【セ・ラ・ノ#22】その感激と記録『ハハハ』セルフライナーノーツ

コラム・特集
2026.9.28
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アーティストによるセルフライナーノーツで作品の魅力を深掘りする連載企画「セ・ラ・ノ」。
 
第22回となる今回は、その感激と記録が登場。
 
6月に発表された、1st Albumとなる『ハハハ』について、セ・ラ・ノ。
 


『ハハハ』各サブスク
 

Track 1「入口一」
 
中西(Vo.)
この曲が出来た日は眠れませんでした。メンバーにデモを送ってからは割とスピーディに楽器を加えていってくれていたのを覚えています。
 
曲の方向性やサウンド面に関しては、80〜90年代のアーケードゲームミュージックに影響を受けていて、雰囲気としては神話的ファンタジーサウンドに由来している部分があるかなと思います。
 
山北(Gt.)
イントロのリフは元々中西が送ってくれたデモから入っていたものをそのまま弾いてます。サビ裏のアンビエント感ある音作りは、曲の雰囲気に合わせて恐怖心を煽るよう意識して作りました。
 
牧野(Ba.)
バンドインまでの1分10秒のあと、バンドインの衝撃がたまらない。何度聴いてもドキドキするし新しいアルバムの一曲目にできて本当によかったと思っている。インタールード後、自分の中では珍しくベースでリフっぽいのを弾けたのが新鮮。
 
諏訪(Dr.)
景色の遷移が印象的な曲なので、分かりやすく音量差をつけてみました。
 

 

Track 2「ruri」
 
中西
歌詞を見てみると「陽」というワードに広がりが見えるところが最大のポイントです。通常聴き流せるハミングのようなパートにキーワードを乗せる発想は素晴らしかったと思っています。
 
山北
モジュレーションディレイを活用して曲の世界観を表現しています。リードギターが入っていないデモの時点と比べて一層不気味な印象になったと思います。後半のディスコード感あるフレーズもお気に入りです。
 
牧野
今作ではどの曲がリード曲!というイメージは薄く、1枚のアルバムを通しての作品というイメージの方が強いけど、一曲選べと言われたらこの曲。個人的に1番その感激と記録らしいなと感じている。曲中のベースのフレーズはアルバムの中でも特に気に入ってる。
 
諏訪
入口一からの繋がりを意識しつつ、より横の広がりを持たせるイメージで叩きました。
 

 

Track 3「さいごの花族」
 
中西
歌入れに一番苦戦した曲です。1年くらい寝かせたかな?
 
山北
山北作曲の楽曲です。「その感激と記録でも何か曲作ってみてよ」と言われたので、当時出来上がっていた入口一とruriの延長線上にある様な楽曲を狙って作りました。
 
自分にとってのその感激と記録の持つ不安定さと、自分が普段から作っているような力強い曲の感じが共存していて良いなと思います。イントロのギターフレーズから作った記憶があります。オケを作り込んで送って歌のメロディと歌詞は中西が手掛けています。
 
牧野
(山北)セナを中心にしてアレンジされた今作の曲の中で、最初に作ってきてくれた曲だったと記憶してる。歌が入って一気に“その感激と記録”になったの結構痺れた。
 
常時歪みペダルを踏んでプレベでバシバシ弾いた。気持ち良い。
 
諏訪
メロのセンスが神がかっている…し全部の楽器がかっこいい!
 

 

 

Track 4「botai」
 
中西
入口一の後にできた曲です。終始鳴っているオルガンとピアノのフレーズを使って音を探りました。
 
有名な映画を題材にしています。分かると解釈が面白いと思います。
 
山北
メロディとシーケンスだけが鳴っているデモを聴き、バンド全体のアレンジが頭に浮かんできたのでDAWで作り込んで送ったところそのアレンジがそのまま採用になりました。
 
さいごの花族はオケを作って歌を入れてもらったのに対して、この曲は歌だけがあるところからオケをつけるという逆の作り方になっています。これも自分らしさとその感激と記録らしさが共存している曲だと思います。
 
牧野
実は2024年頃には完成していた曲。これまでにはやらなかったような要素が多く、新鮮な感じだった。後半のギターとベースが消えてからのドラムがかっこいい。
 
諏訪
中盤のクレッシェンドがかかる部分に自分が感じた焦燥感みたいなものをそのまま落とし込めた気がします。
 

 

 

