Awesome Handsomes インタビュー ジャンルやシーンを越え、新しいカルチャーを切りひらくアーバン・ロックバンド

2018.11.20


Awesome Handsomes | ジャンルやシーンを越え、新しいカルチャーを切りひらくアーバン・ロックバンド

チルでアーバンなサウンドで、シーンを越えて精力的に活動する4人組ロックバンド、Awesome Handsomes。様々なシーンでライブを行い、その音楽性は幅広い層へアピールするポテンシャルを持ち、例えば客演に話題のラッパー・Lunv Loyal(ルナ・ロイヤル)を招くなど柔軟なスタンスも注目を集めています。バンド活動をする上でのデジタルへのリテラシーも高く、積極的にサブスクリプション/ストリーミングを活用、新たなファンベースの獲得にも意欲的に取り組んでいます。今回は、そんなAwesome Handsomesから、Daiki(Ds)、後藤マサヒロ(Ba)、Takuya(Gt)に、結成の経緯や音楽性、活動スタンスにいたるまで幅広く話をききました。

 

はじまりはニューヨーク

——Awesome Handsomesはアーバンなサウンドだけれどラウドシーンでも活動していて、デジタルリリースにも積極的と、そういうスタンスが興味深いと思い今回取材のアプローチをさせていただいたのですが、まず結成の経緯を教えてください。

Daiki:最初はバンドというカタチの予定も特になくて、俺が個人的に作った曲に試しに歌を入れてみようと思って、Shunに歌ってもらったのが始まりです。その頃、Shunはニューヨークに住んでて、俺は神戸だったんですけど、追いかけて向こうに行ったりもしてて。とはいえ、向こうではお互いそんなに時間もあわなかったんですけど、2人とも日本に帰ってきた後に、メンバーを見つけて2016年にAwesome Handsomesとして東京で活動をスタートしました。

——Daikiさんは確か神戸のラガなメタルバンド、Ruin Of Fictionをやられていたんですよね?

Daiki:そうですね。もともといろんな音楽を聴いてたので、その時はレゲエとメタルのエッセンスのあるバンドをやっていました。

——後藤さんとTakuyaさんが加わったいきさつは?

Daiki:後藤とは地元が一緒なんです。小学校からの仲で。

後藤:最初にAwesome Handsomesの曲を聴いた時から、「これ弾いたらハマるの絶対俺やろ!なんで誘わんの?」ってずっと言ってて(笑)。

Daiki:それで、レコーディングの時に呼んだらいい感じだったんで一緒にやろうかって。

後藤:研修期間を経て、正式に加入しました(笑)。

Daiki:Takuyaには、実は3年前にも一回声をかけてて。その時は、彼も新しい仕事始めたばっかりだったんで、ちょっと待ってって感じだったんですけど、この間のツアーの時にギターがいなくなっちゃったんで、そのタイミングでもう一回ShunがTakuyaを誘ったら今度はOKで。それで、まずはサポートとして参加してもらって、そのまま加入してもらいました。

Takuya:Awesome Handsomesはすごく幅広い音楽性だなっていう印象があって。最初誘ってもらったタイミングでは、仕事のこともあったり、ギターとして自分がそこにどう関わっていけるのか分からなかった部分もあって、一緒にやるって決断はできなかったんですけど、その後も活動自体はずっとウォッチしてました。自分があんまり触れてこなかった音楽をやってるし、普通にいいなと思ってました。で、ある時Jason Mrazのフレーズをウクレレで弾いてインスタにアップしたんですけど、それをShunくんが見てたらしくて、連絡をもらって。

Daiki:それは俺らも初耳(笑)。

Takuya:それで僕も三ヶ月のインターンを経て、内定をいただきました(笑)。

 

好きな曲を作ってるうちに今の方向性へ

——そうやって集まったAwesome Handsomesは、アーバンなサウンドにもかかわらずラウドシーンでのライブが多いですよね?

