YOUNG FREEZインタビュー 洗練されたクリエイティブを産み出し続ける飽くなき向上心
YOUNG FREEZが、先日2ndアルバム『YOU.』をリリースした。メロディアスで艶やかなそのサウンドと心を揺さぶるリリックは、「音楽一つ聴くだけで、その言葉を聴くだけで、気持ちが変わるかもしれないし、そこに添えるような音楽や歌詞を作りたくて」と本人が語る通り、聴く人が感情を動かさずにはいられない仕上がりとなっている。1年半以上の制作期間が費やされたという本作、そこには表現の幅を広げるために留学するなど、YOUNG FREEZ自身のストイックで飽くなき向上心が反映されている。「やっとやりやすい時代になってきた」と語るYOUNG FREEZに、新作についてまた現在の活動状況など話をききました。
時代にあったリリーススタイル
——先日2nd アルバム『YOU.』をリリースされましたが、それに至るまでも今年はコンスタントにリリースを行われていましたよね。4つのシングルとEPと。それは、もともとアルバムに焦点をあわせて行われていたんでしょうか?
2015年に1st アルバムの『BE FAME』をリリースしてからだいぶ間が空いてしまっていて。曲が溜まったらリリースしようとは思っていたんですけど、2ndを出すにおいて、リリースのトピックを絶やさないようにしようとは考えていました。短いスパンで何らかのリリースがあるっていうのは今の時代のリリースのスタイルだと思うし。最初に続けて出したシングルの「INTO YOU」や「IN YOUR SPACE」は、フィーチャリングも敢えて入れないでおいて、まぁJASMINEとのリリースは途中から決まったことなんで例外なんですけど、そこから順々にEPでフィーチャリングのある楽曲も出すっていう風に、段階的にやっていこうっていうのはもともと考えてて。
——1stアルバムから3年という時間を経て、今年に入ってリリースがアクティブになったのはどうしてでしょうか?
1stアルバムをリリースした頃、俺が立ち上げてやってたBLIND CINEMA DIRECTIONっていうチームが解散する流れになって、その時期から海外に留学に行ってたんです。留学の最中にも制作はしてたんですけど、良い作品になりそうだから、ちゃんと時間をかけて計画を立ててやっていこうということで、このタイミングになりました。
聴く人の気持ちに添える歌詞と音楽
——今作は「NOW OR NEVER (feat. T-Pablow & RYKEY)」の若干不穏なサウンドで始まったかと思いきや、全体的には非常に艶やかさをまとっているというか、最後の曲の「BE ALRIGHT」でポジティブな雰囲気で幕を閉じ、全体的にサウンドに統一性を感じました。作品トータルでは、どういうイメージを持って制作されたんでしょうか?
作りたい曲を作ったというだけなんで、全体のテーマみたいなものは特になかったんですけど、アルバムとしてパッケージングしようとした時に、タイトルに「YOU」がついたり、二人称、つまり”アナタ”に対する関係性の曲が多いなと改めて気付いて。それでアルバムのタイトルも『YOU.』がいいかなと。
——たしかに「PICK YOU UP」、「INTO YOU」、「IN YOUR SPACE」とあります。
他にも、「Be Alright」は海外に行った友達に対して書いてて、”どこにいても今の時代なら、いつでも俺の曲が聞けるはずだから、ずっと隣にいるよ” って曲で。あと「BE MYSELF & ME BE」は、最近の若いコのInstagramを見てても、外タレとかに憧れ過ぎちゃって、見た目ばっかりで自分を見失ってるコが多いのかなって。歳を重ねれば自分を取り戻せるんだろうけど、それが行き過ぎて道を間違えたら下手すれば自殺しちゃったりもあると思うし。そういう、ネガティブのギリギリの人に届く歌詞になってたりします。
——「PICK YOU UP」も ”君がもし今 一人でいるなら 君が座る椅子を増やして” と、ツラい状況の人に寄り添うような歌詞になっていますね。
そうですね。例えば、都心に住んでたりすると、やっぱり孤独な気持ちで過ごしてる人間ってすごく多いと思って。自分もそうだったんですけど、毎日朝早くから遅くまで働いて、心の支えがない人もいると思うんです。でも、音楽一つ聴くだけで、その言葉を聴くだけで、気持ちが変わるかもしれないし、そこに添えるような音楽や歌詞を作りたくて。
——前作リリース時には、サウンドはある意味カジュアルというか聴きやすいんだけれど、伝える言葉としては説得力を持たせていきたいとおっしゃっていましたが、ご自身では今作でそのラインに到達した実感はありますか?
