Yusuke Saint Laurent インタビュー 「自然体で丁寧に」メロウなサウンドでリスナーを魅了するトラックメイカー/DJ【IYOW 】

2022.4.30

Yusuke Saint Laurent インタビュー

Yusuke Saint Laurent
三重県出身、2000年代の国内エレクトロニカシーンとLAビートシーンに多大な影響を受けつつ、雑食で幅広いジャンルを独自ビート・ミュージックに落とし込むトラックメイカー、DJ。自らの演奏とサンプリングを駆使したメロウなサウンドメイキングが特徴。レーベル“Jazcrafts”の運営や数々のファッションショーやホテル・百貨店な どの商業施設のサウンドディレクションを手掛けているアンプライベート株式会社にクリエイティブアシスタント・A&Rとして勤務。釣り好き。

IYOW : A series of interviews with featured beat makers / producers / composers


——キャリアスタートのきっかけ

中学3年の時にギターを始めて、友達とコピーバンドを組みました。初ライブは鈴鹿サーキットのイベントステージみたいなとこでした。大学に入ってから始めたミクスチャーバンドでは楽曲制作~レコーディング~ツアーなど一通り経験して、憧れのバンドの前座をやらせてもらったり、とても楽しかったんですが解散し、それをきっかけに1人で音楽が作れるDAWを始めました。

 
——ターニングポイント

現職場のアンプライベート株式会社の代表でもありレーベルのボスでもあるKenichiro Nishiharaとの出会いです。入社してから、本当に幅広い音楽に触れるようになりましたし、プロのクリエイティブなプロダクションを間近に見ることが出来たこと、そこから自分も任せてもらえることも増えて経験も積めたこと、全てに影響を受けていると思います。そもそも基礎的なこと、例えばコンプとかバスとかサンプリングレートとかを全く知らなかったので、全部教えてもらいましたし…社長兼、先生ですね(笑)。あと周りにいる人たちもそれぞれの分野でみんなすごいので、日々勉強させてもらっています。

 
——最新作

その街まで feat. ONENESS

 
——キャリア当初の制作環境

Ableton LiveにM-AUDIOのBlack Boxというアンプシミュレーター兼オーディオインターフェース、Axiom 25というMIDIキーボードを使用していました。近所のハードオフで買ったEDIROLのパワードスピーカーで鳴らしていました。プラグインとかソフト音源とか全く知らない状態だったので、Ableton内蔵の音源とギター、ベースのみで制作していました。

 
——現在の制作環境

一時期、DAWをLogic Proに乗り換えましたが、個人的にはあまりしっくりこなくて、またAbleton Liveに戻ってきました。確かサンレコの記事だったと思うんですが、Kieferが“打ち込みにしても音楽を作るなら鍵盤を勉強した方がいい”、みたいなことと言っているのを読んで、鍵盤も少しづつ勉強するようになり、MIDIキーボードも61鍵の大きいものに変えたところで見える世界が少し変わった感覚がありました。

 
——メインの機材

PC : MacBook Pro
DAW : Ableton Live 11 Suite
オーディオインターフェース : RME Babyface Pro
ビートマシン : Elektron Analog Rytm MKII
ギター : Fender Jazzmaster
ベース : Fender Mustang Bass
シンセ : moog Sub Phatty
DI : Avalon U5
音源モジュール : KORG TR-Rack
など









 
——モニター環境

スピーカー : YAMAHA NS-10M
ヘッドホン : SHURE SRH1540、Beyerdynamic DT 990 PRO

主にヘッドホンで制作~ミックスしています。YAMAHA NS-10Mは最終的な中高音域のチェックと歌のピッチ調整などで使用しています。

 
——使用音源

ローズピアノの音が好きで大体の曲に入れてしまうのですが、AIR Music TechnologyのVelvet2を使用しています。存在感がありすぎないペラっとした感じがトラックに馴染ませやすい印象です。他に鍵盤系で言うとJUNOエミュレートのTAL U No-LX-V2やProphet-5エミュレートのu-he Reproをよく使います。

Arturiaの音源(Buchla Easel V、CMI V等)やKORG TR-Rackはは曲裏のレイヤー感のある音(PAD系の音やシーケンスでピコピコさせるような音、SE的な効果音を出す音)を作るのに多用しています。

「その街まで feat. ONENESS」という曲のメインリフはSerumで作っています。自分の作風的にSerumって中々使い所が難しいかったんですが、上手くHipHopサウンドに落とし込みたくて色々試行錯誤しました。

ベースとビートは実機を使うことが多いです。ベースはmoog Sub PhattyかFender Mustang BassをAvalon U5に通して録っています。Behringer TD-3も仕事の案件ではたまに使ったりしますが、まだ自分の作品には活用出来てません。ソフト音源だと、Modo Bassはよく使います。

