【インタビュー】ストリーミング時代を生きるミュージシャンの現在 ― from サウスロンドン edbl の場合

2020.9.24


【インタビュー】ストリーミング時代を生きるミュージシャンの現在 ― from サウスロンドン edblの場合

Tom MischやJorja Smithなど突出した才能が次々と話題を席巻しているUK音楽シーン。その中でChill系トラックメイカー・プロデューサーとして徐々に人気を集め始めている新しい才能、edbl。今月18日には最新作『Boys & Girls Mixtape』をリリースし、Spotify UKのプレイリスト「New Music Friday」のカバーアーティストにも選出された。早耳のリスナーならば、すでに海外のプレイリストで人気を集める楽曲「The Way Thing Were」を耳にしたことがあるだろう。

ストリーミングの普及により、音楽を制作する/楽しむ垣根(人種や言語、国境)はよりフラットになった。そういった中、同じ時代を生きている異なる文化の新世代ミュージシャンたちはどんな景色を見ているのだろうか。そこからインスパイアされることもきっとあるはず。

今回はサウスロンドンから、新進気鋭のトラックメイカー・プロデューサーedblに音楽制作の裏側や、音楽活動を続ける上で意識しているスタンスについて詳しく話を聞いた。

企画・取材・文 : Shin Takahashi(THE MAGAZINE)

 
edblのルーツ

——まずどのようなことをきっかけに音楽制作を始められたのでしょうか。何か起点となるような原体験はありますか?

7歳の頃、初めてギターを弾いてすごく好きになったのを覚えているよ。それ以来ギターはずっと弾いているんだ。それから友達とバンドにも参加した。初めてのライブは僕が15か16歳の頃だったんだけど、それも本当に楽しかったよ。その時からずっと音楽だけは続けていて、僕にとっての全てだった。いつもパフォーマンスしてギターを弾いて、だから大学でも音楽を専攻したんだ。それでLiverpoolで音楽を勉強して、そこでアーティストのAdy Suleimanと会ったんだよ。

——そんな接点があったんですね、彼すごくいいですよね。

彼は最高だよ。アジアだと数回、韓国のソウルでも演奏したんだ。とにかく彼は素晴らしくて、彼と大学で会ってから一緒に演奏を始めて、R&BとかHipHop、Soulが好きになっていったんだ。

——それまではどんな音楽に傾倒されていたんですか?よりポップなものとか?

いや、もっとギターサウンドが強いような、BlurやThe Pigeon Detectives、FOALS、Bombay Bicycle ClubみたいなUKのバンドとか。大学に入ってようやくR&BやSoul、HipHopを聴き始めたんだ。今じゃ大好きだよ。

——何か具体的にハマるきっかけになったような曲はありますか?

どれか1曲ってことはないんだけど、アーティストでいうなら多分D’Angeloかな。大学に入るまで彼の曲を聞いたことがなかったんだけど、聞いた瞬間「これは特別だ」と思ったよ。HipHopも本当に聞いたことがなかったから、Jurassic 5とかA Tribe Called Questはハマるきっかけになったね。他にもErykah BaduやLauryn Hillとか、素晴らしいアーティストについて一度に知ることができたから、もう魅了されたよ。それから、あんな風な音楽を作りたいと思うようになったんだ。

——彼らから大きくインスピレーションを得たんですね。

彼らの音楽のおかげで、そういうジャンルにのめり込んでいったよ。特に彼らのような音楽のバックで響くコードやギターの音色が大好きなんだ。作曲の大きなインスピレーションになっていると思うよ。特にAdyと一緒の作品はAmy Winehouseの影響を強く受けていると思うよ。


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ほかのアーティストと一緒に作業を進めることが好き

——大学で音楽を学び始めて、自身のキャリアについて考えたとき、まず初めのゴールとしてどのようなことを思い浮かべていましたか?

僕はただ音楽が好きなだけだったから、大学に行った時も、特にこれといった目標とかはなかったんだ。だから自分のプロジェクト (Acoustic-y Guitar Singer Song Writer)を進めたり。僕はオルタナティブとか、Radioheadみたいな、エレクトロ色の強いインディーズバンドもすごく好きだったしね。R&B/Soulな感じの楽曲でAdyと一緒にプレイしたり、他にも別々のジャンルで3人のアーティストと組んだり、本当に色々なことに手を出してはやめて、っていうのを繰り返していたよ。最終的に卒業するときには、Adyとだけ一緒に演奏していたんだ。

——色々なプロジェクトに参加されて、なにが合っているのか、どうなるのかを試していたんですね。

そうだね。演奏に限らず作曲でも、ほかのアーティストと一緒に作業を進めることが好きだったし、だからセッションミュージシャンとしてほかのアーティストのために演奏もしていたんだ。

