新亜並行空間 ― オルタナ・ジャズ・J-POP、パラレルワールドを交わらせる異形の6人組バンド(今月のおすすめ)

コラム・特集
2023.9.3
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新亜並行空間

新亜並行空間

「Black Country,New Roadへの邦ロックからの回答」「初期トルネード竜巻の再来」「残響レコード発・アートロック行」……神戸で結成された若手6人組バンド・新亜並行空間の1stアルバム『心の理論』が、音楽ファンの脳裏に多種多様な形容を浮かび上がらせながら、静かに話題を呼んでいます。

Gazi-naとして活動をスタートさせた彼らは、2021年7月より現在のバンド名に改名。2022年6月からはアルトサックスを加えた6人体制となり、その音楽性を大きく拡張させました。同年7月にはSUMMER SONICへの出演権をかけたオーディション『出れんの!? サマソニ!?』の最終審査に勝ち残り、関西のライブハウスシーンで着実に支持を広げてきた新亜並行空間。今年7月1日にリリースされた『心の理論』は、そんなバンドが放つただならぬ予感を確信に変える会心作となりました。


新亜並行空間『心の理論』

新亜並行空間『心の理論』

 
そのサウンドの特異さは、アルバムのイントロダクション的なM1「祈り」と、続くM2「竜の子」を聴けば十二分に伝わることでしょう。細やかなアルペジオとソリッドに歪んだストロークを使い分けるギター & 前のめりな4ビートで直線的に疾走するドラムの、オルタナティブロック然としたエモーション。アヴァンギャルドな上下動で乱気流を引き起こすアルトサックス & メリハリの効いたフレーズでグルーヴを創り出すベース & 繊細なコードを奏でるピアノの、ジャジーな調べ。本来交わるはずのない、まさに並行空間に存在するかのようなそれぞれの音色が、アンニュイで儚げなEry(Vo)の俯瞰的な眼差しの下、絶妙なバランス感覚で楽曲を織り成します。

ジャズを共通項にしながらも多様な音楽的背景を持つ彼ら。その進む道は、2010年代以降のロックフェスに順応した四つ打ちのビートで駆け抜けるM3「陽のあたるB棟」や、緊張と緩和を繰り返すアレンジが印象的なM5「Lain」を経て、アルバムが進むごとに収斂。クライマックスには、The 1975「I Always Wanna Die (Sometimes)」やきのこ帝国「海と花束」を意識したというアンセム・M8「Dry」に結実します。

https://twitter.com/barabara_candy/status/1675493623507591169?s=20

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アルバムタイトルの『心の理論』は、主に発達心理学の分野で用いられる用語で、他者の心を推し量る能力のこと。その第一歩には、自他の区別を認識する必要性があります。新亜並行空間による異ジャンルの衝突を恐れないアンサンブルや示唆的なリリックからは、人間同士の分かり合えなさを理解しながら、それでも手を取り合うことで生まれるエネルギーを肯定するような姿勢を感じずにはいられません。

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