白濱イズミ | DIYなスタンスと幅広くナチュラルなサウンドで言葉の可能性を追い求める

2019.2.15


白濱イズミ | DIYなスタンスと幅広くナチュラルなサウンドで言葉の可能性を追い求める

自身のWEBマガジン「KILIG」(キリグ)の編集長をはじめ、詩や写真、絵画、アートワークなど幅広く表現活動を行っている白濱イズミ。昨年の10月からは音楽のフィールドにも活動範囲を広げ、これまでシングルを3つ、ミニアルバムを1枚配信リリースしている。響心SoundsorChestrAの総理とともに生みだされるそのサウンドは、シューゲイズ、インディーロック、トラッドフォークなどの要素も内包しながら、彼女ならではの言葉をともない、リスナーの心と感情に深く届く作品に仕上がっている。ライブ活動もスタートし、あえてインディペンデントなアプローチを行う彼女が見すえる先とは――
 

音楽活動を始めたきっかけ

——ライナーノーツを拝見すると、”自分の中にある言葉の新しい面を知りたい”という気持ちをきっかけに、音楽においても表現活動を始めたとのことですが。

もともと言葉を残すのと同じ感覚でフレーズや鼻歌をメモしていたんですけど、詩を作品として書くようになってからは「自分の言葉が音楽になったらどういう化学反応を起こすんだろう」っていう興味がでてきたんです。

色々な活動をしているんですけど、その一つである詩の活動が自然な流れで音楽とつながりました。「音楽にのせた詩を音楽作品として発表している」っていう意識なんですね。言葉って、目で読んだときと耳で聴いたとき、それぞれで印象が違うじゃないですか。それで、言葉の可能性をこれまでとまた違う方面で発信してみようと、音楽をはじめました。

——では、音楽も白濱さんが今やってらっしゃる様々なクリエイティブ活動の中の一つだと。

そのイメージですね。「音楽だけを本格的に!」っていうテンションではないんですけど、アーティストやミュージシャンの方々へのリスペクトももちろんあるんで、軽い気持ちでやっている訳でもなく、私なりの方法で音楽のフィールドでも表現活動を行っています。

——昨年後半からコンスタントに楽曲をリリースをされていますね。かなりスピード感がある印象です。

音楽制作に関しては総理(響心SoundsorChestrA)と一緒のことが多いんですけど、それこそ彼はミュージシャンとして長くやってきているんで、色々なアドバイスをもらっています。最初は音楽を作ってもリリースする気は全然なかったんですけど、総理から「良い曲じゃん、配信すれば?」って勧められて。配信でリリースできるなんて知らなかったんですけど、やってみたらすごく簡単でびっくりしました(笑)。

 

人生を彩ってきた音楽

——昔から音楽はお好きだったんですか?

はい、昔から好きでした。母はフィリピン出身なんですけど、やっぱり海外ノリなんで家では日常的に音楽がかかっていましたし、それに合わせて踊っていたり(笑)。最初に好きになったのはマライア・キャリーかな。それも母の影響で。どちらかというと、可愛らしい音楽が好きでしたね。

——大人になるにつれて音楽の趣味は変わりましたか?

そうですね、エリカ・バドゥのようなR&Bやチルな音楽が好きになったり。昔よく一緒にいた人がDJをやってて色んな音楽を教えてくれたんで、そこからさらに幅広く聴くようになりましたね。

——cowcamoで作成されていたプレイリストを拝見すると、幅広い音楽の趣味ですね。

本当になんでも聴きますよ。スマパンは天気の良い日に聴きたくなるし、ゆらゆら帝国もはずせないかな。

——フィリピンのアーティスト、EYEDRESSの楽曲も入っていますね?

EYEDRESSかっこいいんですよ。すごく好きだし、応援してます。料理人の友達が「フィリピンにめっちゃかっこいいアーティストいるよ」って教えてくれて。聴いてみたら本当によくて。雰囲気もすごく素敵なんですよ。

 
——新しい音楽はどのように知りますか?

そういう風に友達から教えてもらったり、Apple Musicで関連アーティストを掘っていって見つけることが多いですね。

 

体験の共有&一体感のある活動

——「pen」の【2019年に飛躍するライジングスター10組】にも選出されるなど、多岐な活動を行うアーティストとして改めて注目されていますが、その辺りはどのように感じていらっしゃいますか?