近づいてはいます。けど、まだ自分のスタイルの完成ではないかな。実は、1stは自分的にまったく納得いくものじゃなくて。タイミング的なこともあって結局リリースはしたんですけど、本来自分がやりたいレベルの音楽かっていったら、全然違いましたね。
——当時、ご自身のライフストーリーの部分は、次回作(今作)で伝えていきたいとおっしゃっていましたが。
その部分は、今回で言うと「LOST」かな。ストレートには表現していないんですけど、天国にいる親友への曲で。エグい言葉とかも使ってないし、色んな人が聴けるようなカタチにはなっているんですけど、自分のライフストーリーが出ている曲だと思います。
——「LOST」には硬質なラップのパートもあって、そこにそういう気持ちが表れている?
まぁ普通にラップを書こうかなと思って。サビは他の曲と一緒でメロディアスな感じで作ったんですけど、ラップ自体は気持ちを描くというか、語り口調というのは意識しましたね。
——今のスタイルとして、メロディアスな部分はやはりこだわりがありますか?
ですね、これからもそれは意識していくと思います。次はもっと振り切れるところは振り切った曲ができるかなと。
サウンド、プロデュースについて
——『YOU.』は、雰囲気のまとまりはありながら、サウンドの細かい部分では色んな面がありますよね。「IN YOUR SPACE」には鍵盤があったり、「PLAYER PLAYER」はトロピカルな感じがあったり。トラックはどういう風に選ばれていますか?
トラックを聴いて「これ書ける」って思うかどうかですね。
——それはトラックメーカーから一通り曲をもらって、そういう風に選んでいく感じですか?
そうですね。それか、Type Beatで一回自分で書いちゃって、それをビートメーカーに投げて打ち直してもらったり。リリックができちゃったら、あとはオケを変えるだけなんで。そうやって作ったのも今回何曲かあります。
——今回はJIGGさんがプロデュースされたんでしょうか?
5曲がJIGGくんのプロデュースですね。他には、ELIONEやDJ A-KAY、SALT WATERさん、あと、俺の幼馴染みとニューヨークの学校で一緒だったDJ TSUBASAのも3曲入ってます。
——楽曲を作るプロセスで、YOUNG FREEZさんはどういうスタイルでやられていますか?例えば、メロディーを作る際のプロデューサーとのやりとりだったり。
メロディーは、今はだいたい自分で作れてます。1stの時はめちゃめちゃダメ出しされてましたけど、今回は全然大丈夫でした。「NOW OR NEVER」の最後で盛り上がるところとかはアイデアもらったりしましたけど、「PICK YOU UP」とかは全部自分のアイデアだし。ただ、”ワードが弱い” とかは言われますね。それでプロデューサーとやりとりして言葉を削ったり足したりして。そういうその場でのセッションは大事にしてます。
——客演の方のフロウやメロディーはいかがですか?
そこはもうそれぞれのアーティストに全部お任せしてます。自分が作ったフックやファーストバース、そういう枠組みを崩してくれるものが欲しくて。そうなることでリスナーにとっても刺激になると思うし。なので、俺が思いつかないようなものをフィーチャリングアーティストがガンガンくれると嬉しいですね。
——ちなみに、JIGGさんとは長いお付き合いなんですか?
長いですね。ハタチぐらいからだから、もう10年近くかな。
——10年前だと、Local Babylonの頃ですよね。レコーディングもJIGGさんのスタジオでやられたりしてるんですか?
あそこは抜群で、もうJIGGくんのスタジオ以外では録れないんじゃないかって思うぐらい。なんか客演で色んなスタジオにも行くんですけど、俺の声質のせいなのか、どのマイクを試してもあんまりキレイに録れないんですよね。だから、もう他の人とやるのは怖いっていうか、もしJIGGくんとじゃなかったら、今回も全然違う作品になってたと思うし。例えば、オートチューンの入れ方ひとつとっても違うし。
——オートチューンはかけ録りされるほうですか?