Daiki:特に狙ってるわけじゃなくて、周りの友達がそっちのシーンにいるんで、たまたまそういう感じになってるだけで。けっこうその辺は悩みですね。もっと幅広いジャンルの人たちと一緒にライブするにはどうしたらいいのかと。

——メインのコンポーザーはDaikiさんということですが、以前やっていたバンドの音楽性から現在のサウンドにシフトしたきっかけというのは?

Daiki:色んな音楽に影響を受けてきた中で、前のバンドが解散した後、何も考えず自分の好きなように曲を作りまくってた時期があったんです。で、ある時ファンクっぽい曲が1曲できて、それがすごくいい感じで。バンドでやってみてもしっくりきたんで、そこからですね。

——Shunさんとお二人の時に、最初から ”アーバンミュージックをやろう” っていうコンセプトがあったわけではないんですね。

Daiki:そうですね。最初はもう本当に、Shunと二人でひたすら好きな曲を作るっていう感じで。それからライブを重ねるうちにだんだん方向性も固まってきたというか。

——確かに初期のEP『オーサムハンサムズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』を聴くと、楽器の音とサウンドの方向性に、迷いと言ったら失礼ですが、”どっちなんだろう?”っていう雰囲気が若干ある気がしました。

Daiki:本当にそうで(笑)。その頃はなんか前の感じが抜けきってなくて、無意識に歪ませちゃうっていう。”クリーンでギター鳴らしたらあかん” みたいな(笑)。

——そこから2年を経て、今年9月にリリースされた『Timeless -summer-』ではAwesome Handsomesらしさがさらに磨かれた印象です。

Daiki:やっと慣れ始めたんかな(笑)。定まってきた感じはありますね。最近は他でも曲を作ることも増えて、バンドサウンドだけじゃない曲を作るスキルも上がったんで、それに伴って視野も広がった気がしますし。だからこそ ”じゃあバンドで何がしたいか” っていうのがすごくクリアになってきたっていうのはあります。

 

バラエティ豊かなメンバーのルーツ

——もともとDaikiさんはどのような音楽に影響を受けてきたんですか?

Daiki:母親がピアノの講師で、2歳頃からクラシックピアノを弾いていました。が、当時は弾かされていた感覚で音楽に愛着があったかというと微妙なところで、一番最初に好きになったのは中学1年の時、両親の影響でスターダストレビューなんです。それで、根本要さんに憧れてギターを買ったりして。ビートルズ、クイーンからロックにハマり、ヴァン・ヘイレンやモトリー・クルーとか、80年代のLAハードロックを経て、前のバンドを始める前ぐらいからレゲエやヒップホップ、ハウス、USポップ、クラブミュージックも聴くようになって。最近は、改めてフュージョンをよく聴いてます。やっぱり勉強にもなるんで。とにかく音楽は全部好きです。

——楽器全般できるそうですが、メインがドラムなのはどうしてですか?

Daiki:もともとギターだったんですけど、中学校の時バンドを一緒にやれる仲間が周りにいなくて。それで、地元のライブハウスで先輩がバンドからドラムが抜けたって言うから、じゃあドラムだったらバンドできるんかなって思って、やってみたら割といい感じで(笑)。そこから、なぜか今にいたるまでドラムをやってるという。

——後藤さんがベースを始めたきっかけというのは?

後藤:始めたのは高校3年生の時なんですけど、それまでずっと剣道をやってて。もともと体育の先生になりたかったぐらいで。高3で部活を引退した後、親友の二人がドラムとギターを始めて、それで俺がベースやれば3人でできるやんって。バンドをやりたいっていうより、友達と何かを一緒にやる手段という感じでしたね、最初は。

——それからということは、上達が早かったんですね。

後藤:大学生の時に改めてベースをちゃんとやりだして。大学を卒業してからは音楽教室に就職したんですけど、Awesome Handsomesに加入したのを機に辞めて、今は別の音楽スクールでベースの講師をやったりしてます。

——音楽の趣味としては?

