TOOBOE インタビュー yamaなど様々なアーティストへ楽曲提供も行うボカロP・johnのソロプロジェクト、1stアルバム『千秋楽』リリース

インタビュー
2022.1.28
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TOOBOE インタビュー

TOOBOE
「春嵐」「ヒガン」等の代表曲を持つボカロP・johnのソロプロジェクト。
2020年にyamaへの提供曲「真っ白」と本人歌唱による楽曲「赫い夜」をリリースした後、yama「麻痺」、VALIS「相反ヴァラエティ」をはじめとした様々なアーティストへ楽曲を書き下ろすかたわらで、TOOBOEとして「変」「ダーウィン」、江戸川乱歩賞受賞作「狼虎残夢」とのタイアップ曲「紫」等をリリースし、2021年12月に1stアルバム『千秋楽』をリリースした。

 


 
——音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

幼少期よりピアノ等の楽器に触れていた中で、10代の時にテレビで見かけた「午後のパレード / スガシカオ」を拝聴して以来「こんな面白い音楽があるのか」と感銘を受け、スガシカオ、山崎まさよし、斉藤和義等のソロシンガーを中心に音楽を聴き漁るようになりました。

 
——そこから自分でも音楽をやるようになった経緯というのは?

中学卒業時に頂いたパソコンで初めてDTMに触れて、そこから作曲という行為にどんどんとのめり込んでいきました。その一方でニコニコ動画でボーカロイド楽曲というものを知り、ボカロ曲を自分でも投稿してみたいと思い、2019年にデビューしました。

 
——現在活動されている主なシーンは?

YouTube、ニコニコ動画を主体としたネットシーンで活動しています。

 
——昨年12月には半数が未発表曲という1stアルバム『千秋楽』をリリースされましたね。

はい、12月22日には配信もスタートしました。アルバムからいくつか楽曲を解説させていただきます。

「変」
john名義由来の騒がしいサウンドのポップスです。実は、TOOBOEという名義はVOCALOID作品とは全く違うものをリリースしたいというプランがあったのですが、世の中そう上手くもいかなくて。「赫い夜」〜「もののけ」までは自分が邦楽アーティストにならなければというある種の強迫観念の元に動いていたかと思います。今作はそんな悩んでいた時期に「どうせ自分は変なものしか作れないんだ」という振り切った感情で好きなように、楽しく作りました。

 
「爆弾」
これぞ、ザ・ファンクという楽曲。例えばバラードが愛を歌うものとするならば、ファンクは情熱を歌うのに適しているかなと。楽曲の主役が自分自身というのは珍しいかもしれません。ホーン隊は同世代のCalmera Hornsさん。どうもありがとうございました。

 
「ダーウィン」
ミドルテンポのロックチューンです。これはもう、兎に角 趣味全開。ヒット曲なんて作るつもりもないのかもしれません。陽気で明るくて、すごくダサくて、みっともない。自分の深層心理をサウンドに上手く取り込めたかと思います。最後に笑えるというのは何物にも変え難い事なんだと思います。MV公開前は「この曲は絶対に数字が伸びないだろうな」と思っていたのですが、何が起こるが分からないものです。

 
「紫」
跳ねるリズムが気持ちいいエレキの効いたロックチューンです。タイアップというものは結構好きな作業でして、他のクリエイティブが自分の中の開けられなかった引き出しをこじ開けてくるような感覚があります。それに身を委ねる事で新しい音楽が生まれる、それは年間たくさんの曲をリリースしている自分にとってはとても有難いことでもあります。楽曲テーマは「怒り」。兎に角 燃え上がる様なアレンジをしております。勢いそのままに終わりまで向かう気持ち良さがお気に入りです。

 
「濃霧」
初めて挑戦したシンセを主体としたバラード曲。「老虎残夢」を原作にした「紫」を”前篇”とするならば、こちらは”後篇”。ネタバレ要素も多いかしらと、アルバム曲としてのリリースにさせていただきました。原作を読んでいない方は是非。物語は全編に渡って霧深い世界観となっており、それをより前面に出した楽曲になっております。

 
「千秋楽」
少し昔のボカロ曲の質感を意識した楽曲。「千秋楽」とは、舞台の最終日の事。ボカロPとしての一区切り、TOOBOEとしての一区切りをここで出来ればと。ハイペースにやってきた音楽活動と一度距離を置き、ここらで一旦自分を見つめ直そうかなと思った次第です。それはネガティブなものではなく、一区切りするからこそ次の始まりへの意識を変えるられればと思います。今後とも何卒宜しくお願いします。


TOOBOE、「千秋楽」
TOOBOE『千秋楽』

https://linkco.re/29250ce1

 
——バラエティに富んだ楽曲が聴ける作品に仕上がっていますが、楽曲の制作はどのようにされていますか?

基本的に自宅で一人で楽曲制作からMV制作までをこなしています。

 
——TOOBOEおよびjohnさんをまだ知らない人に、ご自身の音楽的特徴を伝えるとするなら?

現代のボカロ界隈をルーツとした変なトラックに歌謡曲的なメロ歌詞を乗せて変な声で歌う変な人です。

john

 
——どんなアーティストに影響を受けましたか?

スガシカオさんに自身の音楽ルーツの中で一番大きな影響を受けております。ブラックミュージックの様なオケに日本人的な叙情のある歌詞のはめ方、そして何よりそれを押し付けがましくなく伝えてくれる声。その全てが魅力的な方だと思います。

 
——楽曲でいうとどういった曲に影響を受けましたか?

スガシカオ – 午後のパレード

音楽に目覚める原点となった曲です。「サイフの中のセンチメンタルだけじゃ 全部両替しても足りないんじゃない??」「黄色いクレヨンで描いた太陽は沈まない」等、あげるとキリがないのですが、風景を描写することでこちらの感情とリンクさせる手腕はとても感動します。サビの「世界中のクエスチョン・マーク」はメロのノリも良く、一度聴いたら忘れられないキラーワードとなっていて、楽曲としての完成度の高さに驚かされます。まさにパレードの様に各々が好きな様に動くオケも素敵です。

 
 
ナユタン星人 – 彗星ハネムーン

こちらはボカロを始める原点となった楽曲。とにかく日本の流行歌としてのフックが多く、聴いていて気持ちがいいです。この様な歌謡曲的な歌詞メロのノリがボカロで大きく数字を伸ばしているのだと、当時の自分には衝撃で、今でも一番聴いている曲だと思います。

 
——音楽活動にあたって、なにか特に意識していることはありますか?

自分というアーティストの音楽業界での現在の座標を常に見失わない事、死生観がブレない事です。

 
——現在、ボカロカルチャーをルーツとした楽曲が国内音楽シーンを席巻していますが、いまのシーンについてなにか感じることはありますか?

YOASOBIやAdoを初めとしたボカロ文脈を持つ実力派のアーティストの台頭によって現在の僕らは良く言えばでは追い風でもあるし、悪く言えば甘やかされていると思っております。流行り廃りはいずれ訪れる中で「ボカロ系アーティストが流行った時代もあったね」と受け流されてしまわないように、個々の個性を確立して何年後も変わらずに音楽を続けられる土台を自分たちで築いていけないかと考えております。

 
——最後に、今後の予定や展望を教えてください。

1stアルバム『千秋楽』は文字通り「公演最終日」です。先のことは一切考えておりません。目の前にある今できることを一つ一つこなしていこうと思います。

 

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