Track 5「HOUSE!!」
 
中西
今まで出したことのないような高音を叩き出しています。ソプラノの素質がないので、やや苦笑いでメンバーになんと反応されるか恐れながらデモを送りつけました。
 
結果的には想像以上に良い出来栄えです。このアルバムに収録して良かった。アウトロが長すぎると思いきや、聴き入ってみるとそうでもない気もするようなしないような。
 
山北
アルバムの中だと割と初期から原型はあったものの、後半の展開が中々作れず時間がかかった記憶があります。
 
この曲も後半はモジュレーションディレイを駆使しており、シューゲイズというよりはサイケ感を意識してギターをつけました。
 
牧野
冒頭4曲は制作段階で流れ良く繋いでいくイメージだったので、そのあとにゆったりとしたこの曲がくるのとても気持ち良い。印象的な歌詞とインターのリードギターがお気に入り。
 
諏訪
曲の持つ温かさを壊さないように叩きました。アウトロはライブだと更に気持ちよくなると思います。
 

 

 

Track 6「入口二」
 
中西
ピアノの音が好きで遊んでいたら良さそうなタネができたので育ててみた次第です。これはタネができてから最終形態にたどり着くまで相当時間がかかっていて、メンバーがいなければ完成していないと思います。
 
山北
最初は前半の感じがずっと続くデモが送られてきましたが、「インタールードっぽくなるのが嫌だからバンドっぽくしたい」と言い張り、スタジオでアレンジをした結果今の形になりました。
 
落ちサビからアウトロへの展開が良いフックになっていると思います。レコーディングではSGで弾いています。
 
牧野
前半と後半で怖いほど雰囲気が変わるのが印象的な曲。なかなかアレンジ決まらずrecギリギリのスタジオで奇跡的にこの形になった。非常に面白みがあるので最後まで聴いてみて欲しい。
 
諏訪
元気いっぱいに叩きました!
 

 

 

Track 7「影」
 
中西
美化に失敗して自分の傷をえぐっている感覚があります。なかなか難しい曲です。
 
山北
以前からライブでも演奏していた楽曲です。シンプルにメロディがいい曲だと思います。
 
後半の展開はスタジオでみんなで作って行ったと思います。ライブでは飛び道具的なエフェクトを活用して、迫り来る感じを表現しています。
 
牧野
これも2024年頃には完成していた。前作“神回避”のリリース前に既に原型となるデモがあった。時間をかけて相当化けた曲。
 
最後、アウトロのアレンジが決まった時にめちゃくちゃ心にきたのを覚えてる。インタールードで柄にも無くタッピング入れたりした。いつも緊張してる。
 
諏訪
淡々と進むイメージ。完成して初めて聴いたとき、アウトロで鳥肌が止まらなくなりました。
 

 

 

Track 8「陽は凍る」
 
中西
良くも悪くもつまらない、私らしいアウトだなと思います。
 
山北
既存曲の「走色」に近い雰囲気の楽曲で凄く好きです。アルバムの流れとしてもM7の「影」から空気感が変わって、「陽は凍る」でより深いところに潜り込んで行くような印象を受けます。
 
ギターもほぼずっと同じフレーズをリフレインしており、デモで入っていたフレーズをそのまま弾いているので、アレンジもレコーディングも難なく出来ました。
 
牧野
アルバム後半のローテンポな曲。アウトロのギターフレーズがなんか懐かしさを感じて沁みる。恐らく初めて男声が入っている。
 
諏訪
コーラスワークがとても綺麗です。ドラムは静かに…
 

 

 

Track 9「She in Coma」
 
中西
昏睡状態の夢を描いた曲で、サウンドにもどっちつかずの浮遊感みたいなものが表れているかなと思います。
 
左右のギターのアンバランスな感じとか、ボーカルのパンニングとか。なかなか王道とは言えないけれど、音楽好きな人には刺さるんじゃないかなと思っています。
 
山北
最初のデモ時点では正直平坦でパッとした印象はなかったのですが、完成した今ではアルバムの中で一番好きな曲な気がします。
 
2:10〜のセクションのアレンジが上手くハマったと思います。この曲でもモジュレーションディレイを活用していて、そこから強い歪みでベースとのハモリがあり、ブレイクで現実に引き戻される浮遊感が聴いていて気持ちいいです。SGで弾きました。
 
牧野
ギターや歌のパン振りにこだわりがある。交互に歌うフレーズ毎に声の印象が違うのとっても良い。後半のギターとベースがユニゾンしてるところ、弾いてて気持ち良い。
 
諏訪
デモで感じたぞわぞわを大切に、タイトすぎず、ルーズすぎず、?みたいなところを狙ってみました。
 

 

 

Track 10「入口三」
 
中西
人が作ったオケにメロディと歌詞を乗せていく作業は本当に楽しかったです。第三者目線もありつつ、普段ならしないアプローチができたと思っています。
 
例えば、敢えて安直で幼稚なハメ方をしている部分があったりして、知らないバンドの曲を聴く感覚で気に入ってつい再生してしまいます。
 
オケだけ聴くと最近の若年層の流行りっぽい印象ですが、そこに中西りかの歌が入ってくるとまた新しく、歌に関しては全体的に歌詞がすんなり入ってくるのでワードひとつひとつの重みが感じられます。「入口」というワードがここではじめて出てくるのも良かったなと思っています。
 