——またそうすることでほかのアーティストとの繋がりも広がっていったと。

大体の場合はそうだね。Kofi StoneIsaac Waddingtonは僕の曲にも参加してくれている素晴らしいアーティストで、彼らとはAdyとのライブツアー中に出会ったんだ。彼らもAdyのサポートとしてツアーに参加していて、すぐに打ち解けあったよ。だから僕が僕の作品のために、作曲とセルフプロデュースを始めた時、一緒にやらないかって声をかけたんだ。

——作品に参加してもらうアーティストを選ぶ時、何かこだわりのようなものはありますか?

どうかな、多分ないと思う。作曲においては僕はとても保守的というか、Aメロ、サビ、Aメロ、サビみたいに型にはまっているというか。僕がなんで共作が大好きかっていうと、僕はビートとかドラムと、キーボードを使ったトラックメイキングは得意なんだけど、ボーカルが歌うようなメロディとか歌詞はどちらかというと得意な方ではないんだ。IsacやTilly (Tilly Valentine)、Jay (Jay Alexzander) にKofiたちと一緒に取り組んでいると、みんな勝手に歌い出したりして、それがすごく良かったり、そうやって自由に作業ができるところが気に入っているんだよ。もちろん僕もメロディ部分について、多少の手直しはするけれど、基本的にはトラックとメロディを50/50で分けて作業している。僕自身が、歌い手に合わせて細かく微調整するのが好きだからね。


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作曲はほぼ毎日している

——作曲はどれくらいの頻度でされているのでしょうか?

僕自身のための場合もあるし、ほかのアーティストのための場合もあるけど、月曜日から金曜日まで、作曲はほぼ毎日しているよ。空き時間にビート思い浮かんだ時もいつもね。

——先ほどおっしゃっていたように、まずはビートを作ってその上にコードを乗せ、最後にメロディと合わせるというのが、基本的な作曲のスタイルですか?

僕はいつもコードから作り始めるんだ。ギターでね。ギターが一番得意な楽器だからさ。ピアノで作り始める場合もあるけど、ほとんどの場合はギターで、できたコードをLogicへ落とし込んで、そこにビートを当てはめていくんだ。グルーブが出るようにね。基本的にはそうやってインストの音源を作るんだけど、たまに歌ってみようかなと思う時もあるし、Instagramにビートをポストして、このビートでメロディ作りたい人いない?みたいな感じで呼びかけて、そこから一緒に作り始める場合もあるよ。

——それは大学で音楽理論など学んだことも関係しているのでしょうか。つまり、まずコードから作るというスタイルというのは。

音楽理論か、そうだね。少しだけね。

——すると大学ではもっとエンジニアサイドのことを学ばれていたんですか?

それもあるね。LiverpoolのLIPA (Liverpool Institute for Performing Arts) での勉強はすごくためになったし、音楽理論や音楽制作について学べたことも良かったんだけど、僕にとっては人と会って繋がりを広げられたことが一番大きかったよ。本当の意味で音楽制作や、小難しいコードの魅力に取り憑かれたのは大学を出た後のことで、大学ではとにかく人と会って、遊んでって感じだったね。

——それでも大学で音楽を選考できるのはすごく素敵なことですよね。日本だと数が限られている上に、そのための勉強が必要だったり、資金もそれなりに必要ですから。

そうだね。イングランドには4〜5つほどポピュラーミュージックについて学べるところがあって、どこもパフォーマンスや音楽制作に注力しているよ。音楽理論やクラシカルな音楽を学ぶよりも、実践的であることは確かだね。

——作曲の話に戻りますが、作曲される際はサンプリングはよくされるんですか。

サンプリングはよくするけど、権利関係が複雑なことが多いから、結局自分でギターを弾くことが多いかな。幸いにも僕は自分でギターを弾けるし、ピアノも少しなら弾けるからね。作曲には本当に助かっているよ。でもたまにSpliceも使うかな。Splice知ってる?

