら聴かれていく楽曲になる可能性も秘めていると語っています。
ストリーミング時代、広がる可能性
誰でも音楽のリリースが出来る時代になったからこそ、音楽の広め方がより多様になっているストリーミング時代。今回の事例は再現性を追求してもそう簡単に実現できるケースではないかもしれませんが(こういう事例を目にすると、コントローラブルに再現したくなる気持ちが湧き上がるのも分かりますがそういうことではなく)、従来に無いカタチで音楽が広まる可能性が日々どんどん広がっているというワクワクをお伝えしたく、インディペンデントなアーティストにも勇気をもたらす素敵な事例ということで今回紹介させていただきました。
楽曲クレジット(via:同曲YouTubeディスクリプション)
「summertime」
詞 / 原田夏樹(evening cinema)、鈴木まりこ
曲 / 原田夏樹(evening cinema)
編曲 / 原田夏樹(evening cinema)、cinnamons
recording,mixing engineer / kota nakao
mastering / ニンドリ(Couple)
vo / 鈴木まりこ(cinnamons)、原田夏樹(evening cinema)
syn / 原田夏樹(evening cinema)
gt / 青山慎司(cinnamons)
ba / あかねちん(cinnamons)
dr / eric(cinnamons)
cinnamons
https://twitter.com/cinnamons_band
evening cinema
https://twitter.com/evening_cinema
Ano(t)raks
https://twitter.com/anotraks