【プレイリストジャーニー Vol.5】Spotifyプレイリスト「New Music Friday Japan」― 世界的にシフトしている金曜日新譜リリースに準拠したプレイリスト
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前回のVol.4では、毎週国内アーティストを中心に注目リリースをチェックできるプレイリスト「New Music Wednesday」を紹介しました。新譜リリースのタイミングが世界的に金曜に移行している中、これまでの諸事情から今も水曜日に新譜がリリースされるマナーが残る国内事情を反映したプレイリストになっていましたね。
そして今回「プレイリストジャーニー」のVol.5は、前回と同じく、新譜(金曜リリース)がいち早くチェックできるSpotifyプレイリスト「New Music Friday Japan」を取り上げます。
それでは、「New Music Friday Japan」について深堀りしていきましょう。
目次
「New Music Friday Japan」概要
タイトル : New Music Friday Japan
URL : https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXc57cuGAMEkA
説明文 : 「(アーティスト名 × 3)など、話題の新曲を最速で。」
作成者 : Spotify
フォロワー数 : 64,364人 (2021年6月21日時点)
フォロワー数推移 : 1万 – 2017年6月、3万 – 2018年11月、5万 – 2020年7月
曲数 : 50 – 90曲台 のあいだで週により変動
カバーアート : 更新クリエイティブ / アーティストイメージ使用 / 通常のスクウェアイメージ
更新タイミング : 毎週金曜日
メインジャンル : Pop, Rap, HipHop,R&B, J-Rap, J-Pop
タイプ : ノンパーソナライズ
類似プレイリスト : 「New Music Wednesday」、各国の「New Music Friday」
以上がSpotifyプレイリスト「New Music Friday Japan」のプレイリストとしての基本仕様となっています。
「New Music Friday Japan」は前回の「New Music Wednesday」とともに、注目の新譜をチェックできるSpotifyの代表的なプレイリストの一つとなっています。「New Music Wednesday」との大きな違いとしては海外楽曲の占有率があげられます。もちろんリリース状況によってその割合は変化しますが、「New Music Wednesday」の場合おおよそ海外楽曲の割合は全体の2割ほどのケースが多く見られる一方、「New Music Friday Japan」ではその割合が半数を超えることもあります。これに関してはやはり国際レコード産業連盟加盟国を中心に推進されている金曜日に新譜リリースを統一しようという「New Music Fridays」プロジェクトの影響が大きいでしょう。国内音楽リスナーに注目リリースを届けるにおいて、そもそも金曜日に世界的に新しいリリースの総数が増えれば「New Music Friday Japan」でも海外楽曲のヴォリュームが増えるのも自然なことです。翻って、現在も独自マナーで国内の新譜リリースが増える水曜日は必然的に国内の新譜が存在感を示す状況になっています。
また、海外楽曲の比率の違いはメジャーからの楽曲占有率にも影響してきます。これも常に変動する割合ではありますが、前回の「New Music Wednesday」においては、いわゆるメジャー3社からからのリリースは約3割となっていましたが、現在の「New Music Friday Japan」では4割を超えています。従って、あくまでも仮説なのでそこはご留意いただきたいのですが、もしかすると現状ではSpotifyのニューリリースプレイリストにおいてどちらかとえば「New Music Wednesday」の方が「New Music Friday Japan」よりドメスティックメジャーおよびインディペンデントアーティストにとってプレイリスト入りする可能性が高いと言えるかもしれません。ただ、この点も金曜日リリースの習慣が国内でも根付くとまた変わってくると思われますし、国際的なプレイリストピッチマナーは金曜にフォーカスする流れがある上、プレイリストインは様々な要素に左右されるアクションですので、あくまで参考程度にとどめておいてください。
「New Music Friday Japan」データ
Spotifyが公開しているAPIを使用して「New Music Friday Japan」のデータを見てみます。毎週更新されるプレイリストなので、あくまで今回の週のデータとなりますが、国内外のトレンドを反映したデータがウォッチできるでしょう。(データ抽出日時 : 2021年6月20日)。
- acousticness
- danceability
- energy
- key
- loudness
- tempo
- valence
- length
※各数値に関してはSpotifyによる指標です。詳細はこちら
上記各項目におけるプレイリスト収録楽曲の数値をグラフ化したので、順番に見ていきます。
※X軸 : 各項目の値 / Y軸 : プレイリスト内の曲数
acousticness
acousticness : アコースティック感を示す。1.0に近いほどアコースティック感が高くなる。
danceability
danceability : ダンス感を示す。1.0に近いほどダンス度が高くなる。
energy
energy : 楽曲のエネルギッシュさを示す。速く、ラウドで、ノイジーな楽曲ほど1.0の値に近くなる。
key
key : 楽曲のkeyを示す。
※ 0 = C, 1 = C♯/D♭, 2 = D, 2.5 = Dhalf sharp (quarter tone sharp), 3 = D♯/E♭ [Pitch class]
loudness
loudness : 楽曲の全体的なラウドネス(デシベル[dB])
tempo
tempo : 楽曲の全体的なBPM
valence
valence : 楽曲のポジティブさを示す。1.0に近いほど幸福感があったり陽気なムードの楽曲、0.0に近いほどサッドな雰囲気
length
length : 楽曲の長さ
上記が2021年6月20日時点の「New Music Friday Japan」の数値データとなります。この中でやはり目を引くのが曲の長さでしょう。3分台が35曲以上、2分台でも20曲以上と最近の傾向、特に海外で顕著な“曲が短い”というトレンドを確認することができました。こちらも前回の「New Music Wednesday」と同じく定点的に観測することでトレンドの推移が明確になってくるので、「New Music Friday Japan」もまた時期をみて再度各パラメーターの動向分析を行いたいと思います。
次回も、日本のSpotify人気プレイリストに迫っていきます。
※参考 : Chartmeric、Spotify Web API、日本レコード協会( 「New Music Fridays」とは?)
Main illustration by Hikaru Matsubara
API analysis by THE MAGAZINE