KIRINJI インタビュー | 新レーベル・syncokinから発表したアルバム『Steppin’ Out』は冷静でポジティブなKIRINJIの現在地点を刻み込んだ傑作

インタビュー
2023.9.15
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KIRINJI

KIRINJIが新レーベル・syncokinを立ち上げ、ニューアルバム『Steppin’ Out』をリリースした。約1年半ぶりのフルアルバムとなる本作には、先行曲「Runner’s High」に代表される、明快なメロディが印象に残る9曲が収められている。今回は堀込高樹の作詞術を中心にアルバム制作の裏側にフォーカスを当てて話を聞いた。

 
取材・文 : 宮崎敬太

 
 
SE SO NEONとは良いタイミングで一緒にやれた

——ニューアルバム『Steppin’ Out』は高樹さんが立ち上げた新レーベル「syncokin」からのリリースになります。なぜこのタイミングでレーベルを作ったんですか?

単純にフットワーク軽くやりたいっていうことですかね。最近は配信が中心なので、自分のレーベルがあると「曲ができた。すぐ出したい」みたいな動きをしやすいと思ったんです。そんな配信中心の時代ですが、KIRINJIのお客さんにはCDを買ってくださる方もたくさんいて。であれば、グッズとして魅力的なものを作りたいと思ったんです。自分たちのレーベルであればそのあたりも自分たちの裁量で出来るかなと。

——今だとK-POPに代表される韓国のアーティストの特装盤がすごいですよね。それこそ今作に参加してるSe So NeonのSo!YoON!さんのソロアルバムもめっちゃ凝ったアートワークでした。ちなみにSe So Neonとはどんな経緯で繋がったんですか?

きっかけは去年、サマーソニックとTAHITI 80との対バンでお世話になったクリエイティブマンという会社の担当者の方が、Se So Neonにも携わっていて。僕は彼女たちがデビューした頃からリスナーとして聴いていたから、「いずれ何か一緒にできたらいいですね」って話をしていました。その時はそれで終わったんですけど、Se So Neonが今年の3月に日本でライブをしたんです。

——Awichさんがゲスト出演した「Hello, World!2023 SE SO NEON LIVE IN TOKYO ~SPECIAL GUEST Awich~」ですね。

そうです。その時に向こうから連絡があって、彼女たちが帰る日にお茶することになったんです。せっかくならアルバムに参加してもらいたいけど、1から一緒に曲を作るんだとリリースに間に合いそうにない。それでデモテープを一通り聴いたら、「ほのめかし」が良いんじゃないか、と思ったんです。ソユンさんはソロだとかなり幅広い表現をされるじゃないですか。しかもこの曲はベースも決まったフレーズだから、上手なヒョンジンくんなら余裕だろうと。で、お茶したときに「返事は後で良いので」ってデモテープを聴いてもらい、後日OKの返事をもらった感じですね。

——かなり直近に行われたんですね。

3月に決まって、完成までに2ヶ月ぐらいかかったのかな。まず僕が歌詞を書いて、2番のヴァースは作詞もメロディもソユンさんにお願いました。「リズム強めのメロラップみたいな感じ」って話をしつつ、基本的にはソユンさんが歌いやすいよう作ってくださいと伝えました。で、サビはユニゾン。メールで数回やり取りして完成しました。

——個人的に韓国が大好きなので、こうして自分の好きなアーティスト同士が自然と繋がっていくのを目撃できるのはすごく嬉しかったです。

なんか、向こうもKIRINJIのこと知っててくれて。マネージャーさんが40歳ぐらいの方で、韓国ではその世代がKIRINJIとフィッシュマンズをすごい聴いててくれたらしいです。それが若い子たちにも受け継がれてて。最近の「killer tune kills me feat. YonYon」とかも。だからすごく良いタイミングで一緒にやれたと思います。

——ソユンさんが書いた「既読スルーしないで」という日本語詞の意外性も高樹さんの世界にハマってました。

日本語を勉強してるみたい。僕も最初聴いた時は痺れましたね(笑)。

 

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この記事の執筆者
宮崎敬太
音楽ライター、1977年神奈川県生まれ。ウェブサイト「音楽ナタリー」「BARKS」「MySpace Japan」での編集/執筆/運営を経て2015年12月よりフリーランスに。2019年に「悪党の詩 D.O自伝」の構成を担当した。また2013年にも巻紗葉名義でのインタビュー集『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言 (ele-king books) 』も発表している。