「Swag」で海外も注目 ラッパー Miyauchi インタビュー 「嘘でしょ?みたいなことをやりたい」

2024.6.21

スランプを越えた先に

——次に向けた曲作りは始めているんですか?

Miyauchi:進めています。駆け出しもいいところで、言ったら一発屋みたいなところがあるんで、もっと国内で実力を見せていくためには、まだまだ作品が足りないなって。

——ということは、次に向けたストックもできつつある。

Miyauchi:できてるんですけど、ちょっとスランプ状態なところもあって。売れるということがどういうことかわかってきちゃったぶん、どうしても欲が出て、こういうフロウだったら聞かれるかな?とか、こういうリリックだったらどうかな?とか、無意識に心がそっちに行っちゃって、面白いものがつくれないんです。なので、今出してOKと思える曲はそんなにないですね。

——『“The Mixtape”』の制作中にもスランプになったと耳にしました。

Miyauchi:そうなんです。言葉が出てこない時期があったんですよ。それも同じ理由ですね。なんか縛られちゃってるというか、そのときも売れる曲を作らなきゃって思ってたんです。

——それは「Swag」ができたあと?

Miyauchi:できる前です。昨日の自分より今日の自分がダサいということにガマンならなくて。『Flowershop Freestyle』は自分なりに自信があったんですよ。その自己評価を超えなきゃならないとなったときに、わかりやすい評価は数字なので、数字を取れる曲を作らなきゃっていう考えになってしまって。

——ましてやラップ1本でやっていきたいという願望もあるし。

Miyauchi:そう。仕事やめたいし、そのためにお金が必要だし、ここから早く抜け出さなきゃって。年齢的なところも気にしないようにしてたんですけど、もう24歳だしとか、どうしても考えてしまう。年下のラッパーたちがとんでもなくかっこいいラップをしていて、俺、24で何してるんだろう?って。

——そう言ったところでヒットソングの作り方なんて知らないのにね(笑)。

Miyauchi:そうなんですよ!(笑)なのにヒットソングを作ろうとしていて。無理な話ですよね。ぼんやりした輪郭だからつかめるわけないのに、ひたすらそれを求めてて。

——結果、言葉が出なくなったと。

Miyauchi:なんかもう、フリースタイルやってても、“金”しか出なくなったことがあります(笑)。“お金欲しい”しか出なくなって。確かに心からの言葉だけど、それしかないのはクソつまらないなと思ってスランプになっちゃって。

——それをどう打破したんですか?

Miyauchi:本当に数を重ねた感じですね。ヘタクソでもいいやと思って、ひたすらリリックを書き続けていたときに、ふと「売れるのは今日じゃなくていいや」と思ったんです。5年前の自分の曲を今聴いたらダサくて当たり前だと思うんですよ。だって、日々進化していくわけだから。だったら、今は売れるとか関係なく、自分が良いと思うものを作っていこうと。それがヒットに繋がっていくんだろうなって。作り続けていく中でそう思えるようになってきて、そしたら言葉がすらすら出てくるようになっていきました。

——結果は後から付いてくるものだと。

Miyauchi:そうです。今はやることをやっておけば大丈夫。それがダサくても、明日はかっこいいかもしれないって。

——スランプを打破して最初に作った曲は?

Miyauchi:「My Name」です。スランプを抜ける皮切りになりました。抱えていたストレスとかも、すべてあの曲に詰め込んだんで。

——ひょっとして、その次に「Swag」ができたとか?

Miyauchi:そうですね。「My Name」のあとに「Swag」ができました。

——ということは、願ったとおりのストーリーになったんですね!

Miyauchi:今考えたらそうですね。涙が出そうです(笑)。やってきたことは間違ってなかったんだなって思いますね。

 

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この記事の執筆者

猪又 孝

音楽ライターとして国産のR&B/HIP-HOP/歌モノを中心に執筆。これまでに取材したアーティストは1000組以上。日本の著名ラッパーの作詞術をインタビューで紐解いた単行本「ラップのことば」「同2」を企画・編集・執筆。放送作家としてラジオや配信番組の構成を手掛ける他、安室奈美恵、三浦大知、東方神起、ナオト・インティライミ、EXILE SHOKICHI、Official髭男dismなどのオフィシャルプロダクツにも関わる。インタビュー原稿ガンガン受け付けます。お気軽にどうぞ。

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