【このリリースがすごい!】ボタン『花提灯』| 懐かしさと新しさ、高鳴りと陶酔 ―― 多彩な表情で魅せる全6曲

コラム・特集
2026.6.29
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音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、ボタンのEP『花提灯』を紹介。


ボタンの『花提灯』の印象を、最初の“やわらかさ”だけで決めつけると、たぶん見誤る。なぜなら、EP全体を通して大きく表情を変える作品だからだ。

最初の楽曲である「君はいいやつ」は絶妙な一曲だ。柔らかくて、しっとりとしたビート感。肩の力がふっと抜けた、脱力系の心地よさがある。気取らず、ゆるやかで、どこか懐かしくて。ギターの音色も朗らかさがあって、巧みで細かいアンサンブルが繰り広げられるのに、肩肘張らずに聴くことができる余白があるのだ。

続く2曲目「ライフイズマーチ」も同じ系統のしっとりした手触りを保つ。ただし、この歌は全編を通して、小気味の良いアコースティックギターのカッティングが響く。サビもインパクトがあって「ライフイズマーチ」の歌詞を歌うボーカルの高揚感は随一。ライブで聴いたら、きっとノリノリになるようなパワーがこの歌にはある。間奏のギターソロも痛快でフォーキー+アッパーなバンドサウンドを体感できる一曲になっている。

3曲目「ハタラキ天使」も、フォーキーな流れは続く。そのうえで、この歌の冒頭はかなりゆったりとしたテンポのイントロで構成されており、たっぷりと芳醇な世界にいざなってくれる。で、40秒が過ぎたあたりで、がらりとBPMが変わって、作品のモードがひとつ、ぐっと切り替わる。ブルースハープがメロディーを紡ぐ鮮やかなイントロ。どこまでも自由で、少しエッジのあるボーカル。それらが美しく交わることで、豊かで気持ちの良い音楽世界を作り上げるのだ。

後半の構成もいかつい。

4曲目「花びら」は7分9秒、5曲目「団地のあの子」は7分30秒と、EPの中盤から後半にかけては長尺の楽曲が続く。そして、どちらも完成度が高い。「花びら」で耳をひくのは、透明感のあるギターのアルペジオだ。一音ずつクリアに置かれていく中で、楽曲はだんだんとオルタナティブロックの色を強めていく。もちろん、軽やかにストロークするアコギの音色を織り交ぜているため、まるで上質なポップスのような、こだわりの強いオルタナティブのような、独自のアンサンブルに引き込まれることになる。「団地のあの子」は力強いカッティングと、爆発するようなエレキギターの交錯が強烈なアンサンブルを作り出す。そこに、ベースとドラムも気持ちよくビートを刻むので、流れるような疾走感を生み出し、ワクワク感が一気に高まる構成になっている。

最後の6曲目「バンドしよう」という楽曲なのだが、この歌も良い。しかも、これまでの5曲は丁寧に計算されたような美しい構成とアンサンブルで聴かせる作品だったのに対して、ラストのこの一曲は、一発撮りのような、バンドのすっぴんの様子をそのままパッケージにしたような収音のテイストになっていて、それがたまらない。EPを通して全部をさらけ出すような流れになっているため、色んな意味で「ああ、バンドって良いなあ」という気持ちになるし、だからこそ、ラストが「バンドしよう」で締められるのが効いている。曲名と同じフレーズが耳に残り、良い気分で聴き終えることになる。

振り返ると、面白いEPだなと思う。

フォーキーでやわらかい入口に招かれたかと思うと、バンドとしての様々な表情をみせて、中盤以降では7分を超える大作でどっぷりと音楽に耽溺させてくれる。で、ラストは口笛でも吹きたくなるような、自由で楽しい音楽で軽やかにまとめてみせる。懐かしいのに、新しくて、胸が高鳴るのに、うっとりと聴き入りたくもなる、そんな一枚。ボタンの『花提灯』、ぜひ聴いてみてほしい。



ボタン『花提灯』

ボタン
EP『花提灯』

2026年6月20日配信リリース
音楽ストリーミングサービス各リンク https://linkco.re/XnzcqAUy

 
 

この記事の執筆者
ロッキン・ライフの中の人
ロッキン・ライフという音楽ブログとイベントを運営している中の人です。