nomaインタビュー 「ずっと途中だと思ってる。今に固執しないように」夜猫族所属、ジャンルにとらわれない奇抜なアイデアとキャッチーさを両立させるアーティスト

2019.7.23

多種多様な若手クリエイターが結集した異能の集団・夜猫族の”頭領”で、ヒップホップをベースとしつつ独特な音楽表現で注目を集めているnoma (ノーマ)


【Who's NXT】 noma (ノーマ)

 
About noma (ノーマ)

福島県出身。15歳からラップを始め、16歳で作曲を開始。その次の年からは自宅で機材を揃えビートメイクやレコーディング、ミックスとマスタリングまで自ら行うようになる。

2017年の9月に同志と夜猫族という集団を立ち上げてからは、夜猫族としてはもちろんソロ名義でもコンスタントに楽曲を発表し続ける。

今年2019年7月にリリースされた自身としては2枚目のEP『LSLSL』は、そのジャンルにとらわれない奇抜なアイデアとキャッチーさを両立させたサウンドが話題を呼び、様々なシーンから密かに注目を集めている。

 
——nomaさんが音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

興味を持ったっていうとどの時点なのかな… 多分物心ついたときから音楽は大好きで。小学生くらいのときもインターネットで見つけた曲をひたすら聴いてて、その時はエミネムとかオフスプとか、あとは平沢進とかもお気に入りだったり、この時点でも挙げきれないくらい色んな音楽を聴いてたとは思うんですけど。

ただ、そういうのは多分ネットカルチャーに傾倒していたために自然と触れていたもので、どちらかというと音楽に対しては受動的なスタンスだったと思います。もっと音楽に対してより能動的に、興味を持って向き合うようになったのは中2の時ですね。中2の時に僕は「音楽家になろう」って決めたんですよ。そこから古今東西あらゆるジャンルのCDを大量に借りては貪るように聴きまくってましたね。

 
——その「音楽家になろう」と決めたきっかけというのは?

小学生のとき僕ずっとプロレスラーに憧れてて。もう本気で目指してて格闘技とかも習ってたんですけど完全に挫折しちゃって、「じゃあ俺は何をするべきなんだろう、好きなことしかできないし、でも他に好きなものってなんだ?」って考えた末、「そっか、音楽だ!」って思ったんです。

でもうちってお金も無かったし、作曲に必要な機材揃えるためにバイトして貯金するにしてもまあまあな時間かかるじゃないですか。これじゃ出だしが遅れると思って、とにかくなんか始めなきゃ、でも今この何もない状態でできることってなんだって考えた時に「ラップだ」って思いついて。それで15歳のときに地元のサイファーに参加してフリースタイルとかしてました。

 
——現在活動されているのは東京ですか?

ですね。東京のヒップホップシーンで活動しています。


【Who’s NXT】 noma (ノーマ)

【Who’s NXT】 noma (ノーマ)

 
——先日は2ndとなるEPを発表されましたね。

はい、7月アタマに2nd EP『LSLSL』をリリースしました。どちらかっていうと結構ヒップホップ色が強めで、シーンを意識して作り上げていったんですけど、でもただのヒップホップじゃ作る意味もないので、その中に僕の思うポップスを落とし込みました。

聴きどころといえば、ん〜… 前半の2曲は割とアグレッシブにラップを叩き込んだんですけど、「Loner」からの3曲は自分なりのポップスをかなり表現できたかなと思ってて、個人的にすごく気に入ってます。4曲目「Sheep」ではオートチューンを使ったりしてるんですけど、凡庸な仕上がりにならないようにしっかり消化できたかなと。あとは、僕はけっこう歌詞を聴いて欲しいですかね。韻とか言い回しについてはかなりこだわってるので。

『LSLSL』 各配信ストア : https://linkco.re/7GCmTtZh

 
——その前の5月にはMermril.さんとのシングル「Sheep」を出されていましたが、これまでの楽曲で自分として印象に残っている作品はありますか?

いやあ難しいなぁ〜 曲によって意識したこととかアプローチも全然違ってくるし…

ただあえて一つあげるとするなら今年の2月に発表した「だいじょうぶ」とかはけっこう好きです。一緒に夜猫族でやってるtip jamっていうラッパーと二人で竹取道中という方の作ったトラックを使わせて頂いたんですけど。サビのメロディも良いしコーラスワークも上手くできたと思うし、tip jamのラップもすごく映えてて。もちろん自分のバースも。どこを挙げても完成度が高いし、従来のヒップホップにはないような仕上がりになったと思うんで個人的にとても気に入ってます。

 
noma x tip jam – だいじょうぶ (Prod.竹取道中)

 
——ふだん楽曲の制作はどのようにされていますか?

基本ず〜〜〜っと家で作ってます。事前に頭の中で組み立てたものをゼロから再現していったりもするし、ビートを組みながら構成とか歌詞とかを考えていくこともあるし、もちろんプロデューサーの方から頂いたビートを聴きながら作っていったりもしますね。

 
——ご自身で考える自分の音楽活動の特徴的なところは?

朝ごはんを、しっかり食べます。

 
——nomaさんはどういったアーティストに影響を受けてきましたか?

