2020.10.6
SNSやYouTubeから次々に話題のシンガーソングライターが現れている昨今、その中でも一際目を引く存在感を放っているのが現在19歳のシンガーソングライター・小林柊矢。時代を超えるグッドメロディーと心を揺さぶるエモーショナルな歌声、そしてリスナーの心に寄りそった世界観の歌詞で注目を集め、SNSをはじめ大きなファンベースを築いている。8月にリリースされたシングル「ドライヤー」は各種ストリーミングサービスのチャートやプレイリストに多数入り、アーティストとしての高いポテンシャルをうかがわせた。10月16日にはまた新たな一面を表現したという新曲「ハッピーエンドの前説」のリリースも控える小林柊矢に話を聞いた。
バットからギターに持ち替え音楽の道へ
——まず、小林さんが最初に音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。
物心がつきはじめた頃から、お母さんがよく童謡や昔の歌謡曲などを聴かせてくれていたんです。それにあわせて歌ったりして。なので本当に小さい頃から歌はずっと好きですね。
自分で音楽を本格的にやり始めたのは高校生になってからです。僕は小学校1年生から野球をずっとやっていて、野球にはかなり本気で取り組んでいました。高校にあがってからももちろん硬式野球部に入って一生懸命やっていたんですが、高校1年生の終わりごろに肘を壊してしまって。ポジションがキャッチャーだったので、その怪我は致命的で、野球を諦めなければならなくなりました。そんな時に、ずっと手をつけていなかった高校の入学祝いに祖母が買ってくれたギターをふと手にして、これを機にバットからギターに持ち替えて歌をやってみようかなと思って。もともと秦基博さんの「ひまわりの約束」のような弾き語り系の音楽がすごく好きで、前からギターには興味があったんです。それで、野球部を辞めてから軽音部に入って、本や動画を参考にしながら独学でギターと音楽を勉強しました。
——その頃は「ひまわりの約束」の他にどういう音楽を聴いていましたか?
カラオケも好きだったのでJ-POPは普通に耳にしていたんですけど、やっぱりそれよりも、おばあちゃんやお母さんの影響で少し前の歌謡曲が好きなんです。例えば高橋真梨子さんの「for you…」や山口百恵さんの「さよならの向こう側」、小野正利さん、玉置浩二さん、中島みゆきさんとか。周りの友達がその当時流行ってたJ-POPを聴いている中、自分だけそういった曲を聴いていて、話が合わないというのはありましたね(笑)。
——ギターをはじめてすぐにオリジナル曲を作りはじめたんですか?
きっかけとなった「ひまわりの約束」とかのカバーから始めたんですけど、だんだん単なるカバーではなくて自分流のアレンジもするようになってきて、それだったら自分の曲も作れそうだなと。そこから自分の作ったメロディーにコードをつけてオリジナル曲を作るようになりました。
——2018年の夏にTwitterにアップした弾き語り動画から話題になっていきましたね。
びっくりしました。そうなる前からちょくちょく動画をTwitterにあげてたんですけど、その時はいいねが20~30つけばすごく嬉しいくらいだったので。それが急に数万っていう数字になった時は本当に驚きました。
——そのきっかけには何があったんでしょうか?
僕が弾き語りをしているところを友達が勝手に撮影してTikTokにアップしたんですけど、それがバズって。それと同じタイミングぐらいでTwitterでも一気に広まった感じでした。
——ライブもやっているんですよね。
コロナでこういう状況になる前は路上ライブもやっていました。新宿とかで。
——弾き語りの方々が集まっての新宿での合同路上ライブも話題になっていましたね。その時に一緒にやったSSWの方々とはどういった繋がりなんですか?
SNSで知り合いました。僕がアップしていた動画を気に入ってもらって、ありがたいことに「一緒にやりませんか?」って声をかけてもらって。あの時はたくさんの人に集まってもらえて嬉しかったですね。
皆さん本当に最高でした。
ありがとうございました。 pic.twitter.com/X1C9GLmi4e— 小林 柊矢 (@touya_0123) March 27, 2019
最初に出す曲ではまず自分の個性である歌声をバラードでアピールしたかった
——そしてストリーミングサービスのチャートにも多数ランクインした最初のシングル「ドライヤー」を8月にリリースされましたが、最初のリリースを「ドライヤー」にしたのはどうしてだったんですか?