2018年11月に個展『言葉の記憶』を開催してから、ありがたいことに表現者として総合的に見ていただけるようになった感じはあるかもしれませんね。基本的に、私にしか出来ないアーティストのスタンスや活動もあると思っていて。例えば社会活動としていつか幼稚園を作りたいとも思っていますし。

今、初めてライブツアーをやっていますけど、どうせならそこでもファンの人たちに経験したことがないことを経験する機会を提供したいなと思って。なので、今回のライブのスタッフはファンクラブ「KILIG」から募集したんです。普段からファンの方と交流してるんで、ほぼ顔見知りなんですけど(笑)。

——ファンの方の顔と名前を覚えてるってすごいですね。

はい、大体は覚えてます(笑)。ファンの方も私のことを1人の人間として見てくれていますし。昨年末に「KILIG」で忘年会をしたんですけど「『KILIG』の目標は会社を作ることです!」ってみんなで盛り上がったり(笑)。

——体験を共有するというのはいいですよね。

やっぱり自分だけが一方的に発信するのではなく、共感してくれる人と共に一体感を持つことってすごく大きいと思っているんです。私だからこそ提供できる経験や体験を、出来る限りファンの方には届けたいという気持ちで活動しています。

——ある種新しいファンクラブのカタチですよね。そういったことはどこかで学んだりしたことなんでしょうか?

自然に思いついた感じですね。もともと音楽をはじめる前から「KILIG」のメンバーに対しては楽しいだけじゃなくて、何か人生のためになることを一緒にやろうと活動してきました。例えば、「私たちの新しい社会」というテーマを決めて、そこでファンのみんなと何かを作っていく企画をしたり。これからやりたいことがあったり、逆にまだやりたいことが見つかってないメンバーを、私の撮影現場に招待して実際に現場を見てもらって何かを感じてもらったり。単なるファンクラブを越えたコミュニケーションは、すごく大切なことだと考えています。

 

ナチュラルな音楽制作

——次に、楽曲について具体的にお伺いしたいのですが、「熱サヲ忘レテ」、「チャイナ」などでは総理さんが詞を書いていますよね。他の方が書いた詞を歌うのはいかがでしたか?

仕事でもそうですけど、自分にしっくりこないことを無理やり自分のことにする作業って、私としてはけっこうキツいことなんですよね。音楽でもそうで。自分のものになっていないものはやっぱりうまく歌えないんですけど、「熱サヲ忘レテ」の場合は元々総理の曲で、その曲が生まれた時から聴き続けていたものなので私自身の中にもその言葉が存在していて、なので自分の言葉のようにその言葉の中で歌えるんです。そういう風に思える曲を生んでくれたことにはすごく感謝してますね。

 
——普段、詩に関しては白濱さんはおひとりで書かれると思うのですが、音楽の詞を共作してみていかがでしたか?

思っていたよりも全然やりやすかったです。お互い言葉にプライドを持っているんだけど、優しく譲り合う、みたいな。2人で話しあってアドバイスしあったり。

——作詞でこれだけは譲れないという部分はあったりしますか?

私が最高だと思う言葉の一節に対して「実際音にのせるとあわないから削ったほうがいい」って言われたら賛成できないかもしれませんね。私にとっては、音が先というより、やっぱり言葉が先というのはあります。

作曲のプロセスは、例えば「hikari」の場合だと、浮かんできたサビのフレーズをボイスメモに録って総理に送ってから後ほど一緒にメロディーラインを作って、そのメロディーで私が詞、彼が曲の全体像を作るといった作業をしています。

——「hikari」はポエトリーのパートがありますが、そういった構成も総理さんが?

一緒に考えることもありますね。「hikari」で、「ポエトリーがいいんじゃない?」っていうのはお互い同じタイミングで思いついたり。

 
——曲調に関して、総理さんが作曲される場合は白濱さんをイメージして楽曲を作られているんでしょうか?