まず元SOUL’d OUTのDiggy-MO’は欠かせないですね。小5くらいのときにSOUL’d OUTにめちゃくちゃハマって。アルバムも全部聴きまくったしライブも行ったし多分人生で一番聴いたアーティストなんじゃないかなって思います。恐らく僕の根底にある「かっこいい」の基準って彼なんだと思います(笑)。パフォーマンスだったり振る舞いだったりその多彩なアイデアには大いに影響を受けてると思いますね。

あとは誰だろう、その次に聴いたのはEminemとかになってくるんですかね。彼の楽曲も幾度となく聴きましたし、特にライミングに関しては一番参考にしたラッパーです。その二人を除くと自身の作風に影響を与えたアーティストは多すぎて数えきれませんね。ジャンル問わず様々な楽曲から色々なところを吸収してるので、自分でも何に影響を受けてるのかわかりません。

 
——楽曲としての影響でいうとどのあたりになりますか?

多分全部挙げると5億曲くらいになると思うんで、前述したDiggy-MO’、Eminemを除いてこれまでで特に衝撃を受けた曲を挙げていきます!

 
twenty one pilots – Guns For Hands

アメリカのロックバンドなんですけど、中学生の時にこれを聴いて本当に衝撃でしたね。全体的にメロディはキャッチーなんですけど段々高まってきて叫び出したと思ったら一気に落ち着くところとか、終盤でBPMが変わってラップパートが入ったり、MVの意味深なヴィジュアルから何までその情緒の安定しない感じがまさに”天才”って感じで完全に心を掴まれました。彼らの作品は是非チェックしてほしいですね、MVも本当に面白い。

 
Ed Sheeran – “You Need Me, I Don’t Need You” captured in The Live Room

イギリスのシンガー Ed Sheeran による「You Need Me, I Don’t Need You」っていう曲のライブ版なんですけど、これYouTubeにしか上がってなくて。あえて原曲じゃなくてこっちを選んだのは… もちろん原曲も素晴らしいですよ!Ed Sheeranは最もお気に入りのシンガーで、彼のアルバムの曲全て大好きで何度聴いたかわからないほどなんですけど。ただこのライブ版をYouTubeで見たときは本当に言葉を失いましたね。とにかく見て欲しいです、圧巻です。全部1人でやってるんですよ、ループ・ペダルっていう機材を使ってリアルタイムで演奏してトラックを作りながらパフォーマンスするんですけど、技術もさることながらその情感や展開も何もかも素晴らしい… そりゃ数万人も彼のライブを見にいきます。

 
平沢進 – 夢の島思念公園

小学生の時によく聴いてた曲ですね、「妄想代理人」っていうアニメがめちゃくちゃ好きで、そこから入りました。以来、今敏さんの作品に傾倒したりもしたんですけど、平沢進さんから影響を受けたのは何よりその壮大で幻想的な世界観ですね。メロディや音選びも斬新で類を見ない音楽性だと思うんですけど、特に歌詞が好きです。いつかライブを生で見たい…

 
majiko – 心做し

中学の時にYouTubeでこの曲のREC映像を見て、以来彼女にはずっと惚れています。繊細さと迸るような情緒をうまく使い分けるその表現力には完全に心を打たれました。今でも一番好きな女性シンガーです。

 
GoldLink – Crew ft. Brent Faiyaz, Shy Glizzy

GoldLinkに憧れてしょうがない時期がありました。トラックのセンスがすごい好きです。斬新で、お洒落で、洗練されていて。彼を聴いた時「うわ、やられた…」と思いました。フロウもかなり好きですね。

 
尾崎紀世彦 – また逢う日まで
多分父の影響だと思うんですけど、昔から歌謡曲がすごく好きで。その中で一番好きなのが尾崎紀世彦さんです。昔の歌謡曲ってめちゃくちゃ凝ってて、今聞いても結構斬新なものが多いなと思います。プロが本気でその時の最先端を作ってるって感じがして、生半可な知識や技術じゃとても真似できないですね… そして一番好きなのは歌詞! 言い回しや構成などどれをとっても無駄がなく本当に美しい。阿久悠さんは天才ですね。

 
疲れてきました。

 
Daryl Hall and John Oates – Kiss On My List

80年代の海外のポップスで一番好き。ホール&オーツはハズレがない。マジカッケェ。中学の時に放送委員やってて、これ給食の時に流しました。

 
Abhi The Nomad – Dogs

トラックがお洒落、フロウも斬新でマジかっこいい。

 
josh pan and X&G – Platinum

イカれてる。

 
Cashmere Cat – Wedding Bells

エモーショナル。音使い、展開全て好き。

 
——音楽活動においてスタンスとして意識していることは?

なんか、ずっと途中だと思ってます。今に固執しないように。常にできないことをやろうとしてるから、やろうとしてることができないのは当然なんで、でもその積み重ねでもって初めて成長できるわけだし、今が納得のいかない自分でも自信をなくさないように… といっても生きてて7割くらいは自己嫌悪と焦燥感に押しつぶされそうなんですけどね。


【Who’s NXT】 noma (ノーマ)

 
——今のシーン、特に国内において感じることは?

あんまピリピリすんなよ。俺らカクテキじゃあ、ないんだぜ。


【Who’s NXT】 noma (ノーマ)

 
——今後のリリースの予定で今決まっていることがあれば。

今年の8/1にtip jamとのジョイントEP『ARP .1』をリリースする予定です。それと来年の春くらいまでには自分の3rd EPと、それに伴ってMVも発表したいですね、そろそろ。

 
——最後にメッセージを。

勘違いされる方多いんですけど、僕ロン毛じゃないんです。ボブなんです。この長さで前髪を切りそろえてこそだし、伸ばしてる過程で前髪ぱっつんにしたわけじゃないんですよ。わかります? 次「伸ばしてるの?」って聞いたら人質にしますからね。


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