STAP Sigh Boys インタビュー 1970年からやってきた“高円寺のMac DeMarco”?謎とセンスがあふれる注目ポップ・アクト

インタビュー
2024.3.22
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「1970年の大阪万博アイルランド館で働くため来日するも、築地市場で冷凍庫に閉じ込められ、豊洲移転時にようやく発見」「初ステージはFUJI ROCK FESTIVAL’21『ROOKIE A GO-GO』」「影絵、腹話術、魔術、パーティーゲームを盛り込んだシュールでインタラクティブなライブを展開」「付いた異名は『電子レンジで溶かしたネオソウル』『1人Random Access Memories(Daft Punk)』『高円寺のMac DeMarco』」…… 謎が謎を呼ぶ惹句の数々でリスナーを煙に巻くアーティスト、STAP Sigh Boys。しかし、70年代の名曲を思わせるウェルメイドなポップスにモダンなフィールをまとわせた彼の楽曲たちを耳にすれば、彼が単なるイロモノではないことがすぐにわかることだろう。

昨年9月にリリースされたアルバム『Chord』は、収録曲「瀬戸内磁石」がJ-WAVE HOT 100を急浮上し、Apple Music「Tokyo Highway」の年間ベストトラックにも選出。また、同作収録の「Rodeo」を佐藤征史(くるり)が絶賛するなど、その実力はお墨付きだ。2月21日にはニューシングル「Light(n)ing」をリリース。ソリッドなディスコ・チューンで、さらなる洗練を感じさせている。ミステリアスな彼のルーツや制作の裏側に迫る貴重なインタビューを敢行した。
 
取材・文 : サイトウマサヒロ

 
影響源はMichael Jackson、Daft Punk、YMO、Cornelius

——(「STAP細胞」と刺繍されたキャップを被り現れたSTAP Sigh Boysに)すごい帽子ですね。

手作りです。アーティストになるよりも前、STAP細胞が話題になったときに作って。で、音楽活動を始めるときに名前をどうしようか悩んで、他のアイデアが浮かばなかったから「STAP Sigh Boys」にしました。深い意味はないです(笑)。

——STAP Sigh Boysさんが影響を受けた音楽について教えてください。

一番はMichael JacksonとDaft Punk。5歳の時、クリスマスにサンタさんからMichael Jackson『Bad』のカセットテープとウォークマンをもらって、それから5年間くらいずっと聴いてた。15歳くらいの時にはNirvanaのコピーバンドをやってたんだけど、Daft Punkを聴いた瞬間にもうギターは弾きたくないと思っちゃって。代わりにシンセサイザーに興味を持ったけど、当時は使い方がわからなかった。

——あくまでリスナーとしてエレクトロやダンスミュージックを聴いていたんですね。クラブなどにも通っていましたか?

18歳の時にアイルランドからイギリスへ引っ越してからはよく行ったね。特にロンドンでErol Alkanという有名なDJがやってたTrashというクラブ。そこでSoulwaxのライブも観ました。

——日本の音楽から受けた影響はありますか?

実は、日本に来たのはYMOの影響です。「TECHNOPOLIS」のMVに映ってる東京に行ってみたくて。現実はちょっと違ったけど(笑)。あとはCorneliusからも大きな影響を受けました。日本のことを全然知らなかった時に『FANTASMA』を割引ワゴンからジャケ買いして、今でもあのアルバムはよく聴きます。来日してからハマった音楽も色々あって、最近一番好きなバンドはMagic, Drums & Love。あとは、Wang Dang Doodleの演奏もめちゃくちゃ凄いです。

——STAP Sigh Boysの楽曲からは70年代から80年代にかけての空気が感じられますが、その年代のカルチャーに特に強い関心があるのでしょうか?

普段聴くのは、70年代から80年代の音楽がほとんどです。高円寺に住んでるから、古着も大好きだし。高円寺は東京の中で一番自由な街だね。ヨーロッパ人にとっても住みやすいです。

——レトロフューチャーな世界観や、SF的なモチーフを設定した楽曲が目立つのも印象的ですが、SF映画などから着想を得ることはありますか?

うん。映画はSFや宇宙に関するものしか観ないね。毎年『グレムリン』は絶対観ていて、あの時代の宇宙人やバケモノが登場するちょっとコメディっぽい映画からは影響を受けてるかな。あとは、ちょっと変な話なんだけど、昔「ラエリアン」っていう宇宙カルトの説明会に行ったことがあって…… もちろん信じてないんだけど(笑)、彼らのことは面白いと思ってる。

 

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