——実際に使用したことはないですが、月額を支払うことで著作権フリーな音源をサンプリングできるようなサービスですよね。

そうそう、Spliceはよくドラムパートを作るのに使うことがあって、Kofi Stoneと一緒に作った「I’ll Wait」の冒頭のフルートパートも、実はSpliceの音源からサンプリングしているんだよ。Spliceで聞いて、これはかっこいいと思って、バックにコードをつけてみたんだ。もちろんミキシングやEQは調整しているけどね。


 
——楽曲をレコーディングするとなった時は、ご自身でやられるんでしょうか。スタジオを持っているのか、またはベッドルームでレコーディングを進めていくのでしょうか。

僕は家でレコーディングすることが多いよ。つまり僕のリビングルームで。キーボードとかスピーカーとか、基本的なセットアップは済んでいるし、みんなをうちに呼んでレコーディングをするんだ。うちで作業を進められるのは最高さ。みんな好き自由に座ったりしてね。

——Billie Eilishですらベッドルームで全てを作る時代ですからね(笑)。

そうそう、僕は場所はそこまで重要ではないと思っているよ。僕は家で作業を進められる方が好きなんだ。なんというか、リラックスできるし、お茶でも飲みながらのんびり取り組めるからね。その点スタジオだと、なんとなくもの寂しくて病院っぽいんだよね。

——時間も限られてきますしね。

本当にね。だからこそホームスタジオが好きなんだ。


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ディストリビューションサービスについて

——今現在たくさんの配信ストアへ楽曲を配信されていますが、どちらのディストリビューターを使用されているんですか。

初めの4枚のシングルはAWALを使っていたけど、その後absoluteっていうレーベルサービスの会社と配信契約を結んだんだ。

——初めて聞きました。

僕も彼らから声をかけられるまで全く知らなかったよ。でも今のところすごくいい感じなんだ。

——すると、レーベル機能を伴った配信サービスということでしょうか。

そうなんだ。基本はディストリビューションサービスなんだけど、例えばメーリングリストを作ってくれたり、配信のスケジュール管理をしてくれたり、あとビデオクリップを作成してくれたり、プラスアルファの仕事をしてくれるんだよ。

——でもはじめのうちはAWALを使っていたんですよね。でしたらよりサポート機能が整っているように思うのですが?

そうだね、AWALはそういう機能がすごく充実してはいるんだけど、そのためにはある程度実績を伴わなければならないんだよ。

——今の実績ならば十分考慮されそうですが……

まぁ今ならそうかもしれないけど、それでもAWALからは何千という曲がリリースされていて、僕はそのうちの1人でしかないんだよ。対してabsoluteは多分何百か……詳しくはわからないけど、つまりabsoluteではよりパーソナルに対応してもらえるんだ。今はabsoluteのJamesと一緒に仕事をしているんだけど、プロモーション面でもツアー面でもたくさんアイディアを出してくれて、とてもいい感じだよ。基本的にabsoluteは「edbl recordings」っていう、僕個人のレーベルを立ち上げてくれて、2月にリリースしたBest Tapeはそこから配信された形をとっているんだ。僕個人のレーベルだから、個人の裁量でアーティストと契約を結ぶこともできるし、そういう点ですごくワクワクしているよ。

 
契約するべきでない内容なら契約はしない

——absoluteと今まで仕事をしてきて、何か印象的だったプロモーションはありますか?

absoluteとは本当にいい仕事ができていると感じているよ。面白かったのは、Jamesのアイディアで、Beat Tapeを3つのパートに分けて配信したことかな。あとSNSに載せるビデオクリップにカセットプレイヤーから曲が流れるような映像を採用したり。そのカセットテープっていうのもJamesの提案でね。

——SNS運用に関連しますが、これまでにInstagramの広告機能は使用されたことはありますか?

Instagramは僕の活動のメインのプラットフォームだから、もちろん使ったことはあるよ。はじめにリリースした数枚のシングルについてはInstagramにお金を払って広告を流していたんだけど、最終的にそこまでの有用性を実感できなかったんだ。広告を流すことでたくさんの「いいね」がもらえることと相反して、それが実際にストリーミングで視聴したり、楽曲をシェアしたりっていう結果に繋がらなかったんだ。

——なるほど。まだその辺りは課題がありそうですね。今absoluteでご自身のレーベルを所有されているわけですが、もしも大きなレコードレーベルが契約を持ちかけてきた場合、契約されたいと思いますか?

契約したいよ。もちろん契約内容が正しくなければならないし、契約するべきでない内容なら契約はしないけど。たくさんのプロジェクトを動かして、僕自身は何もしないみたいな夢を思い描くこともある(笑)。でもとにかく適したレーベルである必要があるよね。正直、僕自身は今とても幸運だと思っているんだ。音楽を仕事にできているからね。もちろんたまにギターを教えたり、結婚式で演奏したり、バーで演奏することもあるけれど、それでも全部音楽に関係することだし、だから僕はそこまでレーベルとの契約に急いでいるわけではないよ。例えば若いアーティストなら、すぐにでもレーベルと契約したがるとは思うけどね。彼らは往々にしてまとまったお金が必要なことが多いから。でも幸い、僕はその辺もなんとかなっているからさ。

