「CDは”買ってもらう”、ストリーミングは”再生してもらう”」ストリーミングで音楽配信する際の基本的な考え方

2020.3.16

音楽アーティストがストリーミングで楽曲を配信をすることが国内でもいよいよ普及してきました。ただ、これまでCDを販売したことはあってもストリーミングサービスで音楽配信をしたことがないアーティストからすると、いざ音楽を配信しようとしても、慣れないこと・やったことがないことなので中々最初の一歩が踏み出せないかもしれません。また、とりあえずストリーミングで配信してみたものの、なんとなくうまくいかないなと感じている方もいるかもしれません。

そこで今回は、ストリーミングで音楽配信することはそもそもどういったことなのか、その前提・基本となる考え方をシェアしたいと思います。

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CDの売り方とは異なる考え方

ストリーミングは”積み上げ型”のモデルだと言われることがありますが、具体的にそれは何を意味するのでしょうか。それを紐解くために、まず音楽リスナー、ファンの観点から考えてみます。この頃、昔に比べていつのまにか新譜がリリースされているなと思ったことはありませんか?昔は発売日まで楽しみにしていたのに… ここにまず一つの変化があります。これまでは、CDというフィジカル、物理的な商品の売り上げを最大化させるために関係者はそのセールスの最大の山場を発売日に持ってきていました。


「CDは買ってもらう、ストリーミングは再生してもらう」ストリーミングで音楽配信する際の基本的な考え方
y軸 : コンバージョン(販売数)、x軸 : 時間軸

上記グラフ、x軸0がリリース日となっています。そのリリース日前に事前告知、プロモーションを出来る限り実施し、ファンの関心を最大限に高めた上でダムが決壊するかのごとく発売日を迎えていました。このようになっていたのは、流通の仕組み、予算と事業計画(制作→リリース→ツアー→制作・・・とアーティスト活動をコントロールし、事業として売上見込みの立てやすさ)、そして慣習と、様々な要素に起因していると考えられます。

音楽の視聴環境が変化しつつある現在、ストリーミングにおいてはCDの売り方とはまた異なる考え方が必要になっています。

 

CDは”買ってもらう”、ストリーミングは”再生してもらう”

今度は、”音楽を聴く”というファン/リスナーの行動、お金が発生する瞬間を考えてみましょう。あるアーティストが、「今度の新曲もいっぱい聴いてね」とファンに伝えたとします。

これをブレイクダウンしてみると、

「いっぱい聴いてね」

・CDの場合 → CDをお店や物販で買ってもらって、CDプレイヤーやスロットのあるPCを経由して聴いてもらう

・ストリーミングの場合 → ストリーミングサービスに課金してもらって、そこで音源を再生してもらう

と同じ音楽を聴いてもらうにおいて、ファン/リスナーの行動自体がもはや異なっているのです。お金が発生するポイントも異なります。それはイコール売り方、考え方が変わっているということ。ストリーミングにおいて、ファン/リスナーは配信ストアに月額課金し、そこから検索やレコメンド、あるいはダイレクトにアクセスして再生をします(それに伴い収益も発生する)。これは検索すれば楽曲がいつでもそこにあるという状況があるからこそ実現できていること。このようないつでも聴いてもらえる状況において、いかにたくさん聴いてもらえるかがストリーミングにおいてはセールスの考え方の基本になります。もはや音源において “いかにたくさん買ってもらうかでは無い”のです。このように言葉にすると「何を当たり前な!」という感じですが、こういったことはアタマでは分かっていても感覚も含めた思考変換が意外と出来ていなかったりするようです(特にCDでの成功体験がある場合など)。

繰り返しですが、ストリーミングサービスではそこに曲が存在することが当たり前の状況で、いかに聴いてもらえるポイントを多く提供していけるかが重要です。配信リリースした後に、どれだけ長い期間楽曲を聴き続けてもらうか=楽曲の再生を積み上げていくか。配信ストアに存在する楽曲に気付いてもらうために、MVやライブ、プレイリスト、そしてまた新たなリリース自体が、リスナー/ファンへのトピック、フックとなり大切になってきます。例えばストリーミングではコンスタントにリリースするのが常套手段になっていると言われますが、それはプレイリストを経由した配信ストアのアルゴリズムへのアプローチも含め根本にこういった変化が起きているからなのです。


「CDは買ってもらう、ストリーミングは再生してもらう」ストリーミングで音楽配信する際の基本的な考え方
y軸 : コンバージョン(再生数)、x軸 : 時間軸

上記のグラフでは青い部分の面積が収益になりますので、そこの最大化を目指すような考え方が前提となります。初動が小さかったとしても、いかに息の長いものにできるか。また、こういった仕組みなのでストリーミングの収益を実感するにはある程度長めの時間軸で向き合う必要があります。例えば、CDは発売日に100万円売れるかもしれません。ストリーミングではその100万円の売り上げを一年間を通して作り上げていくことになるかもしれません。そして、継続的に聴いてもらえるようにすることで、ある時点を境に結果ストリーミングの方がCDの売り上げを越えていく(上の2つのグラフで言えば、青の面積が緑の面積を上回る)。ストリーミングの収益を実感するのにはどうしても時間がかかります。これまでのCD販売をベースにした音源のセールスマナーが染み付いている人は短期的な時間軸で考えてしまいがちなので “ストリーミングは儲からない” と感じてしまうのかもしれません。

ストリーミングに配信すれば誰でも高い収益をあげられる訳ではありませんが、ある程度の収益性を実感するにはCDと違った考え方、やり方がそもそも必要になります。もちろん、発売日の前にもこれまで通りプレイリストへのピッチやSNSでのプロモーション含め、やれることは全てやった上でのお話となりますが、それらを踏まえてストリーミングは配信が始まってからもさらに勝負だということを覚えておきましょう。
 

この記事の執筆者

THE MAGAZINE

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