ビートはElektron Analog RytmMKⅡです。音がバシッとクセのある感じで立ってくるので、PC内で組んだビートでも最終的にはこれに通します。

 
——使用プラグイン

EQはFabfilterのQ3を大体どのトラックにも挿します。ダイナミックEQの機能が気に入っていてベースとキックの処理に大体使います。あとビートにはWavesのAPI 550A。スネアを立たせたい時とかばっちり効いてくれる印象です。Waves R-Bassでキックをむっちりさせることもよくやります。リミッターのSonnox Oxford Inflatorもベースやビートに使うことがあります。

コンプはWAVESのCLAやPulsar、Plugin AllianceのShadow Hills、Sonible smart:compとか色々使い分けてます。

質感系は、Soundtoysの諸々、RC-20、SketchCassetteⅡ、Decimort2、FutzBox等色々。

リバーブ・ディレイ等の空間系はVallhalaやUVIのPlateを大体マストで。

声ネタとかをチョップするときはSerato Sampleでぐちゃぐちゃに。

あと音の配置に関してはSchoeps Mono Upmixが他のプラグインでは出来ないところに音を置ける感じがして最近多用しています。

 
——ビートメイクのプロセス

まずはビートパターンを決めてからコード進行、ベースライン、あとは思いつく限りどんどん音を重ねていって、最後に削ったりフィルや展開をつけたり、微調整していくというやり方が多いです。ただ、ある程度組んだ後にBPMを変えてみたり、ビートパターンを変えてみたり、色々試しながらコード進行とビートが一番しっくりくるポイントを探ります。

 
——ビートメイクポリシー

数年前までは自分にしか作れない曲、出せないサウンド、みたいなものを求めて頭でっかちに考えすぎていたところがあって全然作れませんでした。ただ、最近はとことん誰かの真似をして作っても、絶対同じようには作れなくて、結局“自分の音”になるんじゃないか?と考えるようになって、そこから割と制作が進むようになりました。と言っても遅いんですが(笑)。“自分の音”って、音楽知識とかスキル以外の部分(性格とか生き方とか哲学みたいなところ)が勝手に出ちゃうものだと思います。例えば、HipHopのビートを作るならSP1200とかMPC3000とか名機と言われているものがあって、自分も使ってみたい気持ちはあるものの、Elektron Analog RytmMKⅡを敢えて使うというのはひねくれた自分の性格による選択であって、それが音に出ちゃう。という要素の積み重なりかなと思います。なので、出来るだけ周りに影響されすぎず、邪念やガヤの影響が入らないよう、自然体でいたいと心がけています。他にも色々ありますが、できるだけ丁寧に作りたいと思っています。

 
——影響を受けた楽曲

Yoshinori Sunahara – BALANCE

とにかく構成されている音の佇まいがカッコ良すぎます。一音一音に意志を感じるというか…ストイックな姿勢が伝わって来ますが、あくまでポップに聴けるバランスが素晴らしいと思います。数年前に久々にじっくり聴く機会があったのですが、改めて衝撃を受けて、自分の1st EP『SUS4』のマスタリングをお願いしました。

 
 
Prefuse 73 – Pagina Dos

DTMを始めた頃にビートメイカーの作品を掘っていて、一番ハマったアーティストです。すぐ全アルバム買って、寝る時はPrefuse 73を聴いて寝る。みたいな時期がありました(笑)。とにかくチョップが派手ですし、ぐっちゃぐちゃなサウンドの中にもポップさがあるバランスが好きです。サンレコとかに載っていた彼のスタジオ自体もごちゃごちゃしているんですが、どことなくセンス良くまとまっている感じがサウンドにも出ていると思います。

 
 
Rei Harakami – The Backstroke

決して高い機材がなくても素晴らしい音楽が作れるんだ!と影響を受けたトラックメイカーは多いと思います。他では聴けない唯一無二のサウンド・心地よさがあります。何度、Roland SC-88Proを買おうと思ったことか…

 
 
mabanua – talkin’ to you

J DillaをはじめとするThe Soulquarians周りのブラックミュージック・ビートメイカーの作品を掘り始めるきっかけになった曲です。独特のグルーヴ&ブリブリしたサウンドのビート、複雑だけどポップに聴こえるコード進行、歌声&メロディセンス、そしてワウギターのフレーズ、全てが衝撃でした。ジャケットとビデオの世界観が同じで何度も見ていると気付くギミックが仕掛けられたり、パッケージ〜映像まで含めて最高に好きです。CDの盤を取った時にバックインレイに記された文章にもドキッとしました。

 
 
Mac Miller – Blue World

Disclosureプロデュースの曲です。こうゆうHipHopもアリなんだ!?と驚かされました。Mac MillerはLarry Lovesteinという別名義でジャジーな作品を残していたりと音楽に対してピュアで自由なスタンスでユーモアもあって、とても影響を受けています。亡くなってしまったのが本当に残念です。あと、Disclosureはずっとスルーしていたんですが、この頃からのFour Freshmenサンプリングの楽曲がいくつかあり、その辺りのサウンドにどハマりしました。

 
 