——そういった話はよく聞きますよね。でも結局レーベルと契約しても何も生み出せなかったみたいな……

そうなんだ。それはいつでも起こりうることで、IsaacやAdyも同じような経験があるんだ。彼らは2人ともメジャーレーベルと契約したんだけど、最終的にはうまくいかなくて、今では自分たちだけで活動しているよ。悲しいけど、僕はすごくいい決断だったと思うし、それほどにありふれていることなんだ。


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各配信ストア毎に異なるファンベースを把握

——今edblの音楽はbandcampやSoundCloudを含めて、ほどんどの配信ストアで視聴できるかと思います。アーティストの立場から、ストア毎の違いを感じることはありますか?

どうだろう、場合によるとは思うけど、例えば、現状僕はSoundCloudやApple Musicではたくさん視聴されているわけではなくて、Spotifyにリスナーが多いんだ。きっとSpotifyで公開されているプレイリストが理由だと思うけど。一方で僕が取り組んでいるもう一つのプロジェクト、Acoustic-y Singer Song Writerは、Spotifyでは4万回視聴されているのに対して、SoundCloudでは20万回視聴されているんだよ。

——興味深いですね。各配信ストア毎に異なったファンベースがあるということでしょうか?

多分そういうことだと思う。僕としてはどのストアでも4〜5万回くらい視聴されることで、例えばRelease RaderやDiscover Weeklyにピックアップされて、他にも多くのプレイリストに採用されればいいなと思うんだけどね。

——それでもアーティストとして、各ストアでの動きの違いについて認識されているのは素晴らしいですね。これまでの経験で、リリースのタイミングについてシェアできることはありますか?

そうだね、今僕たちはたくさんの情報の中で生活していて、1つのことに集中したり時間を割いたりしにくいライフスタイルを送っていると思うんだ。だから聞いてくれる人が興味を維持できるように、多くても2曲、基本はシングルでリリースするのが適していると思う。

——確かに。ただ、だからこそ、最近リリースされたアルバムについて非常に興味深かったのは、18曲も収録されたアルバムを配信されたことなんです。確かに曲尺の短いものが多かったけど、それでもアルバムという単位でリリースされたのはどのような理由があるのでしょうか?

もともとBeat Tapeというリリーススタイルが好きで、みんなに聞いてもらいやすくするために実はアルバムを3つのパートに分けてリリースしたんだよ。初めの6曲、次の6曲、最後の6曲っていう風にね。一度に18曲のリリースをしてしまうと、きっと聞いている間に興味を失ってしまうと思ったから、5〜6曲に分けてリリースすることにしたんだ。この方法はすごくおすすめだよ。

——先ほどabsoluteとのプロモーションでおっしゃっていた話ですね。

そう!1週目の水曜日に初めの6曲をedbl beats part.1、次の週にpart.2, また次の週にpart.3と配信したんだ。今Spotifyで見てみるとedbl beats volume.1と表示されていて、1枚のアルバムみたいな見え方になっていると思うけどね。

——とても参考になります。楽曲を配信される際、イギリス以外の地域についてどれほど意識されていますか?

基本的には僕がいる場所でのファンベースに注意しているから、ロンドンでの視聴動向を気にしているよ。もちろんアメリカとか、もちろん日本でも聞かれればすごく嬉しいけど、僕のファンが一番多いところがUKだからね。それが一番効率的なんだ。


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まず今の僕にできることはいい音楽を作ること

——音楽活動を行う上で一番魅力的な環境とはどのような環境でしょうか? 個人レベルでディストリビューターを通して自由に活動するのか、それとも大きなレーベルで力を発揮するのか、またはインディペンデントとして活動しつつ、手近に優秀な誰かを雇うこともできるかと思います。

そうだね。ただ先のことを考えるのはまだ僕には早いような気もしていて、だから今はabsoluteと一緒に仕事をしているんだ。もちろんそれは素晴らしいことなんだけど、今僕にはマネージャーやブッキングエージェントがいないから、ライブをブッキングしてくれたり、チケットの管理をしてくれるような誰かがいるとありがたいね。僕はライブが大好きで、ライブは僕が音楽にハマるようになったきっかけでもあるから、音楽を作り続けて、それがどんな形で広がっていくのかライブの場で確認できればと思っているんだ。僕は音楽は作れるけど、でもそういうプランを練るのはあまり得意じゃないからね。将来的にUKやヨーロッパ、アジアでライブをしてみたいけど、まず今の僕にできることはいい音楽を作ることかな。