曲のストックは沢山あるんですけど、小林柊矢の声が一番分かりやすく伝わる曲だと感じたので、「ドライヤー」を最初のリリースにしました。歌詞の女々しい部分にも共感してもらえるんじゃないかって思ったし。自分のSSWとしての特徴がよく表現されていて、名刺がわりの一曲になったと思います。
——「ドライヤー」というタイトルにしたのはどうしてでしょう?
彼氏と彼女、二人が日常生活の中で使う何かをタイトルにしたかったんです。「化粧水」や「歯ブラシ」とかも考えたんですけどしっくりこなくて。それで、彼氏が彼女の髪を乾かす時ってあるなと思って「ドライヤー」が思いついて、そこから一気に曲が出来ました。
——サウンドとしては切ない雰囲気がありますよね。
僕は色々な曲を作るんですけど、最初に出す曲ではまず自分の個性である歌声をバラードでアピールしたかったんです。まずはそこを一番みんなに聴いてほしくて。さっき言ったような切ないメロディーの曲を多く聴いてきたからこそ、自分の曲も自然とそういうサウンドになるのかもしれませんね。
あと、「ドライヤー」に寄せられるコメントを見ていると、聴いた人が共感して自分の体験に重ねてくれていたり、僕が伝えたかったことや工夫した部分を評価してくれているのが嬉しいです。「ドライヤー」がきっかけで僕のことを知ってくれた人もいるみたいで、本当にありがたいです。
——まだリリースはされていませんが、YouTubeにアップされている「僕が君の前から消えた時」や「嫉妬」もリリースを望む声が多くありますね。
それも嬉しいですね。でもシングルというよりも、いつかアルバムを出すタイミングが来たら、そこに収録するのもいいなと思っています。なので、なかなかリリースしないかもですね(笑)。
聴いてくれる人の心を癒やしたり、そっと支えていけるような曲が作れるよう
——基本的な曲作りのスタイルはどういった感じですか?
僕は曲が突然降りてくるみたいなタイプではないので、腰を据えて「よし、曲書くぞ」って決めて作ります。作る流れとしては、詞が先のことが多いです。曲が完成するまでにかかる時間はもちろん曲によって違いますが、だいたい1日以内に集中して書き終えます。日をまたぐと感情やメロディー、考えていたことが途切れてしまうので。
——詞はどういったところからインスピレーションを受けますか?
生活していて目にする一人一人全ての人に異なる人生がある中、自分の実体験だけで共感してもらえる詞を書き続けることは難しいと思うんです。なので、僕の場合”憑依する”感覚で詞を書くことが多いです。「どういう感情を抱いているんだろう」って他の人になりきってみたり、友達や周りの人とも色々な話をしたりして、憑依して書いている。ただ、恥ずかしいからあまり言わないようにしているんですけど「嫉妬」の歌詞は実体験をもとに書いています(笑)。
——ライブと曲作りだとどちらが好きですか?
今は曲作りですね。そもそもライブの経験がまだ少ないというのもあるんですが、やっぱり曲作りであれば場所や時間関係なく、いつでも自分の世界に入り込んで没頭できるので。でも、また心置きなくライブができる日が来た時のために、今からパフォーマンスのスキルも磨いておきたいですね。
——活動スタイルについて、バンドなどではなく1人のSSWでやろうと思ったのはどうしてでしょうか?
高校の軽音楽部でバンドは組んでいたんですけど、みんな音楽の趣味や方向性もバラバラだったので、なんか違うなと思ってしまったんです。もともと秦基博さんへの憧れもあったし、アコギでの弾き語りの方が自分には向いているなって。あと、一人の方が目立てるんじゃないかっていうのもあったかも。基本的に目立ちたがり屋なので(笑)。でもいつかは大きな会場でバックバンドを背負ってライブしてみたいですね。
——秦基博さんの他に影響を受けたアーティストはいますか?
秦基博さん以外だと、back numberさんは歌詞の世界観が自分と通じるところを感じていて、ずっと聴いていました。他にはハナレグミさんや玉置浩二さん、そして星野源さんですね。
——SSWとして今まさに周りの環境含め色々なことが変化していると思いますが、小林さんが音楽活動でブレないように心がけていることは何かありますか?