そうですね。響心SoundsorChestrAとはまた違うサウンドになっていますし、総理も違う音楽の引き出しが自分にあることに気付いて、びっくりしているみたいですよ(笑)。

 
——「甘い釘」はロックですし、また「ぷかぷか」は可愛らしいメロディが印象的です。

「甘い釘」は、みんなでディズニーに行った時、アトラクションの待ち時間に総理がなぜか「甘い」って言い出して(笑)。そこからすぐにメロディーラインにおこして作詞しました。「甘い釘」、「ぷかぷか」、「hikari」のAメロも私自身お気に入りです。

——作曲はどのようにされていますか?

送ってもらったギターのフレーズをえんえんと聴きながら、鼻歌でメロディーをつけていくことが多いですね。そういう風に自然に作ってるんで、ジャンルも“〜っぽい”っていうのはあまり意識していません。その方が面白いと思いますし、言葉のイメージもジャンルを限定すると自由さがなくなると思うので。

——そういう中で、楽曲に対してこだわっていることを敢えてあげるなら?

J-POPになりすぎないギリギリぐらいがいいなとは思っていて。若い女の子も自然と鼻歌で歌いたくなるぐらい聴きやすいんだけど、言葉にもちゃんと引っかかるというか、言葉の本質が浮かび上がるようなサウンドを意識しています。

 

作品を伝えることへの想い

——音楽の作詞において意識していることはありますか?

これは詩を書いていた時から考えていたことなんですが、私の言葉って全て自分の実体験が元になっているんですね。だから、そこで表現されてることや気持ちって、誰もが持つ日常の感情と共通する部分が多くあると思うんです。なので、自分の抱く感情をうまく言葉にできない人が、私の言葉を少しでも自分自身の言葉にしてくれたらいいなと思っていて、音楽でも、詞も含めて聴いた人が自分のことのように感じてくれたらと思って作っています。

——「こういう風に感じて欲しい」という積極的なメッセージもあったりしますか?

そういう思いが詰まっている作品もあるんですけど、最終的には聴いていただく人の自由でいいかなと思っています。「こう思ってもらいたい」っていうのは自分の勝手な期待にすぎないし、やっぱり100%は届かないと思っているので、その人なりに感じていただければ。いずれにせよ偽りの無い言葉で作っているっていうのは間違いないですから。

——フェイクの無いリリックになっているんですね。作品を届けたい、聴いてもらいたい層に関してはどのように考えていますか?

やっぱりたくさんの人に聴いてもらいたいですね。音楽が表現活動の一環とはいえ、中途半端なものを作っているというつもりはありませんし、多くの人が共感できるものを作っているというプライドは持っています。自分の言葉に対しても自信を持った上で伝えているので。そういった部分が自分の中でしっかりしていないと、音楽にのっている言葉もかわいそうだし、作品に対する敬意も忘れないようにしています。

——現在、シングル、EP含め計8曲配信されていますが、それ以外にもリリースされていない曲やストックはありますか?

最後まで作っていないワンフレーズのものはたくさんありますね。そこからいい感じに育ちそうなのはカタチにしていければと思っています。

——ライブについて、2018年12月14日に PIERRE RECORDSのイベントでライブを実施していましたが、これが初めてのライブだったんでしょうか?

実は最初のリリースとなった「熱サヲ忘レテ」の配信日の3日前に、ファンクラブで100人限定のサプライズライブをやったんです。ライブをやるっていう告知はせずに、いきなり3曲くらい歌って。

——人前でライブをすること自体はそれが初めて?

初めてでしたね。本当に緊張しました(笑)。もともと人前で歌ったりすることは苦手なタイプなんですけど、作品のことや聴いていただける人のことを考えると、ライブできちんと届けるってすごい大切だなと改めて気付きましたね。

——お客さんの反応はいかがでしたか?