後藤:BUMP OF CHICKENがすごく好きで。そこからジェームス・ブラウンにたどり着いて。

Daiki:飛びすぎやろ(笑)。

後藤:あ、その間にスガシカオがいるんだった。

——ファンク要素のあるJ-POPを経由するってことですね(笑)。

後藤:ですです(笑)。スガシカオでファンクが好きになって、そこからファンク、ソウル、R&Bにハマりました。

Daiki:確かに結成したての頃、後藤によくオススメのファンクを教えてもらってたな。

——Takuyaさんのギターや音楽性のルーツというのは?

Takuya:基本デスコアですね。

後藤:どんだけやかましいの好きやねん(笑)。

——Job for a Cowboyや昔のBring Me The Horizonあたりですか?

Takuya:その辺めっちゃ聴きましたね。ブリングミーの2ndとか。彼らチャラい感じなのにダークな表現ができるのがカッコいいなと思ったし、Job for a Cowboyのサウンドからはソウルを感じます(笑)。まぁ、もともと中学生からのルーツがBON JOVIやCHILDREN OF BODOM、LAMB OF GODだったりしつつ、一方でポップスもずっと聴いてきたっていう感じです。そういうバックグラウンドがある上で、今はけっこう好き勝手にギターを弾かせてもらえてて嬉しいです。個人的にはオーバードライブがないと人生は広がらないと思ってますけど(笑)。

——ちなみに今日は不在ですが、Shunさんの音楽の好みというのは?

Daiki:Shunはめっちゃポップス聴きますし、最近は専らヒップホップなのかな。入り口は宇多田ヒカルで、彼女の作品を手がけている映像作家さんなんかもディグってそこからの影響は大きいっぽいですね。NYに留学したのも彼女の故郷に出会ったというのが理由の一つにもなってたみたいで。

——Shunさんはもともとラッパーなんですか?

Daiki:いえ、彼はもともとはギターボーカルで尾崎豊の「シェリー」を弾き語りたいがためにアコギを買ってもらったところがスタートとのことで。そこからこのバンドをスタートさせて、色んなボーカルとアプローチを模索する道中で出くわしたヒップホップの影響は大きかったみたいで。他に思い当たるところで言えば、結成以前からエド・シーランやThe1975なんかもめっちゃ好きで、それはお互いの共通の好みだったりします。


Awesome Handsomes | ジャンルやシーンを越え、新しいカルチャーを切りひらくアーバン・ロックバンド
L to R : Takuya, Daiki, 後藤, Shun
 

 

ストリーミングのメリットを最大限に

——みなさんの好みをお伺いすると、今のサウンドになっているのもなるほどという感じです。次に、バンドの活動のスタンスについてお伺いしたいのですが、バンドシーンは配信に対してかなり温度差がある中、Awesome Handsomesは世の中の動きを早くキャッチアップしている印象があります。

Daiki:もともと ”いつまでCD作るんすか” みたいな話はよくしたり考える方で。俺も含めてバンドやってる人ってすごいCDが好きで、それはそれでいいとは思うんですけど、日本っていう特殊な環境でこれから音楽をもっとちゃんと広げるにはどうしたらいいのかなって考えた時に、やっとストリーミングっていう海外の流れが入ってきたんで、みんながこの動きを理解してちゃんとやったら絶対面白くなると思うんですよね。最初アメリカにいる時にUSのSpotifyを知って、もうその瞬間にこれは使おうって思ったし。

——体験として海外の流れを知っているというのは大きいですね。

Daiki:CDってレコーディングしてからのプロセスもめっちゃ大変じゃないですか。僕らみたいに自分たちでしか音源を作れない人間からしたら、CDを前提としたプロセスやクオリティーの部分でつまずくよりは、配信のスピード感、例えばライブ帰りにすぐお客さんにスマホで聴いてもらえるみたいな使い勝手の良さを活かすのがいいなと思ってて。そういうことを仲間のミュージシャンに発信して、そういう方法もあるんだからやろうぜっていうのは、よく言ってます。

——周りのバンドに配信を勧めた時ってどんな反応ですか?

