7th Jet Balloon ― エモシーンへの憧憬と愛を爆発させる長野のツーピースバンド(今月のおすすめ)

2023.5.15

【特集】おすすめバンド


7th Jet Balloon

7th Jet Balloon

今回ご紹介するのは、地元・長野を中心に活動する2人組ロックバンド・7th Jet Balloon。ドラムとギターボーカルという最小編成ながら、ほとばしるパッションは百人力。同編成で活動するアメリカのエモバンドになぞらえ、「長野のOrigami Angel」の異名を持ちます。

2021年に活動を開始し、同年9月9日に3曲入りの1stデモ音源「I use a wooden bat when I play baseball」を発売。2022年12月25日には楽曲「This Town Needs Jiro」を配信し、リリースを重ねてきた彼ら。2023年4月7日に待望の1st EP「pleasant, sadness, and…」を、インディーロックシーンで存在感を放つDIYレーベル・ungulatesから発表しました。


7th Jet Balloon「pleasant, sadness, and…」

7th Jet Balloon「pleasant, sadness, and…

 
同作は、エモリスナーならばトラックリストを見ただけで思わずニヤつくこと間違いなし。その名の通り、わずか3か月の活動期間でシーンに多大なインパクトを与えたバンド・Midwest Pen Palsに捧げるM2「This is a Pen (Respect for Midwest Pen Pals)」や、現在も第一線で活躍を続けるレジェンド・American Footballをもじったと思われるM5「Japanese Gateball」など、エモへの深い愛が見て取れます。

哀愁漂うアルペジオから前のめりなバンド演奏へとなだれ込むM1「intro1」~M2「This is a Pen (Respect for Midwest Pen Pals)」から、早くもアクセル全開。しかし、向こう見ずな疾走だけではなく、テンポチェンジを駆使し緩急を付けた楽曲展開からは巧みな構成力が伺えます。M3「MGDYRKRNI」では、突き抜けるようなハイトーンボーカルが炸裂。また、M4「super nerds」は全編が日本語詞。「結局僕は / ひとりなんだ」という切実な叫びに心を打たれます。M5「Japanese Gateball」には、「APPLE VINEGAR -Music Award-」特別賞受賞でも注目を集めるバンド・ANORAK!のTomoho Maeda(Gt./Vo.)が客演参加。激しいシャウトで、本作のクライマックスを盛り上げています。

 
「エモい」というフレーズが若者言葉として日本で浸透するよりも遥か以前、1990年前後のアメリカで息吹を上げた音楽ジャンルとしての「エモ」。アメリカのハードコアシーンを代表するインディーレーベル・Dischord Recordsやその周辺のバンド達のサウンドを指した言葉「エモコア」が基となっていますが、Dischord Records主宰者イアン・マッケイは当時、そのラベリングを「馬鹿げている」と一笑に付しました。

それから30年の時間をかけ、ポップパンクやマスロックなどの近接するジャンルを飲み込みながら進化を続けてきたエモ。かつては商業的な枠組みとも揶揄されましたが、今日では多くのアーティストがその”くくり”に誇りと愛着を抱きながら活動し、次世代へのバトンを繋いでいます。日本国内では、ANORAK!やくだらない1日が新世代の担い手として躍進。7th Jet Balloonは、優れたクオリティを誇る本作でそんな精鋭達を猛追しています。

5月後半からは全国7カ所(and more)でのツアーを予定している7th Jet Balloon。彼らが新たなムーブメントの震源地となる。そんな予感に胸が躍ります。

 
(文・サイトウマサヒロ)

 
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