はい、録ってからかけるのは苦手なんで。かかった状態でレコーディングします。
スキルアップへのチャレンジ
——少し話は変わりますが、1stと2ndで、マインドの部分で比べるとどういう変化がありましたか?先ほども1stは納得がいっていなかったということで、以前は若干ネガティブな時期でもあったのかなと。
あの時は、さっきも言ったようにクルーが終わりかけだったんですよ、もうこのままできないなって感じで。BLIND CINEMA DIRECTIONって自分が集めた集まりで。10数人いて、年齢も幅広くて年上の人もいて。もともとLocal Babylonに肉付けする感じで、兄ちゃんがいるLUCK-ENDのメンバーとかも参加してたんですけど、舵取りが難しくなっちゃって。で、俺らの世代だけでBC BOYSとしても少しやったんですけど、それもあんまりうまくいかなくて。だから、留学から帰ってきたときには、完全にバラバラになってました。それで、自分一人でなんとなく作りはじめた時に、最初は割と軽く作ろうかなって考えてたんですけど、友達のELIONEに「ちゃんとやったほうがいいよ、絶対いいものできるから」って言われて。そこから、改めて真剣に作りはじめた感じですね。
——留学された理由というのは?
1stアルバムを出して半年経ったぐらいの時に、JIGGくんのビートでラップする機会があったんですけど、それが我ながらクソダサくて(苦笑)。”これアウトだろ、ちょっとレベルを上げないとダメだな” と思って。その頃ってメロディーラインはアタマの中にいくらでもあるんだけど、ワードがハマらないから音楽として成り立たない感じだったんですよね。なんか日本語だとアタマの中にあるメロディーラインをどうしても表現しきれなくて。それで、じゃあ一回ちゃんと英語の勉強しようかってことで留学したんですよ。
——それはやはりスキルアップにつながりましたか?
それによって英語でメロディーを全部作ることができるようになったし、今度は逆に英語で作ったものを日本語に変換することもできるようになってきたんですよ。そういう意味でも、留学したことはすごいよかったですね。
——では、今作はそういった色々な試行錯誤や努力をされた結果が現れた作品なんですね。
制作期間は全部あわせると、結局1年半ぐらいかかりましたからね。仕事もあって休みの日にしか制作作業ができないから、進みも遅くてけっこうかかっちゃいました。
クリエイティブへのこだわり
——MVやジャケット、イメージ含めYOUNG FREEZさんは音楽以外のクリエイティブも細部へのこだわりが感じられます。
そうですね。イメージの色でいうと基本は青か紫にしてて。やっぱり、名前に ”FREEZ” があるから、そういう系統のカラーにしていて。なので、MVのライティングも青か紫で撮ってもらうようにしてます。
——MVの演出にも自ら関わる方ですか?
けっこう色々言いますね。俺のマネージメントをやってくれてるスタッフは、HAVIT ARTでも映像をやってて。なので、彼がHAVIT ARTサイドとのやりとりもやってくれて、双方の要望を汲み取った上で枠組みを全部作ってくれて、そこから撮影に入ります。ちなみに、アルバムに入ってる「SON OF GOLD feat. JP THE WAVY」のMVを先日公開したばっかりなんで、それもぜひ見てもらえたら。
——現在、活動においてどこかのプロダクションに所属されていたりするんでしょうか?
いえ、完全にインディペンデントですね。最近River side Agencyっていう新しいチームが立ち上がったんですけど、レーベルは今後そこになる予定です。
——それは具体的にはどういうチームなんですか?
クリエイティブチームなのかな。例えば「IN YOUR SPACE」のMVもディレクションはRiver side Agencyですし、服のスタイリングとか、ファッション方面に強いメンバーもいるんで、外に対する見せ方や組み立ては任せてる感じですね。
——以前、バーニーズニューヨークのポップアップイベントでもライブされていましたよね?
俺のファッションを担当してるMasaがやってる新しいブランドのofflineが、この間バーニーズニューヨーク新宿店でポップアップをやって。その初日のレセプションパーティでライブをさせてもらいました。バーニーズも無名であってもイケててポテンシャルのあるブランドを取り扱うっていうのを始めたらしくて。MasaとはBLIND CINEMA DIRECTIONが解散してからずっと一緒に動いてて。offlineって服とジュエリーの融合っていうのがコンセプトなんですけど、そのジュエリーの方を手がけてるのもLocal Babylonの時に一緒にやってたやつだったりします。
——たしか最近のアーティスト写真もそのofflineのアイテムを着用されていますよね?
