【このリリースがすごい!】recess『Life-Sized Things』| ポップパンクの残響が鳴るヘヴィ・シューゲイズ
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、recessのアルバム『Life-Sized Things』を紹介。
今年5月18日に東京・ガーデンシアターで行われたDeftonesの15年ぶりとなる単独来日公演は、とにかく圧倒的だった。甘美という言葉では表現しきれない音響芸術の中に立ち尽くして、彼らは今が最盛期というよりも、自身の表現の普遍性を数十年かけて証明し終えつつあるのだと思った。彼らの音楽がTikTokを通じてZ世代にもリーチしたのは、数え切れないほどに枝分かれしたメタルのサブジャンル云々の知識を必要とせず、再生した瞬間に没入できる快楽性によるものだろう。一曲目の「Be Quiet and Drive (Far Away)」であっという間に場内の空気が塗り替わっていくのを感じながら、そう考えていた。
2022年に大阪で結成されたrecessも、その遺伝子を受け継ぐバンドの一つだ。ポップパンクバンドとして始動した彼らは、まさにDeftonesやBasementらにインフルエンスされ、国内ではHollow Sunsらとも共振しつつ、USオルタナやシューゲイズを取り入れた現在の音楽性に至った。待望の1stアルバムとなる今作において鳴らされるサウンドは、すでに成熟の域に達しているかのように、巧みなバランス感でレコード全体の質感を統率している。
収録曲の中でも、とりわけ曖昧な輪郭の中で淡いボーカルが紡がれる「Moonflower」、ドライなスネアがヘヴィながら広がりのあるグルーヴを牽引する「Laceration」は、Deftonesの最新作『private music』を思わせる。そうした細かなプロダクションへのこだわりによって、本作の中には“今っぽさ”が鮮やかに封じ込められている。一方、ポップパンクバンドとしての出自が自然に滲み出ることで、オリジナリティも担保されているのが印象的だ。
というのは、「Overwhelmed」で刻まれるスピード感のあるビートや「Bindweed」の哀愁漂うコード感がトラックリストにおいてスパイスとなっているというだけではない。何よりyuto(Vo)の歌声の、ポップパンク然とした飾らなさが素晴らしい。“等身大のもの”というタイトルが示す通り、このアルバムは一人の人間の葛藤を描いたコンセプトアルバムだ。そして、時に幻想的なアンサンブルの中で素朴な生々しさを保ち続けるボーカルが、作品のテーマに確かな説得力を帯びさせている。心地良い音の中からふと意味を浮かび上がらせる日本語詞が歌声をさらに切実に響かせ、ヘヴィ・シューゲイズが放つ即効性の引力から耽美や逃避を引き剥がしていく。
音の海に沈んでいくようなスローテンポの「Bottle Gourd」、どことなくニューウェーブなムードを醸しながらエモーショナルなカタルシスを迎える「Dusk」から成るクライマックスは掛け値なしに美しく、さらなる進化の予感も漂う。国外のムーブメントを独自の解釈によって等身大へと引き寄せ、日本のオルタナティブ・シーンに新たな風を吹かせるであろう快作だ。

recess『Life-Sized Things』各サブスク