山北
自分が作曲した楽曲です。「さいごの花族」同様オケを作って送り、歌を中西につけてもらいました。
 
アルバム全体を通して暗い印象の曲が多く、特にM7〜M9がロー〜ミドルテンポで固まっていることから、一つインパクトのある曲を作って欲しいというリクエストでした。昔にメモしていたリフを引っ張り出してイントロから作りました。
 
牧野
珍しく変拍子、珍しくドーパミン直系。
 
複雑に絡む2本のギターの裏に強引に派手なフレーズのベースを入れてみたらメンバーに褒めてもらえて嬉しかった。普通にむずい。
 
諏訪
拍を間違えないように必死です!
 

 

 

Track 11「獣」
 
中西
群れていたら集団行動をするけど、単独でいたら途端にどういう動きをするか読めないもの。理性より欲望が勝ってしまう人間のメタファーですね。とにかくインターのベースフレーズが良くて聴き入ってしまう。
 
山北
ギターに良いフレーズを付けられたと思います。「リードギターがどういうフレーズ入るか次第だね」と言われていた曲でしたが、満足行くフレーズが出来て、楽曲全体としても良いものになったと思います。
 
最後のグロッケンは元々違うメロディだったのですが、レコーディング中にseasonalのメロディをなぞってみたらどうかとなり、試した結果M12への凄くいい繋ぎになり感動しました。
 
牧野
最初に原型聞いた時に良い意味でやばいっすねとなった。その後ドラムを入れて、ベースを入れて、最後にギターが入った時に間奏の良すぎるアルペジオで涙…
 
みんなにフレーズを褒めてもらえて嬉しかった。俺も結構気に入ってる。
 
諏訪
「森の中にひとりぼっち」のイメージで叩きました。ベースがすごく牧野らしくて好きです。
 

 

 

Track 12「seasonal」
 
中西
個人名義でなにか出そうと思って作ってみたものを聴いてみてよと送ってみたら褒めてくれたのでアルバムに入れました。歌詞のアプローチはその感激と記録にしてはなかなか珍しい感じになっています。
 
山北
一から全て中西だけで作った楽曲です。ギターフレーズ考えて試しに入れたりもしましたが、今のアレンジが一番良いと思います。
 
牧野
りかちゃんがソロ用につくった曲聞かせてもらって、良過ぎてバンドでやらせてほしいと言ったのが始まりでアルバムに入れることになった。
 
リードギターやベース、ドラムを入れたアレンジも考えたけど結局原型のままが1番沁みるよねってなってほとんど元の状態で録音。1番泣ける。神曲。
 
諏訪
名曲〜〜
 

 

 

Track 13「猫の吐息につられて寝る」
 
中西
実家で猫を3匹飼っています。大好きだから死なないで欲しいです。でももし死んでしまっても、最後にその毛流れを整えるのは、一緒にいる時間が最も長かった母であってほしいなと思います。
 
山北
デモ聞いた時にアコギの音が頭の中に流れてきたのでそのままアコギでフレーズを考えました。映画のエンドロールのようなイメージです。
 
アウトロのギター、何も考えずシンプルな頭で生み出したフレーズでしたが、メンバーから絶賛されたのでアルバムの最後にみんなが納得出来るフレーズを置けて良かったなと思いました。
 
牧野
デモを送ってもらった時に全員がぶち上がってたの覚えてる。アルバム最後の曲はこれにしようと速攻で決まった。沁みるベースを弾きたくて、ベースラインを作るのかなり悩んだ。レコーディング当日にもフレーズ変えたりした。
 
アルバム最後の曲として、最高な曲。
 
諏訪
個人的最推し曲です。この曲ができたとき、その感激と記録をやれる人生で良かったと本気で思いました。
 

 

 

最後に
 
初のフルアルバムということで、はじめましての方にもたくさん聴いていただいている印象です。
 
時代の流行りに左右されない音楽性だといいなと思います。長く愛される作品になることを願っています。



【セ・ラ・ノ#22】その感激と記録『ハハハ』セルフライナーノーツ


その感激と記録
その感激と記録は、鋭く切り込むギターサウンドと、静寂と衝動を往復するアンサンブルで、心の奥底に沈殿した感情を掬い上げるインディーロックバンド。 繊細さと激情、透明感とノイズが共存するサウンドは、エモ、オルタナティブ、ポストロックを横断しながら、ありふれた日常の中にある痛みや祈り、喪失や救済を描き出す。 何気ない一瞬に宿る感情を見逃さず、記憶の輪郭をなぞるように鳴らされる音楽は、聴く者それぞれの過去と静かに接続していく。

 
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