Daiki:二極化ですよね。すごい興味持ってくれるか、そういう動きに触れたことがないからそもそも分からないっていう。後者の人たちは、サブスクが自分たちにとっていいのかどうかすら考えたこともないみたいな。”へーそういうのがあるんだ” で精一杯で、自分たちの意見は特に無くて。だから、未だにCDを作ってる友達とかにもめっちゃしぶとく言ってますけどね。周りの環境もどんどん変わってるし、いい加減もうサブスクも馴染んできたやろって、前に話した時にリアクションが薄かった友達にもう一回話したりして。興味を持ってくれる人には、アイデアや知識とかをシェアしますし。

——配信を開放するしないはバンドの戦略によると思うんですけど、それを判断する根拠として、まず情報をきちんと知ることが大事ですよね。

Daiki:だから、まだ反論してくれた方がちゃんと議論にもなるし、そこからお互い気付くこともあるからいいんですけど、単に ”分からない” っていう人がけっこう多くてじれったかったりしますね。

——Awesome Handsomesとしては、実際に配信してみていかがですか?

Daiki:もうそれは絶対こっちの方がええやんって感じです。再生回数やリスナーの住んでるところとか、そういうデータも見れますし。どの曲が人気があるかとか。

後藤:企画やった次の日に再生がドーンって伸びてるのとか分かるしな。

Daiki:そういうデータって、やってる側として一番知りたいことやし、知っとかなあかんことじゃないですか。そこまでちゃんと知れるっていうのはやっぱり嬉しい。

後藤:CDやと買ってもらって、そこからどういう聴かれ方をされてるとかが分からないんで。

——Awesome Handsomesはリリースのスパンもコンスタントで、そういうスタイルも今のトレンドを分かっているんだろうなと感じます。

Daiki:そこは頑張ってます(笑)。いい意味で他のジャンルのカルチャーを吸収したいなと思うし、そのスタイルの方がより音楽的やなって思うんで。というのも、1年に1回アルバム作ってツアーしてを繰り返すのって仕事っぽいじゃないですか。そうやって作ったものって、本当に自分から出てきたもんなんかなって、宿題みたいに受動的になってんじゃないかなって。そういう部分も能動的にやりたくて。この間リリースした『Timeless 』もまず “summer” を出して、今年中に “winter” をリリースする予定なんですけど、2つで1つの作品っていうコンセプトがあって。そういうリリースの仕方も、ストリーミングがあるからこそ実現しやすくなってるし。

——プロモーションに関してはどう考えていますか?

Daiki:この世界では音楽でビジネスをしようと思いついた昔の人がいるので切っても切れない関係にありますが、”音楽を作る・表現する事” と “プロモーションする事” って自分の中でかけ離れた存在として認識していて。例えば、好きなミュージシャンとかに “新しい曲できたから聴いて!” って感じで聴いてもらうのは好きだとしても、戦略的にやるのはあんまり自分には向いてないなって気付いて(苦笑)。でも、さっき言ったみたいにまわりに配信を勧めたりしてるのは本心から良いと思ってるからで、そういう本当に自分の中から出てきた考えに従ってやってます。

——具体的には、曲を聴いてもらうためにどんなことをやってますか?

