ミュージックビデオだけじゃない “音楽×YouTube” の可能性 | Tiny Desk Concert / Against The Clock / サンプリングスポーツ / バンドマッシュアップ

2019.3.25

登場以来、世界のエンターテイメント業界を変革して来た、世界最大の動画共有プラットフォームYouTube。

無論、音楽業界も例外ではありません。それまで「プロモーション」や「購入特典」などの用途にとどまっていた「ミュージックビデオ」の制作を常識的にしたのは、間違いなくYouTubeの登場が多大な影響を及ぼしたと言っても、過言ではないでしょう。

2018年には音楽サービスYouTube Musicの日本展開も始まり、ますます音楽との密接な関係を築いているYouTube。

しかし一方で、ただミュージックビデオをアップロードしておくだけでは、他のアーティストとの差別化をはかることができなくなっていることも1つの事実です。

YouTuberをはじめとする様々なインフルエンサーたちが、多くの人々を魅了させるコンテンツを日夜うみ出している一方で、アーティストは自らの世界観を崩すことなく、いかにして存在感を発揮することができるのでしょうか。

今回の記事では、いくつかのアーティストや企業によって公開されている、オリジナリティあふれる 「音楽 × YouTube」 のコンテンツをご紹介。アーティストのみなさんの 「YouTube活動」 に、少しでも参考になれば幸いです。

 

コンサート会場は机の上? “Tiny Desk Concert”

アメリカのラジオ局「NPR」が送るYouTubeの動画コンテンツ「Tiny Desk Concert」。その名の通り「小さなデスクを囲んで行われるコンサート」なのですが、撮影場所はなんとNPRのオフィスの中。Tiny Desk Concertのプロデューサーをつとめる、NPRのラジオパーソナリティBob Boilenが実際に使用している、本当のデスクなのです。

 

Superorganism: NPR Music Tiny Desk Concert
 

このプログラムは、NPRで音楽番組「All Songs Concidered」のパーソナリティを務めていたボブと、同じくNPRで編集者を務めていたスティーブが、とあるバーにアーティストの演奏を聴きに行った際、悪質なリスニング環境とライブに興味のない客たちの話し声によって、音楽が台無しにされていた状況を目の当たりにし、憤慨した二人が、演奏していたアーティストに「うちのオフィスに演奏しにきなよ」とジョークを飛ばしたのが発端となりスタート。

実際にそのアーティストを招いて撮影した初めてのTiny Desk Concertは画質・音質こそ低いものの、お金儲けではなく、「遊ぶ」ような軽やかなアイデアから生まれた、まさにYouTubeというサービスにふさわしい作品でした。

 

Laura Gibson: NPR Music Tiny Desk Concert
 

最初は続ける気など本人たちにはなかったそうですが、2009年の開始から10年、総勢670本を超えるライブ映像が公開されるという巨大コンテンツに発展。NPRのYouTubeチャンネルは現在249万人(2019年3月15日現在)の登録者を抱えています。

こうした「音楽好きの純粋なアイデア」が、結果的に世界中の人々に音楽を届けるコンテンツとして成長することは、まさにYouTubeと音楽のマッチングの素晴らしい一例として捉えることができるでしょう。

 

デスクだけではない、”日常的な場所”にひそむ様々な可能性。

音楽をライブ会場ではなく、日常的な場所でパフォーマンスをする映像は、Tiny Desk Concertの他にもYouTubeでたくさん見つけることができます。

日本のヒップホップクルー・CIRRRCLEは、自身のYouTubeチャンネルにてTiny Apt Concertという動画シリーズを公開中。“Desk” ではなく “Apartment(Apt)” で繰り広げられる、アップカミングな彼らの軽快なパフォーマンスは必見です。

 

CIRRRCLE presents Tiny Apt Concert – “Talk Too Much”
 

また韓国のアーティストChoi Ye Guenは、同じく韓国で活躍するシンガーIUの楽曲をバンドでカバー。決して大きくはない部屋(真ん中にはデスクが!)に楽器を持ち込んで収録されたこの動画は、現在までに約65万回の再生回数を記録。そして何とIUさん本人が自身のInstagramにて動画を紹介するという夢の展開に。

 

[cover] 삐삐 – 최예근 (BBIBBI-choiyegeun) in The Bunker (original song.아이유 – BBIBBI )
 

YouTubeという世界規模の大きなプラットフォームだからこそ、恐れずに大胆なアプローチを取ってみることも、アーティストキャリアの発展に繋がることがあるかもしれません。