Mndsgn – Camelblues

レイドバック感・サイケ感がたまりません。シンプルで単調なビートで音数も少なく、派手な展開も無いのにジワジワと引き込まれます。途中でA Tribe Called Questの「Find A Way」にもサンプリングされているテイ・トウワ「TECHNOVA」のフレーズを入れてくる部分がめちゃくちゃニクいです。MV最後のクレジットの出し方も洒落が効いていて、やっぱりStones Throwはカッコ良いなと。

 
 
EVISBEATS – ゆれる feat. 田我流

いずれ音楽の教科書に載るんじゃ無いかと勝手に妄想しています(笑)。日本人産のHipHopを代表する1曲だと思います。サウンドとしてはビートもローズピアノのフレーズも最高なんですが、なんと言っても冒頭の「Ah~Ah,Ah」というガヤに変なエコーがかかっている部分が凄いと思います。銭湯の中にいるような演出なのかな?と勝手に思っていますが、自分は曲の冒頭からこんな変なエコーかける勇気ないです…

 
 
Toro y Moi – Still Sound

いわゆるチルウェイブというジャンルのパイオニアですが、バンドでは作れない浮遊感とグルーブのうねりがあって没入出来るようなサウンドに彼だけでなくジャンル全体に対して強烈に惹かれました。曲に関しては、ベースライン単体で聴くと若干間抜けというかひょうきんな印象を受けますが、暗いのか明るいのか分からない微妙なコード感とダンサブルなビートのバランス感が最高におしゃれだと思います。気取ってない感じもとても好きです。

 
 
Floating Points – LesAlpx

ちょっと音良すぎませんか?科学系の博士号を持っている音楽愛に溢れた天才ですが、サウンドはクレバーさを上回るエモーショナルな部分を感じます。自身の作品とはまた違ったソウルやディスコ、ブラジリアンなどジャンルレスにかける彼のDJスタイルもとても好きです。自分自身もDJをするのでそっちのスタイルでも影響を受けています。

 
 
Brittany Howard – Stay High

この曲に限らずですが、ここ最近ミックスエンジニアのShawn Everettのサウンドに強烈に惹かれています。「この曲のミックス、ヤバいな!」と思いエンジニアを調べたらShawn Everettだったということが何曲か続いたことがあり、そこから色々調べました。空気感がたっぷり含まれていて生々しさがあって、一聴王道な感じなんですが実験的な香りがします。

 
——My favorite works / 自分の作品からのお気に入り

その街まで feat. ONENESS

先にベースのトラックは出来上がっていて、ラップしてくれる人を探していた時にJUMANJIのYAB君に紹介していただきました。ONENESSとは初対面だったんですが、制作に入る前に何度か会って世界観を共有してからスタートしました。制作開始後もMVTEN君とは頻繁に連絡を取り合って、お互いアイデアを出しながら構成を変えたり、バースを追加してもらったり、stz君の家でS2君とPhaze1992君にスクラッチ入れてもらったり、当初弾くつもりなかったギターソロを弾かされたり…(笑)。過程がとても楽しかったですし、結果良いものになったと思います。リリックも最高で、自分自身も背中を押してもらえるような前向きな曲になりました。

 
Note’s End (Yusuke Saint Laurent Remix)

かつて僕がギタリストとしてサポートしていたシンガーソングライター Ryo Maruokaの楽曲「ノートのエンド」のリミックスです。最初は一緒に新しい曲を作ろうと思っていたんですが、ふとリミックスのアイデアを思いつきRyo君に相談しました。元々日本語詞の曲なんですが、Ryo君は英語が喋れるので無理言って英語詞に書き直してもらいました。原曲がそもそも大好きなので仮歌のデモが届いた時は、ちょっと感動して泣きそうになりました。日本語詞とはノリが全然違って聴こえて面白いです。日本語Ver.のリミックスはこちらです。

 
Red Fortune


“出来ることなら毎日食べたい” 地元の銘菓、赤福の曲です。勝手にインスパイアされて作りました。いつか赤太郎のCMに使ってほしいと思っています。

 
My Leaving feat. Mabanua -Kenichiro Nishihara Remix feat. Yusuke Saint Laurent-
ギターで参加しています。もうどうやって弾いたか忘れてしまいましたが、コード感が気に入っています。

 
——Message

2022年3月30日に1st EP『SUS4』をリリースしました。お時間ありましたら聴いてみて下さい。次の具体的なリリース予定はまだありませんが、最近地方に引っ越したので引き篭もりつつ、これまで以上に制作に集中してスキルを上げていきたいと思います。あと、たまにDJをしに外に出ますので、スケジュール等はSNSをチェックしていただければ有難いです。

 

Yusuke Saint Laurent
Twitter
Instagram
YouTube

この記事の執筆者

THE MAGAZINE

ストリーミング時代の中でうまれる新たな情報やアイデア、インサイト、ナレッジを、ミュージシャン/音楽アーティストおよびそのファンへ発信し、国内シーンの活性化と海外へのチャレンジをサポートするメディア ― Powered by TuneCore Japan

https://www.tunecore.co.jp/