——そうですね。一番重要でかつ効果的なプロモーションこそいい楽曲を作ることですからね。今は著作権についてはどのように管理されていますか。インスト系の音楽をたくさん制作されていると、楽曲の使用許可についてメッセージを受け取ることも少なくないかと思います。

著作権のマネージメントについて言うと、absoluteが僕の楽曲が店舗で使用されるようにしてくれているんだ。僕が店舗を決めることができるわけではないのだけど、ChiquitoやNespresso、illy、converse、G-starとか、いくつかの店が僕の音楽をかけてくれていているんだ。それとsentricという音楽出版社が僕の音楽をすごく気に入ってくれて、TK MaxxやH&M、Caffe Neroとかイギリスのたくさんの店舗でかけてもらえるように取り組んでくれているんだ。

——著作権について出版社と契約を結んでみて、その運用についてはどのように感じられていますか?

edblのプロジェクトをsentric (※イギリスの音楽出版社) と共に取り組み始めて、sentricは僕の楽曲が色々な場面で使用されるように努力してくれていると感じているよ。レイドバックなサウンドの楽曲は店舗のプレイリスト的にはとても人気なジャンルだと思うし、今の所はすごくよくしてくれていると思っているよ。

 
音源の他にアーティストにとってとても大切なことは、強く印象に残るようなビジュアルとアイデンティティを持つこと

——実は個人的にedblのアートワークもすごく好きなのですが、どのようなコンセプトがあるのでしょうか?

ありがとう!実はあのジャケットは、知人を介して出会ったグラフィックデザイナーのOliverとJackによる作品なんだ。僕がedblのプロジェクトを立ち上げた時に、なんとなく人の顔をジャケットに使いたいって思いがぼんやりとあったんだ。僕の顔ではなくてね。僕が思い描いていたのはそれくらいだったんだけど、彼らと話す中で、具体的に色のバランスや、目は無くしてしまおうだとか、そのほかの部分についてアイディアを提示してくれたんだ。本当に素晴らしい仕事ぶりで、彼らに出会えてとても幸運だったと思うよ。音源の他にアーティストにとってとても大切なことは、強く印象に残るようなビジュアルとアイデンティティを持つことだと思うんだ。特にそのビジュアルがInstagramやSpotifyでのアーティスト写真にも使用される場合は余計にね。曲を聞く前に、かっこいいっていうイメージを抱いてもらえるからさ。


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Beat Tape (edbl beats volume.1)のアートワーク

——その通りですよね。アートワークからアーティストのイメージを抱かせることができれば、成功に繋がる気がします。また、恐らくこれまでに本当にたくさんの情報をSpotify for ArtsitsやApple Music for Artistsなど、アナリティクスツールやabsoluteから受け取っていると思います。それら情報をどのように活用されていますか?

実は純粋に面白くて見ているっていうのが本音かな(笑)。どこでたくさん聞いてもらっているのかとかね。だからあまりプロモーションについて生かそうとは考えていなくて、特に戦略を練る上ではあまりうまく使えてはいないかな。

——近い将来はどのように活用したいと思いますか?

そうだね、やっぱりライブをする時にはすごく役に立つかと思うよ。僕のメインのファンベースはイギリスと、ついでアメリカ、オランダだからそこらへんをツアーしてみようかな、とかね。

——言語的な違いでいうと、アジアと英語では曲のグルーブを生む上で大きな違いがあるのに、まさに今同じような音楽的な波がきているは面白いですよね。edblさんのようなトラックメイカーとアジアのアーティストがコラボレーションするような機会があればすごく面白いだろうと思います。

そうだね!

 
サウスロンドンの音楽シーン

——サウスロンドンの音楽シーンはここ数年大きく注目を集めていると思います。まさに現地で活躍しているアーティストとしてどのように捉えられていますか?

そうだね、凄く素晴らしいことだと思うよ。僕はロンドンの中でもサウスロンドンにずっと住んでいるからとてもホームなように感じているし凄く居心地がいいよ。音楽的なことでいうと、とにかくすごいことがたくさん起きているって感じかな。特にUK R&B/Soulシーンでね。Jorja SmithやMAHALIA、Sasha Keable、Mathilda Homer、Ady Suleiman、Isaac Waddingtonなど才能豊かなアーティストがたくさんいるよね。それにロンドンにはたくさんのクラブやスタジオ、たくさんのプロデューサーがいるからね。

僕自身はサウスロンドンのBrixtonっていう、ジャマイカンアフリカンな地域出身なんだけどカリビアンな文化もミックスされていて、いざBrixtonの外へ出るとそうした文化の中にいることがすごくかけがえの無いことだと思うよ。ご飯もすごく美味しいし(笑)。たくさんの文化に触れることができる点がサウスロンドンの良さだと思う。

——世界的にみてもUK R&Bのシーンは注目を集めているかと思います。いわゆるメジャーからのアプローチとは全く異なる、こうした音楽が多くの人を魅了する理由についてどのようにお考えでしょうか?