Daiki:そこは地道に、聴いて欲しい人がいる場に直接行ってって感じです。でも、今まではCDを渡してましたけど、配信にしてからは、ストリーミングで聴けるURLをLINEとかで送らせてもらってます。そうするとオンラインのやりとりが自然と発生するから、相手も聴いてくれた感想を送ってくれますし、次にも発展しやすくていいですね。

 

柔軟にカルチャーを吸収して産み出されるクリエイティブ

——またAwesome Handsomesは客演にラッパーのLunv Loyal(ルナ・ロイヤル)さんを招いたりするところがユニークですよね。Crystal LakeのRYOさんやC SQUAREDのTŒMさんなどをフィーチャリングされている楽曲もありますけど、それは文脈的に分かりやすいのですが、Lunvさんは意外というか。

Daiki:Lunvは秋田出身なんですけど、もともと秋田のバンドに友達がいて、そいつのイベントに呼んでもらった時に紹介してもらって。同い年っていうのもあってだんだん仲良くなって。参加してもらった「TINY LITTLE BED」は、もうLunvにバース蹴ってもらう前提で作りました。こういうコラボは今後ももっとやっていきたいと思ってます。

——「TINY LITTLE BED」はMVもいい感じですね。MVはKeishi Kiseさんがディレクションされている作品が多いですが、どういうつながりなんでしょう?

Daiki:Keishiくんは沖縄の友達に紹介してもらったんですけど、「TINY LITTLE BED」のMVが彼のキャリア2本目の作品なんです。1本目がその友達のバンドのビデオで、見たら “めっちゃええやん!” ってなって。それで、沖縄まで行くからビデオ撮ってくれって。多分キャリアのスタートは19歳とかでまだ若いんですけど、1つ提案したら10個返してくれるみたいな人で。それから、「BROOKLYN」、「オルターエゴ」、「Stay the Night 」、「GERMANSUPLEXHOLD3」と作ってくれたんですけど、こっちが伝えたイメージをいつもいい感じに仕上げてくれるんですよ。例えば「GERMANSUPLEXHOLD3」のMVの時は、もともとTRASH 新 ドラゴンが作ってるサンプリングビデオのイメージを ”こういうの日本じゃ新しいよね” って伝えたら30分とかでバッチリなサンプルが送られてきて、イメージ以上のものを作ってくれましたし。

ちなみに最近公開した「Birthday」のMVは、監督のKenichiro Hiroさんの方から「オルターエゴ」のMVを観て “撮らせてください” って連絡をもらって。そこにShunの大学の友人で「オルターエゴ」のMVでもアシスタントディレクターとして協力してもらった奥山くんにも再び助監督として加わってもらい、出演してる俳優のAkira君も俺たちのライブに普段から足を運んでくれるShunの仲のいい友人の一人だったりして、色んな人の縁で完成した作品なのでぜひチェックしてもらいたいですね。

——MVではこだわりとかありますか?演奏シーンがなかったりしますよね?

Daiki:その辺は意識してます。もちろん演奏シーンも見て欲しいとは思うんですけど、MVとして客観的に考えた時に、ちゃんと映像である意味をもった作品を届けたいんで。映像のイメージやモチーフは80年代のMTVや最近のヒップホップのカルチャーから影響を受けてます。

——分かりやすいところでいうと、この間のCrossfaithのイベント「NITROPOLIS」にANARCHYさんやYENTOWNのメンバーが出演していたり、ヒップホップやロックも、ジャンルで括るんじゃなくてカルチャーでつながっていくと面白いですよね。

Takuya:そうですよね。僕らも「NITROPOLIS」見に行ったんですけど、実際ヒップホップサイドの人たちも、バンドのパフォーマンス、お客さんのレスポンスを感じてアガったっていう話もしてたし。

——Trapでもロックっぽいアプローチがだいぶ増えてます。

Daiki:確かにscarlxrdとか。でも、バンドをやってるからといってその辺を真似しようとは思ってなくて、いつかやってるうちにああいうのは自然に出てくるかなと。なので、逆に意識しないようにしてます。

——楽曲の制作はどのようにされているんですか?

Daiki:最近は ”曲を作ろう” っていうより、ビートメイクするっていう感じで。昔は「はい、こんな曲つくります。じゃあそこに向かって頑張って作っていきましょう!」って8時間とかかけて作ってたんですけど、この頃はまず作ってみて、ストックして、その中からピンとくるものを育てるみたいなケースが多いです。

——ビートのリースやType Beatもありますが、その辺はどう思いますか?