 

「10分間」の魔法 “Against The Clock”

イギリスの音楽メディア『FACT MAGAZINE』が公開しているYouTubeコンテンツAgainst The Clock。この企画は、海外の著名なアーティストたちが「10分」の時間の中で1曲のトラックを制作するというもの。様々なアーティストがまさに「時間にあらがって」楽曲を制作し、各々の個性的な作品を生み出しています。

 

Tom Misch – Against The Clock
 

単純に音楽が出来上がっていく過程の面白さに加え、アーティストたちが使用している機材やDAW(パソコン上で音楽制作を行うためのソフト)の画面などを見ることができるので、楽曲制作をしている人にとっては非常に参考になる部分も多いのではないかと思います。

登場するアーティストを見ていると、制作環境にも様々な個性が。ほとんどをPC上で完結させる人もいれば、生楽器をレコーディングして制作する人、古いサンプラーに幾多もの機材を接続して録音する人もいます。

中でも筆者が興味深く感じたのは、フランスのエレクトロデュオAgar Agar。彼らの「Against The Clock」は、一艘のボートの中に作られたスタジオの中で収録されており、機材の奥に見える小窓が「本当に船なんだ!」という驚きをもたらします。

 

Agar Agar – Against The Clock
 

サンプリングだけで音楽を作る!? tofubeats主宰の “HARD OFF Beats”

日本でも、根本の趣旨は異なりますが、時間制限を設けた楽曲制作の模様を撮影し、動画プログラムにしている人がいます。その人物とは、読者の方であれば誰もが一度は名前を聞いたことがあるであろう、言わずと知れた名音楽プロデューサーtofubeats。

彼はメジャーデビューよりも前の2011年ごろ(当時本人はなんと大学生!)より、リサイクルショップ「ハードオフ」で販売されている中古レコードを購入し、それらをサンプリングした音源だけで楽曲を作り上げるという動画シリーズ「HARD OFF BEATS(ハードオフビーツ)」をYouTube上で公開。

 

HARD-OFF BEATS 2017春の陣 東京発着編 第1話「構想5年」/ HARD-OFF BEATS Spring Campaign Ver.Tokyo #1
 

こちらも1時間という時間制限を設け、参加するアーティストたちによる個性あふれる楽曲制作の模様を公開しています。こうしたサンプリング音源だけを用いた楽曲制作のスタイルは「サンプリングスポーツ」と呼ばれ、様々なアーティストたちによって、「サンプリングスポーツ」の動画がYouTube上にアップロードされています。

 

札幌サンプリングスポーツ 2018Spring 第1話 / SapporoSamplingSport 2018Spring #1
 

たくさんの名曲が1曲に。 “バンドマッシュアップ”

別々の曲の要素を合体させ、まるでもともとあった曲のようにミックスをする楽曲制作の手法、「マッシュアップ」。いままでエレクトロニックの楽曲などで行われてきたこの手法に「バンドサウンド」で挑戦したのが、日本の4人組バンド「ACE COLLECTION」。

彼らは2017年に大ブームを巻き起こしたエド・シーランの楽曲、「Shape Of You」のリフをループしたトラックに、J-POPの有名楽曲を19曲もマッシュアップした動画をYouTube上に公開。この動画は現在(2019/03/19執筆)までに300万回以上の再生回数を記録し、13万人以上のチャンネル登録者を獲得。

 

【マッシュアップ】超ヒット曲をShape of Youにのせて演奏してみた
 

そして某テレビ局の朝の情報番組にも取り上げられるなど、「オリジナル曲が1曲もない」バンドだったにもかかわらず、大きな注目を集めるきっかけとなりました。

その後、彼らは音楽事務所との契約を結び、オリジナル曲を制作。まさにYouTubeを通じて「夢への切符」を手にした、現代の若者ならではのバンド活動の形と言っても良いでしょう。

 

無限の表現方法

今回はYouTube上で展開されている、様々な音楽コンテンツをご紹介しました。

現在は音楽を知り、楽しむツールやサービスが多様化しているからこそ、ただ音楽を作るだけで注目を集めることが非常に難しい時代です。しかし裏を返せば、それらの使い方次第で音楽を広めていくためのアクションが無限に生み出せるということでもあるのです。

読者のみなさんも、ぜひ音楽を広める新しい方法を、YouTubeをはじめ様々なツールを使って開拓してみてはいかがでしょうか?

この記事の執筆者

Video Kicks

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