それは全然わからないよ(笑)。今の流れがどこから来てるかはわからないし、エリアごとに流行る音楽も全然違うからね。売れ線のポップスだったり、90’sのグランジだったり。

——ただ業界を俯瞰してみると、やはりインディペンデントを支えている新たなサービスを通じて、今まで埋もれていたようなアーティストにスポットライトが当り始めていますよね。そして早耳なリスナーが楽曲を発掘することにも一役買っているかと思います。

100%間違いないね!逆にそういう土壌ができてきたからこそ、純粋にいい楽曲を書く能力をもつアーティストが注目されているんだと思う。Bruno MajorやRex Orange Countyのようにね。純粋にいい曲をみんな聴きたいんだよ。

——個人的にイギリスの音楽的環境について、BBCのようなラジオが特に若手のミュージシャンが露出の機会を得る上で大きな役割を果たしているように感じますが、どのようにお考えですか?

それはその通りだね。実際BBC IntroducingはAdy Suleimanにも、僕にとっても成功する上で大きな役割を果たしてくれたよ。それとBBC extra 1っていう、もう少しアーバンなラジオ番組なんだけど、それもすごく大きなインパクトだったよ。実を言うとBBC extra 1で僕の音楽が放送されたおかげで、今一緒に働いているabsoluteの担当と出会ったんだ。
 

——そうなんですね!ラジオを聞いてコンタクトを取ってきたということですか?

そうなんだ。ラジオで曲を聴いて、ストリーミングでアートワークを確認してすごくかっこいいと思ってくれて、連絡をくれたんだよ。

——そういえば、音楽ビジネスウェブマガジン、Music Business Worldwideより「最もアツいインディペンデントアーティスト」に選ばれましたね。どのような経緯で選出されるに至ったのでしょうか。

実は、確か明け方ぐらいに誰かが僕にページのリンクを送ってきて初めて知ったんだ(笑)。


Music Business Worldwideの掲載記事
MUSIC BUSINESS WORLDWIDEより

https://www.musicbusinessworldwide.com/the-hottest-independent-artists-in-the-world-emilee-maya-delilah-mia-rodriguez-edbl-and-andrea-chahayed/

——そうなんですか!

そうなんだ。全く事前に情報共有があったわけでもなくて、でも記事はすごくカッコ良かったよ。Music Business Worldwideはすごくよく知られた、信用のある音楽ビジネスマガジンということはわかっていたし、記事の内容もすごく親切だったし、掲載されたことをすごく光栄に思っているよ。

——そしたら全くもって突然の出来事だったんですね。

本当に急な出来事だったよ。まぁ記事は基本的に数字とかデータとか、どれくらいSpotifyで再生されているとか、そういう感じだったけど、それでもすごく嬉しいよ。

——どういった判断のもとで、今最も「アツい」と判断されたのか、ご自身ではどのように考えられていますか?

記事を思い出してみると、成長率とかまつわる数字とかに関係していたから、一定期間での伸び幅がいい感じに判断されたのかなと思う。その点はSpotifyのおかげも大きくて。たくさんのプレイリストに入れてもらっていたからね。だから多分プレイリストと伸び率がその理由かな。

——具体的にいい反響はありましたか?

もちろん!僕が選出された記事を僕自身でポストしたんだけど、そのポストを見て数人の人が24時間以内に返信をくれて、チャットしたりしたよ。結局そのうちの一人、dylan rockoffと、彼の楽曲「Killing Time」でRemixを制作したんだ。彼はアメリカ人アーティストなんだけど、彼のマネージャーが記事を読んで、dylanとのコラボレーションを提案してくれたんだよ。

——今回の選出は、Beat Tapeをリリースした後ということで、まさにベストタイミングでしたね。

そうだね。Beat Tapeは19トラックあるから、その分視聴される可能性が高いし、視聴してくれる人にも満足してもらえるほどの曲数だったから、タイミングとしてはバッチリだったね。

 
SNSを駆使してファンを開拓し、アーティストともつながる

——Beat TapeをリリースされてからInstagram上で”edbl challange”と称して、世界中のアーティストに楽曲を自由に演奏してもらうような試みをされていましたね。