Daiki:面白かったらいいじゃんって思いますね。自由でいいやんって。周りが「バンドとは・・・」って昔ながらの考えでいる中で、俺らからしたらそういうやり方は魅力的に見えるし、そういう良さは分かち合いたいからまわりにも伝えたりして。

後藤:ファンクからビートジャックしてるヒップホップの音源とかをメンバーの間で送り合って、元ネタ当てるみたいなこともしてて。

Daiki:それってパクリっていうより、両方のジャンルや新しい曲を知ることのできるいい機会やし、そこから会話も生まれるし面白いよね。

Takuya:そういう柔軟性やカルチャーのシェアは本当にいい流れだと思います。

Daiki:だから曲作りで言ったら、結局、最終的にどういうものをアウトプットしたいかで使い分けですね。ものによっては8時間かけた方がいい曲もあるだろうし、そういうトレンドのやり方がいい時もあるだろうし。

——そういう柔軟さがあると、ロックバンドも曲作りのカロリーが分散されて、リリース頻度も上がると思います。

Daiki:なんでもたくさん作ればいいっていう訳じゃないと思うんですけど、本当に作りたいものが多くあるならそうしたいなと。もうやってる人はやってるんで、俺らも見習わなあかんなと思って。

——バンドで周りにそういう方はいらっしゃいますか?

Daiki:身近なとこでぱっと思い浮かんだのはMade in Me.ですね。彼らは一見はギターロックなんですけど、考え方が俺と似てて。ストリーミングで100曲リリースするって頑張ってたり。

——現在の音楽制作の環境というのは?

Daiki:ホームスタジオと呼べるかわかんないですけど、一応、一通り作れる制作環境が家にあるんで、自分たちでそこでやってます。今年頭に出したSingle「WILDLIFE」まではエンジニアリング、ディレクションをNewspeakのStevenに力を貸してもらっていましたが、『Timeless -summer-』からは完全に自分たちだけで。

 

「友達や仲間のミュージシャンみんなで遊ぶ場所を一緒に作っていければ」

——リリックではどのようなことを歌うことが多いですか?

Daiki:基本的にはShunの私生活や心情、信条とかですかね。生きてる中で、良い部分も悪い部分も含めて表現していると思います。昔は女の子の歌が多かったですね。『Cities and Girls』というEPではタイトルの通り色んな都市での恋愛の歌ばかりです。俺ら地元が関西で、今は東京に住んでてニューヨークでもお互い当時の恋愛のエピソードが1曲になったり、思いの詰まった街が多くて。

「オルターエゴ」ではEminemやKendrik Lamarの第三者視点から語る手法なども取り入れてみたり、「WILDLIFE」以後はさらに新しいアプローチが増えてきたように思います。リリックを書く彼自体が音楽の歌詞や世界観に救われてきた事が多いので、自分達の音楽を聴いてくれた人にとってもそうなれるものを作りたい、というのは言っていました。

——今後の目標や、やっていきたいことは?

Daiki:シーンを横断するっていうのはもっと推し進めたいです。ただ、ヒップホップのアーティストがライブハウスでやるのは問題ないと思うんですけど、クラブシーンでバンドとしてやるときに、やっぱり物理的な部分で難しかったりするんで、その辺は課題ですね。単純に俺がDJやってShunが歌うっていうフォーマットで向こうに合わせても俺らの味が出せないし。

だから、今後の目標としては新しいカルチャーを発信していきたくて。ここで俺らが「武道館でやりたい!」とか言っても、自分たちでさえしっくりこないけど、そういうことより、さっきの「NITROPOLIS」じゃないけどジャンルやシーンに関わらずもっと自由に、友達や仲間のミュージシャンみんなで遊ぶ場所を一緒に作っていければと思ってます。そうする中で、商品的なものじゃなくてもっと音楽的な音楽を街に浸透させていきたいですね。


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