【このリリースがすごい!】TIVE「わたしのかたち」 | 自らの輪郭を確かめるためのハードコア
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、TIVEのシングル「わたしのかたち」を紹介。
ハードコアパンクにおける危なっかしいモッシュピットは、感情の発露にどうしても攻撃性が伴うことと、だけど肌をぶつけ合うことでこそ確かめられるコネクションが存在することを、極めてフィジカルに、原始的な手段で示している。TIVEの新曲「わたしのかたち」は、そうして顕れる自らの輪郭についての、自己言及的で内省的、故にまさしくハードコアな一曲だ。
後にグラミー賞で2冠に輝くTurnstileの来日公演に足を運び衝撃を受けたメンバーたちによって、2019年に大阪で結成された彼ら。2024年には再び来日したTurnstileのサポートアクトを務め、今年は『FUJI ROCK FESTIVAL ’26』ROOKIE A GO-GOへの出場を果たしている。スケールアップの一方で、全国21ヶ所の『“核に匹敵する優しさ、それと諦め” NIPPON TOUR』を通じて各地の“NIPPON HARDCORE BANDS”とマッチアップし、さらにはMINI MYTH、Sugarとともに持ち時間10分の『10 MINUTE HARDCORE SHOW』を5都市で開催するなど、リスナーやコミュニティとは常にゼロ距離で交わり続けている。
「わたしのかたち」は、そんなTIVEの両極的な活動(の展望)と密接に結び付いた楽曲のように思えるのである。レコーディング・ミキシングエンジニアには彼らの多大なる影響源であるバンド・PALMのギタリストとして知られるAkira Inadaを起用。その音像は前作までと比して、一塊となって炸裂する突破力よりも幾分かの包容力に重心を移しており、リバーブによって浮遊感を手にしたボーカルによって特徴付けられる。
そんな佐伯基(Vo.)の歌声は、“天空を散歩してみても / 地球のかたちはわからない”、“大気圏をはみ出してみても / からだの重みは変わらない”といったリリックとリンク。Brendan Yates(Turnstile)譲りのじわじわと突き上げるような歌唱法とも相まって、視界を遥か上空へと昇らせていく。
しかし、そのカメラのクレーンアップは、下降していくコード進行とメロディに逆行しているのだ。この、肉体がひとりでに地面から離れ、精神だけが沈み込んでいくような感覚が、楽曲全体のテーマと分かち難く絡み合っている。
パワーコード主体のギターとルート弾きのベース、ベーシックな8ビート。至ってシンプルなアンサンブルだが、楽曲構成は巧みだ。ドラムがスッと引くのと同時に“戦争をしてもしなくても / いのちの重みは変わらない”というラインが耳に飛び込んで、我々は2026年の現実へと引き戻される。空中や宇宙空間から世界の在り方を探ろうとしていた視線が、同じ重みを持つ他者の生命へと接続される決定的な瞬間が、静かに訪れる。
つまりこの曲は、TIVEというバンドがハードコアであり続けるための杭であるとともに、今日を生きる私たちが人の形を保ち続けるための闘争の詩である。そして、実際に肉体が触れ合う場所で響く時、「わたしのかたち」はより実感を伴ったアンセムになるのだろうと思う。