僕は普段からインストの音楽を作曲することが多いけど、いつも誰かに歌って欲しいし、ラップを載せて欲しいし、サックスを弾いて欲しいと思っているんだ。インスト音楽もすごく好きだけど、やっぱりそれだけじゃなくて、歌とかが組み合わさった音楽がすごく好きで、だからBeat Tapeを制作している時から、僕のインスト音源に他のアーティストを参加させてみたいってずっと思っていたんだよ。だからInstagram上でみんなに参加してもらえば、すごくいいんじゃないかと思ったんだ。結局、僕は音楽に乗せて何をやってもいいからみんな参加して、って感じで始めたんだけど、最終的には50件以上のレスポンスがあって、どの演奏や表現にも圧倒されたよ。それに視聴者が新しいアーティストを発見するのにもすごく効果的で、僕も演奏してくれたたくさんのアーティストに逆に見つけてもらえて、まさに大成功だったんだ。

——こうした手法はイギリスではメジャーなのでしょうか? 同じようなジャンルではJordan RakeiやYakulも似たような試みをしていましたよね。

そうだね。結構増えてきたと思う。正直今年の夏より前に、こういうチャレンジをするアーティストはあまり見かけなかったんだけど、誰かがやり始めてから徐々に広がっていった感じかな。多分コロナウィルスの影響でアーティストもスタジオとかじゃなくて、部屋にいることが多かったし、視聴者の多くも部屋でスマホをかまっている時間が長かったから、始めやすかったんだと思うよ。「新曲ができたから、みんな演奏してみない?」ってね。

——日本でも同様のチャレンジが広がれば面白かったのに、と思いますね。

この方法はみんなにお勧めしたいよ。僕の友達のミュージシャンも検討していたから、絶対やるべきだよって勧めたんだ。新しいファンベースを開拓するチャンスになるし、アーティスト同士がつながったり、新しい作品を生み出すチャンスにもなるからね。

——いいですね、結果として、このチャレンジを通して何か面白いことにつながりましたか?

もちろんさ。今回本当にたくさんのアーティストと出会うことができて、そのうちの数組と具体的に話を進めたんだ。まず一人目のTom Painter、彼はシンガーソングライターなんだけど、僕のチャレンジに参加してくれて、その後彼のEPを僕がプロデュースすることになったんだ。この二ヶ月その作業にあたっていたんだけど、すごくいい感じだよ。あとJed Hollandっていう、すごく才能豊かなヴァイオリン奏者兼シンガーがいて、彼もチャレンジに参加してくれたんだ。僕自身彼の演奏をすごく気に入ってね、だから彼とコラボレーションして再度レコーディングした僕の曲、「twentynineteen」を9月18日の金曜日にリリースしたMixtapeのボーナストラックとして収録したんだ。彼はヴォーカルとヴァイオリンで参加してくれているよ。

——すごいですね!Beat Tapeのレコーディングとは異なり、コロナ禍と言うことで、集まってのレコーディングは難しい状況にあったかと思いますが、全てリモートで作業を進めたんですか?

そうなんだ。すごくやりがいがあって、難しかったよ。でもJedはすごくレコーディングが上手くて、すごくやりやすかったよ。それでもロックダウン中にミックス作業を進めるは大変だった。というのも、参加メンバーがそれぞれ自宅でレコーディングした音源を合わせていくんだけど、みんな使っているマイクも違うから音も変わってくるし、多分防音機材も持っていないからそれも影響してね。多分音楽に限らず、何か作品を生み出す上で過酷な環境だったと思うよ。すごく面白い経験ではあったけど、やっぱり同じ空間で作品を作っていく方が10倍いいね(笑)。


ストリーミング時代を生きるミュージシャンの現在 ― from サウスロンドン edbl の場合
Boys & Girls Mixtapeのアートワーク

——具体的にはMIDIデータをアーティストに送って、それに合わせて演奏したものを送り返してもらって、edblさんがミックスする感じですか?

いつもはアーティストみんなで集まって制作していくけど、今はそれができないからね。Jedはチャレンジに参加してくれた時、オリジナルでバースとコーラスを作ってくれて、それがすごくいい感じだったから、彼に2番のバースとコーラスも作ってもらって、その音源を僕の方でミックスしたんだ。

——なるほど。このチャレンジに参加されたアーティストの地域的なバックグラウンドはどうでしたか? 例えば全く音楽性の異なる地域のアーティストが、こうやってオンラインで参加すると、すごく面白い作品が生まれそうだなと思いますし、これからのアーティスト間のコミュニケーションの方法として、ひとつのロールモデルになるような気がしているのですが。

いい質問だね。実は参加してくれたアーティストのほとんどがイギリスからだったかな。あとは数組スペインから参加してくれたり、コロンビアか、どこか南アメリカの国から参加してくれたアーティストもいたよ。アジアからの参加もあったけど、確かダンスビデオだけだった気がするな。

——アジアだと好きな曲に合わせてダンスパフォーマンスをするのは人気がありますね。今度は音楽コンテンツの投稿も増えてくるといいですよね。

そうだね。でももちろん僕としてはダンスパフォーマンスもウェルカムだよ!