そうですね。今は、SALUくんやJP THE WAVYくん、DOBERMAN INFINITYのSWAYくんも着てくれてて。
ストリーミング時代への移行と自身の活動
——YOUNG FREEZさんは今30歳ということですが、音楽活動をされるにあたって年齢を意識されますか?お話をお伺いする限り、現在はすごく動きやすそうな状況のようですが。
やっとやりやすい時代が来たかなってのはありますね。例えば10年前だったら、そつなくこなしていたつもりなんですけど、要はギャングスタラップとか本来自分がやりたいヒップホップのカタチじゃなくて。今はヒップホップのメインストリームの音楽のカタチが、当時とはもう変わってるじゃないですか。そこに、自分の波長が合ったんですよね、単純に。年齢とかは気にしてなくて、もちろん今の若いコよりもヤバい作品は作れると思うし。
今って、世に出るハードルが下がってると思うんですよ。昔だったら、”そんなのじゃ無理でしょ” って言われたであろうものでも、今のコは出てきちゃったりするし。そういう面でも、自分としては昔からやってきたっていう自信があるし、年齢は関係ないかな。30歳でもフレッシュなことはできると思うし、自分をブランディングしてくれてる仲間もちゃんとキャリアを積んできてるからこそ、より洗練されたアウトプットにすることができてると思うんで。そうやって考えると、このリリースのタイミングは間違ってないと思いますね。
——音楽の発信の方法も、世の中がストリーミングに移行してやりやすくなりましたか?
それはモロにそうですね(笑)。ストリーミングがなかったら無理かなって思うし。やっぱり盤を刷るにもお金がかかるし、在庫を抱える必要もでてくるじゃないですか。そういうことが不要になった時代の変化で、本当にやりやすくなったなと思います。
——ご自身で音楽を聴く際もストリーミングですか?
だいたいそうですね。もともとCD買わない方だったし、昔から。だから、今がすごいあるべき姿って感じはしますけどね。
——そういうように、やりたい活動と時代の環境がマッチしてきている中で、先日のApple Musicの『今週のNEW ARTIST』にピックアップされたり、改めて認知が広がってきていると思うのですが、さらにそこを広めるために何か考えていることはありますか?
色々考えてはいるんですけど、例えばそのApple Musicのピックアップも、選ばれた後にそういう枠もあるんだって知ったり。そういうこともあるんで、最初からこっちが狙ってるものが思い通りに当たるかっていったら、必ずしもそうではないし。だから、今まで通りブランディングとかイメージは崩さずにしっかりやることで、色んなところに引っかかってくることもあるかなって。あとは、海外のアーティストとやっていきたいですね。
——地域でいうと、どこのアーティストとやりたいですか?
韓国かアメリカかな。特に、韓国は前からずっと考えてて。向こうはヒップホップの水準も全然高いし。
——いいアーティストだなと思うのは?
DPR LIVEかな。本当に韓国はラップ上手い人多いですよね。あのレベルにまで持っていきたいから、まだまだ勉強も必要だし。日本ってガラパゴス的なところもあるから、抜け出したいですね。
——その中にあっても、日本で注目しているアーティストはいますか?
うーん、誰だろう。JP THE WAVYくんとかは、イケてるなと思いますね。彼も見てる先は常に海外だし。やっぱ海外から見ても、実際彼はクールな日本人として見せれてると思うし、楽曲もいいですからね。
——今作を作る時に、インスピレーションを受けたアーティストや作品はありましたか?
作り出した時は一昨年ぐらいだったんですけど、トラヴィス・スコットかな。オートチューンのあて方とか含めて。
感情の変化が音楽制作で最大の武器
——音楽以外で、日常で影響を受けるものはありますか?
ないですね。映画とかもちろん好きですけど、それが直接作品に反映されることはないかな。俺の場合、自分の過去の記憶や思い出とか感情とか、そういうことが音楽に反映される感じなんですよ。例えば “気付いたらアイツいなくなっちゃったな” とか。”あの時、冷たい態度とっちゃったな” って思っても、その相手がもういなくて今となっては何も伝えることができなくて、じゃあそれを歌詞にしてみたり。だから感情の変化が創作においてはすごく活きてるんで、そこが俺にとって音楽を作るにあたっての最大の武器かな。嫌な気持ちも含めて、それを変換すると曲になるんで。嫌なことも刺激になってるから、そういう意味ではストラグルっていうか、フラストレーションは常に溜まった状態でいたいかもしれない。満足しちゃうと良い曲は書けない気がするから。
——YOUNG FREEZさんはストイックな印象があります。
けっこうそういう風に言われるんですけど、もともとは全然ストイックじゃなくて。ただやっぱり自分のキャパシティを広げたかったりするんで、自分に負荷がかかること、キツいことを敢えてやったりはします。トレーニングもそうだし。リリックも満足するまで書き続けるし。その間は全然遊びにも行かずに。やっぱり、あからさまな壁が見えた時に、それを超えていくためには同じことだけ続けててもダメだと思うんで。
——次回作はいつごろになりそうですか?
今っぽいスピード感で引き続きやっていきたいんで、半年以内には出したくて。EPかシングルは年内にはリリースできればと思います。
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