泣いている人もいたりして、それを見て私も「あ、伝わったんだ」って感じました。やっぱり文字だけでは伝えきれないことも、音楽のライブだと心に届きやすいんだって実感しましたね。ライブは今後もなるべくやっていきたいと思います。

 

DIYなスタンス

——ライブをはじめとした様々なイベントもご自身で運営されているんですよね。

はい、基本的には自分自身でやっています。大変なこともありますけど、自分でやってみてはじめて分かることもたくさんあるので、勉強になることも多いですし、いい経験になっています。他人にやってもらっていたら分からない、考え方やアプローチ、目線、人の気持ちなどに気づくことができますからね。

単に用意された場所に行ってパフォーマンスしているだけでは気づくことのできないことってたくさんあると思うんです。「あ、こうしたらお客さんやスタッフさんもスムーズなんだ」とか。だから、今はチケットの対応から、メッセージのやりとりまで自分でやってます。流石に最近はお客さんの人数も増えて、「ステージに集中した方がいいよ」って、友達が心配して手伝ってくれることもありますけど(笑)。

——そういったDIYなスタンスは他のクリエイティブでもそうですか?

完全にDIYですね。「KILIG」の運営からイベントをはじめ、MVの制作、シングルやEPのカバーアート、Tシャツのデザインまで友達や知り合いのクリエイターと一緒に作っています。もう自主制作全開って感じで(笑)。

——ちなみに「チャイナ」のMVではギターを弾いていらっしゃいましたが、楽器もけっこう弾かれるんですか?

本当に最近はじめたんで、ギターもまだまだな感じなんですけど、この頃は意識的に楽器に触れるようにしています。

——音楽表現において、クリエイティブ全体のイメージや方向性はありますか?

かっこをつけた感じにはしたくないかな。あくまで自然な感じを大切にしたいです。例えば、音楽のジャケットでいうと「熱サヲ忘レテ」は自分が昔に描いた絵、「ダーリン」は自分の幼少期の写真を使っていたり。「hikari」も自分で撮った写真なんですよ。小粒のライトを手につけて、布団の中で撮った写真を使っています(笑)。「hikari」の詞が星になる女の子のストーリーなので、「指先から星になってしまう」っていう歌詞に合わせて制作しました。


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「熱サヲ忘レテ」ジャケット

白濱イズミ | DIYなスタンスと幅広くナチュラルなサウンドで言葉の可能性を追い求める
「ダーリン」ジャケット

白濱イズミ | DIYなスタンスと幅広くナチュラルなサウンドで言葉の可能性を追い求める
「hikari」ジャケット

『愛って一体なんですか?』のジャケットも、MVを撮影している時にトランポリンを飛んでいた時のものなんです。「これ、なんかジャケットぽいよね?」って。「そうだね、じゃあ使おう!」みたいな自然なノリで決まって(笑)。目に見える部分でも、リラックスした自然な雰囲気を大事にしています。


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『愛って一体なんですか?』ジャケット

——インディペンデントで音楽活動を始めた理由というのは?

表現活動をする上で、ちゃんと自分でやった実績や、自分で責任を持ちつつコントロールできるベースを持っておきたいなと思ったんです。そのためにも、音楽においても最初から誰かに頼るのではなく、自分でアクションして、きちんとカタチにしておくことが大切だと思ったので。

——音楽のリリースは、以前だとハードルが高かったかもしれませんが、今は1人でもできる時代ですもんね。

ある程度できるだろうとは思っていたんですけど、まさか自分でここまでできるとは思っていなかったです。でも、TuneCoreを使ったら自分で簡単に配信ができるし、こうやってApple Musicとかでリリースしてるっていうベースができたからこそ、ライブもやろうって思えたというか。

あと、配信だとやっぱり世界に届けることができるんで、私のルーツでもあるフィリピンのファンの子がインスタのストーリーにアップしてくれたり、色んな人に届けられるのは本当に嬉しいですね。「日本語じゃないバージョンでも歌ってほしい」っていう嬉しいリクエストがあったり、いつかは他の言語にも挑戦したいです。

 

今後の音楽活動

——今後、音楽表現の領域で実現したいことはありますか?

表現活動に制限はないと思っているんで、例えばすごい大自然なロケーションでのライブとかやったら面白いだろうな。他にも、ローカルカルチャーの発展に貢献できるような展開も素敵だなと思っています。すでに地方のカルチャーイベントの方から「出ませんか?」ってお声がけいただいていたりしますし。

——白濱さんの音楽表現は、チルやオーガニックなイベントにマッチしそうですよね。

そっとその場を彩るような音楽や作品だとも思うので、これからも音楽イベントはもちろん、カルチャーやファッションなど、色々なシーンの方々とご一緒できたら嬉しいですね。


白濱イズミ
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