楽しい時も悲しい時も、どんな感情の時でも気が付いたら小林柊矢の音楽を聴いていた。そんな人が増えるように、気持ちに寄り添える音楽を作っていきたいと思っています。音楽が特にその力を発揮するのって、人が落ち込んだり悲しい気分の時だと思うんです。そんな時に、聴いてくれる人の心を癒やしたり、そっと支えていけるような曲が作れるよう頑張っています。
オリジナリティーを追求して、僕にしか歌えない作品を世に送り出していきたい
——最近は弾き語りのSSWが次々に話題になっていますが、そういった状況に対してはどのように感じていますか?
サブスクのランキングなどを見ているとSSWの方が多いですよね。自分もその中でどう存在感が出せるかを日々考えています。そうする為には、その人たちと違うことをするか、あるいは計り知れない努力をするかのどちらかだと思ってて。小林柊矢のオリジナリティーを追求して、僕にしか歌えない作品を世に送り出していきたいですね。
——同世代で注目していたり、シンパシーを感じているアーティストはいますか?
dandelionのボーカルの菊地諒真は、音楽をやるモチベーションをくれる存在ですね。彼とは週4くらいのペースで電話する仲で、曲ができたらすぐ聴いてもらったり、僕も彼が作った曲を聴いたりして。お互いああだこうだ言いながらずっと音楽の話をしています。
——昔からの友達なんですか?
ここ数年で急に仲良くなったんです。僕のバズった動画を彼がたまたま見ていて、SNSでメッセージをくれて。僕は僕でメッセージをくれる前から彼のことを知っていて。彼とは音楽の趣味やルーツが他の誰よりもすごく似ていて、一気に意気投合しました。彼の作る曲はすごいんですよ。メロディーも歌詞も本当に秀逸で。お互いアドバイスをしあったりして、刺激しあえる仲間です。
——昨今はSNSでのファンやリスナーとのコミュニケーションも欠かせないと思いますが、SNSを使うにあたって心がけていることはありますか?
SNSでは、もっと素の自分をさらけ出せたらいいなと思っています。曲を聴いただけでは分からないような、小林柊矢という人間の色んな側面を見せていけたらなと。僕のことを音楽だけではなくて人間としても愛してもらいたいですね。
——少し音楽から離れますが、音楽以外で何か趣味はありますか?
野球とギターしかやってこなかったので、これから色んなことにチャレンジしていきたいとは思っています。あ、でも特撮モノは小さい頃からずっと観ていて、仮面ライダーの知識なら誰にも負けないと思っています(笑)。あと漫画は『ジョジョの奇妙な冒険』と『ドラえもん』の2つだけしか読んだことないので、もっと色々読んでみようかな。あとはなんだろ……あ!最近は人に催眠術をかけることにハマっています。地元の友達とかはすごくかかりやすいんですけど、スタッフさん達は全然かかってくれないんです。やっぱり大人になると心がピュアじゃなくなっちゃうんですかね(笑)。
世代を超えて語り継がれる曲を書くのが一つの大きな目標
——今後はどういったアーティストになっていきたいですか?
紅白に出るとか武道館に立つとか、そういった”舞台”ももちろん大事だと思いますが、僕としては後世に語り継がれる曲をいつか1曲は世に出したいと思っています。例えば、中島みゆきさんの「糸」のような、大人から子供まで誰が聴いても素晴らしいと感じる曲。そんな世代を超えて語り継がれる曲を書くのが一つの大きな目標です。
——いつか共演したいアーティストはいますか?
やっぱり同じソロ・シンガーソングライターの秦基博さんや玉置浩二さんですね。一緒のステージで歌える時が来たら……考えただけでもヤバいです(笑)。
——これからどういったことに取り組んでいきたいですか?
人の感情を揺さぶるような曲を沢山作っていけるように、これからも楽しみながら努力していきます。音楽以外のことでいうと、トーク力を向上させたいです(笑)!いずれは自分のラジオ番組とかもやってみたいので、精進します!来年20歳になるので、さらに視野を広げるためにも色々なことを経験して吸収して、人間として成長していきたいです。その成長していく過程の中でひとつひとつ夢を叶えていけたらなと。
まずは10月16日(水)に「ハッピーエンドの前説」という、インディーズ配信第二弾の新曲がリリースされるので、楽しみにしていて下さい。「ドライヤー」とはガラッと変わった世界観で、僕の違う一面を見てもらえると思います。他にも新曲を同時進行で沢山作っていっているので、今後の小林柊矢から目を離さないでいて欲しいです。
Newシングル「ハッピーエンドの前説」
2020年10月16日配信リリース