——次にIssacがフィーチャリングとして参加した楽曲「The Way Things Were」がついに100万回の再生を突破し、数多くのプレイリストに選出されているかと思いますが、何かきっかけなどはありましたか?

多分これは徐々に徐々にって感じだと思うんだよね。何か1つを成し遂げたからっていうわけじゃなくて、僕が初めてリリースした時から長い期間をかけて達成できたことだと思う。リリースしたての頃はそこまでのストリーム数はなくて、多分5千とか1万とかそれくらいの視聴回数だったけど、少しずつね。ただ今思うとabsoluteの影響は大きい気がするよ。absoluteと契約してからすぐに2〜3つのSpotifyのプレイリストに選出されたんだ。彼らは当たり前だけどSpotifyと繋がりがあるからね。それがきっかけでたくさんの人が聞いてくれて、シェアしてくれて、また違うプレイリストに選出されて…。一番大きなきっかけとなったのは、すごく有名なプレイリスト、Sweet Soul Sundayに選ばれたことかな。50万人近くの人がこのプレイリストをフォローしているから、毎週日曜日に少なくとも5万回ぐらいは再生されるんだ。あとNext wave Neo Soulにピックアップされたのも大きかったかな。


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The Way Things Wereのアートワーク

——Next wave Neo Soulではしばらくの間プレイリストの1曲目に選出されていたのでインパクトも大きかっただろうと思います。

そうなんだ。1曲目に入れてもらえると効果は大きいよ。すごく有り難かったよ。

——これまでプレイリストの話をしてきましたが、今日本ではTikTokがきっかけとなって人気を掴むアーティストの例が増えてきています。特に面白いことに、新譜・旧譜関係なく完全に視聴者の好みで突然人気に火がついているのですが、ロンドンではいかがですか?

そうだね。僕は個人的にTikTokを追ってはいないんだけど、これまでにTikTokが原因で人気が出たアーティストは知っているし、新しい波というか、ビジネスモデルであると感じているよ。僕の友人のBen Thomasonがカバーをアレンジしてギターで演奏したんだけど、それがバズって1万回のヒットになったんだ。同時にフォロワーが急に増えて、今では彼にとっての新しいプラットフォームになっているよ。アーティストが自分の視聴回数を増やすために新しいプラットフォームが生まれるのはいいことだし、特に若い世代の人たちにとってはすごく重要なことだと思うよ。

 
日々努力を続けていくことが未来につながっていく

——間違い無いですね。現在コロナウィルスの影響でアーティスト活動が制限される部分は大きいと思いますが、何か心がけていること、新しく挑戦されていることなどありますか?

そうだね。僕はこのコロナウィルスが引き起こした現状を受け入れていて、日々こなしている活動は今までとは大きく変わらないよ。日々作曲して、レコーディングして。むしろ制作に没頭している今が楽しくすらあるんだよ。僕はいつも僕以外の作家や歌い手やプレイヤーたちと制作に取り組んでいるから、常に新鮮な気持ちでいられるしね。最近は次のBeat Tapeのリリースに向けて制作を続けているんだけど、すごくいい感じですごく楽しんだ。だからやっぱり僕にとって大事なことはコンスタントに楽曲を作り続けることなんだと思う。僕はまだライブアーティストってわけでも無いしね。2月に初めてのBeat Tapeがリリースされて、18日にはMixtape『Boys and Girls』がリリースされて、こんな感じで次の作品もリリースすることができるように、日々努力を続けていくことが未来につながっていくと思うんだ。

 


 
——それでは最後に今思う、アーティストとしての目標はなんでしょうか。

実は僕はバケットリストというか、できたらいいなっていうことをリストにしているんだけど。その中での目標としては、トップ40にランクインすること、できればトップ20…。トップ10にランクインできたら本当にすごいなと思うよ。別に自分名義のプロジェクトでなくても、作曲家としてでも十分だよ。後僕はグラミーに対して大きな憧れがあって。とてつもなく高い壁だろうけど、ノミネートされたら最高だと思うね。

まぁでも今は音楽を楽しみたいかな。さっき言ったように世界ツアーをしたりして。一歩ずつ、その過程を楽しみたいと思っているよ。


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